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ホロと出会えるVRアニメーション。「狼と香辛料VR」開発秘話や注目ポイントなどを,支倉凍砂氏らキーマンに聞いた
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印刷2019/04/06 00:00

インタビュー

ホロと出会えるVRアニメーション。「狼と香辛料VR」開発秘話や注目ポイントなどを,支倉凍砂氏らキーマンに聞いた

 2018年7月に制作開始が発表され,同年11月から2019年1月にかけてCAMPFIREおよびKickstarterで行われたクラウドファンディングキャンペーンでは,各800万円の目標金額に対して,合計7000万円以上の支援を集めるなど,大きな注目を浴びている「狼と香辛料VR」。本作は「狼と香辛料」の原作者で,同人サークルSpicyTailsの代表でもある作家の支倉凍砂氏が企画およびシナリオを手がける,アニメの世界に入り込んだかのような体験を楽しめる“VRアニメーション”だ。

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「狼と香辛料VR」公式サイト


 「狼と香辛料」は中世ヨーロッパ的な世界を舞台に,行商人のロレンスと,少女の姿をした狼の化身・ホロの旅を描いた作品。2006年のシリーズ開始以来,TVアニメシリーズ2期やコミカライズ,ニンテンドーDSでの2度のゲーム化など,多彩なメディアミックスが行われているほか,2016年からは新シリーズ「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙」がスタートするなど,長く支持されている。

 「狼と香辛料VR」の制作にあたっては,新規衣装の描き下ろしに原作の挿絵イラストを担当した文倉 十氏,ロレンス役の福山 潤さん,ホロ役の小清水亜美さんといったシリーズお馴染みのスタッフが集結。プレイヤーはロレンスとなり,まるで本当にホロがそこにいるかのような感覚を味わうことができるのだ。今回は,そんな「狼と香辛料VR」の制作に携わったキーマン達に話を聞かせてもらった。

 ちなみに,支倉氏およびSpicyTailsがVRアニメーションを手がけるのは「狼と香辛料VR」が初めてではなく,2016年に「Project LUX」というオリジナル作品を発表している。4Gamerでは,こちらについても支倉氏にインタビューを行っているので,興味のある方は一読されたい。


●インタビュー出席者一覧
支倉凍砂氏(作家,「狼と香辛料」原作者)
榊原圭介氏(3DCGアーティスト)
北尾雄一郎氏(ジェムドロップ代表取締役/スタジオディレクター)
樋上敬太氏(ジェムドロップ・プログラマー)
渡邉佳代子氏(ジェムドロップ・アーティスト)

※掲載している画像はすべて開発中のものです


セルビアからのコンタクトがきっかけで「狼と香辛料VR」の開発がスタート


4Gamer:
 本日はお集まりいただき,ありがとうございます。まずはひと言ずつ,自己紹介をいただけますか。

支倉凍砂氏(以下,支倉氏):
 原作の支倉です。2011年からは同人サークルSpicyTailsとしても活動していて,VRアニメーション「Project LUX」を発表させていただきました。

榊原圭介氏(以下,榊原氏):
 3Dキャラクターのモデリングをしている,榊原です。支倉さんとは「Project LUX」から一緒にお仕事をしています。

北尾雄一郎氏(以下,北尾氏):
 ジェムドロップの北尾です。現場の調整や進行を担当しております。「狼と香辛料VR」は支倉さんからお話をいただき,弊社が開発を行う形となります。

樋上敬太氏(以下,樋上氏):
 ジェムドロップの樋上です。プログラムを担当しています。

渡邉佳代子氏(以下,渡邉氏):
 ジェムドロップの渡邉です。3D背景などを担当しております。

4Gamer:
 では,さっそく支倉さんにお聞きしたいのですが,「狼と香辛料VR」を制作することになった経緯について教えてください。

支倉凍砂氏
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支倉氏:
 「Project LUX」を発表したあと,セルビアにあるモーションキャプチャスタジオから「次の作品を作るときは,ぜひ自分達を使ってほしい」とコンタクトを受けたことがきっかけです。そのスタジオはハリウッド映画なども手がける,かなり大きなところだったので,費用的な面から話が流れてしまったのですが,そのときに「なぜ『狼と香辛料』でVRアニメーションを作らないんだ?」というお話をいただいたんです。

