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Access Accepted第604回:北米ゲーム市場に見る「オールドビジネス」の終焉
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印刷2019/02/25 12:00

業界動向

Access Accepted第604回:北米ゲーム市場に見る「オールドビジネス」の終焉

画像(001)Access Accepted第604回:北米ゲーム市場に見る「オールドビジネス」の終焉

 北米に限ったことではないが,ゲーム産業の移り変わりは早い。開発や販売方法,さらにはプレイヤーの嗜好も常に変化し続けているが,その流れの中で消え去りそうな「オールドビジネス」がある。今週は,パッケージ販売の最大チェーンであるGameStopや,攻略本出版社のPrima Games,さらにゲーム系映像コンテンツの先駆者であるMachinimaの近況を紹介したい。


もはや買い手さえ見つからない「オールドビジネス」


画像(002)Access Accepted第604回:北米ゲーム市場に見る「オールドビジネス」の終焉
 一昔前のアメリカで,どの街のショッピングモールにも必ずあったのが,最盛期には全世界6690店舗で展開していたという世界最大のゲーム販売チェーンストア「GameStop」だ。アリゾナ州ツーソンで,当時まだ数の少なかったコンピュータソフトショップ「Babbage's」として1984年にスタートした同社は,アメリカに進出してきた任天堂のゲームソフト販売を積極的に行うなど,ゲームに集中したビジネスに転換して次第に規模を拡大していった。

 その後,いくつかのゲームショップとの合併が続き,名称を「Babbage’s Etc.」に変えたのち,1999年に書籍販売で有名な「バーンズ・アンド・ノーブル」に買収される。「GameStop」というブランドが立ち上がったのは,2000年のことだ。
 2004年には「バーンズ・アンド・ノーブル」から株を買い戻して独立を果たし,2005年にはヨーロッパにまで販売網を広げていたライバルのEB Games(Electronics Boutique)を買収して市場を支配した。2000年代初頭はパッケージソフト全盛期であり,ゲームソフトの販売チェーンとしてはほぼ独占状態だった。

 しかし,2010年代に入るとSteamPlayStation Network,そしてXbox Liveが登場してデジタルディストリビューション市場が確立する。さらに,ソフトを自宅に届けてくれるAmazon.comという強敵が出現したことで,GameStopのビジネスは圧迫されるようになっていった。
 GameStopも負けずに,オンライン販売や発売日受け取りの予約などに力を入れるが,2016年のクリスマスシーズンには前年比で16%の収益減になるなど,凋落の兆しが見えてきた。同社の収益の3分の2ほどを占めるまでになっていた中古ソフト販売も,オークションサイトやトレードサイトなどに押されて芳しくなくなり,筆者の住むサンフランシスコでも,かなりの数のGameStop店舗が立ち退いたり,シャッターが下ろされたままになっている。

GameStopのメインビジネスは,新作タイトルの販売ではなく,中古ゲームやハードウェアの販売にシフトしている。しかし,デジタル販売サイトの特価セールやP2Pの安価な中古販売に足を引っ張られ,新しいビジネスを見出せてはいない
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 2019年1月29日,GameStopの役員総会で,半年ほど続けられていた売却先探しを中止したことが発表された。表向きは,傘下の携帯電話販売チェーンの売却で運転資金に困らなくなったことが挙げられているが,つまりゲームソフトの販売というビジネスについては,投資家に見向きもされなかったことになる。
 現在,株価が危険水域にあるという状態ではないが,CEOが空席状態で,リーダーシップを誰も取っていない状態では,現状を脱却するための新しいプランを模索することもままならないだろう。


攻略本の出版元や映像制作の老舗までもが受難の時代に


 パッケージ全盛期のゲーマーご用達だった「攻略本」も,時代の流れに押されつつある。125万部のミリオンセラーになった1993年の「Myst: The Official Strategy Guide」を始め,約30年にわたって多くの公式ガイドをリリースしてきたPrima Gamesが,2019年春をもって攻略本ビジネスから撤退すると発表したのだ。

