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セガゲームスのクリエイターが社内の開発体制や必要な人材を語る。中途採用説明会のトークセッションをレポート
トークセッションに登壇したのは,セガゲームス 第1CSスタジオ 部長 / 龍が如くスタジオ プロデューサーの佐藤大輔氏,第2CSスタジオ 副部長 / 「ソニックフォース」プロデューサーの中村 俊氏,オンライン研究開発部 / 「ファンタシースターオンライン2」シリーズディレクターの木村裕也氏だ。モデレーターは,IGN Japan 副編集長の今井 晋氏が務めた。
セガゲームス 第1CSスタジオ 部長 / 龍が如くスタジオ プロデューサー 佐藤大輔氏 |
セガゲームス 第2CSスタジオ 副部長 / 「ソニックフォース」プロデューサー 中村 俊氏 |
セガゲームス オンライン研究開発部 / 「ファンタシースターオンライン2」シリーズディレクター 木村裕也氏 |
最初のトピックは「新オフィス ここが変わった? セガでの働き方の今昔」である。セガゲームスは今年8月に東京・大崎に移転し,各地に分散していたオフィスや開発拠点を1か所に集約したばかり(関連記事)。佐藤氏によると,以前はセガゲームスのスタジオがあった大鳥居近辺に住み,徒歩通勤のスタッフが多かったが,バスや電車といった公共交通機関を使って通勤するようになってから仕事のメリハリがつくようになった人が増えたという。
中村氏は社員食堂「JOURNEY'S CANTEEN」に触れ,スタジオやチームの同僚はもちろん,同期の仲間や趣味を同じくする人といった部署の垣根を越えたコミュニケーションを取れる場になっていると説明した。ちなみに,社内でゲーム大会やスポーツイベントなどを企画・開催する際には,会社から「コミュ費」が支給される制度があるそうだ。
また,移転後,セガゲームスでは「大事な局面ではとにかく徹夜!」といった空気から,「優れたものを効率よく作るにはどうすればいいか?」という体制にシフトしつつあるという。
一方,木村氏はコラボレーションやメディア展開をするにあたり,ほかの企業と付き合う機会が多いため,移転後は非常にアクセスが快適になり,業務のスピードが上がったと明かす。オフィスや開発拠点が1か所に集約したことで,社内の連携も良くなったとのことだ。
ご存じのとおり,木村氏が手がける「ファンタシースターオンライン2」はオンラインゲームである。オンラインゲームは早朝や深夜にもトラブルが発生する可能性があり,その際には有無を言わさず対応しなければならないというイメージがあるかもしれない。しかし,同作ではトラブル対応のマニュアルを用意したり,監視を外部に委託したりすることによって,ここ数年は深夜に出社しなければならないケースは,ほぼないという。
次のトピックは「それぞれのスタジオでの職種ごとの役割とキャリア形成は?」。セガゲームスのコンシューマゲーム開発主体のスタジオには,プランナーとデザイナー(アーティスト),サウンド,プログラマという4つの職種がある。
佐藤氏は,自身がデザイナーからデザインリーダー,ディレクター,プロデューサーというキャリアを歩んでおり,「セガゲームスは職種にとらわれず,ディレクターやプロデューサーになれる」と説明した。
また,佐藤氏は龍が如くスタジオの特徴として,「ハイエンド」「リアル系」「大人向け」のゲームを手がけていることを挙げた。
とくに「龍が如く」シリーズは,登場するキャラクターのモデルに実際の俳優を起用しているが,ただカメラで撮っただけではなかなかイメージどおりにならないという。そこでモデラーが手直しをしてイメージに合わせるのだが,キャプチャー時にも役柄に合った表情をきちんと作ってもらうことが欠かせないそうだ。
なお,作品に登場するエキストラ(モブキャラ)のモデルは,セガゲームスの社内から募っているとのこと。一応,人物が特定できないようにモデリングしているものの,なかには「アイツだよな」と分かるケースもあるそうだ。
第2CSスタジオは「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズや「ぷよぷよ」シリーズ,「サクラ大戦」シリーズなど,セガゲームスのさまざまなIP作品を手がけている。1人のスタッフが同時に複数のプロジェクトに関わるケースは稀だが,「ソニック」を手がけたスタッフが,次は「ぷよぷよ」の新作に参加するといったケースはあるそうだ。
