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往年のマイコン「MZ-80C」が手のひらサイズで蘇る! 「PasocomMini」の実機に触れてみた
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印刷2017/05/26 00:00

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往年のマイコン「MZ-80C」が手のひらサイズで蘇る! 「PasocomMini」の実機に触れてみた

 去る2017年5月11日〜14日,静岡市で行われたプラモデルやラジコンなどの展示会「静岡ホビーショー」で,ゲーム開発スタジオでお馴染みのハル研究所が開発中の超小型コンピュータ「PasocomMini MZ-80C」(パソコンミニ エムゼットハチジュウシー)を発表したことを,ニュースで目にした人はいるだろうか。
 シャープが1979年に発売したPC――本稿では当時に倣ってマイコンと記述する――「MZ-80C」を4分の1スケールで再現した筐体に,小型コンピュータ「Raspberry Pi A+」を内蔵して,MZ-80C用プログラムを実行できるという異色の製品だ。2017年10月中旬発売予定で,予定価格は1万9800円(税別)。2017年6月1日に予約受け付けを開始する予定である。

PasocomMini MZ-80C。畳を模したプレートや,マイコンBASICマガジンのミニチュアは,展示用のアクセサリーである
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 筆者自身は,MZシリーズのマイコンを買ったことはないのだが,当時の友人がMZ-80Cを所有していて,いろいろなゲームで遊ばせてもらったことをよく覚えている。ボンドソフトの「タイムシークレット」や「タイムトンネル」といったアドベンチャーゲームは,なかなか面白かったものだ。

 そのPasocomMini MZ-80Cに関する説明会が,東京・秋葉原で行われ,同製品の開発元であるハル研究所,筐体の製造を担当する青島文化教材社(以下,アオシマ),そして同製品に搭載するBASICの開発を担当するスマイルブームの担当者により,プロジェクト発足の経緯や開発に当たっての苦労などを説明した。
 本稿では豊富な写真を中心に,PasocomMini MZ-80Cがどのような製品かを紹介したい。

発表会に登壇したPasocomMini実現に関わった方々。左から,PasocomMini開発ディレクターを務めるハル研究所の郡司照幸氏,販売を担当するレトロPC・ゲーム専門店「BEEP」の駒林貴行氏,アオシマの堀田雅史氏,スマイルブームの細田祥一氏,ハル研究所の三津原 敏
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4分の1スケールの手のひらサイズに往年の名機を再現


PasocomMini MZ-80Cを手に持ったところ。片手でつまめるくらい小さいが,中にはコンピュータが入っている
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 まずはPasocomMini MZ-80Cの実物を見ていこう。
 第1の見どころは,実際のMZ-80Cの外観を4分の1サイズで忠実に再現したという筐体だ。102.5(W)×71.25(D)×32.5(H)mmという手のひらサイズながら,一体型の筐体にビルトインされたキーボードやカセットテープレコーダーのボタン類まで,忠実に再現してあるのがなんともかわいらしい。
 念のために説明しておくと,カセットテープレコーダーは,今で言う光ディスクやSDカードのように,プログラムやデータを保存したり読み込んだりするのに使うものだ。データを音声に変換して,音として記録していたのである。

本物のMZ-80C(左)とPasocomMini MZ-80C(右)を並べて。MZ-80C自体が,現代ではちょっとお目にかかれないデザインのマイコンだけに,なんとも懐かしい
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PasocomMini MZ-80Cを正面から見た状態。小さなキーボードも,1つ1つていねいに再現してある
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CRT部分は取り外し可能で,画面を模したプレートを交換できる
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 さすがに,内蔵ディスプレイ部分(以下,CRT)はプラスチックで見た目を再現しているだけだし,キーボードやボタン類も操作はできない。物理的に不可能ではなかろうが,2万円という価格の商品でそれらを再現するのは,無理な相談だろう。
 ただ,CRTの前面は本体から取り外し可能で,画面表示を模したプレートを交換できるようになっている。思い出のゲーム画面をプレートと同サイズで印刷して,CRT部分にはめ込むなんてことも可能であるという。

