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今,NEOGEO(ネオジオ)が熱い……と思う。一時代を彩ったNEOGEOの魅力を(ごく私的な視点で)振り返ってみる
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印刷2017/12/28 00:35

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今,NEOGEO(ネオジオ)が熱い……と思う。一時代を彩ったNEOGEOの魅力を(ごく私的な視点で)振り返ってみる

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 2017年はNEOGEO(ネオジオ)が熱かった……と思う。1990年のリリースから27年が経ったものの,ハムスターの「アケアカNEOGEO」シリーズが50作品を突破し,PlayStation 4やNintendo Switch,Xbox One,Windows 10といったプラットフォームで存在感を示しているのは興味深い現象だ。

 NEOGEOは発売当時から強烈な異彩を放ちつつもゲーム業界の激動期を生き抜き,多くの名作を生んだ。本稿では,筆者を熱狂させたNEOGEOの魅力と思い出を振り返り,とくに記憶に残っている5タイトルを紹介したい。
 なお,2013年に掲載した「NEOGEO X GOLD SYSTEM」のレビュー記事では,NEOGEOの歴史をまとめている。ぜひ合わせてご覧いただきたい。

ハムスター「アケアカNEOGEO」シリーズ 公式サイト



ゲームセンターを自宅に持ち帰れるNEOGEO


 SNK(現在の同名会社とは別法人)からNEOGEOが発表された1990年と言えば,任天堂のスーパーファミコンが登場した年でもある。翌年にセガのメガCD,NECのPCエンジンDuoとSUPER CD-ROM2が発表され,いわゆる“第4世代ゲーム機”の時代が本格化していく時期である。
 なかでもNEOGEOは独特のスタンスを持ったゲーム機として,異端児のような存在だった。それと言うのも,ゲームセンター(アーケード)とコンシューマ(家庭用ゲーム機)の両方に展開されたからだ。

NEOGEO本体と専用コントローラー(写真提供:SNK)
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 その当時,アーケードゲームが家庭用ゲーム機へ移植されることはあったものの,グラフィックスが簡略化されたり,一部のフィーチャーが削除されたりすることが少なくなかった。PC-8801mkIISR版「スペースハリアー」のように,処理速度を稼ぐために敵キャラクターを単色にしたうえで,障害物や弾を四角いドットの塊に簡略化して,アーケードのプレイフィールを再現するという例もあったが,移植には特別なセンスと技術力が求められた。
 アーケードゲームを家庭用ゲーム機で遊ぶときには,移植のアレンジを愛でつつ,その差異に思いを馳せるのが普通のことだった。

PC-8801mkIISR版「スペースハリアー」。画像は「レトロPC・ゲーム専門店 BEEP」公式サイトより
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当時のパンフレット(写真提供:SNK)
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 しかし,NEOGEOはゲームセンターと“同じ”ゲームを自宅で遊べる。玩具店やビデオショップで本体をレンタルすることができ,「凄いゲームを、連れて帰ろう。」というキャッチコピーそのままの体験が得られた。家庭用ゲーム機のレンタルというのも,1983年にバンダイが発売した「光速船」以来のことで,当時としてもあまり類を見ないサービスだったのだ。
 筆者の場合,近所にレンタル取扱店がなく,かなり遠方の玩具店まで足を運ばなくてはならなかったうえ,「高価なゲーム機を借りて,決して壊すことなく返却する」という行為がハードルの高いものに感じられたことを覚えている。

 そんなNEOGEO登場時の感想を一言で表すなら“戸惑い”だろうか。「ゲームセンターのNEOGEOはすごいけれど,レンタルって……いつまで続くの?」と考えていたのだ。
 若い読者は知らないだろうが,かつてPCゲームの世界にはレンタルサービスが存在していた。ただし,メーカー未公認のものだったので,やがて消滅したという経緯がある。その当時,「家庭用ゲームをレンタルする」というサービスは馴染みの薄いものだったうえ,どことなく負のイメージが感じられた。「ゲームはゲームセンターで遊ぶか,ゲーム機を買って遊ぶもの」という固定観念から,新しいサービスに懐疑的になっていたというわけだ。

