インタビュー
Hearthstone冬季日本選手権優勝のmattun選手にインタビュー。デッキ選択の意図などを聞いてみた
今回は,そんなmattun選手に,冬季日本選手権に臨むための準備や,デッキ選択の意図,これまでのHearthstoneでの活動についてなど,さまざまな話を聞いてみた。果たして,mattun選手はこれまでどのようにHearthstoneに触れ,いかにして日本代表の栄冠を勝ち取ったのか。Hearthstoneプレイヤーには,ぜひご一読いただきたい。
※アジア太平洋選手権は3月25日から3月27日まで行われ,mattun選手は5-6位という結果となった。インタビューは3月22日に行ったもので,同大会については触れていない。この点はご了承いただきたい。
日本選手権で優勝したデッキ構成の意図
4Gamer:
日本選手権優勝おめでとうございます。まず,優勝の感想を一言いただけますか。
嬉しいです。率直に,勝てて嬉しいですね。
4Gamer:
今回の日本選手権に臨むにあたって,やはり準備は入念にされていたのでしょうか。
mattun選手:
そうですね。出るからにはしっかりとやらなきゃというのがあったので,練習はちゃんとしていました。
4Gamer:
練習というのは具体的に言うと?
mattun選手:
今回のルールがBO5の4Hero 1Ban(※)に決まったのが2016年1月ぐらいなので,同じルールを採用する海外の大会にたくさん出て,ルールに慣れることを優先しました。そこで,いろいろな組み合わせを試して,手応えを感じたデッキで調整しました。
※BOはBest ofの略。数字の部分は,その試合で最大何回対戦が行われるかを指す。BO5の場合は最大5回まで,要するに3本先取したほうが勝ちとなる。今回の大会では,4人のヒーローを選択したあと,お互いのヒーローを確認し,そのうちの1人を使用禁止にできた。
4Gamer:
なるほど。そういった練習をしていくなかで,得られた答えみたいなものはありましたか?
mattun選手:
とにかく,ドルイドが強いということですね。ほかの地域の選手権でも勝率が80%ぐらいになっていて,これは許しちゃいかんと(笑)。 なので,ドルイドはBanすると決めていました。
4Gamer:
実際に今回の大会は,mattunさんみたいにドルイドのBanを前提とする構成を組むか,ドルイドを倒すためのメタデッキを組むかの,どちらかの戦略を採る選手が多かったように思います。後者の戦略を選ばなかった理由は何かありますか。
mattun選手:
ドルイドを倒すというのは,もともと自分の中では大きな課題でした。その課題に,1年以上取り組んできたのですが,結局無理だというのが分かって(笑)。それで,今回はせっかくBanできるということなので,ドルイドをBanすることに決め,合わせてドルイドのメタデッキに対して強いデッキを用意しました。
4Gamer:
ドルイドを倒すのは無理だと思ったのはなぜですか?
mattun選手:
練気があるからです。ドルイドに対して相性が良いデッキでも,練気でマナブーストをされただけで相性がひっくり返ってしまうんですよ。例えば,ミッドレンジパラディンとかはドルイドに対して大きなカウンターとなるデッキだと思うんですけど,それでもマナブーストひとつで負けてしまうことがあります。なので,無理という結論になりました。
4Gamer:
それで,逆にドルイドのメタデッキを倒していこうとなったわけですね。
mattun選手:
そうです。具体的には,Zooウォーロック,パトロンウォーリア,テンポメイジ……,あとシークレットパラディンあたりを睨んだ構成にしました。
4Gamer:
デッキ構築で意識したことはなんでしょうか。
mattun選手:
まず,パトロンウォーリアとシークレットパラディンに狙いを付けて,すべてのデッキに武器破壊ができるミニオンを入れました。あとは,それらのテンポデッキのテンポを崩して持久戦に持ち込むゲームプランだったので,デスロードや乱闘などのカードで相手のテンポを崩していくつもりでした。とはいえ,それらだけが相手とも限らないので,エリーズ・スターシーカーなどの対コントロールデッキ用のカードも採用したといった感じです。
4Gamer:
対テンポデッキを見据えつつも,コントロールデッキにも対応できるような受けの広い構築で臨んだということですね。
mattun選手:
狙う相手となるテンポ型のデッキには確実に勝てるようにしつつ,そうでなかった場合にも勝負になるように調整した感じです。とくに「パトロンウォリアーは絶対に倒す」という意識でデッキを作りました。
4Gamer:
言われてみればパトロンウォリアーに強いデッキばかりが揃っていますね。コントロールウォリアーとか。
パトロンウォリアーを倒すことを狙わなければ,コントロールウォリアーは必要なかったですね。ほかにもハンドロック,コントロールプリースト,レノメイジ,マーロックパラディン,といった具合に,すべてパトロンウォリアーに有利がつくデッキだけで揃えました。
4Gamer:
今回mattunさんが用意したデッキで凄く印象的だったのがレノメイジでした。ほかの選手に話を聞いても,あのデッキを持ち込んでいたことにみんな驚いていましたよ。
mattun選手:
レノメイジを採用したのは,コントロールデッキ主体の選手が多いと睨んでいたからです。実際にはk2g選手ぐらいでしたが……。それらのコントロールデッキに対して勝てるデッキ,とくに「フリーズメイジに100%勝てるデッキ」を考えた時に,コントロールウォリアーだけでなくレノメイジも,という結論になりました。
4Gamer:
それは,レノ・ジャクソンとアイスブロックあたりが,フリーズメイジに対する強みになる感じですか?
