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Access Accepted第675回:テック・ジャイアントでさえ苦戦するゲーム市場の難しさ
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印刷2021/02/08 00:00

業界動向

Access Accepted第675回:テック・ジャイアントでさえ苦戦するゲーム市場の難しさ

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第675回:テック・ジャイアントでさえ苦戦するゲーム市場の難しさ

 タイトル開発を次々にキャンセルしたり,スタジオを閉鎖したりと,Amazon.comやGoogleという「テック・ジャイアント」と呼ばれる超巨大IT企業の苦労が聞こえてくる。彼らほどの企業でさえゲーム業界への進出は一筋縄ではいかないようだ。最近,海外メディアのBloombergが,Amazon Game Studiosの内部事情をレポートした記事をオンラインで掲載したが,今回はその記事や,さまざまな情報から見えてくるテック・ジャイアント達の現状を紹介したい。


10年めを迎えるAmazon Game Studiosの誤算


 Amazon Game Studiosが,自ら開発を行うメジャーな新作として「New World」「Crucible」,そして「Breakaway」を発表したのは,2016年10月に開催されたイベント「TwitchCon」でのことだった。Amazon Game Studiosは2011年,AmazonにAmazon AppStoreがオープンしたことを機に,翌年立ち上げられたゲーム開発部門で,当初はスマートフォンやFacebook向けのゲームを開発することが目的だった。そこが,本格的なタイトルの制作に乗り出したということで,ゲーマーの話題を集めたのだ。

 Amazonの創業者であるジェフ・べゾス(Jeff Bezos)氏の肝煎りで設立されたというAmazon Game Studiosはこれまで,「スプリンターセル」「Far Cry 2」のゲームディレクターだったクリント・ホッキング(Clint Hocking)氏や,「Portal」のゲームデザイナーである,キム・スウィフト(Kim Swift)氏「Madden NFL」の初期の開発メンバーだった,リチャード・ヒルマン(Richard Hilleman)氏,そしてSony Online Entertainmentの「EverQuest」などをビジネス面で支えたジョン・スメドレー(John Smedley)氏ら,ゲーム業界のスター達を次々にスカウト。2016年2月には,Crytekの「CryENGINE」のライセンスを取得して開発したゲームエンジン「Amazon Lumberyard」の配信を開始し,同エンジンで作られたタイトルを,2014年に買収したストリーミングサービス「Twitch」に連動させるなど,Amazonの豊富なリソースを最大限に活かして,ゲーム市場に本格的に参入する意気込みを見せていた。

2012年に設立され,いくつかのタイトルをリリースしているAmazon Game Studiosだが,ゲーマーの印象はパッとしない
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第675回:テック・ジャイアントでさえ苦戦するゲーム市場の難しさ

 しかし,「League of Legends」の対抗馬として開発が進められていた「Breakaway」は,2018年3月に早々とキャンセル。さらに,「オーバーウォッチ」のライバルとして作られた「Crucible」も,2020年5月にローンチを果たしたものの,Twitchのゲーム実況に1000人にも満たないファンしか集まらないなど話題作りに失敗し,わずか7か月後の11月,ユーザーが購入したデジタルアイテムの返金を行ったうえでサービスを終了した。
 現時点で,南カリフォルニアのスタジオが開発中のMMORPG「New World」が残っているが,当初,2020年5月に予定されていたβ版の配信は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響による延期の発表が繰り返されており,「2021年第1四半期」というスケジュール以外,開発状況などの詳細は明らかになっていないという状況だ。

 海外ニュースメディアのBloombergは,2021年に入ってからAmazon Game Studiosの現状を伝える一連のレポート記事をオンラインで掲載中だ。現職や元従業員など30人ほどに行ったインタビューを元にしたもので,「ビッグ・テック」「テック・ジャイアント」などとも呼ばれる,社会に大きな影響を与える超巨大IT企業でさえ,ゲーム市場に参入することが難しいことが,これを読むとよく分かる。
 記事中,問題として挙げられているのは,Amazon Game Studiosの副社長としてチームを率いるマイク・フラジーニ(Mike Frazzini)氏が,旧態依然とした男性優位のカルチャーを作ってしまったために社内にさまざまな軋轢が生じ,士気が低下したということ。そのためか,女性開発者であるスウィフト氏など,多くの開発者がスタジオを去っている。

