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Access Accepted第571回:CIAが諜報員教育のためにボードゲームを使用
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印刷2018/04/09 12:00

業界動向

Access Accepted第571回:CIAが諜報員教育のためにボードゲームを使用


 CIAが開発し,諜報員の訓練のために利用しているというボードゲームのルールブックが一般公開され,話題を集めている。世界にその名を轟かせる情報機関が,トレーニングにゲームを活用しているということがまず面白いが,ルールブックの公開は広報活動の一貫でもあるらしい。いずれにせよ,ゲームがさまざまなところに浸透していることを思わせるトピックだ。


CIAがボードゲームで諜報員を訓練?


 音楽や映画,インタラクティブメディアなどの複合イベントとして知られる「South by Southwest 2017」(SXSW 2017)が約1年前の2017年3月,テキサス州オースティンで開催された。それに併催する形で行われた「Interactive Technology Festival」のセッションにおいて壇上に立ったのは,CIA(アメリカ中央情報局)に16年間在籍しているという上級情報分析官,デイヴィッド・クロッパー(David Clopper)氏であった。話の内容は,CIAの諜報員を訓練する目的でクロッパー氏の率いるチームが「Collection」と名付けられたボードゲームを開発したという,なかなか衝撃的なものだった。

SXSW 2017に展示され,当時は謎のボードゲームだった「Collection」。画像はPinterest
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 この講演についてはCNNの記事でも報道されており,ショーフロアにはCIAで実際に使われていたと思われるボードゲームが展示され,誰でもプレイできる状態になっていたという。もっとも,市販のゲームではないためルールが分からず,セッションに参加した人や相当なボードゲームマニア以外には,それほど注目されることがなかったようだ。

 そんな「Collection」と,「Kingpin: The Hunt for El Chapo」という,これまでCIAの内部のみで遊ばれていた2つのボードゲームのルールブックが,このたびオンラインで公開された。これは,CIAの作ったボードゲームに興味を持ったアメリカ市民が,FOIA(Freedom of Information Act=情報公開法)に基づいて公開を要求し,これにCIAが応じた結果である。

 ルールブックをざっと見ただけでは,具体的な内容は分かりにくいのだが,「Collection」は,10面ダイスと多数のジェム,そして何百枚ものカードを使って3人から7人のプレイヤーが協力して遊ぶもの。世界各地で起きる3つのイベントを同時に解決していくという内容のようだ。それぞれのプレイヤーが,「軍事分析官」「政治分析官」などの専門家となり,例えば情報屋の偽情報や指導者の死など,変化する状況に対して,それらが危機的なレベルに達しないようにお互いをサポートして国際情勢をコントロールしていく。

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 「Kingpin: The Hunt for El Chapo」は,テーマを国際麻薬カルテルに絞り込んだもので,一方のプレイヤーが犯罪組織のリーダーになり,もう一方のプレイヤーがCIAとなって,麻薬カルテルを追い詰めていくという対戦型のゲームだ。犯罪組織側でプレイした場合,ライバル組織のリーダーを暗殺したり,適当な土地を物色して麻薬精製工場を建設したりと,CIAの職員がプレイしていいのかと思えるくらいの悪役を演じることになるらしい。
 開発したのは,クロッパー氏と同じく諜報員の教育役としてCIAに勤めるヴォルコ・ルンケ(Volko Ruhnke)氏だが,ルンケ氏は,発売中のボードゲーム「Labyrinth: The War on Terror」などをデザインしたことでも知られている。


ゲーミフィケーションは政府機関や軍事との相性が良い


 「Collection」と「Kingpin: The Hunt for El Chapo」はいずれも,さまざまな立場で物事を考え,変化するイベントに対して臨機応変に解決策を編み出していくことを鍛えるプログラムだ。もっとも,今回の公開に関しては広報的な意味合いも強そうで,そもそも2017年の時点でCIAの職員が講演を行い,ボードゲームを使って訓練をしていることを明かした自体が驚きだろう。知的能力の高いゲームの愛好者達に,CIAのオタク的な部分を見せることで興味を持ってもらおうとする意図はあるのだ。

 我々は,諜報員やスパイと聞くと,ついジェームス・ボンドやジェイソン・ボーンのようなスーパーエージェントを想像してしまうが,実際には,多くの職員が特定の分野に長けたオタクなのだという。

 例えば,2012年10月1日に掲載した本連載の第359回でもお伝えしたように,リビアのアメリカ領事館襲撃事件で殉職した情報管理官は,「EVE Online」では有名なプレイヤーだった。
 また,DCコミックスの「バットマン」シリーズで活躍するライターのトム・キング(Tom King)氏は,コロンビア大学を卒業後にDCコミックスでアシスタントとして働いているとき,アメリカ同時多発テロの惨状を目の当たりにしたことでCIAに転職。7年間活動を行ったあと,再びコミック業界に戻って,DCコミックスやVertigo Gamesで自身の経験を活かした活動を行っている。

 CIAの退職者は,CIAにおける具体的な活動を公にすることが基本,ご法度だが,「元CIA職員」というキャリアを箔に使う人は,各分野にかなりの数,存在する。

ジョイスティックやアナログスティックはもともと,ドイツが軍事目的で開発したものだったらしい
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 さて,現在のアメリカの20代〜30代の働き盛り世代は,ほとんどすべてが大なり小なりゲームをプレイして育ってきており,日常のさまざまな要素をゲームとして捉える「ゲーミフィケーション」と相性がいい。CIAが新人教育にボードゲームを使うことは,不自然ではないのだ。
 ゲーミフィケーションに含まれるかどうかは微妙かもしれないが,例えば無人兵器のリモート操作にゲームパッドが利用されていることはよく知られる。また,2018年3月に就役したばかりのバージニア級原子力潜水艦SSN-788コロラドの潜望鏡操作には,Xboxのコントローラが採用されたというニュースも話題となった
 余談ながら,アナログスティックの基礎技術は第二次世界大戦中,ドイツが無人航空機を操作するために生み出されたものだそうだ。

※初出時,誤った記述がありましたので訂正しました(4月9日19:00頃)。

 アメリカ陸軍が新兵のリクルート目的で無料配布したFPS「America's Army」などの例もあるので,CIAにもボードゲーム以外にさまざまなプログラムが存在している可能性は高い。ひょっとしたら,オンラインアクションのようなものもあるのかもしれず,もしそれが実在し,公開されたら,ぜひプレイしてみたいと考えてしまうのは,おそらく筆者だけではないはずだ。

「America’s Army」がリリースされた2002年当時,陸軍のリクルート目的でゲームが開発されたということに驚いたゲーマーは筆者だけではなかったはず。2012年の「America’s Army: Proving Grounds」まで何度かアップデートが繰り返されてきたが,最近は新情報がない
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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