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Access Accepted第642回:ゲームの国際化に伴って重要性を増す「カルチャライゼーション」とは
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印刷2020/04/06 00:00

業界動向

Access Accepted第642回:ゲームの国際化に伴って重要性を増す「カルチャライゼーション」とは

画像(001)Access Accepted第642回:ゲームの国際化に伴って重要性を増す「カルチャライゼーション」とは

 ゲーム関係者の間で,「IGDA(国際ゲーム開発者協会)の元エグゼクティブディレクター」として知られるケイト・エドワーズ氏が,GDC 2020の代替イベントの1つ「Plan-B」で,「カルチャライゼーション」というコンセプトを説明するセッションの配信を行った。今週は,ゲームのグローバル化によってその重要性を増しつつあるカルチャライゼーションというコンセプトを紹介してみたい。


ゲーム市場で求められるゲームコンテンツの国際化


 新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念からGame Developers Conference 2020の開催が延期(8月に代替イベントを開催予定)されたことを受け,補助イベントとして「Plan-B」のストリーミング配信が2020年3月16日〜18日に行われた(YouTubeのアーカイブ)。そのセッションの1つである「Building Better Worlds: Game Culturalization」(より良い世界を作ろう: ゲームのカルチャライゼーションについて)では,ゲーム業界の著名人の1人であるケイト・エドワーズ(Kate Edwards)氏「カルチャライゼーション」についての説明を行っている。

GDCに参加したゲーム開発者なら,おそらく名刺交換をしたことぐらいあるであろう,ケイト・エドワーズ氏。これまでは運営側だったため,セッションを担当したことはほとんどなかった
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 2017年までIGDA(国際ゲーム開発者協会)のエグゼクティブディレクターを務めていたことから関係者によく知られるエドワーズ氏だが,1992年から2005年まで「地政学戦略家」としてMicrosoftで働いた経験を持っている。「地政学戦略家」とは聞き慣れない言葉だが,OSやビジネスソフトだけでなく,ゲームを含むすべてのMicrosoft製品を各国で販売するときの戦略とリスク評価を行うという仕事だ。
 彼女が取り組んできたようなことが現在,カルチャライゼーションとして知られているわけで,ゲーム市場がグローバル化するにつれ,大きな注目を集めているのだ。エドワード氏はMicrosoft退職後の2005年にゲーム関連企業のコンサルタント会社,Englobe(2013年にGeogrifyに再編)という会社を立ち上げて,カルチャライゼーション普及のため活発に活動している。

 カルチャライゼーションという言葉を無理に日本語にすると,「文化化」という妙なものになってしまいそうだが,よく使われる「ローカライゼーション」が主に音声やテキストの翻訳作業を表すのに対して,カルチャライゼーションは「ゲームコンテンツをより販売地域の実情に合わせたものにする」といった感じだろうか。政治や宗教など,広義の「文化」の相違をゲームの開発段階から細かく調整し,世界的にリリースされる製品を「誰も傷つけないものにする」「より多くの人に買ってもらうものにする」といった役割を担うわけだ。

エドワーズ氏が,「カルチャライゼーション」の良い例として冒頭で紹介したチョコレート菓子のキットカット。早くから登場していたイチゴ味だが,日本向けとオランダ向けではパッケージデザインがかなり異なる
画像(003)Access Accepted第642回:ゲームの国際化に伴って重要性を増す「カルチャライゼーション」とは

 日本人ゲーマーなら,国産の一般向けタイトルに登場する女性キャラクターがときおりアメリカで「過剰に性的」だとして批判されることを思い浮かべるかもしれない。「なんでもあり」だと思われがちなアメリカ市場にも,センシティブな部分があるわけだ。ちなみに,こうしたフェミニズムの問題については,「キャラクターモデルや質感表現が向上しているのに,胸の動きが固定されるのは逆に不自然だ」というイギリスの女性記者の記事が話題になったりしており,テーマとしても興味深いのだが,ここでは深く立ち入らない。

 さて,前述のようにエドワーズ氏はMicrosoft時代からこうしたカルチャライゼーション(当時はまだ,その言葉は存在していなかった)の担当者として,製品そのものだけでなく,パッケージや壁紙などまでチェックし,Microsoftのビジネス拡大に合わせてゲームにも関与するようになったという。
 古いゲーマーなら覚えている人もいるかもしれないが,エドワーズ氏がここで例に挙げたのが,1999年頃にちょっとした話題になった「エイジ・オブ・エンパイア」にまつわる出来事だった。本作は,世界のさまざまな文明が戦うRTSだが,パッケージに日本のサムライが描かれていたことに加え,「日本文明が朝鮮半島から大陸へ進出していく」というミッションの内容に韓国当局が「歴史的事実ではない」と異を唱えたのだ。

 Microsoftでは「ゲーム内容を変更してまで要求に応じるべきか」と長い議論が交わされたが,「StarCraft」の大ヒットにより,韓国がビジネス的に外せない地域とみなされていたこともあって,結局,「エイジ・オブ・エンパイア II」の拡張パック第1弾「The Conqueror’s Edition」(邦題「覇者たちの光陰」)にプレイアブル勢力として朝鮮文明を追加すると共に,パッケージアートに朝鮮文明の兵士を描いた韓国向けの特別バージョンを制作,その中でシナリオを変更したとエドワーズ氏は述べた(関連記事)。