mattun選手:
アイスブロックがあるうえに,レノ・ジャクソンや骨董品のヒールロボといったカードを複製で増やして戦えるのが強みですね。それらの回復量が相手の火力を上回る形です。
4Gamer:
確かにレノ・ジャクソンを増やせば負けないですからね(笑)。
mattun選手:
絶対負けないですね(笑)
4Gamer:
ちなみに,ほかのコントロールデッキに対しては何が強みになるのでしょうか。
mattun選手:
複製とメディヴの残響ですね。デッキ外からリソースを持ってこられるので,相手デッキのバリューを上回ることができるんですよ。とくに,ソーリサン皇帝とか,イセリアルの召術師あたりの強いカードを増やしてしまえば,なかなか負けないです。フリーズメイジ,コントロールウォリアー,レノロックあたりに対して有利がつくし,アグロデッキに対しても中身がバレていなければ負けません(笑)。
4Gamer:
実際に決勝戦で,対戦相手のtofooさんはデッキの中身が分からなくて困っていましたからね(笑)
仕事明けの二晩,徹夜で臨んだ日本選手権
4Gamer:
大会のエピソードについても聞かせてください。2日目は相当お疲れだったようで,なんでも二徹していたとか。
mattun選手:
仕事の合間を縫っての参加でしたので……。決勝当日はとにかく疲れてました。
4Gamer:
準決勝では,プリーストのヒーローパワーでヒーロー本体を回復しなかったために負けてしまったプレイが印象的でした。
mattun選手:
心に残るプレイですね(笑)。 あの試合で相手のHajimeさんは,盤面のデスロードにファイアーボールを撃たずにとっておいて,本体に打ち込んで倒すプランでいたんですよね。それは僕も分かっていたのですが,自分のヒーローの体力が13という,肝心なところに気付かなくて……。それで相手にターンを渡してしまい,自分の置かれている状況に気付いて「アーーッ!!」って。みんなには「いいプレイだったね」と言われました(笑)。
4Gamer:
本当にお疲れだったんですね。今回の日本選手権は日程の発表も遅かったですが,仕事の調整は難しかったのでしょうか。
mattun選手:
日本選手権の一週間前に日程が出たので,そこに合わせて休みを取ることができなくて。
4Gamer:
日程に余裕がないと,社会人にとっては厳しいですし,そこは運営サイドにも改善してほしいところですよね。
mattun選手:
早めに日程が出ると嬉しい人は多いと思います。でも,それでも諦めずに出たことが大会の中でのラッキーにつながったとも思ってます。凄くツイてたんですよね。
4Gamer:
確かに,重要な局面でのドラマは多かったですね。Hajime選手との準決勝では,デスロードから海の巨人が出た後に,乱闘と大物ハンターを続けて引いてきたり。
mattun選手:
その場で欲しいと思ったカードを,結構引くことができました。
4Gamer:
mattunさんはHearthstoneの黎明期からプレイしてきた古参プレイヤーでしたが,大きな大会での優勝経験はなかったかと思います。今回の優勝はひときわ嬉しいものだったのではないでしょうか。
mattun選手:
そうですね。長く続けてきたことで確実にうまくなれているというのは感じています。周りでも,2年前はランク15だったプレイヤーが今はレジェンドの上位にいたりもするので。
4Gamer:
長く続けていれば,mattunさんみたいに大きな大会で優勝するのも夢ではないということですね。
mattun選手:はい。長く続けていればそれだけ経験を積んで,ミスプレイも減ってきますから。
日本の大会がなかったHearthstone黎明期
4Gamer:
mattunさんといえば,まだHearthstoneの日本語版が出ていなかった時代に,wikiリーグの開催など,大会運営などでも精力的に活動してきたプレイヤーですよね。そのあたりの話についても聞かせてください。
「これだけ面白いゲームだから,みんなに知ってもらいたい」という気持ちが強くて,盛り上げるための活動をしてました。僕自身,いろいろなゲームをやっていたんですけど,Hearthstoneは手軽にできつつも,ゲームをプレイする以外でも楽しめる部分が多くて。配信や大会などで人のプレイを観たりとか。そういった面白さを,より多くの人に伝えていきたいなと。
4Gamer:
