連載
インディーズゲームの小部屋:Room#649「Pro Gymnast」
RPGは好きだけど,ラストダンジョンまで来ると飽きて投げ出してしまう筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第649回は,Walaber Entertainmentの「Pro Gymnast」を紹介する。本作は,体操選手を操作して奇想天外なアスレチックコースを突破していくアクションゲームだ。べ,別に最後のボスが倒せないわけじゃないんだから,変な勘違いしないでよね?(ツンデレ)
このゲームの目的は,ぶら下がり棒や空中ブランコ,平行棒やマットレスなど,コース上にあるさまざまなギミックを駆使して,SASUKEもびっくりの超難関アスレチックをクリアすること。下に掲載したムービーを見ると,失敗シーンだけでなく華麗なトリックを軽々と決める様子が収録されており,爽快感あふれるゲームのように思えてしまうが,それは大きな間違いである。
では,どんなゲームなのか? 本作は連載の第514回で紹介した,壺に入った上半身裸の男が長柄のハンマーで険しい崖登りをする「Getting Over It with Bennett Foddy」や,Q/W/O/Pの4つのキーで選手を走らせる……どころか,ひっくり返ってマイナスの記録を出してしまうこともある,同じ作者によるブラウザゲーム「QWOP」に通じる,理不尽系操作がウリの激ムズゲームだ。
ゲームを開始すると,まずは思ったより細かい設定ができるキャラクターメイクを行うことに。スラッとした,いかにも体操選手らしい体格にするのもいいが,お腹のでっぷりとしたおじさんがフゥフゥ言いながらアスレチックをこなす姿を見るのも,これはこれで楽しいので,自分好みのキャラクターを作成しよう。キャラクターの外見はあとからでも変更可能だ。
参加できる大会は,誰でも出場可能な「カリフォルニアビーチツアー」と,トップレベルの選手のみが挑戦できる「東京湾・招待大会」の2つ。それぞれ,複数のロケーションとステージがあり,そのどれもが落ちたら無事では済まないような,超高難度のイカれたレイアウトのコースばかり。東京湾・招待大会にはカリフォルニアビーチツアーで一定数のメダルを獲得しなければ出場できない。
本作の大きな特徴は,何と言ってもその独特の操作方法にある。プレイヤーは,キャラクターの腕,肩,脚,膝を個別に曲げ伸ばしし,勢いを付けて体を揺らしたり,回転させたりして,ギミックからギミックへ飛び移らなくてはならない。もちろん,キャラクターの動きは物理演算に基づいており,慣れないうちは華麗に大車輪をするどころか体を揺らすことすら難しいはずだ。
しかし,キャラクターの動き自体はきっちりと運動力学に則っているため,いったんコツをつかめばこちらのもの。思いどおりにキャラクターを動かして,見事コースをクリアできたときの達成感は格別だ。逆に操作に失敗して,あらぬ方向にキャラクターがすっ飛んでいくことも多々あり,伸身宙返りで綺麗な放物線を描きながら,なすすべなく地面に落下していく姿には思わず声を出して笑ってしまう面白さがある。
初見ではどうやってクリアすればいいのか分からないコースでも,練習を重ねて何度も挑戦すれば突破できる。難度の設定が絶妙で,自分の上達がしっかりと実感でき,その過程で起こる思わぬハプニングも含めて楽しめるゲームに仕上がっている。理不尽なようでいて理にはかなっているゲームシステムも,ほかの激ムズゲームとは一味違う,本作ならではの魅力だ。そんな本作はSteamにて1840円で発売中なので,一度はSASUKEに出場してみたいと思っていた人はぜひどうぞ。オススメです。
「Pro Gymnast」公式サイト
https://www.walaber.com/pro-gymnast- この記事のURL:
キーワード