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[Unite 2018]ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの「Unity教育プロジェクト」とは。子ども向け教材の展開も示されたセッションをレポート
Unityのエデュケーション計画と認定試験
セッションの前半では,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン エデュケーション アカウント マネージャー 石井勇一氏が,Unityのエデュケーション計画と認定試験を紹介した。
石井氏は,最初に「Unityを学ぶ意義」として「市場ニーズが高い」ことをアピールし,アメリカの現状を伝えた。それによると,例えばビジネスSNSのLinkedInにおいては,Unityの開発者は2017年の新規雇用トップ20のうち,第7位にランクインするほど人気だという。またBurning Glass Technologiesの調査結果によると,Unityは現在,テック系の業界においてもっとも需要のあるスキルとなっており,2019年までに35%以上の成長が期待されている。
もちろん,Unityのニーズは日本においても高く,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンには日々「こういう人材はいないか」といった問い合わせがあるとのこと。求められているのは,スマートフォンゲームやコンシューマゲームの開発を筆頭に,映像制作,ゲーム以外も含んだAR/VR/MR,建築/自動車/医療など非ゲーム領域におけるビジュアライゼーションツール,機械学習といったさまざまな分野でUnityの知見を活かせる人材である。
そうした状況を踏まえ,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンでは「Unity教育プロジェクト」と称し,Unityを扱うエンジニアおよびテクニカルアーティストの育成にも注力している。
その基礎となる「チュートリアル」は,初心者から上級者まで幅広いUnityユーザーが活用できる内容となっており,とくに数年前とは比較にならないほど日本語化が進んでいるとのこと。また日本語化が完了したコンテンツについては,随時SNSなどで紹介していくという。
さらに「トピック」と題されたコーナーには,Unity開発の必須テクニックやTipsなどが体系的にまとめられているので,一度チェックしてみると,新たな発見があるかもしれないと石井氏は語っていた。
認定試験は,2018年内にリニューアルする予定で,新体系として「Unityエキスパート認定」が一部稼働中だ。
Unityエキスパート認定は,2年以上の実務経験と,複数タイトルの開発経験者を対象としており,プロのゲーム開発に求められる優秀な人材を基準としている。ジャンルはゲームプレイ プログラマーとテクニカルアーティストに分かれており,前者はゲームを楽しくするための人材となる。そして後者のテクニカルアーティストは,さらにリギング&アニメーションと,シェーディング&エフェクトの2部門に分かれており,単にモデリングができる,エフェクトを作れるだけでなく,高い技術力を求められる。
また2018年中には,Unityエキスパート認定にプログラマーと3Dアーティストが加わる予定となっている。
Unityの認定試験を評価する声も紹介された |
Unityエキスパート試験の受験方法。日本では,全都道府県50か所以上で受験できるとのこと |
Unity認定試験に対応した動画教材が「コースウェア」で,16時間以上のコンテンツや認定試験の簡易自己採点機能などが同梱されている。ただし現在提供されているコースウェアは,2018年内を目処にリニューアルが予定されているとのこと。
現行のものに取って代わるコースウェアも,英語版のみではあるが提供されており,試験対策だけでなく,Unityでゲームを開発する人向けの,より実践的な内容も含まれているという。加えて,AR/VR/MR系のコースウェアも紹介された。
また,こうしたコースウェアの日本語化を図ったり,あるいは日本発のコースウェアを採用したりする予定もあるそうだ。
「Unity認定トレーニングワークショップ」は,Unity認定インストラクターが依頼者である企業のもとに赴いて実施するハンズオン・トレーニングを主体としたワークショップである。
