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Access Accepted第726回:バイオハザード,The Last of Us からFalloutまで 〜 今,ゲームのドラマ化が止まらない
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印刷2022/06/06 13:30

業界動向

Access Accepted第726回:バイオハザード,The Last of Us からFalloutまで 〜 今,ゲームのドラマ化が止まらない

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 ここのところ,映画化が進められるゲームの情報をよく耳にするようになった気がするが,Netflixなどのストリーミングサービスでドラマ化されるケースも増えているようだ。ゲーマーにとっては,さまざまな角度からファンを楽しませてくれる姿勢はうれしいものだが,今回はそうした映像エンターテイメントとゲームとの関係を,過去に遡ってチェックしてみよう。


駄作ばかりだったゲーム系映画に訪れた大きな変化


「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」の北米版ポスター。「マリオの正式名称は“マリオ・マリオ”というウワサが広まったのもこの映画のせいだった。(画像: Wikipedia Commons(関連リンク)より(Buena Vista Pictures Distribution)。2023年にはユニバーサル・ピクチャーズから新作実写映画が公開されるらしい
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 一昔前は“ゲーム系実写映画”と言えば「駄作」というイメージが強かった。超人気作品を当時50億円もかけてハリウッド映画化した迷作「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」(1993年)に始まり,ジャン=クロード・ヴァン・ダムさん主演の「ストリートファイター」(1994年),さらにゲームクリエイターであるクリス・ロバーツ(Chris Roberts)氏自らがメガホンを取った「Wing Commander」(1997年)に至るまで,それがどれだけ良く知られたIP(知的財産)であったとしても,ゲームを映画化したという作品は,ほぼすべて撃沈状態だった。

 21世紀になって以降の状況はと言うと,ミラ・ジョヴォヴィッチさん主演,ポール・W・S・アンダーソン監督によるカプコンの「バイオハザード」(2002年)がシリーズ化され,2016年までに6作品が作られ,一定の評価を得たが,絶賛されるほどの高評価は得られなかった。このほか,アンジェリーナ・ジョリーさんがララ・クロフトを演じた「トゥームレイダー」(2001年),“ロック”ことドウェイン・ジョンソンさん主演の「DOOM」(2004年),その後も「Max Payne」(2008年)や「HITMAN」(2010年),「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」(同),さらには「Need for Speed」(2014年)や「アサシンクリード」(2016年)に至るまで,どれだけゲームに人気があろうが,有名俳優がキャスティングされようが,そして制作者愛が前面に押し出されたものであろうが,ゲーム系映画が高い評価を受けることはなかった。

 そんな流れの中心にいたのが,ウーヴェ・ボル(Uwe Boll)監督だ。彼については,2008年の当連載「窮地に立たされたゲーム系映画監督」(関連記事)などで何度かネタにしているが,2003年の「ハウス・オブ・ザ・デッド」を皮切りに,さまざまなゲームの版権を獲得してはB級映画化。しかし,自ら「実写化するにあたってゲームで遊んだりしない」と言うほど,オリジナルの設定やキャラクターを無視した自由奔放なストーリーだったことも手伝ってゲーマーたちから酷評されて,「これ以上,ゲームを映画にしないでください」というオンライン嘆願書まで提出された。結局,「アローン・イン・ザ・ダーク」「ブラッドレイン」「Postal」「ファークライ」などが餌食となったが,幸いにも2011年の「BloodRayne: The Third Reich」を最後に,ゲーム版権の獲得からは手を引いている。

 ところがここ最近,こうした「ゲーム系実写映画 = 駄作」の流れに変化が起き始めている。興行収入が製作費の3倍近くに上った「トゥームレイダー ファースト・ミッション」(2018年)や,さらにそれ以上の成功となった「ランペイジ 巨獣大乱闘」(同)あたりから顕著になって,「名探偵ピカチュウ」(2019年),「ソニック・ザ・ムービー」(2020年),そして「モータル・コンバット」(2021年)など,興行成績や視聴評価も高い映画群が登場。さらにVRプラットフォーム向けの人狼ゲームというマニアックな素材ながらも,2021年に公開された「人狼ゲーム 夜になったら」(The Werewolf Within)は,ゲーム系映画としては驚くほど高いレビュー評価を記録するに至っている。

こちらは,現在劇場公開中の「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」。コメディ界のレジェンド,ジム・キャリーさんの怪演が,CGのソニックやナックルズたちにマッチする (画像: 『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』公式Twitter(関連リンク)より)
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次々と大作映画やドラマ化されているゲームIPの数々


 アメリカの映画業界では長らく,脚本家にとってのテーマ不足が叫ばれてきた。ラブロマンスもホラーも,もはやたいていの人間関係や社会事情については120年ほどの映画史の中で語り尽くされており,多くの脚本家はなかなか新しいアイデアを捻り出せずにいるという。その結果として,「ゴースト・イン・ザ・シェル」のような日本の漫画が海外で実写化されたりする事例が増えているし,マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のような映画シリーズが定番化するようになったわけだ。