4Gamer:
 確かに,支倉さんが手がけるVRコンテンツとなると,「狼と香辛料」をテーマにしたものを見たいと考えるのは,ファンとして自然な流れですね。

支倉氏:
 今もまだ,VRは普及していく段階ですから,「Project LUX」のようなオリジナルタイトルより,原作付きのほうが有利なところはあるかと思いました。

4Gamer:
 榊原さんは「Project LUX」でも一緒にお仕事をされていますが,「狼と香辛料VR」のオファーを受けていかがでしたか?

榊原圭介氏
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榊原氏:
 大好きなタイトルだったので,原作者から声がかかったことは嬉しかったですね。

支倉氏:
 ひとくちに3DCGアーティストといっても,フォトリアルな画風を得意とされる方が多くて,アニメ風のキャラクターに寄せられる人は少ない気がします。また,中にはゲームに携わったことのない方もいて,「3Dモデルは作ったものの,データが大きすぎてそのままではゲームに組み込めない」というようなことが起こったりもします。
 その点,榊原さんには安心して任せることができました。もともと,お一人でゲームを作れる方ですから,ジェムドロップさんとは技術的なやり取りもしていただいています。

4Gamer:
 原作ファンである榊原さんにとっても,まさに渡りに船のオファーだったんですね。

榊原氏:
 思い入れもあるので,ほかの人には任せたくありませんでした(笑)。

4Gamer:
 では,ジェムドロップが開発に参加した経緯を教えてください。

北尾雄一郎氏
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北尾氏:
 問い合わせ窓口のメールアドレスに,支倉さんからメールをいただいたのがファーストコンタクトでした。こうしたメールアドレスにはいろいろなメールが届きますので,初めは「これはイタズラの類では……?」と思ったんですが,どうやらご本人らしいと分かって驚きましたね。イタズラというのは冗談ですが(笑)。

支倉氏:
 ジェムドロップさんは「ヘディング工場」などのVRタイトルを開発された実績があり,同人サークルである“えーでるわいす”さんの「天穂のサクナヒメ」の開発サポートもされていましたから,僕のような個人がコンタクトを取ってもいいだろうと思ってメールしたんです(笑)。

北尾氏:
 実はたまたま「Project LUX」も事前にプレイしていて,「VRがいいモノだと考えて作品を作っている人達だな」と感じていましたので,こちらとしても一緒にお仕事できたら絶対に面白いことができるだろうと思っていました。


クラウドファンディングでの資金集め,そしてVRコンテンツの現状


4Gamer:
 「狼と香辛料VR」は,クラウドファンディングでの資金集めが大きな成功を収めたことでも話題になりましたね。

支倉氏:
 「Project LUX」の開発では資金がぎりぎりの状態でしたから,今回はクラウドファンディングを活用することにしたんです。そうしたら,こちらで思っていた以上の反響があって。集まった金額の大きさはもちろんですが,出資してくださった方の数が多いことには驚かされました。

4Gamer:
 CAMPFIREとKickstarterで,国内外合わせて約4000人から7000万円以上という支援が集まりましたが,プレッシャーはありましたか?

北尾氏:
 支援総額の数字がどんどん大きくなっていくのを,みんなで固唾を呑んで見守っていましたね。

渡邉氏:
 出資していただいた額があまりに多いので,「これは目標額と出資額が逆になってるんじゃないだろうか」と思っていたくらいです。そうじゃないと分かって驚いて,思わず樋上に「どうしよう?」ってメールしました(笑)。

樋上氏:
 ああ,そんなこともありましたね(笑)。

支倉氏:
 僕もこれだけの額が集まるとは思っていませんでした。その分,特典の発送や事務作業が大変で,今はその作業に追われています。

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4Gamer:
 2016年に「Project LUX」を発表して以降,VRコンテンツを取り巻く状況に変化は感じますか?

