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「Flyers\' Lab #3『運営編』」聴講レポート。スマホゲームの“神運営”を実現するためには,プレイヤーコミュニティと真摯に向き合うことが必須
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印刷2017/12/26 12:00

イベント

「Flyers' Lab #3『運営編』」聴講レポート。スマホゲームの“神運営”を実現するためには,プレイヤーコミュニティと真摯に向き合うことが必須

 Wright Flyer Studiosは2017年12月18日,業界交流イベント「Flyers' Lab #3 『運営編』」を東京都内で開催した。

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 このイベントの前半では「スマートフォンゲームの運営についての取り組み」をテーマに,f4samuraiの佐藤允紀氏,DeNAの香城 卓氏,Wright Flyer Studiosの野澤武人氏らがそれぞれ自社の事例を紹介。後半では,この3名が意見を交わす座談会が行われた。
 本稿で,それぞれの模様をレポートしよう。

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「Flyers' Lab #3『運営編』」聴講レポート。スマホゲームの“神運営”を実現するためには,プレイヤーコミュニティと真摯に向き合うことが必須


f4samuraiがスマホゲーム運用で重視しているポイントとは


 f4samuraiの佐藤氏は,同社が運営開発を手がける「アンジュ・ヴィエルジュ 〜ガールズバトル〜」iOS / Android),「オルタンシア・サーガ −蒼の騎士団−」iOS / Andorid),「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」iOS / Android)などの事例を披露した。

f4samurai 佐藤允紀氏本人とスライドの撮影は禁止のため,掲載していない。ご了承いただきたい
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Flyers' Lab #3『運営編』」聴講レポート。スマホゲームの“神運営”を実現するためには,プレイヤーコミュニティと真摯に向き合うことが必須

 f4samuraiがスマホゲーム運営にあたり重視しているポイントは,「できるだけユーザーに向き合っている時間を増やす」「ダレないように改善のサイクルを作る」「3年以上の運営を前提としてサービスを設計する」の3つ。
 順序が前後するが,最後の「3年以上の運営を前提とする」というポイントに関しては「マギアレコード」もしかり,サービスインの時点で3年以上の展開を想定しタイトルの開発をしていることが明かされた。

 1つめの「できるだけユーザーに向き合っている時間を増やす」に関しては,管理するだけの職種をなくす,社内向けのレポートなどを極力作らない,会議は30分以内に終わらせるといったように,社内よりもユーザーに意識を向けることへの注力を指す。

 また毎朝,スタッフ各自がユーザーサポートなどに寄せられた改善要望や不具合報告をチェック。それらの意見について各担当者が1つずつ状況を明確にし,社内で共有するなど常に緊張感を持ってユーザーと接しているとのことである。

 2つめの「ダレないように改善のサイクルを作る」では,まず各タイトルとも約3か月のサイクルで9種類以上のイベントおよびキャンペーンを提供するようなスケジュールを組み,6か月に1度は新しいイベントなどにチャレンジしているという。

 佐藤氏によると,こうした3か月のサイクルは「前の3か月の動向を踏まえて,次の3か月はこうしよう」といった感じで,振り返りと今後の方針決定をするのにちょうどいいとのこと。さらに「前の3か月は芳しくなかったが,次の3か月は頑張ろう」といったように,スタッフ各自のモチベーションを喚起する側面もあるそうだ。

 また中長期的には,何かとストレスのかかる状況に置かれやすいスマホゲームの運営において,いかにしてf4samuraiの企業理念である「世界に,“一番のワクワク”を届ける『おもしろき ことがあり世に おもしろく』」を実現するかを考えるとのこと。
 この企業理念には,「多く(世界中)の人達がワクワクするようなコンテンツを世の中に生み出すこと,そして働いている自分達も常にワクワクしていられるチーム作り」という意味が込められている。

