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「そうだ アニメ,見よう」第73回は“渋谷転送”を描いたオリジナルSFアニメ「revisions リヴィジョンズ」。井出Pが語る今後の見どころとは
「海外にアニメカルチャーを広げたい」というコンセプトで,2018年10月からフジテレビが新設したアニメ枠「+Ultra(プラスウルトラ)」。日本国内だけでなく,海外に向けて高品質のアニメを発信することを目的にしたこの枠の作品は,日本での放送のみにとどまらず,Netflixにて世界中で視聴可能になる。第1弾はゲームとのコラボ作品「INGRESS THE ANIMATION」,2019年1月からは「revisions リヴィジョンズ」がスタートしている。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第73回は,オリジナルSFアニメ「revisions リヴィジョンズ」。制作は「永遠の0」や「ALWAYS 三丁目の夕日」などを手がけたスタジオ「白組」,シリーズ構成・脚本は深見 真氏と橋本太知氏,監督は「プラネテス」や「コードギアス 反逆のルルーシュ」の谷口悟朗氏が務めている。
「revisions リヴィジョンズ」
「これは予言よ。あなたたち5人に,いつか大変な危機が訪れるの。そのときみんなを守れるのはあなた」
そんなある日,大介は幼馴染みの張・剴(ガイ)・シュタイナー(CV:島﨑信長),張・露(ルウ)・シュタイナー(CV:高橋李依),手真輪愛鈴(CV:石見舞菜香),浅野慶作(CV:斉藤壮馬)と一緒に,不可思議な現象“渋谷転送”に巻き込まれる。学校を含む渋谷の中心部が跳ばされたのは300年以上先の未来で,そこで待っていたのは,広大な荒野と森,点在する廃墟,そして巨大な機械の化け物だった。
化け物「シビリアン」になすすべもなく蹂躙されかけたそのとき,ミロと瓜二つの女性が現れ,大介達だけが操縦できるという人形兵器「ストリング・パペット」を提供,皆を守れと促した。
大介は,ついに訪れた危機と手に入れた力に歓喜するが,幼なじみ5人の絆は誘拐事件の影響でバラバラとなっていた。
シビリアン撃退後,ミロは自分は未来人であり,「アーヴ」と呼ばれる組織に所属していること,シビリアンを操る未来人「リヴィジョンズ」と敵対していることを大介達に打ち明けた。さらに,彼らを元の時代に帰す算段があることも彼らに告げ……。
英雄願望の強い大介の“イタイ”言動に周囲は振り回される |
再会を果たしたミロ。だが,彼女は大介達のことは覚えてないという |
東京・渋谷の街が300年以上先の世界に転移するという,ショッキングなオープニングでスタートしたのが本作「revisions リヴィジョンズ」だ。タイムスリップものというと往年の名作「漂流教室」を思い起こす人も多いだろうが,こちらは跳ばされてしまうものが“街が丸ごと”と,これまでにないスケールとなっている。
駅を中心にした球状に切り取られた渋谷 |
当然巻き込まれた人数も数万人という規模になるのだが,「青春“災害”群像劇(ジュブナイル・パニック・アンサンブル)」と謳われる本作は,その中でも“渋谷転送”に巻き込まれた5人の若者を中心に進行していく。というのも,主人公の大介と幼馴染みの4人は,幼いころに物語の鍵となる人物・ミロに出会い,大変な危機の訪れを示唆されていたからだ。
なぜ,この5人なのか? 物語はその謎を軸に,少年少女達の心の葛藤と成長,帰還を望む大人達の思惑を交えてスリリングに展開していく。
大介達5人は,かつてのような仲の良いグループに戻ることができるのか |
感情豊かなCGキャラクターに注目
本作では,ほぼすべてのシーンが3DCGで表現されている。そのため,CGならではの軽快な戦闘シーンや,リアルに表現された渋谷の街並みがリアルな質感を伴って登場するが,注目すべきはキャラクター達の人間味あふれる演出だろう。
前半話数では,モーションキャプチャを使用して,キャラクターの動作のリアルさを表現。細やかで感情豊かな動きに仕上げている。