カリフォルニア南部にあるAmazon Game Studios Orange Countyで開発が進められているMMORPG「New World」。ゲームエンジン「Amazon Lumberyard」が,クリエイターの望むタイプのゲームを作るのに向いていないという報道もある
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 ちなみに,古くからAmazonの幹部を務めてきたフラジーニ氏にゲーム業界の経験はなく,そのため,2K Gamesの設立に携わったクリストフ・ホフマン(Christoph Hartman)氏をTake-Two Interactiveから引き抜き,実質的なゲーム部門の舵取りを行わせているという。


なかなか結果を出せないゲーム市場という「魔物」


 Amazon Game Studiosにとって最大のプロジェクトと目される「New World」の開発遅延は,上記のようにCOVID-19だけが原因ではないようだ。スタジオの上層部は,「旧大陸から新大陸にやってくる入植者」というゲームの設定を確実なものにするため,ネイティブアメリカンの専門家にいわゆる「カルチャライゼーション」関連記事)を依頼した。その結果,ネイティブアメリカンを思わせる描写やアートワークがすべて削除されることになったと記事は伝えている。また,アメリカ近代をテーマにした「Roanoke」というコードネームのプロジェクトも,同じ理由からキャンセルされるなど,ゲーム開発者のクリエイティビティが外的な要因で左右されることも,開発者の士気を下げる原因になっているようだ。

 2021年2月,第3四半期(7〜9月期)を以て引退することが発表されたべゾス氏に代わり,Amazonの第2代CEOに就任する予定のアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏は,Amazonとゲームとの関わりについて発言している。ジャシー氏は,Microsoftが20年をかけてXboxフランチャイズを育ててきたとしたうえで,「持続的に成功しているわけではないが,ずっと挑戦し続けていれば,達成できる」と述べている。つまり,今のところゲーム業界への参入を簡単にあきらめるつもりがないことを訴えているわけだ。
 もっとも,例えばAmazonのクラウドゲームサービス「Luna」がKindle部門に所属するなど,外から見ると不思議なところもあり,ゲームにおける具体的な戦略が見えてこないのも事実だ。ジャシー氏のリーダーシップには注目しておくべきだろう。

ローンチから半年ほどでサービスが打ち切られた「Crucible」だが,「Twitch」を傘下に置くAmazonでもゲーマーの興味を惹きつけられなかった
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 ゲーム市場参入に苦戦しているテック・ジャイアントはAmazonだけでない。2019年末,欧米を中心とする地域の正式サービスを鳴り物入りで果たしたGoogleのクラウドゲームサービス,「Stadia」も苦戦を続けており,この2月2日には,「Stadia」のゲーム開発スタジオとして設立されたStadia Games & Entertainmentを閉鎖することが発表された。
 Stadia Games & Entertainmentのトップを務めるゼネラルマネージャーのフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏は,Sony Computer Entertainment America/Europe(現Sony Interactive Entertainment)時代に,PlayStation 2やPlayStation 3の事業を牽引した立役者として日本のゲーマーにもよく知られている。まさにゲーム業界のベテラン中のベテランで,ゲーマーからの支持を時間をかけて醸成していくことの重要性をよく分かっている人物だ。

 にもかかわらず,「Stadia」のローンチから2年も経たない段階で,ゲームの自社開発をあきらめたことになる。Googleは今後,独占販売権をサードパーティから買い取ったり,スポンサーとしてデベロッパを支援したり,「Stadia」の技術を提供したりするといった方向に軌道修正を行っていくという。

Ubisoft TorontoからStadia Games and Entertainmentに引き抜かれてVPを務めていたジェイド・レイモンド(Jade Raymond)氏も,スタジオの閉鎖に合わせて退社した
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 AmazonとGoogle,すでに市場を支配したようなテック・ジャイアントがゲーム市場への参入で苦戦している姿を見ると,時間をかけてゲーマーに浸透させ,コミュニティを育成するというゲーム業界の通常のやり方が超巨大IT企業の上層部の考え方にマッチしないように思える。ハリソン氏のような人物でさえ,そうした方法論をやり遂げることが許されないのが,IT企業なのかもしれない。
 両社とも,公的にはゲーム事業継続をアピールしているが,決断の早いIT企業らしく,ゲーム市場からの撤退を躊躇なく行う可能性もある。今後も注目していきたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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