現在は「2D開発入門」「3D開発入門」「VR入門」の3タイトルがリリースされており,今後「最適化テクニック」「アーティストのためのワークフロー」「最新バージョンのUnityへの移行」「自動車デザインのビジュアライゼーションの紹介」「カスタムトレーニング」などを随時展開していく予定となっている。
なおUnity認定インストラクターとは,「Unityに対して熱心なエバンジェリストが,すべてのクリエイターに対し,質の高いトレーニングと学習を提供することで,すべてのUnity利用者の能力を高めるトレーニングと学習リーダーのコミュニティ」を指すという。
何が“あそび”を“ゲーム”にするのか?──これからの「あそびのデザイン講座」
「あそびのデザイン講座」は,「ゲーム開発者になりたい」「ゲームを作ってみたい」という子ども達のニーズに応える教材として,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが提供しているコンテンツである。セッションの後半では,本コンテンツの趣旨や今後の展開について,講師を務めるユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの安原広和氏から紹介がなされた。
安原氏は,最初に「ゲームには,ゲームデザインが必要である」と指摘。例えばゲーム開発の演習では,「自由に何でもできます」という作品を作りがちだそうなのだが,それではプレイヤーはすぐに「何をしていいか分からない」状況に陥ってしまう。
安原氏は,ゲームに「楽しい」を生み出すには,「競争」「偶然」「模倣」「めまい」といった要素を使ってプレイヤーに予想・実践させて,結果と比較させてさらなる予想を立てさせるという過程が必要であるとし,それこそがゲームデザインであると語った。
そして,「何が“あそび”を“ゲーム”にするのか?」というのが,本セッションのテーマである。安原氏は,まずヒトの活動の中には「誰かと遊ぶ」というものがあり,その中の「複数の参加者による勝敗(や優劣)を競う」部分をゲームであると定義。その中には,コンピュータと人間が競うことも含まれる。
安原氏は,“あそび”を“ゲーム”にする要素として「プレイヤー」「ストレス」「定量化」「ごほうび」の4つを挙げた。
例えばボールをリフティングして遊んでいるプレイヤーは,ボールを落とすことをストレスと感じる。ボールを落とすと“あそび”がリセットされてしまうからである。このストレスを,安原氏は「プレイヤーが決めた制限=ルールである」とし,「プレイヤーは必ずストレスを想定して遊んでいる」と説明。同時に,「ボールを落とさないよう,長くリフティングを続ける」という目的・目標を想定するとした。
さらにそうしたストレスを意識してプレイを繰り返していくうちに,プレイヤーの中で目的が洗練・純化されていく。繰り返しの中で「さっきよりうまくできた」と実感できれば,「今度はもっと続けよう」という欲求が生まれる。
そうしたときに重要となるのが,結果の「定量化」だ。すなわち結果を数量,時間,成否の回数といった形で数値化することにより,プレイヤーは客観的にほかのプレイヤーと優劣を競ったり,自分自身の記録更新に挑んだりといった“競争”が生まれるのである。
安原氏は,こうした競争が生まれる理由として「“勝利”“優位”(他者よりも優れている証明)は精神的な“報奨”になり得る」ことを挙げ,「よりよくできたという事実は自尊心や自己肯定感を強め,精神に安定や安心をもたらす」「競争に勝ち,安心を得ることはヒトにとって大きな喜びとなる」と説明した。
そうした大きな喜びを,さらに「ごほうび」を与えて褒めることも,また重要であると安原氏は続ける。ストレスの中,いろいろ頑張って制限内で記録を出したとき,「ごほうび」という形でそれが認められると,ヒトは「これでいいんだ」と学習するのだという。さらにその過程を繰り返すことで,どんどん学んでいくというわけである。
ちなみにゲームにおける具体的な「ごほうび」は,「記録を更新したからタイムが大きく表示された」「ボスを倒したからレアアイテムが手に入った」というだけでも十分とのことだ。
セッションの終盤,安原氏は再び「プレイヤー」「ストレス」「定量化」「ごほうび」という要素を挙げ,「逆にいえば,この4つがあれば“あそび”は“ゲーム”っぽくなっていく」とし,今回のセッションで説明した内容が今後の「あそびのデザイン講座」にて掘り下げられていくとまとめていた。
「Unite Tokyo 2018」公式サイト
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