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[TGS 2016]Twitchがどのようにして生まれ,日本市場においてどう展開していくのか。Twitch COO,Kevin Lin氏の基調講演をレポート
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印刷2016/09/16 16:52

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[TGS 2016]Twitchがどのようにして生まれ,日本市場においてどう展開していくのか。Twitch COO,Kevin Lin氏の基調講演をレポート

 日本でもゲーム実況はもはや定番コンテンツの一つだが,世界的に見るとその最も大きなプラットフォームは「Twitch」だ。e-Sportsの大会中継から,超多人数同時プレイのポケモン,あるいはインディーズゲーム開発者の開発実況まで,多彩な生放送が提供され続けている。そんなTwitchがどのようにして生まれ,そして今後,日本市場においてどう展開していく予定なのか。
 TwitchのCOOであるKevin Lin氏が,東京ゲームショウ2016初日(2016年9月15日)のTwitchブースにおいて,基調講演という形でその方向性を語った。

Twitch COO,Kevin Lin氏
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Twitch公式サイト



Justin.tvからTwitchへ


 「TGSに来ることができて嬉しい」と語るLin氏は,まずTwitchの歴史から話をスタートさせた。

 Twitchはもともと,Justin.tvというサービスから始まっている。2007年にJustin Kan氏は「インターネットで24時間365日生放送を配信する」というアイデアを思いつき,そのコンテンツとして自分自身の実生活を配信するというプロジェクトを開始した。

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 これは革新的なアイデアではあったが,しかしながら,非常に素晴らしいというものでもなかったとLin氏は語る。Justin.tvはストリーム配信のプラットフォームとなり,「Lifecasting」というジャンルを成立させ,普通の人が実生活を配信するという文化を作った。そして6000万人を超えるユーザーがJustin.tvを楽しんだ――だが当時の運営スタッフは,彼ら自身がJustin.tvのコアユーザーというわけではなかった。有り体に言えば,Kan氏以外にLifecastingを熱心に行うスタッフはいなかったというわけだ。

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 もちろんスタッフ達も,結婚式の生中継など,さまざまな試みを行っている。そうしたトライを繰り返す中で,彼らは自分達が「ゲームが好きだ」ということに気づいたという(Kan氏もゲームが大好きで,朝の2時までゲームを延々と遊ぶような人物だ)。実際,当時のスタッフはまだβ版だった「StarCraft II」の生放送を行うことも多かった。
 けれど,こういったゲームのプレイ配信は,必ずしもうまく行かなかった。そもそも配信者たるスタッフ自身が,ほかのストリーム配信サービスで行われているゲーム実況を見ながら配信を行うようなことも珍しくなかったという。彼らはゲーム実況というものの可能性や楽しさを理解していたが,なぜそのプラットフォームとしてJustin.tvが使われないのか,その原因が分からなかったのである。

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 かくして彼らはゲーム実況を行う配信者や,ゲームを愛するゲーマー達が,一体何を求めていて,何を欲しているのかを調べることにした。
 この調査に基づいてローンチされたのが「Twitch」――ソーシャル要素を持った配信プラットフォームというわけだ。


コミュニティがコンテンツを作る


 Twitchのサービスを開始してからも,発見は続いた。
 Twitchは,ゲームを遊びながら,ファンとその体験を共有するコミュニティだ。このためチャットは非常に重要な位置を占める。Twitchにおけるチャットは,配信者と視聴者がコミュニケーションを取る手段というだけでなく,それそのものがコンテンツとなっているとLin氏は指摘する。
 また,チャットの重要性が大きくなるのと同時に,いわゆるスタンプの重要性も拡大した。スタンプは言語に依存しないコミュニケーションを可能とするが,この特性は「ゲームが持つ特性そのものと言っていい」(Lin氏)というわけだ。

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 こうして発達したコミュニティは,年に1回くらいのペースで,非常に変わったイベントを生み出す原動力となった。
 2014年におけるその最も顕著な例は,「ポケットモンスター」をTwitchのチャット越しに多人数がプレイするというイベントだ。最終的に120万人が参加したこのイベントは,当初「1人用RPGを多人数でプレイするなんて無理,絶対にクリアは不可能」と言われることもあったという。だが16日後にゲームは見事クリアされた。