 たとえば2017年12月初頭に行われたオフラインイベント「f4 ファンフェスティバル」は,佐藤氏自身が企画したもの。企画の背景として,2017年12月に「アンジュ・ヴィエルジュ」が4周年を迎え,「オルタンシア・サーガ」が物語の佳境に差し掛かり,さらに「マギアレコード」はサービスイン後,ゲーム外で今後の展開をユーザーに伝える場が一度もないなど,各タイトルが大事な転機を年末に控えていた中で,2017年に開催されなかったセガ感謝祭などパブリッシャがユーザーを集める大きな情報発信の場が予定されていなかった。

 来場者は1000人近く,配信の視聴者は延べ53万人と反響大きく,新作の制作内容の紹介も行われた。当日に合わせたゲーム内イベントや前後のアップデートなどを半年以上かけて準備したものもあり,準備した新曲やステージのコンテンツに対するユーザーからの感想を目の当たりにして,佐藤氏は思わず涙を流したという。
 佐藤氏は「フェスなんかやる暇があったら,もっとゲーム内でやることがあるだろう」というユーザーの指摘も当然あるとしつつも,「やはりユーザーの皆さんが喜ばれる姿を直接目の当たりにすると,自分を含めスタッフのモチベーションが上がる」と話していた。

 それはプランナーのキャラクターとユーザーに対する理解を重視した結果で,なかなか他人が代われることではないそうだ。また長い運営の中でのさまざまな浮き沈みが,「オルサガ」「マギレコ」のようなのちに続く新しいプロジェクトの参考になり,また,新しいプロジェクトでの試みで長期タイトルの改善に対して参考となるものもある。会社全体として長期運営タイトルがあることの価値を強調していた。

 佐藤氏は,ゲーム内の掲示板について,書き込みをしているユーザーの開始時期やプレイ動向,動作環境などに至るまでを把握し,どのような感覚や気持ちでいるかを想像しながらコメントを受け止めているとのこと。

 その一方で,売上の結果が悪かったとしても,それを理由にメンバーに対策を求めたり,スケジュールや制作内容を変えたりはしないとのこと。これは現在,コンテンツの開発が長期化しているため,目先の利益にとらわれているとクオリティダウンの言い訳になる恐れがあるからだという。佐藤氏は「短期でジタバタするよりも,3か月,6か月のスパンで次にどうするかを考える」と話していた。


DeNA 香城 卓氏によるプレゼン「コミュニティドリブンのゲーム運用」


 DeNAの香城氏は,自身がプロデューサーを務める「逆転オセロニア」iOS / Andorid)における,プレイヤーコミュニティを中心としたサービス施策を紹介した。
 本作は2016年2月にサービスインし,当初はDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)が低迷していたが,11か月めの2017年1月に急成長したという経緯を持つ。香城氏によると,その理由は「逆転オセロニア」チームがサービスイン当初からプレイヤーコミュニティの形成に注力していたからだという。

DeNA 香城 卓氏
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 ここでいうプレイヤーコミュニティとは,ゲーム内のシステムを介して形成されるギルドなどではなく,SNSを筆頭にゲーム外のリアルな場でプレイヤーが自発的に形成するものを指す。
 香城氏は,プレイヤーコミュニティがもたらす効果として,プレイヤーによる攻略情報のやり取りや攻略動画の配信,ファンアートの披露,非公式大会の実施など,「逆転オセロニア」チームが提供するコンテンツを超えるサービス価値の拡大を挙げ,「今や,こうしたコミュニティなしでのサービス成長はあり得ないのではないか」と持論を展開した。

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 それでは,プレイヤーコミュニティ形成のために「逆転オセロニア」チームは具体的に何をやったのかというと,まずオフラインではツアー形式で毎週1〜2回,全国各地でファンミーティングや大会イベント,ネットカフェが行う店舗イベントなどのコミュニティイベントを開催している。
 これらのイベントは豪華ゲストのショーのようなものではなく,あくまでも来場したプレイヤーを中心とした内容で,規模はきちんとコミュニケーションが図れるよう最大でも200名程度にしているという。

