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Access Accepted第700回:コツコツと積み重ねた17年,700回。連載を通じで感じたこと,メディアの在り方
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印刷2021/10/11 10:30

業界動向

Access Accepted第700回:コツコツと積み重ねた17年,700回。連載を通じで感じたこと,メディアの在り方

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 わりと飽きやすい性格だと思っていた筆者が,当連載「Access Accepted」を続けて,17年をかけて700回もゲーム業界についての話題を追い続けてきた。この間,時には最前線のコンピュータテクノロジーを享受できる多様性のあるエンターテイメントビジネスとしてゲーム業界も大きく成長してきたが,今回はそうした過去の歩みを振り返りつつ,現状からゲームメディアについても考えてみた。



ゲーム史50年の3分の1となる17年間続いた連載を振り返る


 「4Gamerで最も長く続く連載」……なのだが,そういった呼び声はそれほど高くない当連載が,いよいよ700回めを迎えた。ちょうど5年前に達成した第500回記念の時にも深く追想しているが,この連載を書き始めたのが今から17年も前になる2004年9月のことだ。当時は幼稚園児だった息子も,我が家のあるアメリカで成人と認められる21歳に達し,お酒を飲み交わしながらゲームやスポーツについて語り合えるようになったが,今の本誌読者の中には少なからず17歳以下の青少年ゲーマーもいるはず。月日の経つのは早い……というか,膨大な時間を費やして傍からゲーム業界を眺め続けてきた事実をあらためて見て,少し苦笑いしてしまう気分である。

 ノーラン・ブッシュネル(Nolan Bushnell)氏が1971年10月に,世界初のアーケードゲーム式ビデオゲームとなる「コンピュータースペース」(Computer Space)を販売したのが商業用コンピューターゲーム史の始まりとするならば,この業界そのものはちょうど50年という大きなマイルストーンを達成している。
 “ゲームの時事ネタ”に特化した当連載は,その3分の1ほどの歴史をカバーしているわけであり,古い記事を読み返すと,未熟な知識や執筆力から誤解,曲解,混同が散見されるのは否めない一方で,今となってはそれなりの資料価値もあるだろう。休日や取材のために毎週執筆できているわけではなく,100回分を書くごとに2年半ほどを費やしているが,このペースで続くと2030年あたりには1000回を迎えることができそうな勢いだ。

そう言えば,Steam当初のテーマカラーは,ミリタリー風のくすんだ緑だった。もともとは「Battle.net」同様に,Valve関連ゲームのランチャーといった雰囲気だったが,やがてサードパーティが参加して現在に至る。登録ゲーム数は2021年3月の時点で5万本を超えたという
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 当連載がスタートした2004年は,その11月の「Half-Life 2」の正式リリースをもって,オンライン配信サービス「Steam」がスタートした年でもある。その後のSteamは,2007年頃からサードパーティや“インディゲーム”をフィーチャーするようになり,2010年からはホリデーセールを開始,2012年にはアーリーアクセス(日本語版では早期アクセス)というシステムを導入したほか,モバイルアプリがリリースされるなど,ゲーマー御用達の定番サービスとなるに至っており,当連載でも頻繁にその動向を取り上げてきた。使いやすさも向上し,今や「パッケージが棚に並んでないと物足りない」という古い世代でも,オンラインプラットフォームの利便性に不満を言う向きは少なくなってきたと思う。
 さらに2014年にはプレイヤーのライブラリやフレンドの動向からフロントページを自動カスタマイズする機能がアップデートされるなどして使いやすさも向上し,もはや「パッケージが棚に並んでないと物足りない」という古い世代でも,オンラインプラットフォームの利便性に不平を言う向きは少なくなってきた頃だっただろう。
 2016年からは「HTC Vive」のローンチに合わせてVRゲームもフィーチャーされるようになり,2019年にはSteamを使ったオンライン専用ショーケースイベント(現在のSteam Next Fest)が,まるでCOVID-19による在宅時代を見据えるかのようにスタートした。

もはや,コンシューマ機プラットフォームを含めて,気付かずに重複購入しているものが何本も存在するようなカオスな状態。スペシャル版やらコンプリート版やらと,製品版に複数パターンが用意されたゲームもある。CD Projektが提供する「GoG Galaxy 2.0」は,他のプラットフォームのライブラリも確認できる,ゲームの海を航海するうえで大切なお供だ
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 500回記念当時からの,直近5年間を振り返ってもゲーム業界そのものの進化は凄まじい。VRゲームこそまだメインストリーム化しているとは言い難いものの,「ポケモンGO」を始めとするARゲームの登場,クラウドゲーミング,バトルロイヤルジャンルの隆盛,GaaS(Game as a Service/サービスとしてのゲ―ム)によるロングテール化など,ゲーム市場は着実に未来に向かって進んでいる。
 我々の体験してきた“普通の”ゲーム大会は,今やeスポーツとして社会的な認知も広まり,関連業種とのシナジー効果も生み出している。Steamのようなゲームプラットフォームも数多く登場し,2019年末にはEpic Gamesストアという強力なライバルが出現した。ちなみに筆者は,止め処もなく増える所有ゲームの管理に便利なGoG Galaxyが一番肌に合っていたりする。

