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[TGS 2015]基調講演第2部で語られた,動画配信が切り開く新しい広告戦略とプラットフォームとは
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印刷2015/09/18 03:09

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[TGS 2015]基調講演第2部で語られた,動画配信が切り開く新しい広告戦略とプラットフォームとは

 東京ゲームショウ2015初日となる2015年9月17日に行われた基調講演第2部は,「ゲームマーケティング新時代 〜動画配信プラットフォーム活用の新しい可能性〜」と題し,TwitchドワンゴGoogleの3社がそれぞれ講演を行った。
 かつては特別なノウハウが欠かせなかった動画配信だが,もはやコンシューマ機やPCからワンボタンで実況配信できるのが当たり前となった。また,スマートフォン向けのゲームをスマートフォンだけで実況できる環境も,着々と整いつつある。
 かくして世界中で隆盛を誇り,そこから莫大な収入を得る個人も登場するようになったゲーム実況だが,現状はどうなっており,そこにどんな可能性があるのかが語られたこの講演。述べられたさまざまな見解を,簡単にまとめてみたい。
 なおGoogleの発表は,前日行われた発表とほぼ変わらないものだったので,「こちら」の記事も合わせて参照してほしい。

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[TGS 2015]YouTubeのゲーム実況向けライブストリーミングサービス「YouTube Gaming」の日本展開に関する発表もあった“基調講演の事前プレゼン”をレポート



Twitch:プレイヤーをファンに変える


 まず最初に,日本におけるTwitchのディレクターであるVictor Denchartphan氏から,Twitchの現状についての簡単な説明があった。

Director Japan, Twitch/Victor Denchartphan氏
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 元プロゲーマーだったDenchartphan氏は,Twitchの配信はゲーム実況だけでなく,カンファレンスやイベントの中継,ゲームトーナメントの配信,あるいはゲームの練習にも利用されていると語った。
 このように利用範囲の広いTwitchは,150万人を超えるブロードキャスター(Twitchの配信者)を擁し,またユーザーの滞在時間は1人あたり106分という,非常に大きなメディアになっている。いまやTwitchでゲームプレイを見て,そこで得た情報や印象をもとにゲームの購買を決定するのは珍しいことではないという。

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 Twitchの現状が説明されたところで,ここからは実際にTwitchをどのようにしてパブリッシャが使っていくかが,アマゾン ジャパン アプリ事業部ディレクターのジョナサン・ナガオ氏によって語られた。

 ナガオ氏が終始強調したのは,「プレイヤーをファンに変えていく」ということだった。単にゲームを楽しんでいるだけのプレイヤーを,内外に積極的に働きかけるファンへ変えていくことは,プレイヤー人口の広がりという面から見ても,あるいは収益性という面からみても,重要な意味を持つ。
 ではいったい,どうすれば普通のプレイヤーを,熱心なファンへと変えていけるのだろうか?


プレイヤーを巻き込んでいく


アマゾン ジャパン アプリ事業部ディレクター/ジョナサン・ナガオ氏
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 ここでナガオ氏は,「プレイヤーを巻き込んでいくこと」の重要さを指摘した。この「巻き込む」というのは,簡単に言えば,より長い時間をゲームに対して投じてくれるようにするということだ。これは,プレイ時間が長いということだけでなく,ファン活動など,ゲームに関連した時間もすべて含められる。
 この点において,Twitchはこの「巻き込む力」が強い。なにしろ,ユーザーあたりの平均視聴時間は106分にも及ぶのだから,この土壌を活用することでゲームメーカーはファンを作り,それを拡大していくことが可能になる。
 では実際に,有力なメーカーは「プレイヤーを巻き込む」ために,何を行っているのだろうか。

 まず原則として重要なのはプレイヤーに,より快適で気楽な空間を用意することだ。

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 というのも,そういった気楽な空間において,ほかのプレイヤーとインタラクションを行うようになったプレイヤーは,単独でゲームを楽しむプレイヤーに比べてゲームの継続率が4倍だというデータがあるからだ。

 そしてこの「気楽なインタラクション」の例として,例えば「League of Legends」では,ゲームをプレイするだけでなく,ファンアートを投稿してもらってコンテストを開くといった活動が行われている。
 このように多彩な間口を用意することで,プレイヤーはゲームの「外」においてもゲームに関与するようになる。そうやってファンになったプレイヤーの周囲にいる人もまた,ファンの活動に引っ張られて,ブランドへの関心を高めていくことになるというわけだ。

