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夏の夜にぴったりな怪奇文学作品を3人の声優が朗読。「文豪とアルケミスト 文士劇 夏夜怪綺談」をレポート
2019年8月24日,東京・神保町の日本教育会館 一ツ橋ホールで,文豪転生シミュレーションブラウザゲーム「文豪とアルケミスト」(BROWSER/iOS/Android)の朗読劇イベント「文豪とアルケミスト 文士劇 夏夜怪綺談」が開催されました。本イベントは,声優達がそれぞれ演じる文豪が書いた怪談を朗読しました。
今回は夜の部に参加してきたので,その模様をお届けします。なお今回の朗読劇には,原作に基づいた猟奇表現が含まれているので,苦手という人は注意してください。
◆出演者 ※敬称略
浪川大輔(夢野久作役)
斉藤壮馬(江戸川乱歩役)
内田雄馬(小泉八雲役)※夜の部のみ
※昼の部には,萩原朔太郎役の野島健児さんが出演
オープニング朗読劇は,夢野久作,江戸川乱歩,小泉八雲の3人が司書の机の上に置かれていたという正体不明な本を目にするところから始まります。
「文豪とアルケミスト」は,本の中の世界を破壊する侵蝕者による災禍を防ぐべく,「アルケミスト」と呼ばれる特殊能力者が国定図書館を舞台に,文学の持つ力を知る「文豪」を転生させ,敵と戦う育成シミュレーションゲームです。
本の世界の敵と戦うためには,文豪達も本の世界に潜る必要があるのですが,今回も正体不明の本に3人の文豪が潜ることになります。
正体不明の本の世界は,何やら不穏な雰囲気……。ですが,3人ともかつて怖い話を書いていたこともあってか,呑気に「怪談をするにはうってつけ」などと言ってみたりと,狂気じみた世界にも恐怖を感じることもないようです。
そんな彼らですが,本の世界でそれぞれが書いた怪奇談を披露することになるのでした。
トップバッターは,夢野久作役の浪川さんです。
浪川さんの朗読劇では,夢野久作の代表作であり,日本探偵小説三大奇書と呼ばれている「ドグラ・マグラ」より「巻頭歌」と「キチガイ地獄外道祭文」の一部,そして「書けない探偵小説」を披露しました。
「キチガイ地獄外道祭文」は,作中に登場する赤い表紙のパンフレットに書かれた“阿呆陀羅経の歌”です。阿呆陀羅経というのは,江戸時代に願人坊主と呼ばれる人々が巷談や時事風刺などを歌った俗謡。
俗謡の朗読ということもあり,浪川さんが歌詞を読むようにテンポよく朗読していったのですが,作中に何度も登場する「あ――ア」という部分を,声色で狂気的に表現していたように感じました。
「書けない探偵小説」は,探偵小説のあらすじが連なった作品ですが,タイトル通りこれらの探偵小説は“書けない”のです。つまり,あらすじだけは考えて,「こういう話が書けないだろうか……」と夢想するという,何だかしょんぼりするお話です。
いくつもの探偵小説のあらすじを読むことになるので,そのあらすじの雰囲気に合わせた声色やテンポが楽しめた朗読劇になりました。
浪川さんの朗読劇が終わると始まった,斉藤さんと内田さんによる幕間朗読では,江戸川乱歩と小泉八雲の2人が「ドグラ・マグラ」と「書けない探偵小説」について感想を語り,作風の違いや夢野久作らしさにに触れていました。
続いては,江戸川乱歩役の斉藤さんによる「白昼夢」の朗読です。
この作品は,主人公の“私”が道端で演説をする男に遭遇し,その内容が「妻を殺し,屍蝋にした」という告白であると知るというもの。主人公は,やがて薬屋の主人であるその男が亡骸を薬屋の店先に並べていると気が付くのですが,主人公以外の誰もが話の内容を信じずに,ただ笑っているだけ……という後味の悪い話です。
笑って聞いてるだけの群衆が一番怖いですが,そもそも主人公と男が見ているものが現実とは限らないんですよね。タイトルも白昼夢なわけですから。
この物語の主な登場人物である平凡な私と,狂った薬屋の主人を上手く演じ分けていて,思わず聞き入ってしまいました。特に薬屋の主人の笑いが凄かったです。
