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Access Accepted第612回:クラウドサービスがもたらすゲームのNetflix化
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印刷2019/05/27 12:00

業界動向

Access Accepted第612回:クラウドサービスがもたらすゲームのNetflix化

画像(001)Access Accepted第612回:クラウドサービスがもたらすゲームのNetflix化

 ソニーMicrosoftが,エンターテイメントプラットフォームおよびAIソリューション領域で協業を行うという発表で,世界中に激震が走った。両社の締結した意向確認書の主題は,「クラウドソリューション」だという。2003年にアメリカで「OnLive」というサービスが始まって以来,何度も話題になってはメインストリームになることなく消えていったクラウドゲームだが,GoogleやAmazonの参入により大手各社の対応は「待ったなし」の段階に来ているのかもしれない。


ソニーとMicrosoftが「クラウドソリューション」で提携


 Xboxが発売された2001年以来,およそ20年にわたってコンシューマ機市場で火花を散らしてきたソニーとMicrosoft。この2つのプラットフォームホルダーが日本時間の5月17日,突然のパートナーシップを発表して世界を驚かせた(関連記事)。まだ「意向確認書」を締結した段階で,具体的に何かが動き出しているわけではないようだが,提携の眼目は,次世代のゲーム技術においてカギを握ることになると思われる「クラウドソリューション」で,ソニーはMicrosoftのクラウドサーバーであるAzureとデータセンターを利用することも視野に入れている。

ソニーの社長兼CEO 吉田憲一郎氏(左)と,MicrosoftのCEO Satya Nadella(サティア・ナデラ)氏(右)
画像(003)Access Accepted第612回:クラウドサービスがもたらすゲームのNetflix化

 また,ソニーがイメージセンサーなどに関する半導体技術を提供することも発表された。ソニーの半導体とMicrosoftのAzure AI技術を,クラウドとエッジ(エッジコンピューティング:端末側で処理を行う技術)をまたいで統合したソリューションを法人向けに提供するほか,Microsoftの高度なAI技術をソニーの家庭用製品に採用することも検討していく。
 以上のように,今回のパートナーシップが両社の部門を超えた包括的なものになることは間違いないが,我々にとって最も気になるクラウドソリューションといえば,もちろんクラウドゲームだ。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントのクラウドサービスとしては,2014年にスタートした「PlayStation Now」と,ゲームではないが,クラウドベースのテレビ配信「PlayStation Vue」がある。
 一方のMicrosoftは,2019年3月に開催されたGame Developers Conference 2019「Project xCloud」を発表し,合わせて,次世代コンシューマ機ではクラウドゲームに力を入れていくこともアピールした(関連記事)。

長らくライバルだったソニーとMicrosoftが手を結ぶ! もちろん,一部の事業の協業に過ぎないわけだが,これから起こるゲーム産業の大きな変化の前触れなのかもしれない
画像(002)Access Accepted第612回:クラウドサービスがもたらすゲームのNetflix化

 衝撃的な発表だっただけに,ハードウェアやサービスの統合もあり得るかと思えたが,少なくとも現時点では,両社のコンシューマ機ビジネスにドラスティックな変更はなく,クラウドゲームはそれぞれのプラットフォームのサービスの1つ,という位置付け自体は変わらないようだ。
 一方で,そのGDC 2019においてGoogleがクラウドゲームサービス「Stadia」を発表し,ゲーム業界に衝撃を与えたことは,4月8日に掲載した本連載の第608回「Googleの『Stadia』で欧米ゲーム業界はどのように変化するのか」でもお伝えしたとおりだ。
 今のところ,「Stadia」についての説明は開発者向けにしか行われておらず,全容については明らかになっていないが,今回のソニーとMicrosoftの発表の背後には,「Stadia」というGoogleのクラウドサービスに危機感を覚えたこともあるのかもしれない。


クラウドゲーム時代の理想像


 筆者の記憶では,「いずれ,ゲーム用のハードウェアは消滅する」という言説は,PlayStation 4とXbox Oneが発売される以前からあった。その最大の理由として挙げられたのが,クラウドゲームだ。
 本連載の読者ならご存じと思うが,クラウドゲームとは,ざっくり言うと,プレイヤーの入力した情報の処理をサーバー側で行い,結果として得られたグラフィックスをクライアントにストリーミングするというシステムだ。圧縮されて送られてきた画像の展開は必要だが,通常,プレイヤーの手元にあるハードウェアはそれほどハイスペックなものである必要はなく,高速のインターネット環境さえあれば,どんなゲームでも遊ぶことができる。ゲーマーにとって嬉しいのは,最近のゲームで問題になることが多いチート行為が,クラウドサーバーをハッキングでもしない限り,ほぼ不可能であることだ。

