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イギリスのボービントン戦車博物館で開かれた戦車のお祭り,「Tankfest 2017」をレポート
「World of Tanks」や「World of Warships」などのタイトルをサービス中のWargaming.netがスポンサーとなったこのイベントでは,60両以上の戦車が実際に稼働する(もちろん第二次世界大戦期の戦車も含まれる)という。もともとボービントン戦車博物館は戦車マニアの聖地の1つでもあるため,ファンなら垂涎モノ,一生に一度でいいから参加したいイベントなのだ。
「World of Tanks」公式サイト
ボービントン戦車博物館公式サイト
さらに,今回の「Tankfest 2017」では,普段は限定的にしか公開されていない保管庫も開放されており,「これって実在してたんだ!」的なマイナー戦車を間近で拝むこともできた。
というわけで,以下「Tankfest 2017」の模様を,写真多めでお届けしたい。さらに,ボービントン戦車博物館の館長であるDavid Willey氏へのインタビューも合わせて掲載するので,興味のある人はぜひ読んでほしい。
ボービントン,秘密の保管庫の中はこんな感じだった
さて,まずは普段だと遠巻きに見るしかない保管庫の内部から見ていくとしよう。普段はフロアに展示されていないレアな車両に,軽く腰を抜かす読者も少なくないだろう。
レオパルト2に試乗!
保管庫を終えたところで,次は「レオパルト2に試乗できる」という特別イベントが行われた。ちなみにこれ,プレス向けの特別なイベントかな? と思っていたら,イベント当日にも普通に一般客を乗せて走っていた。とはいえ,ボービントン戦車博物館に行けばいつでもやっている,というものではないみたいだ。
写真を見てもらえばお分かりのように,レオパルト2としては何かが足りない……そうだ,砲塔だ。と,必要以上にわざとらしい気がするが,これはもともとオランダ軍のレオパルト2A4の砲塔を取り外し,観光用にモデルチェンジしたという車両だ。
ボービントン戦車博物館,館長に聞く
さて,もう戦車でおなかいっぱいという人のために,ここでボービントン戦車博物館の館長であるDavid Willey氏のインタビューをお届けしたい。戦車好きにとって天職とも言える「戦車博物館の館長」という仕事だが,実際にはどのような苦労があるのだろうか?
――戦車博物館の館長という仕事は,どのような仕事なのでしょうか。
David Willey氏(以下,Willey氏):
まずはこの博物館のコレクションを管理維持しつつ,博物館より良いものにしていくために何をすべきかを考え,実行する。基本的には,そういう仕事ですが,さらに,教育も私の重要な役割の1つになっています。このボービントン戦車博物館はイギリス陸軍の駐屯地に隣接していますので,戦車の扱い方や歴史などについて兵士に教える,ということもしているんです。ときには,海外から来た兵士に戦車のことを教える場合もありますね。
そのうえで,どうしたら来場者により楽しんでもらえるようにするか,というのも重要な課題ですが,これについては,私はスタッフとのコミュニケーションが重要だと考えています。
博物館のキュレーター達は,自分が研究する対象について情熱的でなくてはなりません。当館で言えば,戦車に対する絶えざる興味と想像力が必要なのです。そして,その情熱をもとに,彼らはそれぞれ,どうしたら来場者がまたここに来たいと思ってくれるのか,どうしたら来場者をより楽しませられるのかという点について,たくさんのアイデアを蓄えています。
そういったアイデアを,スタッフたちから読み取り,彼らが仕事にかける情熱を来場者の人達にも知ってもらう。このことは,館長としてとても大事な仕事だと考えています。
――これまでたくさんの戦車をレストアしてきたと思いますが,思い出深い車両があったら教えてください。
Willey氏:
タイガー131は私が子供の頃からこの博物館に所蔵されていた有名な車両ですが,実際に動くとなると,話題の大きさが違います。ただ,これはあくまで博物館としては,という話です。
