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2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する
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印刷2011/10/15 00:00

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2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する

画像集#003のサムネイル/2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する
 スマートフォンなどのモバイル向けSoC(System-on-a-Chip)「Snapdragon」で大きなシェアを持つQualcommは,北米時間2011年10月7日に,2012年中に搭載製品が登場する予定となっている次世代SoC「Snapdragon S4」ホワイトペーパーを公開した
 開発コードネーム「Krait」(クライトもしくはクレイト)で知られるSnapdragon S4のホワイトペーパーには,デュアルコアCPUを統合したモデルの概要が記載されており,CPUの性能や省電力性,そしてWindows 8のサポートも謳われるなど,なかなか興味深いものになっていたので,公開から少し時間が経ってしまったが,今回はホワイトペーパーの内容を紹介してみたいと思う。


「Cortex-A15コアの採用で,デュアルコアでも速い」


SoCには派生製品が登場する場合が多いので,3モデル以外にもバリエーションが派生する可能性は高い
画像集#002のサムネイル/2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する
 2011年2月に発表されているとおり,Snapdragon S4のラインナップは,「MSM8930」「MSM8960」「APQ8064」の3つ。今回公開されたホワイトペーパーは,デュアルコアCPUを統合したMSM8960に関するもので,タブレットや大型のモバイル機などへの採用が予想されるクアッドコアCPUを統合するAPQ8064や,シングルコアCPUを統合するMSM8930については触れられていない。

 ARMプロセッサ対応版のWindows 8のリリースが計画されている2012年を間近に控え,ARMプロセッサをベースとしたSoCの競争が激しさを増している。そんななか,Qualcommが公開したホワイトペーパーからもその激しさは伝わってくる。SoCメーカー各社はOEMを獲得すべく自社製品のアピールに余念がないが,今回公開されたMSM8960のホワイトペーパーはなかなか面白い。というのも,先にホワイトペーパーが公開されたNVIDIAの「Project Kal-El」(プロジェクトカルエル,開発コードネーム,以下 Kal-El)を意識したような記述が,ところどころに見られるのである。

 Kal-Elは「クアッドCPU+シングルCPUコア」という特殊な仕様で,広義にはクアッドCPUコアのSoCだ。なので,「なぜデュアルCPUコアのMSM8960でQualcommが意識するの?」という疑問を持つ人もいるだろう。実はそこにこそ,Qualcommのアピールしたいポイントがある。
 Kal-Elが統合するCPUコアは「Cortex-A9」。それに対してSnapdragon S4では,一世代新しい「Cortex-A15」コアの改良版を採用しているのだ。
 Cortex-A15は,3命令デコード8命令同時発行のOut-of-Orderパイプラインで,Cortex-A9の2命令デコード3命令同時発行のOut-of-Orderパイプラインから規模がかなり拡張されているのだが,Qualcommは,Snapdragon S4の採用する改良版Cortex-A15コアがオリジナルのCortex-A15よりもさらに20%性能が向上していると謳っているので,動作クロックレンジが1.5〜2.5GHzということも加味するに,CPUコア1基あたりの性能は,Cortex-A9と比べて相当速くなっていると見ていいだろう。

28nm LPプロセスと40nm Gプロセスとで温度変化とパフォーマンスの推移を比較したグラフ
画像集#004のサムネイル/2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する
 もう1つ重要なのは,Kal-Elが現行のTegra 2と同じく40nm Gプロセスで製造されるのに対して,Snapdragon S4は,28nm LP(Low Power)プロセスで製造されること。Qualcommは,28nm LPプロセス技術の採用により,設定温度の枠内でより高い性能を発揮できると,Snapdragon S4の優位性を訴えている。競合製品より2倍高い性能のCPUコアを搭載し,省電力性にも優れるため,デュアルコアでもクアッドコアと戦える,というわけである。


「コンパニオンチップを使わずに」省電力を実現する「aSMP」


 さて,ホワイトペーパーでは,MSM8960のブロックダイアグラムも以下のとおり明らかになっているのだが,それを見ると,Snapdragon S4では,CPU部「Multicore Subsystem」とGPU部「Multimedia Subsystem」,そしてモデム部「Modem Subsystem」が,システム基盤やデュアルチャネルメモリコントローラ,省電力機能を提供するブロックと一体になっていることが分かる。
 CPU部は,CPUコアごとにL1キャッシュが組み合わされ,さらに共有L2キャッシュも用意されるという,ARM系のマルチCPUコアで一般的なもの。ブロックダイアグラムで「Krait CPU」へ食い込むように置かれている「VeNum」は,Qualcomm独自のマルチメディアエンジンである。

