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プロデューサーの仕事,そして必要な資質とは。DMM GAMESの花澤氏とXFLAG スタジオの多留氏が登壇したトークイベントをレポート
今回は,DMM GAMES エグゼクティブプロデューサー 花澤雄太氏とミクシィ 取締役 XFLAG スタジオ モンスト事業本部長 多留幸祐氏が,それぞれのゲーム作りに対する取り組み方や今後の展望について対談形式で語った。
最初の話題は,「XFLAGとDMM GAMESの今」で,両氏はオリジナルIPの創出やe-Sportsなど,さまざまな取り組みにも力を入れていると語る。加えてDMM GAMESではアジアへの進出,とくに中国との業務提携に力を入れているという。
DMM GAMES エグゼクティブプロデューサー 花澤雄太氏 |
ミクシィ 取締役 XFLAG スタジオ モンスト事業本部長 多留幸祐氏 |
またXFLAG スタジオでは,主力の「モンスターストライク」(iOS / Android,以下,モンスト)をさらに拡大していくだけでなく,ほかのIPについてもさまざまな展開にチャレンジするとのこと。例えばモンストは,2016年12月に劇場版アニメ「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」を公開したが,映画館を訪れると限定クエストが配信されたり,ガチャを回せたりといったゲームとの連動要素を用意していた。2017年もアニメとゲームとの連動,飲食店とゲームとの連動など,新しい取り組みを行っている。
多留氏はこれらの施策について,「誰か一人が,というわけではなく,チーム全体で意識してやったこと」とし,モンスト以外のIPでも,こうした取り組みを続けていくと説明した。
次の話題は,「新規案件を立ち上げるフロー」。DMM GAMESでは2週間に1回,決裁会議で新規案件のプレゼンテーションを行う機会があるが,その際に使う資料は表紙を含め4枚以下の用紙にまとめなければならない。そのため,プレゼン自体は早ければ3分程度で終わってしまうそうで,花澤氏自身,入社した当時は上層部の決断の速さに驚かされたという。
そうした決断の速さには,上層部が「どの会社と協力するか」「どんなクリエイターを起用するか」といった座組み,予算,ターゲット層などの実現性に関わる部分のみをチェックしていることが挙げられる。それ以外のゲームの内容については,プロデューサーに一任され,上層部が口出しをすることは基本的にない。
花澤氏は,「プロデューサー冥利に尽きる」とする一方,「成功するか失敗するかは100%プロデューサーの責任」という無言のプレッシャーを感じると話していた。
それでは決裁会議に新規案件を上げる前はどうやって企画を練っているかというと,DMM GAMESでは所属する部署の方針次第で,決まったやり方はないという。
例えば,ある部署では本数は少なめだがしっかり作り込む。花澤氏率いる花澤部では,さまざまな人の協力を得て確度の高い企画を作るという手法を採用している。具体的には,部署内で上がってきた企画をストックしておき,外部の人と話しているときに「それならこういう企画がある」と提案して実現に持っていくケースが多いそうだ。
一方,XFLAG スタジオでは,パートナーやデベロッパから持ち込まれた企画がイケるとなったら,社内のプロデューサーを付けて実現に持っていくケースと,社内スタッフの企画を実現するケースの2パターンに集約される。
ただし,企画は「面白ければ何でもいい」というわけではなく,XFLAG スタジオでは「みんなと一緒に熱く盛り上がれる場所を創る」という戦略コンセプトのもと,プレイヤー同士が顔を合わせて遊べるマルチプレイのゲームしか作らない。そこにはモンストで培ったノウハウやナレッジを追求し,横に展開していくという意図があるとのことで,多留氏は「なんでもかんでも面白ければ良いというわけではなく,こうした制約があるほうがプロジェクトを進めやすい」と語った。