 またオンラインでは,まず公式Twitterにキャラクターが登場し,「逆転オセロニア」に関係あるかどうかを問わず,フォロワーであるプレイヤーのツイートに丁寧にリプライし続けている。その結果として,フォロワーの大部分が本作のアクティブユーザーという1つのコミュニティが形成されているそうだ。
 さらにYouTubeでは,別のスタッフが公式チャンネルで「逆転オセロニア」の情報を公開すると共に,プレイヤーのアイデアを募集する企画などを展開している。

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 なお香城氏によると,こうしたオンラインのコミュニティは,1つのアカウントですべてを手がけるのではなく,「Twitterはこの人」「YouTubeはこの人」といったように分けたほうが,全体の参加者数が増えるとのこと。というのも,基本的にコミュニティに参加するプレイヤーは“人”につく傾向があり,アカウントが異なればそれぞれ異なるプレイヤーにアピールできる可能性が生まれるからだ。これを,仮に1つのアカウントに集約してしまうと,「TwitterもYouTubeもコミュニティが盛り上がっているように見えて,実はどちらも同じプレイヤーが集まっているだけだった」という事態に陥ってしまうこともあるという。

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 加えてYouTube Liveでは,大会の模様をライブ配信している。とくに全国大会ともなると,出場選手がどんな人物で,どんな戦い方をするのかを分析するようなコメントがなされ,独特のコミュニティが形成されているそうだ。

DeNAのコミュニケーションアプリ「Mirrativ」を使った配信者コミュニティも形成されているという
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 以上をまとめて,香城氏はプレイヤーコミュニティの形成について,「いろんな場があることが大事」とし,それによって多種多様のコミュニティが生まれ,ひいてはサービスの価値が拡大していくと語った。

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 またプレイヤーコミュニティ形成の副次効果として,プレイヤーと直接顔を合わせてダイレクトな反応を得ることで,「今,ゲーム内が盛り上がっている」「イマイチ,ウケが悪い」ということも読み取れるようになることも挙げられた。その結果,スタッフが1つ1つのプレイヤーアカウントの動向をデータ上の数字の変動としてでなく,言葉を交わした1人の人間の行動として捉えるようになり,サービスに対する姿勢が誠実になっていくという。

プレゼンテーションの最後には,プレイヤーコミュニティとは人のつながりによって形成されるものであり,長い時間をかけて広がるものという認識および周囲の理解が必要という指摘もなされた
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Wright Flyer Studios 野澤武人氏によるプレゼン「運営する準備はできているか!?」


 Wright Flyer Studios 野澤武人氏は,同社がサービス中の「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか〜メモリア・フレーゼ〜」iOS / Android:以下,ダンメモ)の開発体制とターゲティングの事例を紹介した。あらためて紹介しておくと,本作は人気ライトノベル「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」(以下,ダンまち)を原作とした,いわゆるIPもののタイトルである。

Wright Flyer Studios 野澤武人氏
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 まず「ダンメモ」の開発体制については,プロジェクトがスタートした時点から運営を強く意識したものになっていたという。その理由を野澤氏は,現在のスマホゲームにはゲーム性や演出手法,ビジネスモデル,プロデュースなどさまざまな視点が求められており,日々ハードルが上がっているからだと説明。
 そうした状況は,決してプロデューサー1人で掌握できるものではないため,「ダンメモ」では“ヒト,モノ,カネ”を管理するプロデューサーと,開発(品質)の責任者たるディレクターに加え,プロジェクト発足当初から運営の責任者である運営プロデューサーを立てて,三権分立体制を取った。

 もちろん,ほかのスマホゲームタイトルでもサービスインに合わせ運営プロデューサーを立てるところは多いだろうが,本作のポイントは“プロジェクト発足当初から”で,“運営視点で開発に加わった”という部分にある。
 野澤氏によると,この三権分立体制は「ダンメモ」のプロダクトを多角的に分析するのに非常に貢献したとのこと。

 たとえば「ダンメモ」には,当然ながら原作のキャラクターが登場し,それが魅力の1つとなっている。しかし,中には神様や町の住人といったバトルに参加させると不自然なキャラクターもいる。
 そこで本作では,バトルで戦う冒険者をサポートする「アシスト」という役割を用意することで,非戦闘キャラをゲーム中で活躍させることにした……と,ここまでは普通のゲームでもよく見るアイデアである。