League of Legendsにおけるファンアートの例
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ユーザー参加とユーザー教育


 別の例としては,「Trivia Crack」「Minecraft」がある。
 Trivia Crackは,ユーザー参加型のクイズゲームだが,ユニークなのはユーザーが問題も提供することだ。
 これにより,Trivia Crackに常に新しい問題が供給されるだけでなく,さまざまな嗜好のユーザーにとっても親しみやすい,ローカルな話題も問題として提供されるようになる。ユーザー自身が,ファンとして,ゲームを面白くし続けるのだ。

 一方で,同じくユーザー参加型のように思えるMinecraftには,教育というフックが存在するという。
 Minecraftでは,「Java for Minecraft」というサマーキャンプが実施されている。これは夏季休暇を利用して子供達がJavaを学び(50時間のコースだそうだ),Minecraftの新しい武器や防具,マップなどを自作して共有するというプログラムだ。
 実際このプログラムに参加したナガオ氏の息子さんは,キャンプ前まではMinecraftのプレイヤーに過ぎなかったが,キャンプ後はファンに変貌したという。今では「来年はもっと上のレベルのクラスに参加したい」と言っているそうだ。
 まさに,プレイヤーがファンに進化し,情熱をもってゲームにあたっていく――そのプロセスそのものだ。

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開発を公開,実況する


 さて,インタラクションには,別のパターンもある。それは,開発プロセスのストリーミングと,その共有だ。
 これは,ゲーム開発者が,リリース前のゲームを開発している様子を,そのまま中継するという方式で,プログラムを書いて,ターゲットマシン上でそれを走らせることで,ゲームがどんな感じで作られるのかを,実況するわけだ。
 この一風変わった生中継は,いまやTwitchでは大きな人気を誇るコンテンツの一つであり,再生回数もフォロワー数も非常に多いという。

ゲーム開発を実況している例
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 この方式の強みは,ゲームがリリースされる前の段階で,強固なファンベースが確立されることにある。
 ゲームの開発者は,視聴者のコメントを参考にし,その場でゲームを作り変えていくことも多い。「自分のコメントが,ゲームに反映された」経験を得た視聴者は,まだゲームをプレイさえしていないのに,熱心なファンへと変わっていく。
 似たようなことは,プログラマーだけでなく,アートディレクターやサウンドディレクターなど複数人が同時に作業を進める生中継という,より大規模な形でも行われ,これも好評を博しているようだ。

複数人の開発者が登場する例
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 これ以外にも,開発実況をしながら,そのゲームのグッズを番組の中で販売する方式も紹介された。グッズ購入者は,ゲームがリリースされたときに,そのゲームを無料で獲得できるという仕組みになっている。
 こういったグッズ――主としてTシャツ――は,それ自体が良い広告塔になる。そして当然,ゲームがリリースされたときには,すでにその作品は強力なファン層を得ていることにもなる。
 こういった忠誠心の高いファンは,口コミの中心にもなり,自分達の周囲にプレイヤーを次々に増やしていく。


インフルエンサーの活用


 ここまでは,「プレイヤーをファンに変える」ということに,議論の中心が置かれてきたが,ナガオ氏はここでさらに議論を進め,「どうしたらファンの数を増やせるのか」という課題を解説した。

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 結論から書けば,ファンを増やすにはインフルエンサーを利用するのが良いということになる。ここで言うインフルエンサーとは,家族や友人にオススメする程度のレベルではなく,何千人〜何百万人という人々に,一度にリーチできる力を持った人のことを指している。
 こういった,力のあるインフルエンサーに配信してもらうことが,ファンを増やす秘訣となるのだ。

 しかし,たった1人で数千人や数万人に影響を及ぼしうる人物を,どこで確保できるのだろうか?
 Twitchには,そういったインフルエンサーがいる。フォロワー数150万といった規模のブロードキャスターも,Twitchには存在しており,彼らを介することで,一度に多数の人々に影響を与えることが可能となる。

 また,こうした影響力を持つ人としてはインフルエンサーのほかにエデュケーターと呼ばれるタイプの人が存在することも指摘された。
 多くのゲームには,攻略法やノウハウがあり,多くのプレイヤーは,どうしたらもっとゲームを楽しめるのか,もっとうまくなれるのかを,知りたがっている。
 この知的欲求を満たしてくれる「教育者」が,エデュケーターだ。「Hearthstone: Heroes of Warcraft」の戦略やデッキビルド技術の解説であったり,League of Legendsの戦略解説であったりといった形で活躍するエデュケーターは,ファンを拡大する大きな可能性を秘めているとナガオ氏は述べる。

