プレイレポート
「RUGBY20」プレイレポート。W杯で興味を持った人に向けて,ラグビーの基本的な流れを交えながら紹介
本格的な国際マッチ「ネイションズトロフィー」では,日本代表などの各国の代表チームを優勝に導くべく,プレイヤーが采配を振るう。
また,プレイ中に溜まるポイントを使ってパックを購入して,選手をランダムで獲得していき,自分だけのスコッド(チーム)を作ってプレイすることも可能だ。
「ラグビーワールドカップ2015」における日本代表の躍進,そして2019年9月〜11月にかけて日本で開催された「ラグビーワールドカップ2019」では初の決勝トーナメント進出したこともあり,ここ数年でラグビーに興味を持ったという人も多いのではないだろうか。
それなら,ひとつラグビーゲームでも遊んでみるか……と探してみると,日本語でプレイできるゲームはほとんどないことに気がつく。というのも,国内リーグの観客動員数はおおむねプロ野球の約50分の1くらいの規模(関連リンク1 / 関連リンク2)。これまで日本市場でラグビーゲームを販売するのは勇気のいる状況だったわけだ。ただ,昨年のワールドカップは国内外から約170万人以上もの観客を集めたわけで,今後はそうした状況も変わっていくのかもしれない。
本稿では「RUGBY20」の内容を紹介すると同時に,ラグビーの基礎知識や攻防,その楽しみ方についてお伝えしていこう。
ボールを支配しつつ,敵のゴールラインに迫っていくのがラグビー
ラグビーとは,15名(控え8名)のチーム同士で戦うフットボールの一種だ。主に前衛(フォワード)の8人がボールの支配権を争い,後衛(バックス)の7人がボールを持って敵陣に侵攻。敵陣奥のゴールラインの先にトライ(ボールを地面につける),またはゴールポストの間にボールを蹴り込んでゴールすることで点を獲得し,最終的な多寡によって勝敗が決まるスポーツである。
……と,このくらいは「RUGBY20」に興味を持った人であればご存じかと思うが,昨年のワールドカップあたりからラグビーを観戦するようになった人は,プレイの迫力に圧倒されながら楽しめた一方で,試合を見ていて疑問を感じたり,圧倒されてしまうような瞬間も多かったのではないだろうか。
ボールを持って疾走する選手への激しいタックルから,屈強な男たちのもみ合いが始まり,そのうちにボールが見えなくなる。そして審判がプレイを中断させたかと思えば,今度は選手たちががっちり方陣を組み,相手の方陣と押し合いへし合い。その迫力に圧倒されていると,いつの間にかボールは方陣の外に出ており,ボールを抱えた選手が重機関車のように突進,トライを決めていた……。
そんな具合に,「屈強な男たちがぶつかりあう様」「ボールがワープしたかのような素早いプレイ」など,選手たちの優れたパフォーマンスを眺めるだけでも楽しめるラグビーだが(実際,大相撲ファンにもウケが良かったらしい),試合をしっかりと楽しむためには,おおまかなルールやゲームの進め方を知っておくことが必要だ。
ラグビーでは,ボールをキープ(支配)しているチームが攻撃側となる。攻撃側は,「ボールを持った選手が先頭」となって敵陣に侵攻し,トライやゴールを目指していく。このとき,ボールを持った選手を境界に敵陣側(相手ゴールライン方向)は「オフサイド」となり,オフサイドにいるプレイヤーは,速やかに自陣側に戻らなければ反則となる。ここはサッカーとの大きな違いなのでしっかり覚えておこう。
また,ボールを前(相手ゴールライン側)に進める手段は,持って運ぶか,キックするかの二択。ボールを前方に投げてしまうと「スローフォワード」,前に落としてしまうと「ノックオン」という反則となる。
ただ本作では,横か後ろにしかパスが出せないようになっており,オプションでノックオンが発生しないように設定することもできるので,この2つについては知識として知っておくだけでも充分ではある。
ちなみにサッカーのようにキックでボールを進めてもいいのだが,相手にボールをキープされてしまう危険も大きいため,うかつに使うと攻撃を終わらせてしまいかねない。
さらに,キックしたボールがダイレクトでサイドラインを越えてしまうと,ボールを蹴った位置の真横から,相手ボールのラインアウト(サッカーのスローインに相当)となる。ラインアウトはフィールドの片側が大きく開くため,相手にとって絶好の攻撃チャンス。ボールをキックする際は細心の注意が必要だ。
一方,防御側は,相手の攻撃を止めることを目的に動く。具体的には,ボールを持った選手を転倒させるか,ノックオンや「ノットリリースザボール」(倒れてもボールを離さない)などの反則を誘うわけだが,そのための代表的な手段が「タックル」だ。ボールを持った選手は転倒した場合,ルールによりボールを手放さなくではならないないため,それがターンオーバー(攻守の入れ替わり)のきっかけとなる。