 新世代ゲーム機に移行してからのグラフィックスこそ,例えば2Dゲームが3Dゲームになった時のような革新的な衝撃はなかったものの,レイトレーシングやHDRなどで息をのむような美しいシーンに目を見張ることもしばしばある。何より,新世代ゲーム機ではローディング時間が短縮され,最近ゲーム業界でも良く使われるQoL(Quality of Life/生活の質)の向上を肌身に感じるようになったのはうれしい。

※ゲーム業界においては「ゲーム体験を通じて生活の質を向上する」という文脈で使われることが多い


ウィズコロナ時代に思うゲームメディアの在り方


 この5年でもっとも大きく変わったと感じるのは,当連載でも何度か言及しているゲームメディアの在り方だ。TwitchやYouTubeで活動する“インフルエンサー”と呼ばれるゲーム実況者たちが,ゲームイベントや新作発表会に参加するようになったのは最近のことだが,彼,彼女らの多くが,特定のジャンルやゲームシリーズに精通し,それぞれに数万から数十万のフォロワーを擁するような人たちだ。読者と直接的に交流する機会のない筆者のようなメディアのライターと異なり,ゲーマーコミュニティの形成や一体感の醸成に力を発揮している。

 パブリッシャが,イベントで「メディア(Press)」と「インフルエンサー」を分けるのも,もちろん参加者をマネージメントする必要性や,取材の仕方も根本的に異なるので仕方のないことではある。やはりゲームをプレイしてから,文字で面白さを伝えるという段階的な作業工程を踏む旧来のゲームジャーナリストと,ゲームをプレイする映像とともに言葉でゲームの面白さを直接的に表現できるストリーマーたちでは,そのスピード感や表現の仕方に温度差があるのを痛切に感じる。

筆者が参加した中では,近年稀に見る規模として記憶に残るのが,2019年春に開催された2K Games/Gearbox Softwareによる「ボーダーランズ 3」のお披露目イベントだ。初日は北米,2日目はその他の地域にメディアやインフルエンサーを分け,総勢400人を招待するという単体のゲームとしてはかなり大きな規模で会場が用意された
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 その無意識的な対抗策なのか,近年の筆者のイベント取材や,COVID-19以降のオンラインイベントの取材記事が,やたらと長文化してしまっていることに気付いた。おそらく,ここ数年は自動翻訳の発展で海外の開発者たちさえ本誌に目を通せるようになってきたため,「君ほど詳しく書いてくれる人はいないよ」などと肯定されるのが多くなったことが,さらに拍車を掛けているのだろう。
 もちろん,筆者自身の目線は取材対象の開発者ではなく消費者側となる読者のものであり,皆さんにしっかりと情報を伝えたいという思いがその根底にあるのだが,コロナ禍以前のように足を使って会場を動き回れるわけでもなく,自宅でパソコンと向き合っているだけなのに,時には1万文字近くに達するような原稿を,一日かけて1本しか書けないような状況になってしまうこともある。数年前ならもう少し注目できるポイントだけに絞り込んだ記事を手際良く書けていたような気もするので,このあたりは軌道修正しなければならないと感じている。

最近では,ゲームデベロッパたちが他社の作品をプレイしてみるというような趣向のコンテンツもYouTubeなどで散見される。テレビで活躍していた芸人やパーソナリティがユーチューバー化しているのと同じトレンドなのだろうか。画像は,Coatsinkのメンバーが,Zoink Gamesの「Lost in Random」をプレイしている様子
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 そもそも,最近では開発者側が「マーケティング2.0」もしくは「デジタル・マーケティング」と呼ばれる手法を実践し,SNSを使って自分たちで直接ゲーマーにアピールするところが,特に海外のインディパブリッシャやデベロッパでは目立ってきた。無料で利用できるTwitterやDiscord,そしてTwitchやYouTubeを主戦場にして,メディアやインフルエンサーを通すことさえなく,自らゲームプレイのライブ配信や開発者ビデオダイアリーなどのメッセージを放送したり,ファンたちにβテストやアップデートを告知したりするというやり方で,発信力もデベロッパの1つのスキルになっている。
 これが一般化するとメディアの存在意義さえなくなってしまいそうではあるが,結局,そうなれば企業や開発者側が伝えたい情報だけという,特定の方向だけを向いたポイントの掴みにくいコンテンツになってしまう可能性もある。だとすれば,この時代のメディアの価値というものは,そうして集められる情報を咀嚼し,消費者が知りたいことや知るべきことを抽出したり,炙り出したりすることにある,と改めて考えるわけである。
 人間というのは年を重ねると概して変化に疎くなるものだが,連載の1000回めくらいまではゲーム産業の進化にあわせて軌道修正を続けながら「ゲーム業界の今」を追いかけて,より分かりやすくメディアとしての情報を伝えていきたいというのが,今の目標になりつつある。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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