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モノを利用してファンを作る


 最後にナガオ氏は,収益源を広げるアプローチについて解説した。
 ゲームはいまや,さまざまなマネタイズモデルを持つに至っている。そんな中,「実体あるモノを提供するマネタイズ」は,プレイヤーをファンへと醸成する力を持っているそうだ。
 先ほども例にあがったTシャツはその典型例だが,例えばぬいぐるみやスマートフォンケースなども,「モノを提供するマネタイズ」として見ることができる。
 このようなマネタイズは,さらにタイミングを絞ることによって――例えばゲーム内ストアで,クリスマス限定のぬいぐるみを販売するなど――プレイヤーの感情を揺り動かし,ファンへと変えていくきっかけとなり得るという。

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 ここにおいて,Amazonというマーケットは,非常に強力だ。
 Amazonには何百万人という顧客がおり,20年にわたって「モノを売る」ビジネスを続けてきたことによるノウハウがある。これは,ゲームを売ることにおいても活かされる。
 そしていま,Amazonはゲームスタジオも立ち上げ,そのスタジオが作ったゲームはApp Storeなどでさまざまな賞を獲得したり,注目作としてピックアップされたりしている。加えて,Amazon自体が立ち上げたAmazon アプリストアも,手軽にアプリを提供するマーケットとして存在している(Amazon アプリストアのユーザーは,ほかのプラットフォームのユーザーより課金率が高いという)。


ゲーム業界を動かす情熱


 TwitchとAmazonからの講演を締めるにあたって,ナガオ氏は,「ゲーム業界を動かすのは情熱だ」と語った。
 そしてまた,それはDenchartphan氏も強調した点である。元プロゲーマーだったDenchartphan氏は,Twitchの良さを「スタッフが情熱的であること」と語った。
 この情熱を共有し,明るい未来を共有していこうというのが,彼らの最大のビジョンなのだ。

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ドワンゴ:ニッチマーケットの集合として


 続いて登壇したのは,ドワンゴ 取締役CCO ニコニコ超会議/闘会議統括プロデューサーの横澤大輔氏である。

ドワンゴ 取締役CCO ニコニコ超会議/闘会議統括プロデューサー/横澤大輔氏
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 横澤氏はまず,ニコニコ動画の現状から解説を始めた。
 ニコニコ動画は現在,会員数約5000万人,プレミアム会員数(有料会員数)が250万人。男女比はおおよそ2:1で男性が多く,年齢層としては10代〜20代が半数を占めるという,若いコミュニティだ。

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 それを前提として横澤氏が強調したのは,この「5000万」という数は,一つの塊ではないということだ。ニコニコ動画における5000万人は,無数のニッチマーケットが集まってできた,5000万人であり,ニコニコ動画が拡大してきたのは新しいニッチマーケットを理解し,それに対して最適な展開を行ってきたプロセスによる。
 この「無数のニッチマーケット」の一つが,ゲーム実況であると横澤氏は述べた。

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ニコニコ動画における「ゲーム」


 ニコニコ動画におけるゲームカテゴリは,ニコニコ動画全体のユーザー分布に比較し,明らかな偏りが見られる。
 ゲームカテゴリは,ニコニコ動画における最大のマーケットであり,再生数で見ると,638億再生がゲームカテゴリで発生している。また,投稿される動画の34%はゲーム関連だという。

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 ニコニコ生放送においては,公式と個人を合わせて月間347万番組が放送されているが,全体の67%はゲーム実況ないしゲームに強く関連した生放送になっている(なお,これには「ゲームもするが,ほかのこともする」生放送もカウントされていることには注意が必要)。
 ゲームに興味を持つユーザーにも特徴がある。ゲームに興味があるユーザー1万人を対象にしたアンケートによると,ここでの男女比はほぼ1;1(やや女性が少ない)となっており,これには,ゲーム実況主がアイドル化して多くの女性ファンを獲得した背景があるという。
 また,8割が「毎日ゲームで遊んでいる」と回答しており,ゲーム実況を見るだけでなく,実際に毎日遊ぶヘビーゲーマーが多いことが明らかになっている。