 理由については明らかになっていないが,インターネットの普及と拡大がターニングポイントになったのは言うまでもないだろう。
 Prima Gamesは2006年から2009年まで,The Syndicateと呼ばれるMMORPGのコアゲーマーのグループに攻略本を執筆させたり,モンスターの統計資料などの情報でページを埋めることはせず,プレイに則した実践的な攻略にフォーカスしたりなど,公式ガイドとして常に最前線を走ってきた。
 しかし,インターネット全盛の現在,ゲーマーは何か問題に突き当たればネットを検索するし,掲示板やコミュニティが集まるサイトで質問を書き込めば,(信憑性はさておき)親切な人が答えてくれる。
 YouTubeにはプレイ動画が掲載され,自分の遊んでいるゲームのヒントや,イースターエッグ(隠しアイテムやイベント)などが映像で分かるなど,必要な情報が攻略本のページをめくることなく手に入る時代になっているのだ。Prima GamesもPDF版のネット販売を始めていたが,対象タイトルは一部の大ヒット作や低年齢層向けの作品に限られていた。

引き続き新刊もリリースされているPrima Gamesの攻略本だが,「Anthem」あたりが最後になるだろう。業界にはまだBradyGamesという出版社が存在するので,攻略本の火が消えたわけではない
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 以上のように,GameStopのショップを構えたパッケージ販売やPrima Gamesの攻略本の出版などは,デジタル化が急速に進む中で時代遅れになってしまったのだが,最初からデジタル化されているものでも,トレンドについていけないことがある。映像メディアとして業界の先駆者でもあるMachinimaがこの3月をもって正式に閉鎖されることが発表され,現在,社員のほぼ全員が失職状態にあるという。

 Machinimaは,YouTubeのような動画サービスが出現していなかった2000年,「Quake III Arena」(1999年)のデモに用意されていたムービー制作用の編集ツールを使って映像制作を行うチームとしてスタートした。
 その後,「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」「モータルコンバット」「バトルフィールド」など,人気作のアセットを使用して作られた自主制作のCGシリーズを,自社サイトで映像公開していたが,2012年にYouTube専属プロダクションとなり,多くのゲーム実況者のプロモーターとしての活動を開始した。同年中には,500万の登録者を持つYouTubeで4位のチャンネルに成長している。

 順調だったのはその頃までで,やがてYouTubeのコンテンツクリエイターから,プロモーターとしての十分な広報活動をしてくれないのに,自分達の作った映像から利益を搾取していると問題視されるようになる。そして2015年には,知的財産権に関する法律違反の疑いなどで連邦取引委員会(Federal Trade Commission)から指導を受けてしまう。
 2018年までには1200万人のチャンネル登録者を持つに至ったが,登録者数ランキングは200位以下に落ち込み,最近のコンテンツのビューもそれほど多くはなかった。

 2015年以降,買収やリストラでがMachinimaの所有者は次々に代わり,2019年1月18日にFull Screenという企業に譲渡されたが,その翌日にはYouTubeチャンネルにあるすべてのコンテンツが削除されてしまった。理由についてはまったく不明で,現時点でもFull Screenから一切の説明は行われていない。

MachinimaのYouTubeチャンネルからは,27億ビューに達する全コンテンツがすでに削除されている
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 欧米ゲーム産業の歴史は,長く見積もっても40年ほどしかないが,その中でさまざまなものが生まれ,長く続くときもあれば,すぐに消えていくものもあった。GameStop,Prima Games,そしてMachinimaは,いずれもゲームの歴史の中で一世を風靡し,時代をリードしてきたが,新たなトレンドに対応できず,「オールドビジネス」として終焉を迎えつつあるようだ。
 もちろん,こうした新陳代謝はゲーム業界が活力を維持するために不可欠で,一喜一憂するような類いの話ではない。とはいえ,ゲームショップの棚に攻略本が並び,Machinimaの映像を見ていた頃を思い出してつい感傷的になってしまうのは,筆者だけではないだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

来週2019年3月4日の「奥谷海人のAccess Accepted」は,筆者取材のため休載します。次回の掲載は3月11日を予定しています。
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