 GPU部に関しては後述するが,Qualcomm独自のGPUコア「Adreno」(アドレノ)を搭載するのは見て取れよう。モデム部はLTE(Long Term Evolution)対応が特徴だ。メモリコントローラは32bitの低電圧版DDR2に対応しているという。

MSM8960のブロックダイアグラム。CPU部やGPU部,モデム部に加え,デュアルチャネルのメモリコントローラなどが集積される
画像集#005のサムネイル/2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する

 そして,ある意味で今回のホワイトペーパーにおける最大の見どころとなるのが,「aSMP」(asynchronous Symmetrical Multi-Processor)と名付けられた,省電力関連の技術である。
 aSMPの原理はそれほど複雑なものではなく,「負荷に応じて動的に,CPUコアごとの電圧とクロックを制御する」というもの。「asynchronous」(非同期)というのは,CPUの電圧およびクロックの制御が同期しないことを指しているようだ。Qualcommは,一般的なSMP制御と比べて,aSMPでは消費電力を25〜40%も削減できるとアピールしている。

一般的なSMP(左)に対し,aSMP(右)は個別に電力管理を行えるので有利だという
画像集#006のサムネイル/2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する
 さて,SMPといえば,NVIDIAがKal-Elで実現した「vSMP」(Variable Symmetric MultiProcessing)が記憶に新しいところだ。vSMPでは,メインの4コアと,「Companion CPU Core」と呼ばれるコアを用意し,高負荷時は前者,低負荷時は後者といった具合に使い分けることで,性能と消費電力の最適化を図るというのがウリだったが,今回のホワイトペーパーには「(aSMPは)コンパニオンあるいは小さなコアを必要としない」「特別なソフトウェアによる制御も不要」「複雑さを少なくした」などといった具合に,Kal-Elを強く意識したと思われる記述が多く見られる。とくに複雑さに言及しているあたりは,Kal-Elの実装がムダに複雑だというニュアンスが感じられ,なかなか興味深い。


Windows 8はSnapdragon S4のGPUをサポート


 ここからは,上で後述するとしていたGPUの話をしていこう。
 QualcommのGPUは,かつてATI Technologies(AMD)が開発していた組み込み向けメディアアクセラレータ「Imageon」から派生したものだ。「Imageon W100」がシャープ製のZaurusに搭載されていたりもしたので,懐かしいというモバイルマニアもいるかもしれない。

画像集#007のサムネイル/2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する
Adreno 200シリーズは統合型シェーダを採用しているため,ピクセルシェーダと頂点シェーダが分離しているGPUに比べ,処理量に応じて演算器を使い分けられる点で有利だという
画像集#008のサムネイル/2012年に搭載製品が登場予定のQualcomm製次世代SoC「Snapdragon S4」。明らかになったその概要を確認する
Adreno 200シリーズは,2本のレンダリングパイプで画面をタイル状に分割して描画を行う。Adreno 225ではメモリ帯域幅が広くなるため,高解像度にも対応できるとされている
 そんな“旧Imageon”から派生したQualcommのGPUは,上記のブロックダイヤグラムにあるとおり現在はAdrenoという名前になっている。そして,Snapdragon S4で統合されるのは「Adreno 225」だ。OpenGL ES 2.0をサポートしており,WindowsでいうとDirectX 9世代のGPUコアといったところである。現行のSnapdragon S3で統合される「Adreno 220」「Adreno 225」の強化版といった位置づけで,従来型GPUコアと同様,Windows 8のサポートが確約されているのが大きな特徴といえる。

 Adreno 200シリーズは,統合型シェーダを採用することで低消費電力かつ高性能を実現している点が特徴。Adreno 225ではメモリ帯域幅が向上しているなど,Adreno 200比で6倍,Adreno 220比で1.5倍の性能向上を果たしているそうだ。

 ところで,今回のホワイトペーパーでは詳細が明かされなかったが,クアッドコアCPUを採用するAPQ8064は,GPUに「Adreno 300」が採用される予定になっている。
 Adreno 300については,アーキテクチャの大幅なリファインが行われ,PlayStation 3やXbox 360に匹敵する性能を備えるなどという情報が伝えられていたりもする。まだ詳細は明かされていないが,Adreno 300がどのようなGPUなのかも興味深いポイントとして覚えておきたい。

Qualcomm公式Webサイト

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