続いての幕間朗読では,浪川さんと内田さんが登場し,夢野久作と小泉八雲が「白昼夢」について語り合っていました。小泉八雲は「なぜおヨメサンを解体したんデショウ?」と純粋に話すなか,夢野久作は「それこそ狂気なのですよ。愛した女を手に入れるために殺す。そして一番好ましい状態にするためにバラバラにする」とテンション高めに話しており,江戸川乱歩が描いた狂気にうっとりする……という,なんとも正反対な反応を見せてくれました。
最後は,小泉八雲役の内田さんです。朗読するのは「雪おんな」。
朗読を始める前に,キャラクターとしての小泉八雲の特徴的な喋り方で「ココからは少しダケ聞き取り易くなりマス!」という前置きをして,会場では笑いが起きていました。
雪おんなは,タイトル通り,日本では有名な「雪女伝説」をモチーフにした物語です。
この物語は,年老いた茂作と若者である巳之吉という2人が,ある冬の日に,吹雪のために近くの小屋で寒さをしのぐことになるところから始まります。
そこに現れた全身真っ白な女が茂作に息を吹きかけると,彼はそのまま凍って死んでしまいましたが,巳之吉は「若く美しいから」という理由で殺されずにすんだのでした。
翌年の冬,巳之吉はお雪と名乗る女と出会い,結婚し,子どもを十人も持つことになりました。ある夜,針仕事をしているお雪を見ていた巳之吉がふと若い頃の話を始めます。それは,あの吹雪の夜に起きた恐ろしい出来事の話だったのですが,話が終わるとお雪が立ち上がり,巳之吉に「あの時の女は私だ」と告げました。
しかしあの夜,「今日のことは誰にも言わないこと。言ったら命はない」と言っていた女でしたが,子どものことを思うと巳之吉を殺せず,そのままお雪は姿を消したのでした……。
吹雪のなかでの雪女との邂逅から始まる物語ですが,日本特有の昔話のようなのんびりな雰囲気からの,お雪の正体を明かしたあとの荒々しい声になんだかぐっと来ます。いろいろ考えると,お雪がかわいそう……。
エンディング朗読劇では,3人が潜った正体不明な本の謎が明かされます。
この本の正体は,江戸川乱歩が夢野久作と小泉八雲の怪談をモチーフに書いた「文士劇 夏夜怪綺談」……。なぜ“劇”とついているのかと,帝国図書館はエンターテイメントが足りないと思っていた江戸川乱歩が司書のために「文豪達が劇をやったらどうなるか」と考えた結果だったということでした。
ここからはトークコーナーということで,浪川さん,斉藤さん,内田さんがそれぞれ怪談に関する話を披露することに。
内田さんは中学生のころ,よく遊びに行く友だちの家での出来事を語りました。その家には外階段があったそうなのですが,ある日,そこに一体の日本人形が……。しかし,別の日にその家にいくとその日本人形は無くなっていたそうです。思わず,その家の友だちやおばあちゃんに確認してみたそうですが,その日本人形のことは知らないということで……結局謎のまま終わったようです。
日本人形といえば,ということで斉藤さんが話してくれたのは,親戚の家での出来事。こちらも日本人形が置かれていたそうですが,夜中に起きてみると,元の場所に置かれておらず,なんと障子の前に移動していたそう! それに対し斉藤さんは「妹の仕業だと思う」と冷静に反応していましたが,浪川さんからは思わず「妹のセンスが良すぎる!」とツッコミが入ってました。
最後は,これまでに登場した朗読CDの紹介やゲーム内の情報を紹介し,出演者がそれぞれ朗読劇の感想を語り,イベントは閉幕しました。
今回のイベントでは,いまでもさまざまな解釈ができる文学作品を扱っていたため,朗読の最中,思わず場面を想像して作品について考えてしまいました。文字だけでは追えない部分や,読み手である3人の解釈なども加わり,これまでとは違った感覚で作品に触れることができました。
海外の作家「コナン・ドイル」と「ルイス・キャロル」も実装されたことで,さらに多くの文学を扱っていくことになりそうな「文豪とアルケミスト」。今後の展開にも,要注目です。
「文豪とアルケミスト 文士劇 夏夜怪綺談」公式サイト
「文豪とアルケミスト」公式サイト
「文豪とアルケミスト」ダウンロードページ
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