が韓国版「エイジ・オブ・エンパイア II: 覇者たちの光陰」のパッケージアート。は英語版
画像(005)Access Accepted第642回:ゲームの国際化に伴って重要性を増す「カルチャライゼーション」とは 画像(004)Access Accepted第642回:ゲームの国際化に伴って重要性を増す「カルチャライゼーション」とは

※4月6日15:20追記。初出時,AoEシリーズ第1作と第2作を混同した表現となっておりましたので,訂正いたしました。


開発者の創造性とグローバルビジネス上の妥協


 こうした例を踏まえてエドワーズ氏は,カルチャライゼーションには,「リアクティブ(Reactive)カルチャライゼーション」と,「プロアクティブ(Proactive)カルチャライゼーション」の2つのタイプがあると述べる。リアクティブタイプは,ユーザーのゲーム体験を阻害する表現を事前に察知すること,またプロアクティブタイプは,それぞれの地域に合わせた表現を考慮して,事前に追加していくことだ。

 例えば,「Fallout 3」にはミュータントとして双頭の牛ブラーミンが登場していたが,ウシを神聖視するヒンドゥー教徒の多いインドではタブーにあたるという。インドのゲーム市場が小さかったことや時間的制約もあり,Bethesda Softworksは修正しなかったが,それが理由でインドではFalloutシリーズの知名度が低いままだった可能性もあり,インド市場が拡大した現在の情勢なら,Bethesda Softworksもその点を見逃さなかったのではないか,というのがエドワーズ氏の意見だ。
 プロアクティブな例としては,インド向けのコミックスを制作するGotham EntertainmentがMarvel Comicsと共同で刊行したシリーズが挙げられた。衣装や設定をインド風にアレンジしたスパイダーマンが登場しており,2004年11月から3か月ほどという短期間の刊行だったが,これによってインドでのスパイダーマン認知度が高まり,映画シリーズも多くの観客を獲得したという。

Microsoft時代にエドワーズ氏が関わったXbox 360専用ソフト「カメオ:エレメンツ オブ パワー」(2006年)。日本の映画やアニメでも,キャラクターが十字架のペンダントを下げているのを見かけるが,深い意味があるケースはあるのだろうか
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 エドワーズ氏は,ゲーム開発のなるべく序盤でプロアクティブのカルチャライゼーションを実践することで,そのあとのビジネスやフランチャイズへのダメージを軽減できると説く。もちろんゲーム開発者には,自身の創造性やコアファンに対するアピールという点で妥協できない部分があり,その点についてはエドワーズ氏自身も十分に認識している。
 エドワーズ氏は,Microsoft時代にXbox 360向けのアクションアドベンチャー「カメオ:エレメンツ オブ パワー」の開発に関わっていたが,「この世界では,過去に大きな戦争があった」というストーリーを読んだレベルデザイナーは,深く考えることなく道沿いに墓標の十字架を立てたという。これは,非キリスト教のゲーマーが見ればおかしく感じたり反発を招いたりするような凡ミスであり,カルチャライゼーションで指摘すべきはこうした類いのミスなのだ。

「Wolfenstein II:The New Colossus」では,ドイツの反ナチス法により,ヒトラーの髭やハーケンクロイツが外されたりした。戦時中のドイツを表現する際に,ゲームではアイアンクロス(鉄十字)が使われることが多い
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 エドワーズ氏はさらに,Bethesda Softworksの「Wolfenstein II: The New Colossus」を例に挙げ,ドイツでは反ナチス法によってハーケンクロイツやヒトラーが登場するゲームの販売は許されず,そのため,ハーケンクロイツの代わりにゲームロゴを使い,ヒトラーのキャラクターからはチョビ髭を取るといった処置を施して,ドイツのソフトウェア事前審査機構USK(Unterhaltungssoftware Selbstkontrolle)の審査をパスしたと述べた。
 チョビ髭がなければヒトラーらしくないが,ゲームの内容からもその点へのこだわりを譲らないクリエイターがいるとは考えられず,ビジネス的な判断が優先された例だ。クリエイターが作り出したものやアーティストが描くものには,すべて「ゲームを楽しんでもらう」という最終ゴールがあり,それをしっかり導くためにもカルチャライゼーションが重要になるというわけだ。

 開発の最終段階でキャラクターデザインやキャンペーン内容の変更に迫られたり,当初予定していた地域での販売を見合わせるという結果は誰もが望むところではない。グローバル化が進む欧米ゲーム産業では,クリエイターの創造性を阻害することなく世界中のゲーマーにアピールするため,カルチャライゼーションがさらに重視されていくだろうとして,エドワーズ氏はセッションを締めくくった。

ゲームはグローバルビジネスに成長し,カルチャライゼーションは開発段階で考慮されるべき課題となっている。蛇足ながら,“Culturalization”を発音どおりに書くと“カルチャラライゼーション”になるが,日本ではカルチャライゼーションが一般的であるようなので,本稿でもそちらに従っていることを最後に書いておきたい
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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