支倉氏:
 バーチャルYouTuberの皆さんのおかげで,ゲーム以外のコンテンツにも興味を持ってもらえるようになった感がありますね。おかげさまで「Project LUX」も一定数売れ続けていますし。

北尾氏:
 Oculus RiftやHTC ViveといったHMDの普及台数も,緩やかに伸びているという感じです。ただ,爆発的に人が増えるのは,「軽くなる・薄くなる・安くなる」といったハードウェアの進化があるときだと思います。VRは実際に体験しないと良さが分からないという部分がありますが,「狼と香辛料VR」はHMDが無くてもPCだけでも物語を楽しめますので,ファンの方はぜひ体験してみてください。

4Gamer:
 おお,HMDなしでも楽しめるというのは朗報ですね。

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原作の世界観を大切にしつつ,VRアニメーションを作り上げていく


4Gamer:
 では,ここからはゲームの内容についてお話をうかがいます。改めて「狼と香辛料VR」の概要を教えてください。

支倉氏:
 「狼と香辛料VR」では,ホロとロレンスが小屋の中で過ごす一幕が描かれます。基本的には会話劇で,プレイヤーさんの選択でお話が分岐するといった要素はありません。時間軸はこれまでのシリーズと,新シリーズの間くらいというイメージです。
 内容としては,約10分×3話のVRアニメーションと,ホロとの“ふれあいモード”があるという構成で,ホロの想像で舞台が変わったり,話題に出てきている人のシルエットが現われたりといった演出もあります。

パン屋の妄想シーン
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4Gamer:
 ふれあいモードでは,プレイヤーが触るとリアクションしてくれるのでしょうか。

北尾氏:
 はい,いろいろなリアクションをしてくれますよ。

榊原氏:
 2人でキャッキャウフフしたり,ホロに触りすぎて怒られたりといった感じですね。

ふれあいモードでホロをなでているシーン
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4Gamer:
 開発の進捗状況はいかがですか。

支倉氏:
 システムそのものはすでにほぼ完成しているのですが,モーション類のブラッシュアップなどを考えると,当初予定していた4月末での発売が怪しい……という感じです。また,ゲームを出すにあたってのいろいろな申請なども必要です。PSVR版とOculus Quest版はさらにもう少し遅れて,夏以降となる予定です。

4Gamer:
 なるほど。実際に自分のキャラクターとVR空間で出会ったときの感想はいかがですか?

支倉氏:
 自分としてはVRに慣れてしまって,触ってインタラクションがあるというよりは,キャラクターがこちらを見て話をしてくれるようなところに気持ちが入りました(笑)。インタラクションについては,高度なAIを使えるようになれば,また新たな可能性が開けるんじゃないかと思います。待機中もゲームっぽい挙動になってしまうので,このあたりも課題ですね。

4Gamer:
 ホロの3Dモデルを制作するうえで,こだわった部分はどこでしょうか?

榊原氏:
 やっぱり顔ですね。とにかく可愛く,ちょっとアニメに寄ったテイストにしました。「Project LUX」のときから,支倉さんに「カワイイ」と言ってもらえるように頑張っています。

支倉氏:
 原作でイラストを担当されている文倉さんの絵は平面でとくに映えるものなので,3Dにするのが大変でした。アニメっぽい3Dキャラクターを作る際,正面からの見栄えを重視しすぎて,平べったくなってしまう場合もあります。VRではキャラクターをさまざまな角度から見るので調整には苦労もありましたが,実機で見てカワイイなと思えるものになりました。

4Gamer:
 では,背景美術で苦労された点はありますか?

