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Access Accepted第623回:G2A.comというデジタルマーケットプレイスにまつわる論争
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印刷2019/09/09 00:00

業界動向

Access Accepted第623回:G2A.comというデジタルマーケットプレイスにまつわる論争

画像(001)Access Accepted第623回:G2A.comというデジタルマーケットプレイスにまつわる論争

 日本では,「鍵屋」とも呼ばれるデジタルマーケットプレイスの大手,「G2A.com」をご存じだろうか? 今年で5年目を迎えるというG2A.comは,現在1600万人のユーザーを誇るサービスだが,多くのパブリッシャやデベロッパからは,「グレーマーケット」として認識されている。最近また,G2A.comに対する批判が起きているので,これまでの経緯などを含めてまとめておきたい。


“鍵屋”というビジネス


 ゲーマーなら,「G2A.com」というデジタルマーケットプレイスを目にしたことがあるはずだ。利用したことはなくても,広告を見たことぐらいはあるだろう。Steamのようにゲームを直接販売するのではなく,SteamやXbox Live,PlayStation Network,Origin,Uplayなどで使用できる「プロダクトキーの売買をサポートする」というサービスで,業者がプロダクトキーを出展して,プレイヤーがそれを買う形になる。ヤフーオークションやメルカリ同様にConsumer-to-consumer (C2C)の「売買の場」を提供するというのがコンセプトで,英語では「キーリセーラー」(Key Reseller),日本では「鍵屋」などとも呼ばれている。G2A.comのユーザー数はグローバルで1600万人ほどとのことで,勢力としてはかなり大きい。

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 G2A.comは2010年,ゲームのオンライン販売を目的としてポーランドで設立された企業だが,購入予算の少ない低年齢層や低所得者向けのサービスを展開する中でプロダクトキーの販売を始め,それが主力商品になっていった。
 PCゲーマーなら,例えばHumble Bundleのように複数のゲームをバンドルして販売するサイトを利用したたときや,購入したグラフィックスカードの特典としてついてきたプロダクトキーの中に,すでに持っているゲームが含まれていたりすることがあるだろう。G2A.comはそうした不要なプロダクトキーを売り買いできる場として,2015年にリニューアルされた。

 ところが,東欧や南米など価格が低く設定されている地域で入手したプロダクトキーを,日本や北米,EUで売るというビジネスが成立してしまい,業者化するユーザーが登場するなど,ゲーム業界では「グレーマーケット」だとして問題視されるようになる。G2A.comは,2015年のリニューアルの際に,eスポーツ市場やゲーム動画のコンテンツクリエイターを対象とした,総額6億円にもおよぶプロモーションプランを発表したが,その一方で「League of Legend」のアカウントをG2A.comが転売していたことをRiot Gamesに問題視され,公式トーナメントやプロチームのスポンサリングを禁止されてしまった。ブラジルのトーナメントに参加したプロプレイヤーが着ていたシャツにG2A.comのロゴが入っていたため,罰金処分を受けたこともある。

発売されていないゲームのプロダクトキーが出回っていることもあるG2A.com
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 2015年12月,Ubisoft Entertainmentが「Far Cry 4」などのプレイヤーの一部をアクセス禁止にすると発表したが,数千人といわれる対象者のほとんどが,G2A.comや「Kinguin」「G2Play」などからプロダクトキーを購入したプレイヤーだったという。Ubisoft EntertainmentはEurogamerの取材に答えて,販売されたプロダクトキーは盗まれたクレジットカードを使い,ロシアからのアクセスによってOriginで不正に購入されたものであるとしており,この出来事によって,鍵屋のイメージは大きく悪化した。


「G2A.comで買うくらいなら,海賊版で遊んでほしい」


 2016年6月,インディーズパブリッシャのtinyBuild Gamesが,同社の「Punch Club」「SpeedRunners」といったタイトルの販売本数や販売価格などのデータを公式ブログに掲載した。そして,G2A.comでは20万ドルにおよぶプロダクトキーの取引が行われており,これらが正規ルートで販売されていたら売上総額は45万ドルに達するが,しかしG2A.comのために,一銭たりとも自分達の手元に入ってこないという問題提起を行った。

tinyBuild Gamesが公開した「Punch Club」「Party Hard」「SpeedRunners」に関する販売データ。45万ドルぶんの利益が失われたと主張している
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 これを受けて,「Defender's Quest」というゲームをリリースしたLevel Up Gamesのラース・ドーセット(Lars Douset)氏が,自分のブログで「こんなことを情熱をもって語る日が来るとは思わなかったが,G2A.comで購入するくらいなら,海賊版で遊んでほしい」書き込んで,こちらも大きな話題になった。
 ちなみに,ドーセット氏は開発費だけでなく,時間,労力,モラルという,自身が編み出した4種類の価値基準からなる「Four Currencies」というシステムを元に,開発者の損失を考察したうえで以上のような結論に達したとしている。文脈で分かってもらえると思うが,海賊版の違法ダウンロードを本気で奨励しているわけではないことは指摘しておきたい。

 Humble BundleやSteamのセールでバンドル購入したゲームをバラ売りするのは,確かにグレーではあるが,上記のように盗んだクレジットカードを使った詐欺はさらに質が悪い。詐欺を仕掛ける側は,不正のクレジットカードで大量のプロダクトキーを購入し,鍵屋で安く売りさばく。クレジットカードの不正使用が発覚して支払いが取り消された時点では,現金を手にした詐欺師は姿を消しており,ゲームパブリッシャやデベロッパ,さらにゲーム販売サイトはクレジット会社へのチャージバックや返金への対応に追われることになる。こうした詐欺被害に遭うメーカーや販売サイトは跡を絶たない。