また企画が通り,実際に開発に入ったゲームは,αバージョン,βバージョン,リリースバージョンと3回の社内審査を経て,ようやく世間に配信される。そのため,例えばβバージョンまで開発が進んでもリリースに至らないケースも生じるのだが,多留氏はこれを「選択と集中」と説明する。スマートフォンゲームは一度リリースすると運営を続ける責任が発生するため,そのリソースを割くに値するかどうか,リリース前にしっかり判断しているというわけだ。
こうしたXFLAG スタジオのスタンスについて,多留氏は「僕らには空振り三振かホームランしかない。ヒットは狙わず常にフルスイングしている」「次は10年かかるかもしれないが,それが僕たちの戦略」と話していた。
さらにXFLAG スタジオでは,デベロッパと協業する場合,先述の「顔を合わせたマルチプレイ」などXFLAGのコンセプトを理解してもらいながら開発してもらうために,そのスタッフ全員を社内に常駐させてゲーム開発を進めるという。
というのも,開発スタッフ同士が日頃から顔を合わせて意思疎通を図らないと,売上が思うように上がらないなどのネガティブ要素が生じた場合に,「やはりオンラインマルチプレイが必要なのでは」といったような,XFLAG スタジオのコンセプトに反する意見も出てくるからなのだそうだ。
XFLAG スタジオとしては,「顔を合わせたマルチプレイ」のゲームしか作らないと決めているので,そうした意見を議論するのは時間の無駄でしかない。そこで最初から意思の統一を図るため,開発に関わるスタッフが一緒に作業できるようにしているのだという。
続いての話題は「ゲーム以外の展開」。例えばモンストはアニメ化したが,多留氏は誰もが所有しており,常に持ち歩くスマートフォンで遊べるゲームならではの展開ができないか,常に考えているという。
その結果の1つが外食産業など他業界とのコラボレーションであると語った。また,直近では3月31日と4月1日に音楽フェス「VANS WARPED TOUR JAPAN 2018 presented by XFLAG」が開催される。多留氏は「『何でXFLAGが?』と言われることもあるが,こういうことをやっていかないと我々自体の印象も変わらない。やり続けて文化を変えていくことは,気持ちいいし楽しい」と説明した。
花澤氏は「刀剣乱舞-ONLINE-」の舞台を例に出し,「舞台は自分の知らない世界だったが,実際に目の当たりにするとクオリティが高く、お客様の熱もすごい! ゲームとの相性もよく,これは広がっていく世界だと感じた」と感想を述べ,自身もゲームだけでなく,もっと総合的なエンターテイメントのプロデューサーにならないと,いつか限界が来て取り残されてしまうと語った。
すなわち,食わず嫌いをせず,敏感に世間の新しい潮流に反応し,熱のある人の声に耳を傾け,さまざまな分野の専門家の協力を得てプロジェクトを進めなければならない時代が来ているというのが,花澤氏の見解である。
こうしたゲーム以外への展開について他者から提案されるとき,多留氏も花澤氏も最初はピンと来ないことが多いという。しかし実際にやってみると,ほとんどのケースで「なるほど」と思わされるそうだ。多留氏は「最初はよく分からないと思っても,やってみると成長できる」とし,花澤氏も「それがないと飽きられ,先細りになってしまう」と同意していた。
話題は「海外展開」にも及んだ。最初の話題に出たとおり,DMM GAMESではアジアを中心に世界各国の企業と提携している。少し前は日本のゲームを海外に展開したり,逆に海外でヒットしたゲームを日本で展開したりしていたが,花澤氏によると最近ではそうした国や地域の垣根がなくなりつつあるという。
というのも,現在はデベロッパこそ日本だが,実際には中国などのスタジオが開発に関わっているケースも少なくないため,「日本向け」「中国向け」といった作り分けをする意味がなくなっているからである。そこで,あらかじめ機能の一部をオミットできるようゲームを作っておき,国や地域に合わせた仕様でリリースしているという。花澤氏は,「市場を広く見て,広く作ることを心がけている」と表現していた。