カセットテープレコーダー部分は,蓋が開いてミニチュアサイズのカセットテープをはめ込めるようになっている
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 ミニチュアサイズかつレトロな見た目のPasocomMini MZ-80Cではあるが,中身はれっきとした小型コンピュータである。そのため,ビデオ出力用のHDMI出力端子や,周辺機器接続用のUSBポート,ACアダプタ用の電源コネクタといった,MZ-80Cにはなかったインタフェース類も備えている。なお,オリジナルのMZ-80Cは,内蔵のグリーンディスプレイによる単色表示しかできなかったが,本製品はHDMI出力によるフルカラー表示が可能である。
 なお,未使用時にはインタフェースを隠すカバーも付いているので,オリジナルにない端子類は隠しておきたいという人も安心(?)だ。

左側面にはフルサイズのUSB Type-Aポートを装備(左)。背面には左からUSB Micro-Bポート,HDMI出力,電源コネクタを備える(右)。これらを隠すカバーパネルまで付属するこだわりには感心してしまう
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MZ-80Cは,車のボンネットを開けるように,筐体を上に開けて内部にアクセスできるので,PasocomMini MZ-80Cでもそのギミックを再現している。なお,オリジナルには,筐体を開けたままで固定しておく金属製のストッパー(ステー)があったのだが,PasocomMini MZ-80Cでは,取り外し式のプラスチック製ストッパーで再現する仕組みに置き換えられた
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MZ-80Cの実機を開けた様子。ボンネットのように筐体を開ける仕組みは,今時(いまどき)のPCでは,ちょっと見ないギミックだ
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MZ-80Cのマザーボードと電源ユニット。昔のマイコンは,このゲジゲジのようなICをいくつも組み合わせて,機能を実現するのが普通だった。マザーボード手前側に3列で並んでいる8×3個のチップはメインメモリで,容量は48KB。現代のCPUなら,L1キャッシュでもこれより大容量だ
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搭載CPUは,シャープがライセンスを受けて製造した「Z80」互換CPUの「LH0080」(左)。なお,展示機のマザーボードには,明らかに後付けと思われる手作りの子基盤が載っていた(右)。編集部の詳しい人に聞いたところ,大きなチップは容量1Mbitのフラッシュメモリであり,任意のプログラムを保存しておき,ロータリースイッチでプログラムを選択して,本体に読み込ませるものではないかとのこと
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SmileBASICとMZ-80 Emulatorが同時に動作


標準のソフトウェア開発環境として,SmileBASICを搭載している
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 何度も書いているとおり,PasocomMini MZ-80Cは,外付けのキーボードやディスプレイをつなげて使える独立したコンピュータだ。本来のMZ-80Cは,シャープ製のBASIC(SP-5030)などがカセットテープで提供されていたが,さすがにそれを流用することは,権利処理の問題もあってできない。そこで,ユーザーがプログラムを実行したり自作したりできるように,スマイルブーム製のBASIC「SmileBASIC」を標準搭載している。

 SmileBASICはもともと,ニンテンドーDS用のプログラムツールとして開発されたもので(関連記事),それをPasocomMini MZ-80C用に移植したものを採用しているわけだ。そのため,残念ながらシャープ製のMZ-80C用BASICを前提に作られたBASICプログラムを,そのままSmileBASICで動かそうとしても動作はしないだろう。
 だが,そこを動くように改造するというのも,70年代後半から80年代前半にかけてBASICでプログラムを組んだ経験のある人にとっては,面白い挑戦かもしれない。

 さらにPasocomMini MZ-80Cでは,SmileBASICだけでなく,「MZ-80 Emulator」というハル研究所製のエミュレータソフトウェアも動作する仕組みとなっている。
 このエミュレータを使えば,MZ-80C用の機械語プログラムを入力したり,どうにかして吸い出した当時のプログラムを読み込ませたりして,当時のように実行できるのだ。1980年代前半のマイコン雑誌には,MZ-80C用のプログラムコードがよく掲載されていたので,それらを引っ張りだしてきて,PasocomMini MZ-80Cに入力,実行してみるというのも面白い。
 なお,PasocomMini MZ-80Cの製品版には,当時のMZ-80C用ゲームが付属する予定となっており,マイコン雑誌が残っていないという人でも,あの頃のゲームをプレイできるというわけだ。