昔に比べると,日本でも大きく盛り上がってきているように見えます。
mattun選手:
昔は日本のプレイヤーが世界で活躍するのを夢見ていたんですけど,knoさんがそれを叶えてしまって(笑)。昨年はそれで感激したんですけど,今度は自分でも頑張ってプレイして,競技シーンに取り組んでいきたいですね。
4Gamer:
今度は自分がBlizzconに出てベスト4以上になってやろうということですね。でもKno選手のときは,日本人がBlizzconに出場するということ自体が夢のような話でしたよね。
mattun選手:
本当に感動しましたね。で,夢が叶っちゃったから,次の夢は自分だって(笑)。
4Gamer:
ぜひ頑張ってほしいものです。よければ,wikiリーグを始めた理由についても教えてください。
mattun選手:
当時は日本の大会が何にもなかったんですよね。Hearthstoneの公式サービスが始まってから半年ぐらいは日中戦の代表決定戦とか,JCGの大会とか色々あったんですけど,その後は何にもなくなってしまって。氷河期でしたね。
4Gamer:
確かに当時はそんな時期でしたね。
mattun選手:
「大会に出たいのに,なんで大会がないんだ!」って気持ちでした。そのことを話していたら「だったらお前がやれ」って言われて,「じゃあやるか」って感じで(笑)。
4Gamer:
初めの頃は仕事をしながらということもあって,大変だということを話していた記憶があります。
mattun選手:
大会って,何か見返りを期待してやっちゃダメなんですよ。自分がやりたいからやるという気持ちでなければ続かないと思いますし,だからこそ大変でも続けられたと思ってます。
4Gamer:
実際,大会運営には何も見返りはなかったですからね。
mattun選手:
大会を運営するメリットがないんですよね。だから日本はそういう大会が少なくって。とはいえ,今は公式に申請することで,世界選手権ポイントがもらえるHearthstoneカップの開催がしやすくなりました。今でも有志の方々が開催していますが,そういう大会がさらに日本でも増えればいいと思っています。
4Gamer:
今後,大会を開くことで見返りがある仕組みができるといいですよね。そうすればイベントも増えて,Hearthstoneがより盛り上がっていくと思います。
二児のパパでも活躍できる,それがHearthstone
4Gamer:
mattunさんといえば,家族を持つ二児のパパプレイヤーとしても知られています。家庭とHearthstoneの競技プレイヤーとしての両立は大変なのではないでしょうか?
mattun選手:
家庭を維持するためには,ちゃんと仕事を続けないといけないですからね。でもゲームとの両立って結構難しいから,どっちもこなすのはなかなか大変です。でも,娘がもっと大きくなる頃には,ゲームがもっと社会で誇れる趣味に,自慢できるような趣味になっているといいなと思いますし,そう思ってもらえるようなプレイヤーになっていきたいです。
4Gamer:
一連の活動や,今回の日本選手権について,家族からは何かありましたか?
mattun選手:
好きなことをやってるんだから別にいいんじゃない,ぐらいの感じでしたね。でも,今回の日本選手権のときには,それまで応援してる素振りなんかまったく見せなかったのに,帰ってきた時にはクラッカーで「おめでとう!」って言ってくれて……。その時はちょっとウルッときました。
4Gamer:
素敵な話ですね。では最後に,Hearthstoneを始めたばかりのプレイヤー,また,これからHearthstoneを始めようという人に対して一言お願いします。
mattun選手:
最初は,パーティーゲーム感覚で遊んでもらえたらと思います。やっているうちにちょっとずつ強くなっていくと思うのですが,そういう感覚を楽しんだり,周りの人とそういった楽しみを共有しつつハマっていってもらいたいです。
4Gamer:
より多くの人に楽しく遊んでもらいたいですね。本日はありがとうございました。
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」公式サイト
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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