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「FINAL FANTASY XV」の田畑氏×SIE吉田氏,最前線のキーマンが語るAAA級タイトルの現状と開発の変化
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印刷2016/08/29 18:47

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「FINAL FANTASY XV」の田畑氏×SIE吉田氏,最前線のキーマンが語るAAA級タイトルの現状と開発の変化

 2016年8月28日,東京都内でKADOKAWA アスキー・メディアワークスが開催した「FINAL FANTASY XV powered by 電撃PlayStation プレミアムイベント」。「FINAL FANTASY XV」PS4/Xbox One 以下,FFXV)に関するさまざまなトークが展開されたのはすでにお伝えしているとおりだが,本稿では最後の催しとなった「スペシャルトークステージ」をレポートする。
 ここでは,ディレクターであるスクウェア・エニックスの田畑 端氏と,ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏が登壇。「世界基準で考える大作ゲームの存在意義」というテーマについて語り合った。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 「FINAL FANTASY XV」の田畑氏×SIE吉田氏,最前線のキーマンが語るAAA級タイトルの現状と開発の変化

 FFXVは,日本ゲーム界にとって重要な意味を持ったAAA級タイトルだ。AAA級タイトルとは,砕けた言い方をすれば「多額の開発費をかけ,世界をターゲットとした超大作ゲーム」のこと。日本ゲーム界の開発力が低下したといわれて久しいが,日本発AAA級タイトルであるFFXVの売れ行きは,今後の日本ゲーム界を占う意味合いも大きい。
 今回のトークステージは,これまでさまざまなAAA級タイトルに携わってきた吉田氏と,FFXVでこれから世界に勝負をかける田畑氏が語り合うという興味深いものとなった。

「FINAL FANTASY XV」のディレクターを務める,スクウェア・エニックスの田畑 端氏(写真左)と,ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏(写真右)
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「FINAL FANTASY XV」の田畑氏×SIE吉田氏,最前線のキーマンが語るAAA級タイトルの現状と開発の変化


巨大化するAAA級タイトルの現場では,あらゆるものが変化する


 近年はゲーム業界が二極化し,AAA級タイトルの開発現場も変化しつつある,と吉田氏は指摘する。AAA級タイトルの規模が巨大化するにつれ,関わる人数や費やされる時間も増え,これまでのようなペースでは作品をリリースできなくなっているという。現在のゲーム業界はAAA級タイトルとインディーズタイトルの二極化が進んでおり,日本でゲームを開発するにあたって,世界市場を意識せざるを得ない……というのが吉田氏の現状分析だ。
 FFXVもそうした状況の影響を受けているという。制作プロダクションも日本だけでは足りず,アメリカや欧州のスタジオも加え,さまざまな言語の人々に協力してもらえる開発体制を構築したという。また,これまでの「ファイナルファンタジー」(以下,FF)では日本語で開発した後に英語などにローカライズしていたが,FFXVでは開発段階で日・英・仏・独語でアフレコするなど,世界同時発売を意識した取り組みが行われているそうだ。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 「FINAL FANTASY XV」の田畑氏×SIE吉田氏,最前線のキーマンが語るAAA級タイトルの現状と開発の変化

 世界市場を相手にする中では,情報の出し方も変化している。近年の日本製タイトルがE3やgamescomといった海外ゲームショーで重要な発表をするようになったのはその好例。全世界へゲームを売るなら,グローバルな注目を集める場所でアピールしていかなければならないのだ。日本で作っているゲームなのに,なぜ海外で情報を出すのか……と不満に思うかもしれないが,現在は全世界で売っていかないと成り立たない状況である。シリーズ作品の新作を据え置きゲーム機で出そうという経営判断を下せるのも,海外で据置ゲーム機が多く売れたことによるものであり,好きなフランチャイズやビッグタイトルの最新作を見たいなら,海外で売ることを応援してほしい,と吉田氏は聴衆に理解を求めた。
 FFXVでも,こうした状況に合わせた取り組みを行っているという。かつてはgamescomやE3で重要な情報を出さなかったため,取材にきた海外メディアの関係者から「東京ゲームショウのために温存しているのか」と批判を受けることもあったそうだ。

 変化はマーケティングにも及んでいる。日本市場だけでなく,海外市場の好みも考え合わせた内容にしなければならないからだ。吉田氏が携わるタイトルでも世界基準のマーケティングが行われているという。制作はジャパンスタジオながら,グローバルにアピールすべく外国人がリードマーケッターを務めたりもするそうだ。どういった部分がウケるかは国ごとに異なるため,宣伝の仕方が変わってくるのはもちろん,時には開発に影響を与えるケースもある。開発とマーケティングが良いコンビネーションを発揮できた場合,お互いに話し合いながら制作を進めていけるという。
 ただ,皆が納得できるポイントを探すのは難しい。マーケティングから変えるべきと指摘されたところが,クリエイターがこだわったポイントだということもあるからだ。周囲の意見を重視するか,クリエイターとしてのこだわりを通すか……というジレンマはもの作りの現場で良く見られるものだが,大規模な開発体制で全世界を相手にするAAA級タイトルでは,こうしたジレンマもより大きなものになっているのだろう。ちなみに,開発中のFFXVでもさまざまな地域から色々なフィードバックが寄せられているが,全地域の意見が一致するようなことは“ない”そうだ。


FFXVのリーダーシップ,そして「FF病」に陥らないための客観視


 開発に時間がかかるAAA級タイトルでは,発売までのタイムラグも大きくなっている。例えば,新機軸の案を思いついたとしても,ゲームが出る数年後には古くなっているということも起こり得るわけだ。
 FFXVにおいて田畑氏は,“無理矢理にでも完成型とゴールを定め,これを信じ切る”というやり方で臨んだという。ここで描く完成型やゴールは,ゲーム内の仕様だけに留まらず,発売時における市場のあり方なども含まれている。チームリーダーとして,数年後を見据えて指示を出さなければならないわけだ。こうした中でチームの舵取りをするには強いリーダーシップが必要だったそうだが,同時に一人では絶対に無理だろう,と田畑氏は語る。FFXVではメンバーも成長し,舵取りを任せられるような人材も出てきたそうだ。

 FFXVの開発には「FF病」という特別な事情が存在した。これは,田畑氏がバンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏とのインタビューで語った概念で,ひと言で表わすと“自分の中のFF観を最優先してしまう”ことだ。氏の言葉を借りれば「FFは特別なゲームで,それを作っている自分達も特別なんだ。FFの新作が出たら皆が食い付くはずだ」という考え方のことで,社内にも「FF病」の人がいるのだという。吉田氏も,こうした点について田畑氏が語ったことが印象的だったのだそうだ。
 FFXVがグローバルにアピールするためには,「FF病」に陥らないように客観的な視点を持つべきだと田畑氏は考えている。とはいえ,時間が経つと自分達のFF観に引きずられるようなこともあったため,これを修正しながら開発を進めていったのだそうだ。その中では外部,とくに欧米のメディアから厳しい批判を受けることも少なくなかったが,感情を司る右脳を強制終了させ,理性の左脳で客観的な視点を保ったのだという。

 ゲーム業界の現状から,AAA級タイトルに関わる人々のマインドセットまで,幅広いテーマに及んだトークステージ。1時間はあっという間に過ぎ,最後に田畑氏は,「2か月延期してしまいましたが,その分皆さんを満足させますので,11月29日の発売日を楽しみにしてほしいです」と聴衆にメッセージを贈った。

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