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Access Accepted第521回:インディーズだからこそ可能。アーティスティックな新作タイトル5選
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印刷2016/12/12 12:00

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Access Accepted第521回:インディーズだからこそ可能。アーティスティックな新作タイトル5選

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第521回:インディーズだからこそ可能。アーティスティックな新作タイトル5選

 先週(2016年12月5日)に掲載した本連載の第520回「新作ラッシュにあえぐ中小デベロッパ」では,最近のインディーズブームにより,Steamでは,2016年だけで過去12年にわたるサービスで蓄積した取り扱いタイトルの約40%に相当する数の新作がリリースされたことを紹介した。タイトルラッシュの中で,ゲーマーに知られることなく埋没していくタイトルも極めて多いのだ。とはいえ,インディーズタイトルの中には見た目のインパクトが大きい,画像を眺めただけで「なんだこれは?」と思わせる作品も少なからず存在し,アート面での独自性をゲーマーにアピールしている。今週は,そんなアーティスティックなタイトル5本を紹介したい。


海外のインディーズゲームに影響を与えた日本のゲーム


 筆者の個人的な意見だが,2000年以降に日本で生まれ,欧米のインディーズゲーム開発者に大きな影響を与えた作品が3つあると思っている。それが,2001年にSony Computer Entertainment(現Sony Interactive Entertainment)からリリースされた「ICO」と,2004年にナムコ(現 バンダイナムコエンターテインメント)から発売された「塊魂」,そして2006年にカプコンがリリースした「大神」だ。いずれもPlayStation 2向けの作品で,大ヒットと言えるほどのセールスは記録していないものの,それぞれが「キャラクターへの感情移入」「物理効果をメインにしたプレイ」,そして「大神」は,「アートを前面に押し出した作風」という,ゲームにおける新たな可能性を提示した作品だった。

PlayStation 3向けのリマスター,「大神 絶景版」。濃い輪郭を残した日本画風の迫力が印象的な作品だが,欧米で独立系スタジオのゲーム開発が盛んになる中,ゲーム表現のあり方に一石を投じた
画像集 No.007のサムネイル画像 / Access Accepted第521回:インディーズだからこそ可能。アーティスティックな新作タイトル5選

 当時は日進月歩で3Dグラフィックス技術が進化し,ゲーム開発コストも上がりつつあった時代だ。ゲームエンジンのライセンス料は高く,デジタル配信システムがようやく整い始めたこの時期,独立系のゲーム開発者にとっては,大手メーカーの大作と競合することなく,少ない予算と人数でいかに自分達らしいゲームを作るかが大きな関心事であったはずだ。
 そんな中,Xbox 360やPlayStation 3向けタイトルをはねのけ,IGNが主催するThe Best of 2006で最優秀賞に輝いた「大神」の存在は,独立系のゲーム開発者にとって1つの大きな指針になったことだろう。ちなみに,ギネスブック(ゲーム専用版)で「大神」は,「もっとも商業的に成功せずにゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いた作品」として記録されるほど,メディアやプレイヤーの評価は高い。
 もちろん,「リトルビッグプラネット」「風ノ旅ビト」,そして「The Unfinished Swan」「Botanicula」「Transistor」といったアーティスティックな作品がすべて,「大神」にインスパイアされたなどと言うつもりはない。しかし,ゲームという娯楽を,プレイヤーの心にアートとして印象づけることが可能であることを示した点で,「大神」は1つのマイルストーンになったと思う。

 さて,今年(2016年)の独立系デベロッパの作品の中には,かなりアート寄りな作品が多かったのではないだろうか。Thekla, Inc.のパズルゲーム「The Witness」やCampo Santoの「Firewatch」,Coldwood Interactiveの「Unravel」や,Giant Squid Studiosの「Abzu」,さらには「No Man’s Sky」からCyanの「Obduction」まで,独自性の強いアートワークや世界観を持つタイトルが少なくない。
 また,「Dishonored 2」「Sid Meier’s Civilization VI」のように,大手パブリッシャのメジャー作品でも,独特のスタイルを貫くタイトルが目に付く。

 こうしたトレンドは,2017年を迎えてもしばらく続きそうなので,今週は,そんなアーティスティックなインディーズタイトル5作品を紹介しておきたい。


■NIGHT IN THE WOODS
公式URL:http://www.nightinthewoods.com/
開発元:Infinite Fall
発売元:Finji
発売予定日:2017年1月(PC版),2017年中(PlayStation 4版)


画像集 No.002のサムネイル画像 / Access Accepted第521回:インディーズだからこそ可能。アーティスティックな新作タイトル5選

 横スクロール型アドベンチャーゲームである「NIGHT IN THE WOODS」は,大学を退学して故郷の田舎町“ポッサムスプリングス”に戻って来たネコのメイが主人公だ。彼女は旧友と連絡を取ったりしつつ生活を軌道に乗せようと奮闘するが,どうも以前のような雰囲気になれず,悶々とした日々を送っている。そんなとき,どうやら夜になると森で何かが起こっていることに気付く……というストーリーが展開する。
 掲載したスクリーンショットからも分かるように,ゲームのグラフィックスはユニークで,また,コーヒーショップでアイスドリンクを飲む描写など,アメリカのヤングアダルトのライフスタイルを動物キャラクターで表現しているところも個性的だ。一方で,人間のように振る舞いつつも,屋根や塀の上を歩くといったネコらしい動きも見られる。