CG監督の平川孝充氏は,「キャラクターの動きや表情,リアリティを出すため背景にも力を入れてます。主人公はもちろんその他のキャラクターの表情や感情の揺れ動きに注目してほしい」と語っており,キャラクターの細かい動きだけでなく,フェイシャル(表情)アニメーションにも力を入れていることを先行上映会でアピールしていた。
CGで描かれたキャラクター達の“演技”にも注目したい |
井出和哉プロデーサー(白組)が語る「revisions リヴィジョンズ」の魅力
第4話が放送され,いよいよ敵側の勢力となる「リヴィジョンズ」のキャラクター達が本格的に動き出した。「人類救済」を謳う彼らの真意がどこにあるのか。また,英雄を夢見る大介の暴走と彼に振り回される仲間達の軋轢は解消されるのか。気になる今後の展開を白組のプロデューサー・井出和哉氏に聞いてみた。
渋谷が丸ごと300年以上先の未来に転送されてしまうという,異色な展開でスタートする本作ですが,この企画が立ち上がった経緯をお聞かせください。また,なぜ“渋谷”なのでしょうか。
井出和哉氏(以下,井出氏):
企画会社のスロウカーブさんが,原案プロットを考案し,谷口悟朗監督に相談したのが最初です。白組にも早い段階でスロウカーブの尾畑聡明プロデューサーからお声がけいただき,参画させていただきました。フジテレビさんやネクソンさんも決まり,全体的なお話作りがスタートしました。
渋谷を選んだきっかけは,現実的な制作物量を図るための舞台設定をしたかったのですが,シリーズ構成の深見 真さんから「どこかの街が未来に跳んでしまう」というアイデアが出てきました。最終的にフジテレビさんの新枠「+Ultra」のコンセプトでもある,世界に発信する日本のアニメというのもあり,海外の方にも認知度のある「渋谷のスクランブル交差点」に決まっていった,という感じです。
4Gamer:
今回のアニメ制作は白組が担当されていますが,CGアニメーションを選択されたのはなぜでしょうか。
井出氏:
尾畑プロデューサーとは元々,オリジナル企画を一緒にやりたいという話をしていました。その流れで,この企画が出てきたのですが,プロットの段階で群衆が出てきたり,メカが出てきたりとCGアニメーションとの親和性が高い企画でした。白組はCGでの映像制作をメインとしたプロダクションでもあったので,谷口監督にも了承していただき,CGアニメーションでの制作となりました。
4Gamer:
本作は「青春“災害”群像劇(ジュブナイル・パニック・アンサンブル)」と謳われています。このテーマを選んだ理由は?
井出氏
SFの要素を入れた青春群像劇を描くにあたり,そのシチュエーションに“災害”を持ってきています。未来に転送され日常が一変する状況はまさしく“災害”であり,そこで主人公達がどのように感じ,行動するのか。普通の日常ではないことが重要でした。
4Gamer:
堂嶋大介,張・剴(ガイ)・シュタイナー,張・露(ルウ)・シュタイナー,手真輪愛鈴,浅野慶作,そしてミロは,それぞれ個性的なキャラクターですが,彼らの性格付けといった設定はどのように行われたのでしょうか。
井出氏
オリジナル作品なので,お話を作る工程で,キャラクターが形成されていきました。特に大介に関しては,内山昂輝さんの起用が委員会側で決まっていたことから,谷口監督が内山さんの声質だからこそのキャラクター性にしていった,と聞いています。
強烈な個性を放つ大介,ガイは正統派の主人公,ルウは明朗快活な少女,手真輪ことマリマリは等身大の女子高校生,慶作は仲間を繋ぎとめる役割を,という個性が生まれました。ミロは,作品のナビゲーターとして,大介達や視聴者を導く存在でもあります。1話冒頭に登場するミロと,その後未来で大介達が再会するミロとの違いが,謎めいたキャラクターとして,この作品を盛り立ててくれています。
4Gamer:
主人公の堂嶋大介は,「英雄願望」を持った,かなり特異な性格だと感じます。視聴者の共感も得にくいと思われますが,この性格設定にはどのような意図が?