私個人でお話しするなら,やはりハンバー・スカウトカーです。これはとても小さな装甲車なのですが,非常に印象的なストーリーを持っているんですよ。この装甲車に乗っていた,元兵士の人から話を聞いたことがありますが,その人はノルマンディー上陸作戦のときにハンバー・スカウトカーを運転していたそうです。夜間偵察で,周囲は真っ暗。なんとか基地に帰り着いたと思ったとき,一緒に乗っていた上官が「絶対にエンジンを切るなよ」とささやいたんですね。
不思議に思って周囲を見ると,なんとそこはドイツ軍の基地だったんです。結局,命からがら逃げ出すことに成功しましたが,彼は「こいつ(ハンバー・スカウトカー)が自分の命を救ってくれた」と語っていました。
私は車両そのものだけでなく,それぞれの車両が持つストーリーが大切だと考えています。タイガー131にしても,この車両の鹵獲に立ち会った人から話を聞きましたし,また当時タイガーと戦った人からも話を聞けました。それらは,本にまとめて紹介しています。
このように,当館のスタッフは皆,車両の技術的なスペックだけでなく,それぞれの車両が持つストーリーや,それぞれの車両と人との関わりを大切に思っています。このため,スタッフごとに思い入れの強い車両もまた違ってきますね。
――ここ数年で展示に加わった戦車の中に,「これは」という車両があれば教えてください。
Willey氏:
T-34/76でしょうね。これはフィンランドから借りているもので,車両としては非常にありふれています。実際,イギリスは第二次世界大戦中にソ連から研究用にT-34/76をもらいました。
しかし,T-34/85を新たに研究用車両としてもらい受けることが決まったとき,旧式のT-34/76はすべて処分されてしまったんです。ですので,現在展示されているT-34/76は,イギリスにおける戦車研究の歴史のミッシングリンクを埋める一台となっているわけです。
――先程,タイガー131の復元が大きなプロジェクトとなったと聞きましたが,タイガー戦車は第二次世界大戦中の敵国の戦車です。言うまでもなく,戦友をタイガーに殺されたという人もいるかと思いますが,復元に反対する声は出なかったのでしょうか。
Willey氏:
ちなみに,タイガーを製造していたドイツの工場からは,「レストアされたと知りたくなかった」「恥ずかしいと感じる」という反応をもらいました。これもまた,とても興味深いことだと思います。
――「Tankfest 2017」は非常に大がかりなイベントです。このイベントを楽しむには,どのような心がまえで参加すればいいでしょうか。
Willey氏:
また,余裕ができたら,実際に動く戦車を眺めている観客の表情にも注目してください。これまでゲームやプラモデルでしか見たことがなかった戦車が,実際に目の前を走っていく。知識としてだけ知っていたものが実物と一致するその瞬間の,興奮に満ちた表情は,本当に見ものです。
なお,Tankfestの期間以外でも,博物館は10:00から17:00まで営業しています。展示をゆっくりと見たい場合は,平日に来館するのもいいと思いますよ。
――お忙しいところ,ありがとうございました。
これがTankfestだ!
ここで,いよいよ「Tankfest 2017」がどんなイベントなのか,写真を中心に紹介しよう。メインとなるのはアリーナと呼ばれる大きなグラウンドを走り回る戦車達だが,実はそれ以外にも見どころは多いのだ。
戦車マニアのための「お祭り」
「Tankfest 2017」で感じたのは,このイベントが文字どおり“お祭り”であることだ。日本で似たようなイベントとしては,陸上自衛隊の総合火力演習があるが,Tankfestはあくまで博物館が主催するカジュアルなお祭りで,集まった観客たちもより気楽にショーを楽しむような空気があった。
戦車が走り回るメイン会場となるアリーナには芝生のスロープが設けられ,多くの観客はそこにシートを広げたり,野外用の椅子を置いたりと,雰囲気的には,ピクニックと呼ぶにふさわしい楽しみ方だ。
会場はけして交通の便の良いところではなく,宿泊施設にもかなり難儀する。また,チケットの入手は相当に困難とも聞く。今回も前売りのチケットは完売で,当日ふらりと参加するのは基本的に無理だ。しかし,戦車好きであればいつかは,そして一度は,このお祭りを楽しみにイギリスを訪れてみたい。
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