連載
【ヒャダイン】ファミコン版「ドラえもん」の奇跡
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第19回「ファミコン版『ドラえもん』の奇跡」
僕もね,ご多分に漏れず,ドラえもん大好きなのです。小さい頃はアニメを毎週観ていましたし,グッズもたくさん持っていました。
さてさて。そんな中でも一番好きだったのが,ファミリーコンピュータ用ソフト「ドラえもん」。ハドソンから1986年に発売された名作です。白いカセットだったことから,「白ドラ」と呼ばれているとか……。
これがね,ゲームとしての完成度が高いんですよ! やりこみ要素までバッチリあるという。当時,芸能人や映画,アニメ,そしてマンガなんかを原作としたゲームは,たくさん出ていました。しかし既存のゲームの設定をアニメのキャラクターに無理やり当てはめたり,アニメやマンガの設定を重視するあまりに,ゲームシステムがないがしろになって面白くないゲームになってしまったりして,なかなか成功例がなかったのです(かの名作「タッチ」を原作にしたファミコン版「シティ・アドベンチャー タッチ ミステリー・オブ・トライアングル」はいろいろな意味で大好きでしたけどね)。
そんな中,この白ドラは完璧だったのですよ。まず,三章に分かれていて,それぞれのゲームシステムが違うんです!
第一章がアクション・アドベンチャーで,第二章がシューティング,第三章が画面切り替え式のアクション。これだけでもワクワクするのに,それぞれが「ドラえもん のび太の宇宙開拓史」「ドラえもん のび太の大魔境」「ドラえもん のび太の海底鬼岩城」と,映画版ドラえもん(マンガ版で言うところの「大長編ドラえもん」)の世界観を採用しているのです。
ストーリーの基本的な展開は,ドラえもんを操作して,とらわれの身となっているのび太,しずかちゃん,ジャイアン,スネ夫を救い出すというものなんですが,ここにも気の利いたエッセンスが詰め込まれているんです。
映画版ドラえもんといえば……そう,ジャイアンが超いい奴! アニメやマンガでは,鬼畜なまでの嫌がらせをのび太にしかけるヒールですが,映画版になると友情を重んじる熱い漢! スネ夫も日頃の卑屈さを押さえ込んで,最後には勇気を振り絞るというこれまた熱い漢になるのですが,この白ドラは,ちゃんとそれも再現しているんですよ。
というのも,第二章では助けた仲間が自軍について攻撃をサポートしてくれるんですが,それがジャイアンとスネ夫!! ジャイアンは石を投げて,スネ夫はショックガンで援護射撃をしてくれるんです。ただ助けを待っているだけじゃねえ。俺達だって闘うんだ!! そんなジャイアンの声が聞こえてきそうです。
そう。ジャイアンの声といえば,アレ。超音痴。聴いた者の脳漿が鼻からプシャーーーッと飛び出しかねない勢いで描写される,おなじみのジャイアンリサイタル。これがきっちり再現されているんです。どうやって? うふふふふ(←ドラえもん風)。2コンのマイクーーーー!(←これもドラえもん風)。
一回きりなんですが,ジャイアンが仲間にいるとき,2コンで「ぼえーーーーー」と叫ぶと,画面上にいる敵をせん滅することができるのです! さすがジャイアンの歌唱力。第二章は3組ボスが出てくるのですが,2組目がめちゃくちゃ強いんですよ。そこでジャイアンにぼえーーーーーっと一発鳴いてもらうと,簡単にクリアができるのです。
順番が前後しますが,のび太を救出する第一章も白眉。回復アイテムはもちろん,どら焼き。武器はショックガンや空気砲,強力うちわ。しかも何もないところをアタックしたらなにか手応えが。連射してみるとアイテムが出てきたり,どこでもドアが出現したり! 第一章だというのに難度もなかなか高く,どこでもドアできっちりワープしないとクリアできないんです。あと,マンホールを出現させて強い武器をゲットしないと,最後のほうのザコラッシュに耐えられません。なのでひたすらやりこんで,どこのドアを使うとどこへ行くかを,きっちり学習しなきゃいけないのです。あれ,どこでもドアってどこでも行けるんじゃなかったっけ……。げふんげふん。いやいや,これがゲームのだいご味でしょう。
もちろん,道中には映画版に登場した悪者達が出てきたり,ラスボスがロボットだったりと,映画をきっちり踏襲してます。でね。途中でスモールライトが出てくるんです。ゲットしたら使えるのかなあ,なんて思ってみても,まったく何も変わらない。なんじゃこれ。バグかしら? なんて思っていたら,第二章の大魔境編に入ったら,いきなり武器がスモールライトになっている! 何と,次章への布石だったんですねぇ。
そして,最終章となる第三章。これがボリュームたっぷりなんです。海底鬼岩城をベースとしているので,水中での戦いになるんですが,まあ複雑。
まず,宝箱に閉じ込められているのび太とジャイアンとスネ夫を,一か所に集める必要があるんですが,この過程がたいへんたいへん。宝箱がある場所はたくさんあって,巨大なタコの下にあったり,通り抜けフープでたどり着く深海にあったり。しかもですよ。宝箱はハズレがあって,それを開けるといきなり海竜が出てくる。こいつが強くてBGMが怖い!
こいつを倒すには「おまもり」という特殊アイテムが必要なうえに,倒すまでは突発的に出てきやがるので本当に心臓に悪いんです。いきなり出てきてBGMが変わるんだから,これはもうトラウマものですよ。
しかも,金貨やダイヤモンドというポイントアイテムがあるのですが,これを採取しすぎると,なんと骸骨とどら焼きが乱れ飛ぶ「拷問部屋」に強制ワープ。乱獲したら罰が当たる!
でねでね。どんどん深海に進んでいくんですが,薄暗いんですよ,深海。しかもBGMもおっかない。正直,第三章はなかなかのトラウマメイカーです。でもそんな恐怖にも負けず進んでいくと,ラスボス。それはポセイドン。もちろんとらわれているのは,しずかちゃん。映画版を知っている人間からしたら,ぐっとくる展開ですよね。
鳥肌を立てつつ,超強いポセイドンを空気砲で退治したら,ゲーム史上指折りの感動的なグラフィックスで描かれたエンディングです。うん。バギーちゃんが出てこなかったのは正直不思議ですが,きっと感動させすぎないようにする演出だな。ここでバギーちゃんが最後に突っ込んだら,絶対に泣いちゃうもん。
というわけで,アニメ原作のゲームの中でも珠玉の名作,白ドラことファミコン版「ドラえもん」。全国のドラえもん大好きなちびっ子のみんな! ぜひ遊んでみてね! だけど第三章は大人と一緒にやるんだよ! ヒャダインお兄さんとの約束だよ!
……ちびっ子がファミコンとこのソフトを手に入れることはできるんだろうか,最近のゲームに慣れたちびっ子の目に,ファミコンのゲームはどんな風に映るんだろうか,という疑問はあるけれども!
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ このところ,かなり楽曲制作モードに入っているというヒャダイン氏。この7月には,小松未可子さん,Geroさん,ピコさん,でんぱ組.Inc,渡辺麻友さんに提供した楽曲が相次いでリリースされました。現在制作中のものも,次々と発表予定とのことなので,そちらもお楽しみに。 |
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