また,同スタジオでは新規IPも手がけているが,そのためにセガゲームスでは「チャレンジ予算」が設けられていることが明かされた。
業務が多岐にわたる第2CSスタジオでは,プロジェクトの規模によって必要な人材が変わるという。中村氏によると,小規模プロジェクトの場合はマルチに動ける人材,大規模プロジェクトの場合は細分化された作業に特化した人材がそれぞれ必要になるとのことだ。
さらに中村氏はキャリア形成について,「その人が何をやりたいか。いろんなゲームを作りたいのであれば,小さなプロジェクトで企画でも何でもやるマルチな人材としてキャリアを積むという方法がある。その一方,大きなプロジェクトでマップ制作の経験を積み,そのマスターになるというような道もある」と語った。
オンライン研究開発部の職種構成は,コンシューマゲームのそれと基本的に同じ。だが,ゲーム開発に携わるプランナーとは別に,「運営企画」と呼ばれるプランナーが存在する。その担当分野はゲーム内のイベントやキャンペーン,ガチャの企画立案と実施,それら施策の動向を分析して開発側にフィードバックするといった業務である。
また,ゲーム開発に携わるプランナーのなかには「UIプランナー」という職種もあり,単にUIのレイアウトを考えるのではなく,むしろ新システムや新機能などゲームの内容に関わる業務が中心とのこと。もちろん,オンラインゲームならではの通信環境や不正行為などに関する知識も求められるそうだ。
オンライン研究開発部のキャリア形成としては,各職種によって構成されるパートのチームスタッフからスタートし,パートリーダーやセクションリーダーを経てディレクターになったり,その後にマネジメント職に就くこともあれば,専門性の高いスペシャリスト職に進むケースがあるという。なお,木村氏自身はマネジメント職であると同時に開発現場にも携わっている。
トークセッションの話題は,ゲーム開発で使用しているツールにも及んだ。セガゲームスでは一部のスマートフォン向けゲームのエンジンに「Unity」を使用してはいるが,そのほかのゲームでは各部署が独自のものを採用しているという。龍が如くスタジオの「ドラゴンエンジン」を知っている人は多いはずだ。
そのうえで効率化を図るべく,部署間における技術提供や情報共有を行っているとのことで,並行してUnreal Engineなどの研究も進めているそうだ。
デザイン系のツールは一部を除き,全社的に「MAYA」に統一しつつあるという。もちろん,こちらも技術提供や情報共有を行うことで効率化を図っている。また,担当タイトルがマスターアップしてデザイナーの手が空いたら,別のスタジオの手伝いに行くといったことも増えているそうだ。
ちなみにセガゲームスでは社内向けの開発者カンファレンスを行っており,さまざまな情報共有をしているとのこと。GDCやCEDECでは成功例をベースにしたセッションが多くなりがちだが,社内向けでは失敗例なども共有できるため,より実務的な内容になっているという。
最後のトピックは「それぞれの求める人材は?」。佐藤氏は「もの作りに情熱のある人」を挙げ,「情熱がないと,人を感動させるものは作れない」と語った。また,「ゲーム開発の経験がなくても,情熱と素質があれば大丈夫」と伝え,映像制作経験者がデザイナーとして採用される例を紹介している。
一方,中村氏は「いいものを作る人」「将来のセガを支えてくれる人」を挙げた。具合的には「エンターテイメントが溢れるなか,いかにゲームが残っていくかを考えられる高い目線を持っている人材」「今すぐは無理でも,5年後10年後に必ず実現してやるという野望を持っている人」といった,将来のゲーム業界を見据えた人材を求めているそうだ。
そして,木村氏は「自分が関わったエンターテイメントを世の中に出して,お客さんに喜んでもらいたい人」と回答。「オンラインゲームはサービスを提供しているので,お客さんの反応をモチベーションにできる人がほしい」「お客さんの期待を裏切ってはダメだが,予想を裏切るようなよいものを作って驚かせたい,喜ばせたいという人が必要」と語った。
また,リーダーやディレクターに向いている人材として「自分で仕事を作り出せる人」を挙げると,「既存のワークフローにとらわれず,より効率的に,よりよいものを作れるよう考えられる人」と説明を加え,トークセッションを締めくくった。
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