超多人数同時プレイのポケモンはトータルで3600万人以上に視聴されている
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 このように,コミュニティには自力で新しいコンテンツを作っていく力がある,とLin氏は語る。
 120万人が参加したポケモンにしても,ゲーム自体は20年も前の,いわば遊び尽くされたゲームだ。だがそのゲームをめぐり,120万人が大いに盛り上がった。また,それぞれの地域に住むユーザーの活動時間に合わせ,世界中のさまざまな地域の人々がバトンを渡すようにプレイしていくという,従来には見られなかったプレイスタイルも生まれた。そして,そのプレイの中で新たなスラングが生まれ,神話や伝説も誕生していったのだ。
 Twitch側も,このような新しい企画やプレイスタイルの誕生は喜ばしいものだと考えている。事実,今では大量のプレイヤーで1つのゲームをプレイすることを前提としたツールさえ用意されているという。

月間のユニーク視聴者数は1億,日間で1000万。視聴者の平均視聴時間は2時間。60%は週に20時間以上視聴し,ユーザーの平均年齢は25歳
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日本市場に対するTwitchの取り組み


 さて,世界的に見ると非常に大きなシェアを有するTwitchだが,日本において正式にサービスが始まってからは,まだ1年しか経過していない。それにも関わらず,日本の視聴者は1人あたり平均で1日4時間,Twitchを視聴しているという。この数字は,世界平均の倍にあたる(ちなみに年間のユニーク視聴者数は700万人)。
 このように熱心なユーザーを日本でも獲得しているTwitchだが,日本での展開において「成すべきことはまだまだある」というのがLin氏の見解だ。

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 プロゲーマーである梅原大吾選手をグローバルアンバサダーに迎えたのは,その施策の一環とも言える。Lin氏は梅原選手を「格闘ゲームの面白さを世界に伝え,また世界が日本のゲームシーンを理解する大きな一助となっている」と評価する。

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 格闘ゲームは,Twitchにとっても大きなコンテンツとなっている。
 2014年にはカプコンと共同で「CAPCOM Pro Tour」を開始。これによって世界の競技シーンが連結され,ストリートファイターのアクティブプレイヤーは4倍に増大した。もちろん,大会への参加者も増大している。
 また,世界中で行われているストリートファイターの大会を,日本人の解説者が日本語で実況するという企画も行われている。これについてLin氏は「そもそも格闘ゲームのコミュニティは日本で発祥したもの。今度は世界の情熱を,日本にも届けたい」と語る。

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 また,ゲームだけがTwitchのコンテンツではない。
 Twitchでは,「Twitchキャラクターデザインコンテスト」を開催する。これはその名のとおり,Twitchのイメージキャラクターを作るコンテストで,Lin氏は「日本のイラストレーターにも,ぜひ参加してほしい」と語っている。また,イラストレーターが自分の創作過程をTwitchで配信するのも大歓迎ということだ。

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 このように,日本市場に向けて大小さまざまな施策を行っているTwitchだが,今後もサイトのローカライズを進める(2017年初頭には完全ローカライズ予定とのこと)と共に,検索機能を強化して,日本ユーザーのニーズに応えていく予定であるという。また日本のデベロッパとの交渉も始まっており,世界の視聴者に向けて日本のゲームを配信していく体制を協力して作り上げていきたい,とLin氏は語った。

東京ゲームショウ2016では「FINAL FANTASY XV」とTwitchのコラボレーションも発表されるとのこと
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基調講演の直後に行われた梅原大吾選手のギネス記録認定式。梅原選手は「子供の頃によく読んでいたギネスブックに自分が載るというのは嬉しいこと」「何かやりたいことがあるならば,『自分ってこんなものかな』と思うことなく,また周囲がそこで何を言おうが関係なく,努力することが大事」と語った
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