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Twitch配信に最適化するため,「Breakaway」に盛り込まれる10の要素とは。Amazon Game Studiosのセッションをレポート
本作は,まだオープンβテストも行われておらず,知らない読者も多いはずなので,まずはどのようなゲームなのかを簡単に紹介しておこう。本作はアリーナ状のステージを舞台に,4対4でチーム対戦を行うアクションゲームだ。プレイヤーは,さまざまな能力を持つキャラクターを操作し,アイテムを購入して強化しながら戦っていく。
試合のルールは,マップの中央にあるレリックと呼ばれる球体を取り合い,相手の陣地にあるゴールに叩き込むというもの。MOBAと球技を足したような雰囲気で,公式サイトで公開されているプレイムービーを見ると,なんとなくルールが分かると思う。
本作の大きな特徴に,Amazon傘下にあるTwitchとの提携によって,ブロードキャスティングや観戦モードを最大限に生かすための試みが盛り込まれていることが挙げられる。今回のセッションは,Amazon Game Studios シニアプロデューサーのMichael Willette氏が,どういったゲームが配信に効果的なのか,そしてBreakawayではそれをどのように取り入れているのかを紹介する内容となっていた。
開発初期のBreakawayは,現在とまったく違うゲームだったという。48人のプレイヤーが2チームに分かれ,広いマップで宝物を探し,それを海賊船に持ち帰ってスコアを競うというルールになっていたそうだ。ビジュアルも可愛らしい雰囲気だった。
しかし,開発中にAmazonがTwitchを買収したことで,開発方針が大きく変わることになる。TwitchのCEOであるEmmett Shear氏との交流を経て,よりTwitchでの配信に向いたゲームを作ることになったのだ。
では,Twitchでの配信に向いたゲームとは,どういったものなのだろうか。Willette氏達がTwitchの上位タイトルを分析したところ,「大会が開かれる競技性の高いゲーム」「PCゲーム」「多くの人が視聴しやすいゲーム」という共通点があったという。つまりは,“見応えのあるコアゲーム”というわけだ。
そして,Breakawayをより見応えのあるゲームにするために,10のポイントを改善したという。
1つめが「個人の能力が発揮できるようにすること」だ。例えば,「Minecraft」であればビルディングの創造性,FPSやMOBAであれば個人の実力を視聴者にアピールできる。個人の能力を思う存分に発揮できるゲームのほうが,より観戦が面白くなるのだ。
そこでBreakawayは,視聴者から見えるスキルのクールダウンなどを追加し,良いプレイをしたときのリターンを大きくすると同時に,視聴者もそれを認識しやすくなるようにしたという。
2つめは,観戦中にアリーナ全体が見えること。視聴者がすべての戦場を見渡せるので,かっこいいプレイを見逃すことなく楽しめる。もともとのBreakawayのマップは,48人というプレイヤー数を想定していただけにかなり広かったので,大幅に縮小したそうだ。
3つめが,激しいアクションの促進だ。Breakawayは,観戦時に退屈なシーンがないよう,試合開始直後から両チームがぶつかり合うようになっている。また,試合時間は最大でも20分と,MOBAに比べると短くなっており,密度の濃い試合内容がスピーディに展開される。
4つめは,見どころになるポイントを1つに絞ること。マップのあちこちで戦闘が発生すると,どこに注目していいのか分かりづらい。そこでBreakawayでは,レリックを奪い合うという要素を取り入れて,自然とその周りで戦闘が展開されるようになっている。
5つめが,ラウンド制の採用。Breakawayは,5ラウンドのうち3本先取したチームが勝利というルールで進行するのだが,ラウンド制にするとより頻繁に戦闘が発生するほか,試合開始後にぶつかり合う緊張感が何度も味わえるメリットもある。
実況者からすれば,ラウンドの合間にコメントを入れることができるというのも利点になるだろう。
6つめが,勝利条件を複数用意すること。Breakawayでは,レリックをゴールに入れる以外に,敵の全滅でも勝利できる。これにより,レリックの奪い合い以外でも,緊張感が高まる瞬間が生まれるのだ。
7つめが,劇的な逆転要素だ。危機的状況からの大逆転というのは,滅多に起こるものではないが,非常に盛り上がる。ウメハラ選手の「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」における「背水の逆転劇」や,「League of Legends」で起きた,xPeke選手のカサディンによる伝説的なバックドアを例に挙げていた。
Breakawayでも,そうした劇的な瞬間が生まれるような要素を盛り込んでいるとのことだ。
8つめが,勝敗を決したプレイにハイライトが当たる仕組みだ。Breakawayでは,レリックをゴールに決めたとき,そのシーンのリプレイが再生される。「オーバーウォッチ」の「Play of the Game」をイメージすると分かりやすいだろうか。
9つめが,プレイ中にどのアイテムを買ったのかなどの情報を,視聴者が分かるようにするということだ。それを見て視聴者はうまい人のプレイを学べるし,実況者はそれによってどのような戦術が展開されるといった解説を行って,より配信を盛り上げられる。
最後が,観戦モード用ツールの充実だ。フリーカメラだけでなく,キャラクターを個別に追跡するカメラ,レリックを追跡するカメラなど,さまざまなものが用意されている。これらは,実況者に実際にプレイしてもらい,どういったものが必要なのかを聞いて追加していったそうだ。
以上が,BreakawayをTwitchでの配信に向いたゲームにすべく盛り込まれる要素だ。本作は現在,北米と欧州でβテストを実施できるよう準備を進めているとのこと。実際にどれだけ配信や観戦が楽しいゲームになるかは分からないが,これだけ配信に注力しているというのは興味深い。今後の展開を楽しみにしたいところだ。
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