 一方,ゲームセンターでは美しいグラフィックスや大きなキャラクターが目を惹き,「NEOGEO=激ムズで面白いゲーム」として心に刻まれることになった。レンタルを促進するためか,NEOGEO初期のゲームはとにかく難しく,先が気になってしまう仕掛けになっていたのだ。
 例えば横スクロールアクション「マジシャンロード」は,アイテムの組み合わせ次第で「ドラゴンウォーリアー」「シノビ」「ライジン」といった,性能が異なるキャラクターに変身できる。いろいろなキャラクターで攻略したいところだが,非常に難度が高く,なかなか先へ進めなかったものだ。

「マジシャンロード」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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当時のパンフレット(写真提供:SNK)
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 しかし,専用メモリーカードがあれば,ゲームの進行やスコアなどを保存できる。ゲームセンターの続きを自宅でも遊べるというわけだ。1つのプレイデータが複数のプラットフォームに対応しているところは,PCやスマートフォンなどでプレイできる現在のソーシャルゲームを思わせる。
 こうした取り組みはユニークで先進的ではあったものの,当時にはコンセプトが早すぎたのかもしれない。筆者が知る限り,ゲームセンターにおいてメモリーカードが使われることはほとんどなく,後年には差し込み口がガムテープで塞がれていることもあった。


「KOF’94」という飢え。満たしてくれた家庭用NEOGEO


 高性能だが,レンタルのハードルが高い。そんなNEOGEOを取り巻く状況を変えたのが,1991年の「ストリートファイターII」が端を発した格闘ゲームのブームだ。SNKも同年,NEOGEOに「餓狼伝説 〜宿命の闘い〜」を投入する。翌1992年には「龍虎の拳」「餓狼伝説2〜新たなる闘い〜」,1993年にも「餓狼伝説SPECIAL」「サムライスピリッツ」が登場し,NEOGEOに格闘ゲームが増えていった。

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「餓狼伝説 〜宿命の闘い〜」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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「餓狼伝説2〜新たなる闘い〜」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)

 格闘ゲームは絶大な人気を博し,CPU戦が主流だった初期にはプレイするために30分以上待つこともザラにあった。ゲームセンター側も人気ゲームを複数入荷するという,当時としてはかなり珍しい対応をしたものの,混雑は増すばかり。相手と顔を合わないで済む“対戦台”が設置されるようになると,格ゲー人気はさらにヒートアップした。
 延々と待って,やっと自分の番が回ってきたと思ったら,対戦相手が手練れで秒殺されたり,奇跡的に誰も並んでいない台を見つけても,即座に乱入されてやはり秒殺されたり。そんな状況が毎日のようにあったのだ。

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「餓狼伝説SPECIAL」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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「サムライスピリッツ」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)

 だからこそ,格闘ゲームの新入荷情報だけでなく,比較的空いている台を開拓することも重要だった。NEOGEOはSNKが積極的に営業を行っていたようで,駄菓子屋はおろか,ビリヤード場やクリーニング店の待合スペースに置かれていることさえあったほどだ。こうした穴場を発見して喜んでいても,1週間もすると噂が広まってゲーマーが押し寄せてきたのだが……。
 いろいろな場所にNEOGEOが置かれたことは,格闘ゲームのブームを持続させるうえで大きな役割を果たしたと思う。校則や地理的事情でゲームセンターに行けなくても,家にゲーム機がなくても,格闘ゲームに触れることができたのだから。

当時のパンフレット(写真提供:SNK)
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 そんな筆者の格闘ゲームへの飢えが,ついに頂点に達した。そのきっかけが,1994年に発売された「THE KING OF FIGHTERS ’94」(以下,KOF’94)だ。
 あらためて説明するまでもないだろうが,THE KING OF FIGHTERS(KOF)シリーズの第1作である。「餓狼伝説」「龍虎の拳」「怒」「アテナ」といったSNKゲームのキャラクター24人が集結し,それぞれに個性的な超必殺技が隠されている。格ゲーファンの探求心をそそるタイトルだった。

「THE KING OF FIGHTERS ’94」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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 しかしながら,KOF’94はSNKゲームの常としてCPU戦の難度が高く,1人プレイもなかなか捗らない。もちろん対戦台では,とにかく勝たないことには1〜2分しか遊べない。当時,筆者はコマンド投げを持つキャラクターが揃う“怒チーム”を研究したかったのだが,とりあえず勝ちを得るために,マイナーすぎて対策が進んでいない“アメリカンスポーツチーム”を選ぶこともしばしばだった(ラッキーのデスバウンドから強Kの押し込み,ブライアンのステップからのスクリューボディプレスには大いに助けられた)。妥協してでも長くプレイしたかったのだ。