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 「ダンメモ」では,これに加えて集客(プロデューサー)と運営(運営プロデューサー)の視点を加え,プロダクトとしてのブラッシュアップを図っている。
 例えばアシストに区分されるキャラクターは原作における人気が高いケースが多いため,集客の視点からはより目立たせたいところだ。そこで本作では,バトル開始時のアシストスキルは発動のタイミングと,バトル終了時のリザルト画面で,アシストキャラのボイスを再生し,存在感をアピールする仕様を採用した。

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 また運営視点で見ると,アシストキャラはあくまでも補助的な存在であるため,ユーザーにとっての価値を保てるかどうかと問われると怪しい部分もある。そこで「ダンメモ」では,アシストキャラを冒険者の性能アップに大きく寄与する存在とし,かつ冒険者よりレアにすることで,その価値を大きく高めたのである。

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ストーリーパートを「交流パート」と「ノベルパート」に分け,それぞれ仕様を変えることで,キャラゲーとしてのボリューム(開発),ストーリーのボリュームと声優陣によるフルボイス(集客),実装工数の短縮(運営)という3つの要素を担保した事例も紹介された
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 また「ダンメモ」では,ターゲットとなるユーザーの絞り込み,すなわちターゲティングを非常に重視したという。具体的には,本作をインストールするユーザー数を見積もるさいに,「スマホゲームユーザー」で「原作である『ダンまち』を知っている人」かつ「『ダンまち』のスマホゲームがあったら遊びたい」という絞り込みを行ったとのこと。

 正直,マーケティングを少しでも知っている人だと「絞り込みがザックリしすぎなのでは?」と思うかもしれないが,野澤氏によるとサービスインから半年経った現在,本作のユニークインストール数は,この見積もりとほぼ一致しているという。当然,事業規模はインストール数の見積もりをベースに決定しているのだから,本作のビジネスは見事に成立していることになる。

 野澤氏は,この結果をもとに「『ダンメモ』の場合は,原作である『ダンまち』のファンベースが大きかったため,ファンにターゲットを絞ってもビジネスが成立した」とし,「これがもっと規模の小さな原作であれば,『人を集めるために導入をもっと分かりやすくしなければ』などと迷うことになったかもしれない」と話していた。

 また「ダンメモ」ではサービスイン前にユーザーアンケートを行い,その結果を受けて本作に求められている要素を絞り込み,さまざまな部分に反映させている。たとえば本作のユーザーはキャラクターや世界観に惹かれている一方,バトルへの関心が低いため,キャラクターの成長にスポットを当てたゲーム性となっている。

 また別のアンケートでは,声優ファンが多いことや,女性の「ダンまち」認知率が低いことが判明しているとのことで,プロモーションもそれに合わせているという。

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「ダンメモ」は,同じくWright Flyer Studiosが手がける「アナザーエデン」と技術基盤を共有しており,画面レイアウトも似通っているが,ゲーム性はかなり異なる。「アナザーエデン」がコンシューマのRPGファンに向けて,バトルに注力しているのに対し,「ダンメモ」はオートバトルを導入するなど簡易化を図っている
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「ダンメモ」のプロモーションでは,声優陣によるゲーム情報番組に加え,別の声優陣によるゲームとは関係のない企画をメインに据えた番組を配信している。これは後者で集客を行い,同じチャンネルで配信している前者に誘導するという狙いがあるとのこと
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 野澤氏はこれらの結果を受け,「ターゲティングを重視したことにより,迷いのない開発を実現し,その成果が広くユーザーに受け入れられることとなった」とまとめていた。


3名の登壇者が考えるスマホゲームの神運営とは


 3名の登壇者による座談会の最初のテーマは,「長く続いていく運営を支える工夫は?」。

 香城氏は,「いかにして事業を成立させるか」という部分と人員体制がリンクしているとし,「半年から1年先を見据えて,体制を整えていくことが重要」と述べる。実際,「逆転オセロニア」では11か月めにDAUが急増したわけだが,それまでの間,社内では理解を得られないことも多かったとのこと。しかし香城氏は「規模こそ違えど,Riot Gamesが『League of Legends』の運営で採っていた手法だから,日本でもイケるはず」と信じて,上記のとおり各地を回っていたそうだ。

