連載
「そうだ アニメ,見よう」第77回は人気コミックをアニメ化した「約束のネバーランド」。少年少女達の息詰まる心理劇を描いた話題作
少年少女達の生死を懸けた脱出劇を描いた,白井カイウ氏&出水ぽすか氏原作のコミック「約束のネバーランド」(集英社刊/既刊12巻)。「週刊少年ジャンプ」で連載中の本作は,そのサスペンスフルな内容が話題を呼び,「このマンガがすごい! 2018 オトコ編」1位や,第63回「小学館漫画賞」少年向け部門など,数々の漫画賞を受賞した作品だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第77回のタイトルは,同作をアニメ化した「約束のネバーランド」。制作はCloverWorks,構成/脚本は大野敏哉氏,監督は「君と僕。」や「すべてがFになる」の神戸 守氏が務めている。
なお,今回は作品の性質上,ネタバレを含んだ内容になるので注意してほしい。
「約束のネバーランド」
ハウスでは“ママ”と慕われるシスター・イザベラ(CV:甲斐田裕子)のもと,子供達は特殊な勉強とテストで“優秀な子供”へと育て上げられ,6歳から12歳までの間に里親の元へと送り出される。そう子供達は教えられていた。ハウスの中でもトップの成績を誇るエマとノーマン,レイ。3人は幸せで穏やかな暮らしがずっと続くと思っていた。
そんなある日,まだ幼いコニー(CV:小澤亜李)に里親が見つかり,ハウスから離れることになった。コニーが旅立つ当日,人形を置き忘れたコニーにエマとノーマンはそれを届けようと,近づくことを禁じられていた門へと足を運ぶ。しかし,2人はそこでコニーが得体の知れない“鬼”に殺されていたのを目撃してしまう。
自分達が“鬼”の食料であることを悟ったエマとノーマンは,レイやドン(CV:植木慎英),ギルダ(CV:Lynn)ら年長組に事情を打ち明け,ハウスからの脱獄計画をスタートさせるのだった。
楽園だと信じていた場所が実は「人間飼育場」だったら? そんな地獄のような環境から脱出しようとする少年少女達と,それを阻止しようとする管理者サイドの,息詰まるような攻防を描いたのが「約束のネバーランド」だ。この設定を知ったとき,筆者は往年のSF映画「ソイレント・グリーン」(1973年公開)を思い浮かべたが,本作の舞台は,出自も明らかになってない“鬼”が支配するディストピアと,いささか事情が異なる。
親がいないということ以外,満ち足りた環境で育ったエマ達 |
そして,エマ達が相手にするのは,その“鬼”の手先となる大人達だ。優秀だとはいっても,エマ達はまだ12歳に満たない子供。しかもエマは年長組だけでなく,38人全員での脱出を試みとようとする。監視者はシスターだけだが,周囲を高い塀に囲まれた箱庭のような環境で,どうやら子供達の身体には発信機が埋め込まれているらしい。
“脱獄ファンタジー”と謳われる本作は,この悪条件下でいかにしてエマ達が脱出劇を成功させるかが焦点となっている。密室のようなハウスでの“騙し合い”をハラハラしながら見守るのが,本作の醍醐味なのだ。
シスター・イザベラの笑顔の裏に隠された真実とは。彼女が一番怖い |
スパイは誰? 海外ドラマのようなストーリー展開
エマ達の脱出計画が着々と進む中,新たなシスターとしてクローネ(CV:藤田奈央)がハウスに着任する。子供達の脱出プランに気づいたイザベラが,監視役の増強として本部から呼び寄せたのだ。これにより脱出のハードルは上がることになるのだが,さらに第3話で内通者の存在が明らかになる。
こうした,海外ドラマのような目まぐるしい展開が本作の魅力だが,これは原作の白井氏の狙い通りなのだとか。バトルものが主流の「週刊少年ジャンプ」誌上で飽きられることのないよう,きちんと毎回引きを作ることを意識しているという。
アニメでもその意図はきちんと引き継がれ,各話の最後には視聴者の予想をはるかに超えた展開が待ち受けている。本作が“中毒性の高い作品”と呼ばれている理由は,どうやらそのあたりにありそうだ。
レイやほかのほかの子供達を巻き込んで脱出計画は進行する |
子供目線の演出で臨場感がアップ
アニメ版となる本作では,原作のテイストをそのまま再現しているだけでなく,ちょっとした演出が加えられている。勘のいい視聴者はもう気づいていると思うが,物語の要所で登場するキャラクター,つまりエマ達子供と同じ,低い視点で物語が進行しているのだ。
これによって大人は見上げるほど大きく,狭いハウスの中は不気味さを伴った大きな館となる。子供の頃に味わった,心細さや不安を思い出した人も多いのではないだろうか。もちろん視覚効果だけでなく,子供達が感じている臨場感をダイレクトに味わうことができ,より物語に没頭できるというわけだ。
先日放送された第12話で,物語は一応の決着をみた。意外な展開に驚いた読者も多いと思うが,第2期の放送が2020年に決定したこともあり,エマ達の過酷な戦いはどうやらまだ続くようだ。
