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IIJが「フルMVNO」サービスをスタート。法人向けや訪日客向けのサービスから開始し,将来は個人ユーザー向けにも
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印刷2018/03/15 21:08

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IIJが「フルMVNO」サービスをスタート。法人向けや訪日客向けのサービスから開始し,将来は個人ユーザー向けにも

画像集 No.002のサムネイル画像 / IIJが「フルMVNO」サービスをスタート。法人向けや訪日客向けのサービスから開始し,将来は個人ユーザー向けにも
 2018年3月15日,通信事業者のインターネットイニシアティブ(以下,IIJ)は,東京都内で記者説明会を行い,日本では初めてとなる「フルMVNO」のサービスを開始することを発表した。

 いわゆる「格安SIM」に関わる用語として,MVNOという言葉を聞いたことのある人は多いだろうが,フルMVNOというのは,耳慣れない言葉だと思う。先に言ってしまうと,現状では,ほとんどゲーマーには関わりのない話題ではあるものの,今後,耳にする機会が増えるかもしれないフルMVNOとは何かの説明も含めて,発表の概要をレポートしよう。


フルMVNO化によって,IIJが独自にSIMや電話番号を発行できるように


 まずは,フルMVNOとは何かについて,簡単に説明しよう。
 IIJの定義するフルMVNOとは,「加入者管理機能(Home Location Register/Home Subscriber Server,HLR/HSS)を持ち,大手キャリアから独立した移動体通信事業者」であるという。ここでいう加入者管理機能とは,ユーザーの電話番号やSIMの識別番号,契約内容,端末がどの基地局に接続しているかの位置情報といったものを管理するデータベースのこと。要は端末の契約者が誰で,それはどこにあるかを判別するための機能だ。
 一般的なMVNOの場合,加入者管理機能を持っているのはMNOだけであり,国内におけるほとんどのMVNO事業者は,NTTドコモの同機能に依存しながら事業を展開している。しかしIIJは,独自に加入者管理機能を持つことで,独自のSIMカードを発行したり,電話番号の発番を行ったりといった,基地局設備以外のほぼすべてのサービスを自社で提供したいと考えており,それを実現したというわけである。

加入者管理機能をIIJが持つことで,基地局設備以外のほぼすべてのサービスを自社で提供できるようになる
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 IIJが独立した移動体通信事業者となることで,たとえば,IIJのSIMをスマートフォンに入れて表示されるキャリア名が,MNO(※現時点ではNTTドコモ)の名前ではなく「IIJ」になるという。また,フルMVNOサービス向けに発行するSIMカードは,IIJ独自のものになる。

説明会で披露されたIIJ独自のSIMカード
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 ただし,IIJ独自のSIMには,注意すべき点もある
 NTTドコモの加入者管理機能を利用する既存のMVNOサービスでは,SIMカードもNTTドコモが発行したものであるため,SIMロックフリーの端末だけでなく,SIMロックがかかったNTTドコモの端末でも利用できた。だが,フルMVNOサービスではIIJ独自のSIMとなるため,SIMロックがかかったままのNTTドコモ端末では利用できない。SIMロックフリー端末か,SIMロックが解除済みの端末を使用する必要がある。

 IIJは,加入者管理機能を自社で持つことにより,今までよりも柔軟な回線運用が行える点を,フルMVNO化の大きなメリットに位置づけているという。
 たとえば,従来のSIMは,MNOから貸与を受けた時点で番号も決まる(発番)ため,SIMの在庫がコストを上げる要因となっていた。これがフルMVNOであれば,任意のタイミングで発番できるようになり,多くの店舗でサービスを展開してもSIMの維持コストが下がると期待できる。さらに,SIMが貸与品ではなくなるため,販促物として提供したり,制限の付いた体験版を用意したりといった具合に,,提供形態の多様化が期待できるそうだ。

 そのほかにも,従来のMVNOでは,SIMカードはMNOからの貸与品にあたるので,加工することはできないが,フルMVNOであれば,ある程度自由にデザインできるようになる。また,SIMの形態もカード型に限らず,チップSIM(※SIM機能を持つICチップ)やeSIM(※組み込み用SIM),将来的にはソフトウェアSIMを発行することも可能であり,提供するサービスの自由度が拡大するそうだ。

