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印刷2017/05/12 16:27

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VRコンテンツが提示するUIの未来とは。「TOKYO SANDBOX 2017」のパネルディスカッション「The New Face of Interface」をレポート

 インディーズゲームにフォーカスをあてた大型複合ゲームイベント「TOKYO SANDBOX 2017」が,2017年5月10日から14日まで都内各地にて開催中だ。本稿では,5月11日に行われたゲーム開発者向けサミット「PUSH」のパネルディスカッション「The New Face of Interface」の模様をレポートしよう。

 本パネルディスカッションでは,GOROmanことエクシヴィ 代表取締役 近藤義仁氏,ViRD 代表取締役社長 能代和哉氏,ねぎぽよちゃんねる 開発者 根岸 匠氏の3名が,VRコンテンツのインタフェースについて意見交換を行った。

左から,エクシヴィ 代表取締役 近藤義仁氏,ViRD 代表取締役社長 能代和哉氏,ねぎぽよちゃんねる 開発者 根岸 匠氏
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モデレーターを務めたパノラプロ 代表取締役 広田 稔氏
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 最初のテーマは「VR/AR/MRにおけるインターフェースの理想形は?」というもの。近藤氏は「自分の頭の中に思い描いたとおりに作用するUIが理想」であるとし,例としてエレベーターに乗ったとき,リアルのボタンを押さずとも,VR空間でボタンを押せば行きたい階に行けることを挙げた。ただ現状のVR用ハンドデバイスにはボタンを押した感覚を再現できないという課題があり,近藤氏は「そうしたフィードバックまで再現できることが究極の理想」と話していた。

 能代氏も近藤氏と同じく「UIは,自分のやりたいことを実現するもの」とし,将来的には「HMDを使わなくともディスプレイを表示させられることが理想」だと語った。
 また根岸氏は「人間は根本的に楽に,かつ超越的でありたいと考えている」とし,近藤氏と能代氏が挙げた「思ったとおりにできることが理想」という意見に同意していた。

 話題は,先日開催された「Unite 2017 Tokyo」にて,Googleが紹介した「空間的な認知コンピューティング」にも及んだ。近藤氏によると,こうした空間UIが実現すると物理的な制約がなくなるため,さらにVRが飛躍する可能性があるという。

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本ディスカッションに先駆け,エクシヴィのR&Dプログラマー 藤原 航氏が研究開発中というVR向けOSのデモも披露された。このOSには,MS-DOSに代表されるCUI(Character User Interface),WindowsやMac OSのGUI(Graphical User Interface)に代わり,アプリケーションなどをVR空間内に自由に配置できるSUI(Spatial User Interface)が採用されている。これはまさに空間UIの考え方を実現するものである
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 2つめのテーマは,上記のディスカッションを受けて「そんなゴールに向けて,今作っているVRタイトルでどんな工夫をしている?」というもの。根岸氏は,自らが手がける「VR本屋」では,リアルの本屋で感じる「検索しにくい」「本が多すぎる」といった不満をデジタル的に解決するように努めているという。
 また現状で「VR本屋」がリアルの本屋より勝っている部分として,書籍の拡大表示ができることや,物理的な重さがないため腕が疲れない点を挙げていた。

根岸氏が目下開発中の「VR本屋」では,VRで書籍を読める。将来的には,VRで書籍を購入できるようになる予定
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 能代氏は,自身が「Makebox」を企画開発した経緯について,「難しいと思われている3Dモデリングだが,VRなら誰でも簡単にできるのではないかと考えたから」と説明。こうした試みにより,今以上にVRやARを使ったコンテンツ作りにチャレンジする人が増えることに期待しているという。
 またVRは,単に新しいUIを生み出すだけでなく,現実を書き換えるという大きなメリットがあるとも話した。

 近藤氏も能代氏の意見に同意し,例えばDTMの登場でギターやピアノが弾けなくとも作曲が可能となったように,VRの普及によってクリエイティブに挑戦する人が増えるのではないかと展望を述べた。
 また近藤氏自身の目指すゴールは,「VRをより便利に,より生活に溶け込むようにすること」。その理由として,例えばスマートフォンも最初は一部の好事家しか手に取らなかったが,実際に使うことで生活が豊かに,かつ便利になったからこそ,10年でここまで進化し普及したことを挙げていた。具体的には,VRをOSの中心と捉え,音声認識,バーチャルなアシスタントキャラクター,そしてパブリックによるフィードバックの採用を試みているという。

 3つめのテーマは,「インターフェースのアイデアはどんなところから得ている?」というもの。能代氏はさまざまなアニメ作品を参考にしているとし,例として「遊戯王」のモンスター召喚シーンなどを挙げた。
 その一方で,未来的過ぎるデザインにするとユーザーが理解できなくなってしまう恐れがあるため,「Makebox」ではタブレットのようなUIを用意し,直感的に操作できるようにしたという。また,そうした工夫ができるのも,VRの強みだと話した。

能代氏の開発した「Makebox」は,VRでボクセルモデルを制作できるツール。セールスポイントは,直感的に3Dモデルに触れられるところだという
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 根岸氏は「VR本屋」のUI設計において,リアルの本屋を参考にしつつ,上記のとおりリアルでは面倒に感じる部分を排除したと説明。またVRは空間に情報を与えられるために,リアルで生ずる問題点の解決手段が無数に存在するとも語っていた。

 近藤氏は「アイデアはインプットの結果として出てくるもの」とし,「ソードアート・オンライン」のような最近のアニメ作品から昔のSF映画に至るまで,さまざまな映像に影響されているという。そして咀嚼したそれらの映像が,ふとした瞬間に一つのアイデアとして湧いてくるとのことだ。
 また「常識を一度捨てること」も常に意識しており,スマートフォンにおけるフリックのように,VRにも新たなUIが発明されるだろうと予想していた。

 ディスカッションの最後には,モデレーターを務めたパノラプロ 代表取締役の広田 稔氏から,「現状のVR業界は少し盛り上がりに欠けるのでは? という意見も出ていますが,今後儲かりそうですか?」という質問が3名の登壇者に投げかけられた。

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 根岸氏は,現状はまだVRの普及率が低くスマホアプリのような広告収入が見込めないなどの理由から,「儲かりにくい」と回答。
 また能代氏も「現状のVRは最初の体験こそインパクトがあるものの,二度め以降は飽きられがち」という課題を挙げ,自身も儲かっていないとした。しかしその一方で,開発者としては「ハードもソフトもどんどん進化しているVR業界は楽しい」と語った。

 近藤氏は,1982年に自身が初めてPCに触れたときに「これでゲームを遊べる,ゲームを作れるとは思ったが,儲かりそう! とは考えなかった」とし,今現在,大手パブリッシャとなっているゲーム企業の創業者達もそうだっただろうと説明。「そのように,自分が楽しんで作ることが一番大事で,お金はその後について来ると信じてます」「この場が伝説の始まりで,10年後にはこの3人が超金持ちになってますよ(笑)」と展望を語って,ディスカッションを締めくくった。
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