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 つまり,クラウドゲームの時代には,ゲームハードの性能どころか,存在そのものの意味が薄くなる。PCでゲームを遊ぶために必要とされた,高性能なプロセッサやグラフィックスカード,あるいは大容量のハードドライブも必要なくなる。ゲームメーカーにとっては,マルチプラットフォームで販売するためのリソースが不要になるし,クラウドサーバーはきわめて高性能であるため,これまで不可能だったようなグラフィックスや,規模の大きな作品も作れる。半導体メーカーなどの製造業も,これまでとは違ったサービスにシフトする必要が生じるはずで,このように,ゲーム産業全体に大きな変革がもたらされることが予想される。

 ちなみにGoogleは,「Stadia」のサーバーにはAMDのカスタムプロセッサを使用し,プレイヤー1人あたりの処理能力はPlayStation 4とXbox Oneを合わせたよりも高い,10.7TFlopsの演算性能を実現するとしている。MicrosoftのAzureについては不明だが,ソニーとの提携でクラウドゲームのサービスを行うとすれば,高解像度グラフィックスや大人数オンラインゲームを実現するために,「Stadia」と同等かそれ以上の性能を目指すことになるだろう。

Azureのデータセンターは,日本にも2か所あるという
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 データセンターからの距離によって発生するレイテンシ(遅延)のため,都市圏のゲーマーしか恩恵を受けられなかったり,インターネット回線への高負荷がボトルネックになったりという懸念があるのは,読者もご存じのとおりだ。サーバーやプロバイダに障害が発生したとき,地域全体でゲームが遊べなくなってしまうということも起きてくるだろう。
 しかし,Googleやソニー,そしてMicrosoftといったパワープレイヤーが顔を揃えつつある現在なら,クラウドゲームが近い将来,急速に普及することになる可能性が高まってきた。少なくとも,環境の整備はハイスピードで行われていくだろう。


クラウドゲームの将来の姿


 ハードウェアで差別化できなければ,消費者を惹きつけるのはサービスの利便性とオリジナルコンテンツだ。その点では,ゲーマー向けのオンラインサービスを展開してきたソニー,Microsoft,そして任天堂の「御三家」に大きな強みがあり,無数のクラウドゲームサービスがひしめく時代になっても,長く育ててきたIPやブランドは消費者に強くアピールする。
 一方のGoogleは「Stadia」のアナウンスに際して,id Software/Bethesda Softworksの「DOOM Eternal」と,日本のデベロッパ,キュー・ゲームスとの契約を公表しており,さらにファーストパーティとしてStadia Games and Entertainmentも設立した。だが,ゲームブランドの構築は時間のかかる作業であり,サーバーを増設するほど簡単にはいかないだろう。

 このように,クラウドゲームの時代にはサードパーティのエクスクルーシブ化やオリジナルコンテンツの重要性はさらに増すはずで,これについては,映像配信サービスが参考になる。
 世界最大手のNetflixは現在,190か国で展開し,1億5000万人のユーザー数を誇るが,HBOやHulu,そしてAmazonなどの手強いライバルも存在する。視聴者は,例えば「ゲーム・オブ・スローンズが観たいからHuluに料金を支払おう」と決める。クラウドゲームでもこれと同様に,「Haloシリーズが遊べるから,Microsoftにしよう」と,ゲームコンテンツに惹かれてサブスクリプション料金を支払うことになる。

 ビジネスモデルは,Appleがこの3月に発表した「Apple Arcade」のように,サブスクリプションをベースにしたものが主流になるはずだ。Apple Arcadeはクラウドゲームではないが,サブスクリプションによって,より良いコンテンツとサービスを提供できるとしており,ビジネスモデルの将来性には自信があるようだ。大手サードパーティであるElectronic Artsも,2014年から月額料金で自社のゲームを提供する「EA Access」を運営しているし,「PlayStation Now」や「Xbox Game Pass」も同様だ。

「DOOM」がFPSジャンルを開拓した約25年前には,対戦ゲームに向いているのはオンラインか,それともLANかといった議論が白熱していた。そんな「DOOM」シリーズの最新作「DOOM Eternal」が,時代に先駆けてクラウドゲームのタイトルになるのだ
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 クラウドゲームについては,「地方在住なので,アクセスが不安定にならないか気になる」とか,「ゲームを買っても手元には何も残らない」「自分のプレイデータや行動パターンが悪用されるのではないか」といった不安を覚えるゲーマーも少なくない。市場が変化を迎えるとき,大きなカギとなるのが消費者の信頼感だ。今後,ゲーマーの不安感をうまく払拭できるのか,そして彼らにどれだけアピールできるのか。6月に開催されるE3 2019など,ゲーム業界の動向を注視していよう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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