連載
インディーズゲームの小部屋:Room#558「Radiant One」
何とは言わないが,温泉が真っ白な湯けむりに包まれて悲しみに暮れている筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第558回は,Fntasticの「Radiant One」を紹介する。本作は,悪夢に捕らわれてしまった主人公が夢の世界を探索するというアドベンチャーゲームだ。こんな温泉じゃ,ダンジョンの疲れを癒せないよ……。
本作の舞台は2018年のロサンゼルス。仕事に追われるだけの退屈で多忙な生活に嫌気が差していた主人公のダニエルは,明晰夢に関する本を手に入れてコツをつかみ,自分の思いどおりの夢を見られるようになった。そして毎日,夢の世界を楽しんでいたが,次第にどちらが夢でどちらが現実か判断できなくなり,ついにある日,後戻りできないところへ辿り着いてしまう……。
明晰夢というのは,自分で「これは夢だ」と自覚しながら見ている夢のこと。どんな夢だったかまでは思い出せないが筆者も何度か見た覚えがあり,同様の体験をしたことがあるという人も多いだろう。明晰夢では,ダニエルがやっていたように,しばしば夢の内容を自分の思いどおりに変えることもできるという。うーん,そうだったような,そうでもなかったような。
それはさておき,ダニエルは夢の中で黒い影のような怪物に襲われ,あわやというところで目覚まし時計の鳴る音に助けられて目を覚ます。すると驚いたことに,ダニエルの腕には夢の中で怪物に付けられた傷が残っていた。このままでは,いつかその怪物に殺されてしまうと身の危険を感じたダニエルは,悪夢の元凶を突き止めるべく,夢の世界で手がかりを探すことになる。
本作はいわゆるポイント&クリック型のアドベンチャーで,操作はすべてマウスで行う。調べられる場所には目印が付いているので,迷うことはないだろう。また特定のシーンでは,素早くクリックを連打したり,指示された方向にマウスを動かしたりといった操作を求められることもあり,ちょうどいいアクセントになっている。
ゲームは30分〜1時間でクリアできるボリュームだが,シンプルで美しいグラフィックスと,控えめながら効果的にゲームを盛り上げるサウンドが何よりの魅力。導入はオカルトめいているが,ストーリーは主人公の幼い頃の思い出にまつわるもので,最後までプレイすれば明るい日差しを浴びたような,温かい気持ちになれるだろう。家族と離れて暮らしている人なら,久しぶりに家族の声を聞きたくなるかもしれない。
1周が短いので,人によってはやや物足りなさを感じるかもしれないが,丁寧な日本語ローカライズもあり,良質な短編小説のように楽しめる本作。製品版はSteamにて520円で発売中なので,興味を持った人はぜひどうぞ。
■「Radiant One」公式サイト
https://www.fntastic.com/radiantone- この記事のURL:
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