井出氏:
先の問いの通り,谷口監督が考える,内山さんの声質を念頭に置きつつ,お話を作っていった結果,あの大介になりました。過去にミロに命を助けられ,かけられた言葉は,大介にとって強烈な記憶として残ります。彼が成長していった時に,きっとこうなるんだろうと。確かに受け入れられない視聴者もいるであろうと,谷口監督含め,委員会メンバーも想定していました。
しかし監督は,例えばアムロ(機動戦士ガンダムの主人公)もそうであったように,決していなかった主人公像ではないと仰っています。内山さんの演技もあり,予想以上に強烈な主人公になったのは確かですが。
4Gamer:
パニックに陥るほかの大人達と比べ,一部の大人達は冷静に行動しているように感じます。区長の牟田誠一郎や渋谷警察署の署長・黒岩亮平など,クセのある大人のキャラクター達は,この物語でどういった役割を担っているのでしょうか。
井出氏
1クールという尺の構成上,実際描き切れていませんが,牟田や黒岩があの状況を受け入れるにおいては,ミロからの情報提供などが大きくあります。そもそも事実として,目の前に広がる荒野,謎の巨大な機械の化け物,ストリング・パペットなど,状況的にそうせざる得ないというのもあったかと思います。未来へ転送された渋谷には役所や警察署があり,そういった組織が特殊な災害時にどう行動していくのか,大介達子供だけのお話ではなく,大人達とどう向き合っていくのか,群像劇として描く上では重要な役割を担ってくれています。
4Gamer:
現代の渋谷を描いているということで,背景や登場する車両や人物がリアルに描写されていると感じました。それと対比するように,ストリング・パペットのようなオーバーテクノロジーの産物が存在し,こちらも緻密な設定が話題を呼んでいます。こうしたメカニックの考証にはコンセプトが存在するのでしょうか。
井出氏:
まだ放映中なので,はっきりとしたお答えができませんが,2系統の技術的躍進が混在している設定です。第2話でミロが「世界はパンデミックで滅んだ」と大介達に伝えますが,そこで一瞬にして世界が終わったわけではなく,人類としては2388年も存続しています。あくまで現在の技術の延長線上であるというのを意識し,設定を考証しています。
4Gamer:
本作はコミック,小説,ゲームとさまざまなメディアで展開されていますが,今後ほかのメディア(例えば実写映画やドラマ)などへの展開は考えられていますか。
井出氏:
この作品では最初から多角展開を目的としていましたので,ゲームもそのうちの一つです。現状でお答えできる情報はありませんが,志的にはハリウッドで映画化されるような作品に育てていければと製作陣一同考えています。
4Gamer:
本作はNetflixでの,全話配信が先行して行われていますが,これはどういった意図からですか?