ライトMVNO(一般的なMVNO)とフルMVNOの主な違い。SIMカードに縛られないチップSIMやeSIM,ソフトSIMの発行は,IoT需要を見据えたものである
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チップSIMは,通常のSIMよりも高い環境耐性を備えたもので屋外利用などを目的としている。寒冷地における自販機のIoT化なども一例であるという
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現時点では,個人ユーザーに直接的なメリットはほぼない


 フルMVNOとして手がける具体的なサービスとしてIIJが説明したのが,2018年4月2日に発売予定の訪日外国人向けのプリペイドSIMカード「JAPAN TRAVEL SIM」である。

 IIJはこれまでも,訪日外国人向けにJAPAN TRAVEL SIMを提供していた。先述したとおり,これらは開通こそしていないものの,すべてのパッケージに個別の電話番号があらかじめ振られている発番済みのものだ。発番済みということは,開通して有効化する前から回線の維持コストが発生するので,コスト管理を考えると,SIMの提供数や店頭在庫数も限られてしまう。
 しかし,フルMVNOサービス下でのJAPAN TRAVEL SIMならば,電話番号が割り振られるのは開通と同時になるので,SIMの在庫をより多くの店舗で用意しておくことが可能になり,購買機会を増やすことができると考えられる。

 ちなみに,JAPAN TRAVEL SIMの価格はオープンプライスとのことだが,ビックカメラにおける販売価格は,通信量1.5GBタイプが1850円,3GBタイプが2800円(いずれも税別)となっている。容量や使用期限の違いにより,従来型のJAPAN TRAVEL SIMも,今後1年程度は併売するそうだ。

4月2日から登場するJapan Travel SIMのサービスプランと価格
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 また,法人向けのモバイル通信サービスとして,「IIJモバイルサービス/タイプI」というものが3月15日からスタートしている。このサービスは,回線あたりの月額基本料が200円で,これに10GBあたり3200円からの通信料金を組み合わせる通信サービスであるという。
 ネットワーク接続もNAT(ネットワークアドレス変換)を使う0円のものから,200円で動的なグローバルIPv4アドレスを付与するもの,さらに,800円で固定のグローバルIPv4アドレスを付与するものといったサービスオプションを用意するそうだ。また,回線のサスペンド(一時停止)にも対応するという。サスペンド時の費用は1回線あたり月額30円で,こうした回線の開閉を自由に行える点が,加入者管理機能を持つメリットであると,IIJは説明していた。

 将来は,IoT向けの回線需要が増えることで,データ通信を必要とするタイミングや,上り下りのデータ容量などが今までよりも多様となるうえ,極端な変動をすることが予測されるという。そこで,今までのMVNOでは難しい多様な通信プランを展開して回線の運用効率を上げることで,収益につなげたいと,IIJでは考えているそうだった。

フルMVNOサービス導入のロードマップ。本日付で法人向けのサービスを開始し,4月2日からは訪日外国人向けのJapan Travel SIMを販売する
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 さて,ではIIJがフルMVNOサービスとなることで,ゲーマーにとって何か違いは出るのだろうか。
 率直に言ってユーザーの目に触れる範囲においては,従来のMVNOとIIJの言うフルMVNOの違いは極めて小さい。先述した電話番号の管理においても,使っている側からすれば気にならない話だ。個人ユーザー対象のサービス料金が大きく下がるといったことも考えにくい。目に入る違いといえば,スマートフォンで運用するときのキャリア名表示が,IIJになるぐらいではないだろうか。

個人ユーザーレベルではキャリア名の表示ぐらいしか違いはない。一方,販売や運用面では,大きな違いが生まれる
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SIMロックを解除したiPhone XにSIMを挿入すると,左上のキャリア名欄に「IIJ」と表示された
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 加入者管理機能をIIJ自体が用意するということは,そのために設備投資が必要となり,今後もその運用コストを負担していくことになる。そうしたコストをかけてまで,フルMVNOのサービスを拡大していく理由は,個人ユーザー向けよりも法人向けサービスにあるようだ。
 ただ,個人向けの通信サービスである「IIJmio」などにも,順次フルMVNOサービスを拡大していく計画であるそうなので,将来的にはゲーマーの選択肢となりうるサービスが登場してくることがあるかもしれない。

IIJ公式Webサイト

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