UGCにとって重要なこと


 さて,このようにニコニコ動画内でも特殊なポジションを占める「ゲーム」だが,横澤氏はこれを単なる「ゲーム動画」「ゲーム実況」ではなく,「ユーザー参加型コンテンツ」(UGC)として捉え直す。
 もともとUGCへの参加が盛んな日本のサブカルチャーにおいて,ゲーム動画が盛り上がったのは,ある意味で当然のことだったのかもしれないというのだ。横澤氏は,ゲーム実況文化は世界に先駆けて日本で発生したことを指摘(最初の「ゲーム実況」は,2007年3月6日の「バイオハザード」の実況だったという)。現在ニコニコ動画のゲーム実況で起こっていることが,世界のゲーム実況文化においてもやがて発生する――つまり日本がゲーム実況文化の最先端にいるという見解を示した。

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 ここで,ゲームメーカーから見た最大の興味は「どうしたらUGCが盛り上がるか」ということになるが,これに対し横澤氏は,2つの要点を指摘した。
 1つは,完璧なものを作らないことだ。完璧なものに対しては,ユーザーは「好き」「嫌い」の評価をする以外,手出しができない。だがそこに自分の知識や経験,価値観を投入できる隙間があれば,ユーザーはその隙間を自分の力で埋め,またそれを基点としてコミュニケーションが発達する。「突っ込みどころ」「意見を言いたくなる部分」があるのは,重要なことだという。

 もう1つは,ゲームをコミュニケーションツールとして意識すること。
 ゲーム実況は,ほぼ「ながら見」のコンテンツだ。ファミコン時代,クラスメイトの誰かの家に集まり,みんなで代わる代わるゲームを遊んでいたという状況のオンライン版がゲーム実況だと言えるという。つまり「実際にゲームをプレイしていなくても,楽しい」という構図が,インターネット上に発生しているのだ。

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 また,UGCを基盤としたユーザー間の横のつながりは,プロモーションにおいても大変に効果的に機能する。ゆえに,プロモーションプランを設計するにあたっても,このことは考えておかねばならないと横澤氏は述べた。


ネットとリアルを越えて


 さて,ここまではニコニコ動画の特性が議論の中心だったが,横澤氏はここで,KADOKAWA・DWANGO以降の戦略に話題を転じた。
 KADOKAWA・DWANGOとしての戦略は,「リアルとネットを超えた,全方位的な情報や体験の提供」が目標だ。これは,ニコニコ動画(ネット)を有するドワンゴと,数多くの紙媒体(リアル)を有するカドカワのリソースを,最大限に活用する戦略だと言えるだろう。

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 その1つの試みが,ゲーム実況とゲーム大会の祭典である,「ニコニコ闘会議」だ。ニコニコ闘会議は,ただ単にゲーム大会を開き,それを実況するというものではなく,ゲームの「リアル」なプラットフォームとして企画されている。
 そのため,例えば参加者が実際にインクを水鉄砲で撃ちあう「リアル・スプラトゥーン」や,22台のゲーム機を用意して22人のプレイヤーでサッカーゲームの対戦を行う企画(審判もいれば,プロサッカー選手もプレイヤーとして参加し,ゴールを決めると皆でハイタッチするなど,「リアル」な体験が同時に得られるものとなったという),コスプレイヤーが作ったコスプレ用武器を持たせてもらえる企画など,「リアル」への接点を強く持つイベントになっている。

ニコニコ闘会議の様子
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 ニコニコ闘会議は,「予選」という形で拡大している(全国9か所で予選を開催する予定)。これはニコニコ闘会議への参加可能性を高めるだけでなく,東京への一極集中に対するアンチテーゼでもあるという。「インターネットには中心がない。だからネットとリアルが融合したハイブリッドな世界においても,中心を壊していきたい」というのが,横澤氏のイメージだ。

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ゲームポータル戦略


 横澤氏は最後に,「ゲーム環境は変化し続けており,それに対応し続けてきたのがニコニコ動画である」と指摘した。そして今,細分化したニッチマーケットに対応できる,新しいメディアが必要であると語る。
 これに対し,分散したゲームメディアをポータル化し,紙媒体,イベント,動画,生放送など,あらゆる面でユーザーとコミュニケートできることを目指すのが,「ゲームポータル戦略」となる。

 メディアという面において,ユーザーが個々にメディアを持つのが現代だと言える。これに対しても連携を進めていきたいと,横澤氏は語る。スマートフォンから簡単にゲーム実況ができるニコニコスマホSDKは,ある意味でこの一環と考えることもできるだろう。

 最終的には,ユーザー,IP,プラットフォームの3軸で,新しいエコシステムを作る。それがKADOKAWA・DWANGOとしての戦略であると語って,横澤氏は講演を終えた。

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4Gamer「東京ゲームショウ2015」

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