井出氏:
フジテレビの新枠「+Ultra」において,Netflixへの配信は最初の方から大枠は決まっていました。キー局であるフジテレビさんがこういった決断をするのは画期的ですし,新しい視聴スタイルを作ろうとしている大変意義あることかと思います。
ビジネス的な側面がもちろん大きいですが,フジテレビの森彬 俊プロデューサーが,「タイトル数の多い最近では,先の展開が見えづらい作品は最後まで見てくれないリスクがある。Netflixで全話見てくれた人が面白いと言ってくれれば,安心してTVでも視聴を継続してくれると思う」とひとつの意図を言っていました。製作陣としては,見てくれれば面白いという自信を持っています。
4Gamer:
個人的にお気に入りのキャラクターやエピソードがありましたらお聞かせください。
井出氏:
どのキャラクターもお気に入りです。大介も突き抜けていますが,時折見せるチョロい部分はだいぶ可愛らしいかなと。あえて選ぶのであれば,個人的にはルウでしょうか。谷口監督は,群像劇なので,自分の気に入ったキャラクターを見つけて追うのも楽しみのひとつと仰っています。優秀だけど,同じく優秀な兄のガイの後ろにいるルウが最後にどう成長していくのか,ぜひ注目してみて下さい。
4Gamer:
この記事の掲載時点で,第4話が放送されています。第5話以降の見どころ,読者へのメッセージをお願いします。
井出氏:
第4話で第一次帰還者達を救った大介達は黒岩署長の思惑も相まって,人々からヒーローのように扱われていきます。状況の変わった大介達の関係が,どうなっていくのかが見どころです。失脚した牟田は? ミロとアーヴの目的の真意とは? リヴィジョンズ側の次なる一手は!?
第4話,第8話,第12話とお話が大きく展開していく構成になっています。TVで毎週視聴して頂くのももちろんですが,Netflixにて一気見しても駆け抜けられるドラマになっています。引き続きお楽しみいただければと思います。ご視聴がまだの方もぜひ!
4Gamer:
ありがとうございました。
タイムスリップにパニックもの,さらにSFアクション,少年少女達の群像劇と,さまざまなエッセンスが詰め込まれた本作。この暴れ馬のような作品をベテランの谷口監督は,テンポのいいシナリオと演出で手綱を握り,見事に制御している。作品中に登場する暴れん坊の大介もきっと乗りこなしてくれるに違いない。先の読めないオリジナル作品だけに,今後の展開が楽しみだ。
なお,本作をモチーフにした新作モバイルゲーム「revisions next stage」が,ネクソンより年内に配信されることが決定している。詳細はまだ不明だが,アニメを序章とする,その後の世界を描いたストーリーが展開されるという。ティザーサイトがオープンしているので,気になる人は,こちらをチェックしておこう。
「revisions リヴィジョンズ」公式サイト
「revisions リヴィジョンズ」公式Twitter
「revisions next stage」ティザーサイト
放映データ |
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2019年1月〜 |
キャスト | |
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堂嶋大介:内山昂輝 | |
ミロ:小松未可子 | |
張・剴(ガイ)・シュタイナー:島﨑信長 | |
張・露(ルウ)・シュタイナー:高橋李依 | |
手真輪愛鈴(マリマリ):石見舞菜香 | |
浅野慶作:斉藤壮馬 | |
チハル・イスルギ:日笠陽子 | |
ムキュー・イスルギ:田村ゆかり | |
ニコラス・サトウ:大塚芳忠 |
スタッフ |
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原作:S・F・S |
監督:谷口悟朗 |
CG監督:平川孝充 |
シリーズ構成:深見 真/橋本太知 |
キャラクターデザイン原案:近岡 直 |
メカデザイン:新井陽平 |
CGキャラクターデザイン:白井 順 |
BGコンセプトアーティスト:白田真人 |
MattePaintディレクター:大西 穣 |
美術・設定:坂本 竜 |
色彩設計:長尾朱美 |
撮影監督:高橋和彦 |
編集:齋藤朱里 |
音響監督:明田川 仁 |
音楽:菊地 梓 |
オープニングテーマ:THE ORAL CIGARETTES「ワガママで誤魔化さないで」(A-Sketch) |
エンディングテーマ:WEAVER「カーテンコール」(A-Sketch) |
企画:スロウカーブ |
アニメーション制作:白組 |
制作:リヴィジョンズ製作委員会 |
放送情報
フジテレビ「+Ultra」にて
毎週水曜日24:55から放送中
NETFLIXにて日本先行全話一斉配信
ほか各局にて放送
関西テレビ/東海テレビ/テレビ西日本/北海道文化放送/BSフジ
(C)リヴィジョンズ製作委員会
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