 2019年6月,Vlambeerのラミ・イズマイル(Rami Ismail)氏が,上記のドーセット氏の言葉を引用して,「G2Aでゲームを買うくらいなら,海賊版で遊んでくれたほうが,被害が少ない」とツイートしたのは,こうした理由によるものだ。

 イズマイル氏のツイートは,イギリスのインディーズパブリッシャであるNo More Robotsを率いるマイク・ローズ(Mike Rose)氏のツイートに対するもので,ローズ氏は,本連載の第605回,「Steamの『人気の近日中リリース』悪用問題から考えるディスカバラビリティ問題」で紹介したように,インディーズ市場から見たゲーム業界の代弁者としてさまざまな告発を行い,ゲーム開発者会議などでも存在感を発揮するようになった人物だ。
 そんなローズ氏は,2018年に発売した同社の「Descenders」をGoogleで検索したところ,Googleと広告契約しているG2A.comの販売サイトがトップに来てしまうことを問題視したのだ。当然ながら,このリンクをたどった消費者がG2A.comでプロダクトキーを購入した場合,No More Robotsにはまったく利益を得られない。

No More Robotsから2018年2月にリリースされた,「Descenders」。山道をオフロードバイクで駆け抜けていくというレーシングアクションだ
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以前のGoogle検索では,G2A.comの販売ページがSteamや公式サイトよりも上に来ていた
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ゲームメーカーと消費者の意識のズレ


 現在,本部のある香港や,ヨーロッパの拠点となるポーランドやオランダといった国々に700人の従業員を抱えるというG2A.comだが,毎年,gamescomなどのイベントにブース出展してパブリッシャなどとの提携を探る姿を見かけるので,隠れてビジネスを行っているというイメージではない。詐欺にあったユーザーを保護するための保険,「G2A Shield」を実施しており,また,特定のプロダクトキーの売買を阻止する自社開発のツール「Key Blocker」の利用をメーカーに呼びかけるなど,それなりの対応は行っているという印象だ。
 もっとも,多くのネットオークションで保険が無料であるにもかかわらず,「G2A Shield」が有料であることが批判されたり,「Key Blocker」の使用に賛同したメーカーがわずか19社だったりと,悪いイメージは払拭できていないようだ。

 以前から「ゲーム開発者は我々のビジネスモデルを理解していない」とか,「我々のサイトでのインディーズのセールスは8%にしか過ぎない」などと,強硬な姿勢を取り続けているG2A.com。最近は,海外メディアやブロガーに対して,スポンサーになる代わりに自らが書いたG2A.comを擁護する記事を掲載するよう要請したことが,ジャーナリストに暴露されて恥をかくなど,広報活動のつたなさも悪い印象を払うことのできない一因だろう。

 とはいえ,海外ゲーマーの意見を集めてみると,G2A.comを理解するユーザーも少なくないようだ。とくに欧米の消費者は「消費者の権利」を重視する傾向があり,「自分の所有物は自分の思いどおりにできる」という考え方が浸透している。それが,ゲームのプログラムを改造するMOD文化を生み出したり,ディスクにあらかじめ用意されたコンテンツをアンロックする形のDLCに対する拒否感をもたらしていると思われる。
 その立場で見れば,自分の持っているプロダクトキーを好きな価格で売るのは自由だし,また,同じゲームなのに地域によって価格設定が異なること自体が「非消費者的」な話に聞こえるのだろう。

 リトアニアの開発者であるセルゲイ・クリモフ(Sergei Klimov)氏自身のブログで指摘したように,インディ―ズメーカーの中にはプロダクトキーの管理が甘いところも少なくないし,ゲームメーカーがプロダクトキーを配布するイベントを開催することもある。
 メーカーの中には,少しでも多くのメディアやインフルエンサーの注目を集めるため,プレスリリースにプロダクトキーを貼り付けて全世界のジャーナリストやストリーマーに配布する,「カーペット爆弾作戦」を行うところもあり,そのようなリスクを自ら作り出す以上,大量のプロダクトキーが鍵屋に流れても仕方がないという印象も受ける。

 盗難クレジットカードによる詐欺被害については,あらためて言うまでもなく詐欺師が悪い。売買の場を提供するだけの鍵屋に罪はないという考えも成り立ちはするだろう。とはいえ,鍵屋がプロダクトキーが無計画に大量発行される奇妙な現象のうえに成立するグレーなビジネスであり,詐欺の温床になっているという指摘ももっともなことだ。

G2A.comの発表によると,同サービスには60万もの“業者”が存在するという。それぞれの売り手はユーザーによって評価され,信頼性の高い業者に買い手が集まるシステムになっている
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 マイク・ローズ氏の批判を受けたG2A.comは,パブリッシャやデベロッパが盗難クレジットカードで被害を受けた場合,それがG2A.com経由であると証明されれば「10倍にして補填する」と発表した。
 それを受けて,「Subnautica」を開発したUnknown Worldsのチャーリー・クリーブランド(Charlie Cleveland)氏が「チャージバックで30万ドルの損失が出た」と主張して注目を集めたものの,海外メディアの記事によれば,それはG2A.comのビジネスに対する怒りからの主張であり,金額に根拠がないことを認めて発言を撤回している。このように,ゲームメーカーと鍵屋の確執は終わりが見えず,今後もゲーム業界の批判は続いていきそうだ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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