■Vane
公式URLhttp://www.friendandfoegames.com/vane/
開発元:Friend & Foe
発売予定日:2017年中(PlayStation 4版)


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 2014年に東京で結成されたデベロッパ,Friend & Foeの新作は,「風ノ旅ビト」を思わせる砂漠を舞台としたオープンワールドの探索アドベンチャー,「Vane」だ。PlayStation Experience 2016ではプレイアブルデモも公開されており,開発も順調に進んでいるようだ。会場にいたスタッフは,「6人しかいないスタジオであるため,スケジュール的にはキツいが,できればPC版もリリースしたい」と語っていた。
 シンプルなアートスタイルだけでなくストーリーテリングにも個性的なアプローチが採用されており,文字やセリフでプレイヤーに物語を説明することはない。その一方,ゲームにはカットシーンが用意されており,ゲームはドラマチックに進んでいくという。なぜ自分がトリの姿なのか,そして金色の鉱石はどうして自分を人間に変えるのかといった,さまざまな疑問を解き明かしていこう。


■Return of the Obra Dinn
公式URLhttp://dukope.com/
開発元:Lucas Pope
発売予定日:未定


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 2014年にリリースされた「Papers, Please」で高く評価されたルーカス・ポープ(Lucas Pope)氏の最新作が「Return of the Obra Dinn」だ。19世紀初頭,ロンドンから東洋に向かって船出した輸送船“オブラ・ディン号”が消息を絶った。数年後,ボロボロになった姿で港に戻ってきたが,船員の姿はない。プレイヤーは東インド会社の調査員として,船内で起きた事件の謎を解き明かしていくというミステリーアドベンチャーだ。
 プレイヤーは時計のようなデバイスを使って時間を巻き戻せる能力を持っており,船員達の死の瞬間を追体験したり,船内を歩き回って様々な証拠を収集したりして,1人ずつ死因を特定していくという。
 ポープ氏が「1ビットレンダリング」と呼ぶ,初期のMacintoshを思わせるグラフィックスが特徴的な作品で,公式サイトではデモ版が公開されているので,興味のある人は体験してほしい。


■Manifold Garden
公式URLhttp://manifold.garden/
開発元:William Chyr Studio
発売予定日:未定


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 シカゴ在住のアーティスト,ウィリアム・チャー(William Chyr)氏がゲームというメディアを使って空間美を追求しようと,2012年から開発を続けている物理パズルゲームが「Manifold Garden」だ。
 マウリッツ・エッシャーの版画に影響されているのは間違いなく,構造物が永遠に続くように見える空中庭園を舞台に,重力をうまく利用しながらブロックを動かしていく。六方向の壁は,画面を回転させて床となったときに色が変わり,床とブロックの色が同じである場合に限ってブロックを移動させられる。それを見きわめつつブロックを動かして指定された場所に置くと,構造物の中にある水路に水が流れ,庭園に生命の息吹を与えられるのだ。
 そして,次の構造物に続く道が開け,これを繰り返すことで,最初はシンプルだった空中庭園が次第に巨大化し,最終的には壮大な世界が完成していくことになる。例えば,ある場所から飛び降りたら同じ場所に落下してくるといった,トリッキーなシステムも大きな特徴だろう。
 言葉で説明するのが難しいゲームだが,パズル好きは完成を楽しみにしていよう。対応機種はPCおよびPlayStation 4,Xbox Oneが予定されている。


■LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-
公式URLhttp://ln.bn-ent.net/
開発元:Tarsier Studios
発売元:バンダイナムコゲームス
発売予定日:2017年中(PC,PlayStation 4)


画像集 No.006のサムネイル画像 / Access Accepted第521回:インディーズだからこそ可能。アーティスティックな新作タイトル5選

 「LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-」は,モンスターが徘徊する謎に満ちた巨大船,「モウ」からの脱出に挑む少女“シックス”を主人公にしたパズルアクションだ。「リトルビッグプラネット PlayStation Vita」「Tearaway PlayStation 4」などの移植や開発を担当したスタジオの新作であり,まるでヨーロッパのCGアニメのような不気味な雰囲気が際立つアートが特徴になっている。
 モンスターが巨大なのか,あるいはシックスが小さすぎるのかは不明だが,ゲーム中の家具は非常に大きく描かれており,プレイヤーはその周囲をネズミのようにチョロチョロと動き回って追手をかく乱したり,家具を伝って上に向ったりなど,非戦闘アクションが主体となる冒険が楽しめそうだ。オルゴール風のBGMもグラフィックスによくマッチしており,不思議な世界を堪能できる。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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