 また「逆転オセロニア」チームでは,イベント来場者のデータを追跡する調査を行っており,「イベントに来るプレイヤーは,数が少なくともロイヤリティが高い」という分析結果を会社に報告していたことも,イベントを継続できた理由の一つだったという。

座談会のモデレータを務めたのは,Wright Flyer Studiosの下田翔大氏(写真左)
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 そうしたユーザーコミュニティを重視する施策に関して,佐藤氏はf4 ファンフェスティバルの企画にあたり,以前パブリッシャが実施したオフラインイベントをきっかけに,休眠から復帰するユーザーが目に見えて増加したことを参考にしたと語った。
 また野澤氏は,「(自身も含め)かつての数字偏重のソーシャルゲーム時代を知っている人達が,今,ユーザーの満足度を高めることに注力し,その対価として課金していただくという考え方にシフトしているのではないか」と分析していた。

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 長期運営という意味では,4周年を迎え5年目に入る「アンジュ・ヴィエルジュ」はまさに長きにわたって続いているわけだが,佐藤氏によると,エンジニアが一定周期でほかのプロジェクトに移っていくのに対し,プランナーはずっと変えないという。それはプランナーのキャラクターとユーザーに対する理解を重視した結果で,なかなか他人が代わりにできることではないそうだ。
 また長い運営の中では,さまざまな意味で浮き沈みがあるが,それが「マギアレコード」のような新しいプロジェクトの参考になっているとのこと。

 2つめのテーマは,「運営において絶対にやっていること,逆に絶対にやらないこと」。
 佐藤氏は,公式掲示板における書き込みについて,どのようなユーザーが行っているのか,ゲームの開始時期やプレイの動向などに至るまでデータで把握し,相手の立場を考えてチェックしているという。
 その一方で,売上が低いことに関してスタッフを怒らないようにしているそうだ。これは現在,コンテンツの開発が長期化しているため,目先の利益にとらわれているとクリエイティブのクオリティが下がってしまう恐れがあるからだという。佐藤氏は「短期でジタバタするよりも,3か月,6か月のスパンで次にどうするかを考える」と話していた。

 香城氏は,プレイヤーコミュニティを観測し,その結果を意思決定の参考にしているとのこと。
 加えてデータでは,「長く楽しんでもらえている」という指標としてDAUと継続率を重視しており,この2つの数字が下がっているときは何か問題があるのではないかと疑うという。また,イベント来場者の追跡調査で,顔を知っているプレイヤーがログインしなくなっていることを知ったときは,相当ヘコむとも話していた。

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 野澤氏は,原作のあるIPタイトルを扱っているということで,朝会でスタッフが集まったときに必ず「ダンまち」にまつわるクイズを出しているそうだ。これには,スタッフの原作に対する興味関心を維持する狙いがあるとのこと。

 最後のテーマは「何をもって“神運営”を実現しているといえるのか」。

 香城氏は,回答が難しいとしつつも,「もしかしたら,プレイヤーの皆さんに楽しんでいただける状況を提供し,その対価を得られている状況を指すのではないか」と語った。
 また野澤氏は,「(佐藤氏が指摘したように)短期的な売上のリカバリーが難しくなり,中長期的な視点が必要とされるようになったことが,スマホゲームの健全化を高めているのではないか」とし,「かつてよくいわれたユーザーvs.運営という対立がなくなり,今では運営チームが『1人のユーザーとして,これはゲームとして面白い』と思えるかどうかが重要になっている」と見解を述べた。
 そして佐藤氏は,「自分達のやっていることが神運営とはとてもいえないが」と前置きし,「長く運営を続けていく上では,ユーザーの皆さんが楽しんでくださること,喜んでくださることの継続が大切」とまとめていた。

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