MZ-80C用のシューティングゲーム「ZEPLIS」が,PasocomMini MZ-80Cに付属する。ほかにも数タイトルが,付属の実現に向けて準備中とのこと
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SmileBASICの画面上に,ZEPLISを実行中のMZ-80 Emulatorを重ねて表示している様子。MZ-80 EmulatorはSmileBASICと並列で動作しており,PasocomMini MZ-80Cに接続したキーボードの[ESC]キーを押すと,どちらを操作するか切り替えられる
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 PasocomMini MZ-80Cで面白いのは,このエミュレータがSmileBASICと並列で動作しており,SmileBASIC側からエミュレータ側のメモリを操作することも可能というところ。SmileBASICを,当時は高嶺の花だった高機能なデバッガ的に使って,エミュレータの動作を細かく制御しながらプログラムを開発,実行できるわけだ。

 筆者が気になっていたのは,このエミュレータがどれくらい正確にMZ-80Cを再現しているのかと,エミュレータ自体をPasocomMini MZ-80Cのユーザーが改変できるのかという点だ。
 これについて,スマイルブームの細田祥一氏に話を聞いてみたところ,ハル研究所製のエミュレータは,すでに実機をかなり忠実に再現しているが,カセットテープレコーダーの読み書きを行う部分をSDメモリーカードへの読み書きに変換するといった部分は,まだ開発中とのことだった。
 ただ,文字のデータを書き換えて,ドット絵のグラフィックス(※ただし単色)に入れ替える別売りハードウェア「PCG」(Programmable Character Generator)の機能は,サポートしていないそうだ。ハル研究所はかつて,MZシリーズ用のPCGを製作して販売していたこともあるそうだが,すでに社内にも資料や知見が残っておらず,ロストテクノロジーとなってしまっているためという。

 また,MZ-80 Emulatorをユーザーが改変する仕組みは用意していないとのことだった。MZ-80 Emulatorを改造して,独自のPCGを実装したり,MZ-700のエミュレータに変えたりといったことはできない。
 エミュレータを改変できないことについて,PasocomMini開発ディレクターの郡司照幸氏は,これをベースに改造して何か別のハードを作るという製品ではなく,「(MZ-80Cを再現した)パッケージとしてみてほしい」と述べていた。たしかに,独自の機能を実装したければ,自分でRaspberry Piでも買って実現すればいいだけのことで,手のひらサイズで外観まで再現したPasocomMini MZ-80Cという製品にはそぐわない,というのは頷ける話だ。

 PasocomMiniシリーズは今後も,80年代初期のマイコンブームを支えた記念碑的製品として,NEC(当時)の「PC-8001」と,富士通の「FM-7」の再現モデルを製品化する予定とのこと。会場にはこれらのオリジナルと,4分の1サイズで再現したモックアップが展示されていた。発売時期や価格は未定だが,今後の製品も,SmileBASIC+エミュレータという構成になることは決まっているそうだ。

PasocomMini版のPC-8001(左)と,PC-8001の実機(右)
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PasocomMini版PC-8001を拡大してみた(左)。モックアップではあるが,写真だけ見ると実機と区別がつかないほど,忠実に外見を再現している。背面のインタフェースやボタン類もこのとおり(右)
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こちらはFM-7の実機(左)と,PasocomMini版FM-7のモックアップ(右)
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独特の形状をしたキートップも忠実に再現(左)。黄色いパネル部分は開けて内部にアクセスできるようにしたいとのこと。背面はまだ作り込まれていないが,PasocomMini版PC-8001同様に,インタフェース類も再現を目指しているようだ(右)
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 かつてこれらのマイコンを使っていた人や,欲しくても買えなかった人(※筆者含む)は,PasocomMiniシリーズを買って,当時のプログラムを改めて試してみてはいかがだろうか。

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PasocomMini 公式Webサイト

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