渡邉佳代子氏
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渡邉氏:
 作品が確立された世界観を持っているので,そこを崩さないようにしていきました。一度,机の上に本とガラス製品を置いたところ,支倉さんから「この時代には合わないモノです」というご指摘をいただき,気持ちを引き締め直したこともありましたね。

支倉氏:
 文章を書くときは背景にあるものすべてを描写するわけではありませんから,「その世界には存在しないもの」を指定するのが難しいんですよね。そういう意味では,僕が最初の仕様をしっかり作れなかったところがあります。チーム作業の難しさを感じました。

4Gamer:
 確かに,わざわざ「机の上に○○はなかった」なんて書きませんからね。

支倉氏:
 あとは,小屋の中に置かれているモノの量のバランスにも苦労しました。当初は小屋の中にモノが多くて,僕が思っているより生活感がありすぎたんです。逆に,モノがなさ過ぎても寂しくなりますから,そのバランスを取るのが難しかったですね。また,渡邉さんには「小屋が綺麗すぎるので,もっと廃墟っぽくしてください」とお願いしたこともありました。

渡邉氏:
 背景を作る側としては,ついモノを置いてしまうんです。やはり,モノがないと生活感や時代背景を表現しにくいので。

支倉氏:
 今はモノが置かれつつも生活感のない,ちょうどいい感じに仕上がっているので,ありがたいです。実際に上がってきたものを見て,どう修正の指定をしていいか分からないところもあり,なかなか一発ではうまくいかず,お手間をかけさせてしまいました。

渡邉氏:
 いえ,ご指摘いただけて,とてもありがたかったです。例えば小屋の汚れ具合にしても,「もっと汚れた小屋のほうがいい」と方向性が明確になれば,ガンガン汚していけますから(笑)。

4Gamer:
 演出面について,心がけた点などはありますか?

渡邉氏:
 これまで弊社が作ってきたVRタイトルでは,プレイヤーの位置が動くことにより風景に変化がありましたが,「狼と香辛料VR」の物語は小屋の中だけで進んでいくので,意識を変える必要がありました。そこで,小屋の中でたき火を燃やしたり,外で雨が降ったりすると部屋の雰囲気が変わるというように,環境から時間の流れが分かるような演出を丁寧に作ることを心がけました。

小屋に入ったところ(上段)と,たき火を付けているところ(下段)
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こちらは時間が経ち,雨が上がったシーン。小屋の中という限られたシチュエーションで,時間や環境の変化をしっかりと感じさせる演出がなされているのが分かる
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4Gamer:
 今回は多機種対応となっていますが,プログラミングで苦労された点はありますか?

樋上敬太氏
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樋上氏:
 やはりOculus Goへの対応ですね。ほかのHMDだとハイスペックのPCやゲーム機に接続するのである程度は無茶が効くんですが,Oculus Goにそこまでのスペックはありません。そのため背景を簡略化したり,プログラムを軽量化したりする必要がありました。ただ,そのせいで見劣りするようになってしまっては良くないですから,バランスには細心の注意を払っています。

北尾氏:
 Unityがセルルックの3Dアニメ向けに提供しているシェーダ(ユニティちゃんトゥーンシェーダー2.0)を弊社で独自にカスタマイズして,相当な軽量化を行いました。

4Gamer:
 PSVR版のクオリティはどんな感じになりますか?

樋上氏:
 Oculus RiftとOculus Goの間くらいで,ちょっとOculus Rift寄り……といった感じを目指して調整しています。

4Gamer:
 機種ごとの内容に違いはありますか?

樋上氏:
 Oculus Goだと,プレイヤーさんの手の位置を検知できないので,ホロとのふれあいモードに違いが出てきてしまいます。視線で操作できる部分もあるので,そちらが中心になります。

ふれあいモードで,プレイヤーの視線にホロが反応しているシーン
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4Gamer:
 1話で約10分という長回しのVRアニメーションですが,モーションキャプチャはどのような形で行ったのでしょうか。

榊原氏:
 「Project LUX」のときと同様,原寸大の部屋を用意し,ゲームに出てくる小物も置いた状態で,途中でカットすることなく一気にモーションキャプチャしました。今回はモーションキャプチャスタジオ側の提案で,PCを使ってリアルタイムで背景とキャラクターを合成したうえで位置を調整できたので,「Project LUX」よりは手間が減りましたね。

