業界動向
VESA,HDR対応液晶ディスプレイの標準規格「DisplayHDR」を発表。対応製品は早ければ2018年に登場か
「DisplayHDR 400」「DisplayHDR 600」「DisplayHDR 1000」というスペックの異なる3種類の基準を設けて,HDR対応液晶ディスプレイ,あるいはHDR対応液晶ディスプレイ搭載ノートPCがその仕様を満たしていることを消費者に分かりやすい形で示すためのものだ。
なお,今回のVersion 1.0は,HDR対応液晶パネルを採用するディスプレイやノートPCを対象としており,HDR対応有機ELパネルやそれ以外のディスプレイ技術については,今後のバージョンで追加していくそうである。
HDRに関する規格としては,「HDR10」という規格の名前を目にしたことがある人もいるだろう。HDR10は,「Ultra HD Blu-ray」で採用された規格で,映像信号や伝送といった要素を規定したものだ。単純にいえば,ディスプレイの仕様を定めたものではない。それに対してDisplayHDRは,ディスプレイにおける仕様の基準を定めるものである。
HDR対応を謳う液晶ディスプレイが増えてくる一方で,そのスペックは当然ながらまちまちであり,どのHDR対応ディスプレイがどれくらいのスペックや品質を有するのか,消費者にとって分かりにくい面があることは否めない。そこで,ディスプレイ製品メーカーだけでなく,パネルメーカーやGPUメーカー,PCメーカーも協力して,HDR対応ディスプレイの大まかな仕様を示す分かりやすい基準を設けて,製品の普及促進につなげようというのが,DisplayHDRが作られた意図というわけだ。
ディスプレイに関わる主要な企業の多くが,DisplayHDRのメンバーとして名を連ねていると言ってもいいほどで,DisplayHDRが,今後の業界標準規格になると考えていいだろう。
冒頭でも示したとおり,DisplayHDRのVersion 1.0では,3種類の基準が定められた。基準の名称にある数字を見てピンと来た人もいるだろうが,これらの基準は,規定している液晶ディスプレイのピーク輝度を名称に冠している。たとえば,ベースライン(基本仕様)となるDisplayHDR 400であれば,ピーク輝度は400cd/m2以上,ミッドレンジとなるDisplayHDR 600は,同600cd/m2以上,そしてハイエンドのDisplayHDR 1000になると,同1000cd/m2以上が必要となる。
現在のゲーマー向け液晶ディスプレイは,せいぜいが250〜300cd/m2程度であるため,DisplayHDRが要求する基準は,相応に高いハードルとなるわけだ。
そのほかに,色域規格のカバー率も基準となっており,DisplayHDR 400は「ITU-R BT.709」(sRGBと同等の規格,以下,BT.709)のカバー率が95%以上であることが必須である。ハイエンドのDisplayHDR 1000になると,BT.709カバー率は99%以上,デジタルシネマ向けの色域規格「DCI-P3」カバー率も90%以上が必須であるという。
VESAによれば,DisplayHDR対応のテストツールが2018年第1四半期にリリースとのことなので,この基準を満たした液晶ディスプレイや液晶ノートPCが登場するのも,それ以降になる。「次に買う液晶ディスプレイは,HDR対応製品にしたい」と考えている人は,DisplayHDRの基準を満たしているかどうかを,1つの目安にして製品を選ぶといいかもしれない。
VESAによる当該プレスリリース(英語)
DisplayHDR 公式Webサイト
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