グリーの決算説明会にバーチャルYouTuberが登場。ゲーム関連は運営強化と海外展開で更なる飛躍を目指す

　2018年8月2日，グリーは，東京都内で2018年6月期第4四半期決算説明会を開催した。決算説明会には，バーチャルYouTuberの「いそら真実」（いそら まなみ）が登場。概要の解説や，バーチャルYouTuberなどライブエンターテインメント事業に注力する姿勢を強調した。

グリー 代表取締役会長兼社長 田中良和氏

（左上の写真から時計回りで）秋山 仁氏，荒木英士氏，前田悠太氏，小竹讃久氏（役職はいずれも取締役 上級執行役員）

バーチャルYouTuber・いそら真実

　決算説明会の冒頭では，バーチャルYouTuberのいそら真実がスクリーンに登場し，エグゼクティブサマリーについて解説した。一部上場企業の決算説明会にバーチャルYouTuberが登場するのはおそらく世界初とのこと。決算説明会といえば厳粛に進行するものと想像できるだろうが，この時ばかりは会場も和んだ雰囲気に包まれた。
　グリーは2018年にバーチャルYouTuber市場への参入を発表し，4月にはバーチャルYouTuberの発掘，育成，マネジメントや，動画番組の企画，制作，配信を行う子会社Wright Flyer Live Entertainmentを設立（関連リンク）していた。今回の決算説明会は，バーチャルYouTuberへのさらなる取り組みを強調する形となったと言えるだろう。


　田中氏は「今後続けるかどうかはフィードバック次第」としながらも，「決算説明会のみならず，商品や会社の説明会において，バーチャルYouTuberが説明する新たなトレンドは大きなものになるだろうと考えている。また，地方創生では多数のゆるキャラが作られたが，バーチャルYouTuberの技術を使えば彼ら自身が話すこともできるようになる。この他ゲームの新機能説明などにも使えるので，今後も展開を考えている」と前向きな考えを述べていた。


　いそら真実の退場後は通常の決算説明会に移行。グリーの業績と来期への方向性が語られた。

　発表によると，連結業績は売上高が前期比125億円増の779億円，営業利益が同14億円増の94億円，経常利益は同2億円増の103億円，純利益は同74億減の47億円。売上高，営業利益に関しては前年比で増収増益となっている。
　売上高については既存タイトルの運営強化が想定を上回る効果を上げているが，一方で外注費の増加や先行投資の実施，広告・メディア・コマース事業を行う3ミニッツの買収に関して，のれん減損に関わる特別損失を計上したことが純利益に影響を及ぼしたという。なお，3ミニッツについては，事業そのものは成長していると捉えているとのこと。


　ゲームに関しては，2015年度からネイティブアプリへのシフトを行い，2017年度には，完成したアプリが次々にリリースされた。2018年度は，これらネイティブアプリの運営強化と海外展開，そして新規タイトルの貢献によって増収増益を達成したという。以下にその詳細を掲載しよう。


●運営強化
　「アナザーエデン 時空を超える猫」（以下，アナザーエデン）では，メインストーリーの配信やコラボカフェを展開したり，「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか〜メモリア・フレーゼ〜」（以下，アプリ版ダンまち）では，原作者原案によるストーリーの配信やアプリオリジナルコンテンツを実装したりと，運営の増員と強化により，コンテンツや大型イベントが継続的に投入されている。
　「SINoALICE」では，コンテンツを継続投入するのに加えて，並行して機能強化を実施し，長期間で売上を維持できたという。また，アナザーエデンにおいては，7日間継続率が向上するといった効果が見られたとのこと。


●海外展開
　アプリ版ダンまちは，Crunchyrollと住友商事を事業パートナーに迎えて，北米でのサービスを開始した。日本版と北米版を合わせて約2倍の収益を上げているのこと。


●新規タイトル貢献
　「NEWSに恋して」「ぷちぐるラブライブ！」といった新規タイトルが高評価を獲得しているという。


　続いて，2019年度の事業方針についても語られた。収益基盤としてのゲーム事業，次の成長軸である広告・メディア事業，そして新たな事業創出としてのライブエンターテインメント事業を3本柱とし，積極的に投資を行い，継続的成長を目指していくという。


　モバイルゲームに関しては前期に引き続き「エンジン×IP×グローバル」を戦略として掲げる。既存エンジンの強化と新規エンジン開発を行い，IPの長期育成に投資することに加えて，海外展開を本格化していく方向性だ。
　エンジンについては現在使用しているものを継続するのに加え，既に複数の新エンジンを開発しており，新たなジャンルのゲームにも参入していくとのこと。


　IPの長期育成については，「消滅都市」のTVアニメ化，新作ゲーム「新・消滅都市プロジェクト」の始動，「消滅都市2」に登場するアイドルグループ「SPR5」のデビューなどが予定されている。また，テレビCMと連動したイベントを開催するSINoALICEなど，ファンコミュニティの拡大に注力していく。


　海外展開も継続していく。決算説明会では，アプリ版ダンまちについては東アジアと中国での配信を計画しているのに加え，アナザーエデンも海外に展開し，収益性の向上を目指していくことが明らかにされた。


　また，「釣り★スタ」を，FacebookのInstant GamesやNintendo Switchなどマルチプラットフォームに展開していく。未発表のものを含めて4タイトルが開発中であることも発表された。


　バーチャルYouTuberなどライブエンターテインメント事業に関しても取り組みを続け，2018年8月7日に新たな発表を行うとのこと。


　決算説明会の後には質疑応答も行われたので，印象的な質問をピックアップして本稿の締めくくりとしたい。

Q：5G回線の運用も始まるが，ゲームの作り方にどんな影響があると考えているか。

田中氏：
　5Gに関してネガティブな要素はない。よりモバイルゲームを遊びやすい環境になる。

荒木氏：
　現在，通信速度自体は遅くなくても，パケット料金などの問題があり，大容量のゲームは遊ばれにくかったり，Wi-Fi環境が整った家で遊ぶなどプレイシーンが限られる。しかし，5Gでここが改善されると良い影響があるのではないかと考えている。

前田氏：
　開発者はよりクリエイティブ力を問われることとなる。海外勢といかに戦うかという意味では開発力の強化は必須となる。


Q：SINoALICEの大型プロモーションについて効果は現れているのか。

前田氏：
　非常にいい手応えを感じている。インストール数はデイリーで4倍ほどとなり，DAUもリリース直後以降過去最高となっており，継続率も高止まりしている。

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