 このようなトレンドが,新たに登場した大きな潮流によってさらにうねりを上げ始めている。Netflix,Hulu,Amazon Prime,Disney+,そしてParamount+といった,登録制のストリーミングサービスの登場だ。MCUだけを見ても,「スパイダーマン ファーフロムホーム」(2019年)を最後とする“フェーズ3”を以って多様な展開が行われるようになり,「ワンダビジョン」「ムーンナイト」などTVドラマシリーズが制作されている。アメリカでは6月8日から配信開始する「ミス・マーベル」で7作目だが,2023年末から2024年初頭まで続くとされる“フェーズ4”の期間中に,実に計14作のドラマシリーズが公開される予定で,どれだけディズニーがストリーミングのオンデマンド配信に力を入れているのかわかるだろう。

「MARVEL ULTIMATE ALLIANCE 3: The Black Order」(2019年)など,ゲームでも度々チョイ役で登場するムーンナイト。名優オスカー・アイザックさんを主演とするTVドラマ「ムーンナイト」は,コミカルながら心の病を抱える主人公の描写が,少し小難しいながらも非常に良い(画像:Marvel海外公式サイト(関連リンク)より)
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 日本でも,この5月4日からParamount+のドラマ版「Halo」の配信がU-Nextで始まっているが,これについては筆者が取材しているので(関連記事),お読みいただければと思うが,その制作には2015年に映像権を獲得しているスティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)氏を総合プロデューサーとするAmblin Entertainmentも携わっている。第1シーズンの評価は分かれたが,7年もかけてゆっくりとドラマ化が進められてきただけあり,今後のシーズンに期待できそうだ。
 また,Netflixでは7月14日から「バイオハザード」のドラマシリーズを配信開始予定だ。2022年と2036年の2つの時間軸で描かれるオリジナルストーリーとなり,ニューラクーンシティという人工企業都市で暮らす14歳の双子姉妹であるジェイドとビリー・ウェスカーが,アンブレラ・コーポレーションが秘密裏に開発するT-ウィルスの脅威に晒されていくことになるという。

すでに第2シーズンの制作もアナウンスされている「Halo」。ディズニーのスターウォーズドラマ「マンダロリアン」同様に,かなりの部分がグリーンスクリーンを前に撮影されているが,最近のストリーミングドラマの制作コストの高そうな映像には圧倒されるばかり。映画館が悲鳴を上げるのは,コロナのせいだけではなさそうだ
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 さらに,ゲームIPをより能動的に活用しようという動きがソニー・インタラクティブエンタテインメントに見られる。同じソニー・グループにハリウッド(近郊のカルバーシティ)を拠点にするソニー・ピクチャーズ エンタテインメントを擁しているのはご存じだろうが,現在,映画版「アンチャーテッド」を公開中であるのに加えて,2023年からは「The Last of Us」がHBOによりドラマ配信される。
 さらに,2023年中にはAmazonで「ゴッド・オブ・ウォー」のドラマ版が,Netflixでは「Horizon Zero Dawn」のドラマ版が配信される予定であり,「グランツーリスモ」「Ghost of Tsushima」の映画化,そしてNBC傘下のPeacockによりカルト作品「Twisted Metal」までがドラマ化されるようだ。

白黒チャンバラ映画のようなビジュアルにする“クロサワ・モード”を備えた「Ghost of Tsushima」だが,これも映画化が進められているという。過去記事での島民たちの熱狂具合や開発メンバーのシンパシーから言っても,撮影のロケーションは対馬でできる限り行ってほしい!
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 ドラマに限って言えば,Ubisoft Entertainmentの「アサシンクリード」(Netflix)や「スカル&ボーンズ」などの映像化権が販売されているほか,Electronic Artsの「Mass Effect」(Amazon)と「It Takes Two」,セガの「ナックルズ」(Paramount+),Bethesda Softworksの「Fallout」,そして任天堂の「ポケモン」(Netflix)などが,この2年ほどのうちに配信される予定のようだ。
 アニメシリーズに広げても,カプコンの「バイオハザード: インフィニット ダークネス」(2021年)やRiot Gamesの「Arcane(アーケイン)」(同),Studio MDHRの「The Cuphead Show!」(2022年)などがNetflixで放映されており,さらに固定ファンへのアピールや新しいゲーマー獲得の手段として,過去には“トランスメディア/マルチメディア”などとも呼ばれた,媒体を超えたエンターテイメントとして成長している様子がわかる。ゲームIPもかつてのような駄作映画にライセンスしてしまうような使い捨ての消耗品状態から,より長期にわたって大切に育てられていくフランチャイズ化が進められているようだ。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

6月13日の「奥谷海人のAccess Accepted」は,筆者取材のため休載します。次回の掲載は6月20日を予定しています。
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