4Gamer:
 ノーカットでモーションキャプチャというのは凄いですね。

榊原氏:
 この形式だと,出来映えが演技の良し悪しに依存するところがあるんですが,役者さんは素晴らしい演技をしてくださいました。おかげで3Dキャラクターにモーションデータを流し込んだときもホロの動きだと感じられましたし,小清水さんの声も入ってさらにホロらしさが増しました。

4Gamer:
 アフレコはどのようなやり方をするのでしょうか。VRアニメーションを見ながら,声優さんが声を当てるのですか?

榊原氏:
 モーションキャプチャ時にビデオを撮影しておき,これを見ながら声優さんが演技をします。

支倉氏:
 皆さんタイミングが完璧で,修正する必要がなかったくらいでしたね。さすがにプロの技だと思いました。

渡邉氏:
 お話の流れを確認できる仮バージョンを作るのも,モーションキャプチャを使ったおかげでやりやすかったですね。収録に使った小道具と同じ大きさになるようにCGモデルを作っていくのが面白かったです。

画像集 No.012のサムネイル画像 / ホロと出会えるVRアニメーション。「狼と香辛料VR」開発秘話や注目ポイントなどを,支倉凍砂氏らキーマンに聞いた

4Gamer:
 モーションキャプチャのおかげで開発がスムーズに進んだわけですね。では最後に,「狼と香辛料VR」を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。

榊原氏:
 「狼と香辛料VR」は原作を知らない方でも楽しめますし,ファンの方なら“ホロがここにいる”という感覚や,新たな物語を味わえるものになっています。ぜひ,いろいろな方にプレイしていただきたいです。

渡邉氏:
 ふれあいモードでは,目の前にいるホロに対して視線を含めたインタフェースでアプローチできます。ホロがいる空間を楽しんでいただければいいなと思いつつ,頑張って作っていますので,楽しみにしていてください。

樋上氏:
 本編のVRアニメーションは,ホロとロレンスの掛け合いも素敵なものになっています。また,ふれあいモードでは,自分がホロと一緒にいると思える時間を過ごしてもらえるようなコンテンツにすべく努力していますので,ぜひプレイしてください。

北尾氏:
 もともとは支倉さんが活字として描いた世界が,アニメやVRアニメーションとして広がっていったのが「狼と香辛料」です。それぞれのメディアに違った良さがありますが,「狼と香辛料VR」ではホロが目の前にいるという,ひと味違った体験ができますので,ファンの皆さんは遊んでみてください。また,原作を読まれていない方にもアニメ的なVRコンテンツとして触れていただき,VRの持つ可能性を感じていただければと思います。

支倉氏:
 「狼と香辛料VR」は二次元の中に入り込み,「キャラクターに会いに行くこと」を目指して開発を進めている,小説でもアニメでもないVRアニメーションです。ホロが目の前にいてウロウロしてくれるという新しい感覚を,ぜひともVRで楽しんでください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

「狼と香辛料VR」公式サイト


 今回のインタビューでは,実際にOculus Goで「狼と香辛料VR」の第3話をプレイすることができた。ホロのモデリングは可愛らしく,彼女がロレンス(プレイヤー)の横に座るシーンでは,自分が作品世界に入ったような気分を味わえて,思わず顔がほころんでしまった。
 インタビューにあるとおり,物語は基本的に小屋の中で展開するが,ホロの空想で舞台が変化するようなシーンもあり,華やかで楽しい。2人の会話も原作者の支倉氏本人が書いているだけに軽妙で,ファンなら間違いなく楽しめることだろう。
 残念ながら,ホロとのふれあいモードについては体験できなかったが,インタラクションのないVRアニメーションでもかなりの没入感を味わえたので,こちらがどのような仕上がりになるのかも今から楽しみだ。

(2019年3月6日収録)
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