派手なバトルや魔法も登場せず,限られた登場人物で進行する心理劇という,ある意味地味な展開がメインとなる本作だが,飽きることなくグイグイ物語に引き込まれた。ストーリーテリングの面白さを求める人にはオススメの作品だ。
なお,本作のダイジェストムービーが2本(第1〜4話,第5〜9話),公式サイトで公開されている。エマ達の活躍が気になる人は,こちらで内容を下見しておこう。
TVアニメ「約束のネバーランド」公式サイト
TVアニメ「約束のネバーランド」公式Twitter
放映データ |
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2019年1月〜3月まで |
全12話 |
キャスト |
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エマ:諸星すみれ |
ノーマン:内田真礼 |
レイ:伊瀬茉莉也 |
イザベラ:甲斐田裕子 |
クローネ:藤田奈央 |
ドン:植木慎英 |
ギルダ:Lynn |
フィル:河野ひより |
ナット:石上静香 |
アンナ:茅野愛衣 |
トーマ:日野まり |
ラニオン:森 優子 |
コニー:小澤亜李 |
スタッフ |
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原作:白井カイウ・出水ぽすか(集英社「週刊少年ジャンプ」連載) |
監督:神戸 守 |
シリーズ構成/脚本:大野敏哉 |
キャラクターデザイン/総作画監督:嶋田和晃 |
プロップデザイン:板井寛樹 |
美術設定:池田繁美(アトリエ・ムサ)・大久保修一(アトリエ・ムサ)・友野加世子(アトリエ・ムサ)・乗末美穂(アトリエ・ムサ) |
美術監督:池田繁美(アトリエ・ムサ)・丸山由紀子(アトリエ・ムサ) |
色彩設計:中島和子 |
撮影監督:塩川智幸(T2studio) |
CG監督:福田 陽 |
編集:松原理恵(瀬山編集室) |
音楽:小畑貴裕 |
音響監督:清水勝則 |
アニメーション制作 :CloverWorks |
オープニングテーマ:UVERworld「Touch off」 |
エンディングテーマ:Co shu Nie「絶体絶命」 |
■Blu-ray&DVD情報
約束のネバーランド
Blu-ray&DVD Vol.1
2019.03.20 ON SALE
2019年3月20日(水)発売
Blu-ray完全生産限定版
¥12,000+税
ANZX-14361〜14363
DVD完全生産限定版
¥10,000+税
ANZB-14361〜14363
【収録話】
第1話・第2話・第3話・第4話
【完全生産限定版特典】
■出水ぽすか描き下ろし三方背BOX
■特典CD1:アニメ『約束のネバーランド』オリジナルサウンドトラック vol.1
■特典CD2:ボイスドラマ『GFハウス幽霊騒動』(原作:白井カイウ 作画:出水ぽすか 小説:七緒(JUMP j BOOKS「約束のネバーランド〜ノーマンからの手紙〜」より))
■特製ブックレット1:絵コンテ集(第1話:監督・神戸守 エンディング:中村章子)(全80ページ)
■特製ブックレット2:ミネルヴァ機密通信 code.Animation vol.1(全144ページ)
・キャラクター設定
・原画
・録り下ろしインタビュー(原作:白井カイウ&作画:出水ぽすか対談)
・書き下ろしショートノベル(著者:七緒)
等
■映像特典:ノンクレジットオープニング&エンディングムービー
■音声特典:全話オーディオコメンタリー 出演:諸星すみれ・内田真礼・伊瀬茉莉也・ゲスト(2話:甲斐田裕子/3話:藤田奈央/4話:Lynn)
約束のネバーランド
Blu-ray&DVD Vol.2
2019.05.29 ON SALE
2019年5月29日(水)発売
Blu-ray完全生産限定版
¥12,000+税
ANZX-14364〜14366
DVD完全生産限定版
¥10,000+税
ANZB-14364〜14366
【収録話】
第5話・第6話・第7話・第8話
【完全生産限定版特典】
■出水ぽすか描き下ろし三方背BOX
■特典CD1:アニメ『約束のネバーランド』オリジナルサウンドトラック vol.2
■特典CD2:ボイスドラマ 書き下ろしエピソード
■特製ブックレット1:絵コンテ集(第7話・オープニング)
■特製ブックレット2:ミネルヴァ機密通信 code.Animation vol.2
・美術設定&美術ボード
・原画
・録り下ろしインタビュー
・書き下ろしショートノベル(著者:七緒)
等
■音声特典:全話オーディオコメンタリー 出演:諸星すみれ・内田真礼・伊瀬茉莉也・ゲスト(5話:植木慎英/6話:河野ひより/7話:藤田奈央/8話:甲斐田裕子)
(C)白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会
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