多留氏は,モンストをもっと多くの人に楽しんでもらいたいとする一方,「顔を合わせたマルチプレイ」というコンセプトを保って海外に展開するには,乗り越えなければならない壁があるとする。例えば日本と嗜好の近い台湾は比較的スムーズに話が進むが,物理的な問題で展開が厳しい地域もあるようだ。
現段階で「顔を合わせたマルチプレイ」のゲームを普及させるのが難しい地域もあるが,多留氏は「そういう文化がないのであれば,逆に文化を創れるチャンスがある」とし,「XFLAG スタジオは,常にチャレンジし続ける」と意気込みを見せていた。
最後の話題は,「プロデューサーとして,何を意識しているか」。花澤氏は「適材適所」を意識しているとし,一番難しいのはスタッフの「やりたいこと」と「やれること」の違いだと語る。実際,花澤氏自身もゲーム業界を志したときは「ドラゴンクエスト」のようなゲームで多くの人を楽しませるゲームデザイナーを目指していたそうだが,現在の仕事はマネジメントが主体となっている。
多留氏も「ゲーム開発はチームプレイ」とし,「チームが優勝すれば,メンバー全員の給料が上がる」と,花澤氏の言う適材適所に同意。実際,XFLAG スタジオでは,自分に適した仕事で高い結果を出したスタッフを評価するシステムを採用しているそうだ。
その一方で花澤氏は,「昔ながらの考え方なのか,ポジションに優劣を付けて,良いポジションでないとダメと考えてしまう人が多い。『やれることで結果を出せばいい』と言い続けなければならない」と,スタッフの意識を変えることの難しさを語った。
もちろん,両氏の適材適所の考え方は,「絶対これがやりたい!」と考える人を否定するものではない。あくまでも,両氏がプロデューサーとしてゲーム開発に関わってきた中で培ってきた持論である。多留氏は「人生は人それぞれのもので,かつ1回きりなのだから,思うように生きてほしい」と話していた。
また多留氏は,プロデューサーを「コンセプトやビジョンを決める存在」「誰よりも,そのコンセプトやビジョンにコミットし,どんな手段を使ってもその魅力を広げていく存在」と表現。とくに魅力を広げるためには,固定概念を捨て,いろんなイメージを持てることが重要だとする。
花澤氏も同意しつつ,「プロデューサーには『こういうゲームを作りたい』という思いより上の,『エンターテイメントビジネスとして成功させたい』という目的があり,それを叶えるための手段の1つとしてゲームを作っている」と話し,「だからXFLAGさんの音楽フェスへの協賛のようなことはすごく分かる。一見場違いなことをして反感を買っても,目的が叶うのであれば問題ないと考える」と述べた。
多留氏は,ゲームの開発にあたって,特定のチームをアサインすることなく,プロデューサーが立てた企画のコンセプトやビジョンに魅力を感じ,賛同した人材だけがコアメンバーとなるのが理想だとする。これは上記のとおり,コンセプトやビジョンを理解したスタッフ同士であれば,無駄な議論が発生しなくなるからだ。それでなくとも,予想外の問題が発生しやすいゲーム開発においては重要なことである。
さらに花澤氏は,DMM GAMESが年1回実施する企画コンテストの事例を紹介した。最近では,単なる企画書を提出するだけでなく,イラストレーターやエンジニアの協力を得て,イラストを付けたり,簡単なモックを作ったりしてプレゼンするケースも増えているという。
花澤氏は「自分の中だけで完結するのではなく,ほかの人に提示してコンセプトやビジョンを共有したり,意見をもらったりしている。企画自体が面白いかどうかはまた別の話だが,それができる人はプロデューサー的な考え方を持っている」と話していた。
さらにプロデューサーは,同時進行で複数タイトルの開発に関わることも珍しくない。そのため,1つ1つのタイトルに対する関わり方が薄くなる半面,責任はすべて負わなければならなくなる。花澤氏は「2〜3億円の予算をかけたプロジェクトを閉じるときは,膝をつくレベルのショック」とし,「それを成長の糧に変える,折れない心の強さが必要」と,プロデューサーの心構えを示した。
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