本作においては(そして現実のラグビーでも),タックルから後述する「ラック」を形成,地面に落ちたボールをキープすることが,防御から攻撃に転じる主な流れになる。
ラックやスクラムの後,いかに敵陣を崩すかがポイント
ここまでは攻撃側,防御側がそれぞれ目指す事や,それに関係するルールをざっくりと説明してきたが,それだけでもかなりのボリュームになってしまった。とはいえ,「RUGBY20」では細かいルールはゲーム側が判定してくれるので,すべてを覚えておく必要はない。
基本的な攻守の流れが頭に入ったらあと一息。次は,屈強な男たちがぶつかり合う「ラック」や「モール」などについても理解を深めていただこう。
ラックは,主にタックルによってボールが地面に落ちた際に形成される密集状態のことだ。攻撃側はラックによって相手を押し込めれば,ボールを拾って攻撃が続行できる。逆に,防御側がラックを押し込めば,攻撃側はボールを拾えず,攻守が逆転する。
当然ラックに人数を割くほど相手を押しこみやすいのだが,その分,後のランプレイやパスプレイに割ける人数が一時的に減るため,そこに駆け引きが生まれる。
モールは,ボールを持った選手が立った状態での押し合いだ。ボールを持った選手が敵陣に背中を向け,味方がそれを両側から押し込むことで成立する。ちなみにモールの動きが5秒停滞した場合は,モールからボールを出さなくてはいけないが,それができなかった場合は,防御側にボールの所有権が移り,「スクラム」からプレイが再開される。
スクラムは,ラックやモールが拮抗して動かなくなったときや,ノックオンなどの反則があったとき,審判の指示によって形成される。スクラムには両チームの前衛8人が参加。規模の大きなラックのようなものと理解してもかまわない。
スクラムでボールをキープした側は,少しでもスクラムを敵陣に押し込んでから後衛にパスを出すことが理想だ。ただそれが難しい場合でも,フィールドに大きなスペースができているため,後衛の7人で敵陣を突破しやすい状態だと言える。
以上,選手同士が密集するプレイは3種類あるが,いずれもボールの支配権(戦いの主導権)をかけて前衛がぶつかり合っている状態だと捉えてもらってOKだ。
相手の前衛が崩れたら(自軍がボールをキープできたら),戦線後方で控えていた騎兵部隊のごとく後衛が敵陣を蹂躙するという具合に,火砲が発達する以前の戦場のイメージを重ねてみると,より雰囲気を味わえるかもしれない。
そして相手のまばらな部分を見つけて突破するだけでなく,チームの動きによって相手の全体の動きをコントロールする感覚を掴めてくると,さらに試合が楽しくなってくるはずだ。
なお本作では,選手の配置を事細かに設定したり,後衛の選手が敵陣を突破するためのさまざまなセットプレーを再現することが可能だ。ラックやモール後のセットプレーは20種類の中から4種類を登録でき,スクラム後は3種類のセットプレー(攻撃方向を左右に変えられるので実質6種類)を選べるので,とくに対人戦では複雑な読み合いが発生することになる。また,実在のチームのフォーメーションや,セットプレイを再現することも不可能ではない。
AIの関係もあり,実在チームの動きを完全に再現できるわけではないが,詳しい人であればフォーメーションをいじっているだけでも楽しめるだろう。
またこれらはハーフタイム中に差し替えることも可能で,前半での相手の出方を見て,後半の戦い方を変えることもできる。
単発の試合を楽しんだり,ローカルでの2人対戦が可能な「クイックマッチ」,国際マッチを扱った「リーグ」,オリジナルチームを育てながら世界の一流リーグのトップを目指す「ソロ」,ほかのプレイヤーとオンラインで対戦する「オンラインマッチ」など,さまざまな楽しみ方ができる本作。ただ,操作のチュートリアルが簡素で,一部の操作に関しては試合中の操作ガイドを頼りに覚える必要があったり,収録チームがヨーロッパ中心であったりと,根本的には世界のラグビー事情に通じているファン向けの作品であることは確かだ。
ただ,本稿で解説したような基礎知識は,実際に操作した結果を見れば頭に入ってきやすいものだ。また,本作にはラグビーというゲーム(競技)のメカニズムや,その楽しさがしっかりと組み込まれており,初心者がラグビーの全体像を掴むのにも悪くない作品だとも感じた。
歴史を題材にしたゲームを遊ぶと,同じ時代を描いた小説やドラマがより楽しめるのと同じように,一度ゲームの形で触れておくと,ラグビーを観戦する面白さもより確かなものになるだろう。ぜひ気軽にプレイしてみてほしい。
余談だが,ラグビーの日本代表選手も,すべてのルールを熟知しているわけではないらしい。実際のラグビーも「習うより慣れろ」な世界であることは間違いないようだ。
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