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インディーズゲームの小部屋:Room#481「Old Man's Journey」
せっかく京都へ行ったのに,観光もできずに帰ってきた筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第481回は,Broken Rulesの「Old Man's Journey」を紹介する。本作は,とある老人がこれまでの人生を振り返りながら,どこかへの旅を続けるというアドベンチャーゲームだ。自分用のお土産にお茶や漬物を買い込んできたので,これから京都気分を味わいますよ……。
海辺の崖の上に建つ一軒の家。その家の前で,一人の老人が柵に身をもたせかけて海を眺めていた。そこへ,郵便配達人が一通の手紙を携えてやって来る。老人はベンチに腰掛けて受け取った手紙に目を通し,やがて何かを決心したように立ち上がると,急いで旅支度を整え,家をあとにするのだった……。
本作はいわゆるポイント&クリックタイプのアドベンチャーゲームで,プレイヤーはこの名も無き老人を操作して,柔らかな手描きアートで表現された世界を旅することになる。一切のテキストを廃し,絵本のような温かみのあるビジュアルで描いた感傷的な物語と,心に染み入る牧歌的なBGMが本作の大きな魅力だ。
そんな本作で特徴的なのは,背景に描かれている地形をマウスのドラッグ操作で上げ下げすることで,遠近法を無視して画面の奥や手前に移動できるという点。例えば,画面の奥にある丘をぐぐっと下に引っ張り,“絵として”今立っている地面とどこかで接するようにしてやると,その地点から画面の奥に移動できるという仕組みだ。文章で説明するとややこしそうだが,一度試してみればすぐに理解できるだろう。
老人は旅の途中,ベンチを見つけるたびに腰を下ろして休憩する。そんなとき,老人のこれまでの人生を振り返る回想シーンが挿入される。運命の相手に出会ったときのこと,その女性と結ばれ結婚式を挙げたこと,子供が生まれたこと,そして……。旅を続けるうち,プレイヤーは少しずつ老人の過去の出来事を知ることになる。
ゆっくりと歩みを進めながら,ときには船や列車や気球に乗り,トラックの荷台に揺られ,老人の旅は続いていく。道中では,ちょっとしたパズルを解いて障害物をやり過ごすといったシーンもあるが,どれも難しいものではなく,のんびり遊んでも2〜3時間あればクリアできるだろう。果たして老人は誰からの手紙を受け取り,どこに向かっているのか。ぜひ自分の目で見届けてほしい。そんな本作はSteamにて,798円で発売中。オススメです。
■「Old Man's Journey」公式サイト
http://www.oldmansjourney.com/- この記事のURL:
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