「THE KING OF FIGHTERS ’97」のカートリッジイメージ(写真提供:SNK)
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 そこで浮上してきたのが,「NEOGEO本体とカートリッジを買う」という選択肢である。こういうときには,「何回遊べばペイできる」というコストパフォーマンスが計算されがちだ。NEOGEO本体が5万8000円,KOF’94のカートリッジが2万9800円だったので,ゲームセンターのプレイ料金が50円の場合,1800回強で元が取れるということになる(当時の消費税は3%だった)。
 どうにも現実的な数字ではないが,筆者は購入に踏み切った。KOF’94をじっくりと遊べて,いろいろなキャラクターを試せることには,現実的か否かを吹っ飛ばすだけの魅力があったのだ。「今後もNEOGEO向けに,さまざまな格闘ゲームが出るだろう」という期待も大きかった。

 念願のNEOGEOを我が物とし,大きな箱を抱えて電車に乗ったときには,言い知れない高揚感と満足感,そして「自分の選択は本当に正しかったのだろうか」という微かな不安が頭をよぎったものだ。自宅のテレビにNEOGEOを接続して,電源を入れると,そこにはゲームセンターとまったく同じKOF’94が存在した。キャラクターセレクト画面に並ぶ8チームを見て,「これを自由に選べるんだ」と妙なところで感動したことを覚えている。
 だからといって,その後,ゲームセンターに足を運ぶ回数が減ったというわけではない。自宅で練習して,その成果を対戦台で試すというサイクルになったからだ。余談になるが,「餓狼伝説SPECIAL」に至ってはNEOGEOのカートリッジを買ったうえで,「CPU戦でリョウ・サカザキが使える」というオリジナル要素を目当てにスーパーファミコン版も手に入れた(隠しコマンドの入力が異常に難しくて悶絶したが)。
 当時,筆者のような格ゲーマーは少なくなかった。格闘ゲームのブームがいかに大きく,魅力を持っていたのかが伝わるだろうか。


3万円のカートリッジが3桁に。「真サムライスピリッツ」の思い出


 前述のとおり,NEOGEOは本体だけでなくカートリッジも高価だった。筆者と同様にNEOGEOを持つ友人と示し合わせて,ゲームがダブらないように調整することもあった。
 とはいえ,格闘ゲームの人気シリーズともなると,同じカートリッジを同じ店で買ったりしたものだ。自宅で思う存分,好きなゲームを遊びたくてNEOGEO本体を手に入れたのだから,そこに貸し借りという選択肢は存在しない。

編集部 touge所有のNEOGEOカートリッジ。右の写真は比較用にPS4用ディスクを置いてみた。結構なサイズであることが分かるはずだ
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 ここで困ったのが予約である。ほかのゲーム機ならともかく,筆者の地元にはNEOGEOのカートリッジを取り扱っている店がそうそうなかったのだ。少し足を伸ばせば大手量販店があったが,そういうところは予約が集中し,発売日に手に入るとは限らない。
 そこで,近場にあってNEOGEOの取扱いがあり,かつ予約を受け付けていて,発売日に間違いなく入荷されるような店を探すことにした。あちこちを巡った結果,光速船やNEOGEOのレンタルを扱っていた老舗玩具店に辿り着く。老境に差しかかった店主が,3万円近い商品を予約する筆者と友人に困惑していた姿を思い出せる。

当時のパンフレット(写真提供:SNK)
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 その時に予約したのが,「真サムライスピリッツ 覇王丸地獄変」だった。当時を知る人であれば,走馬燈のように思い出が蘇る名作だろう。主人公・覇王丸のライバルとして牙神幻十郎が登場。人気絶頂のナコルルが続投するうえ,新ヒロイン・チャムチャムはゲーマー系アイドルの千葉麗子さんがボイスを担当していた。
 また,餓狼伝説やKOFシリーズの超必殺技を思わせる派手な「武器破壊技」「秘奥義」を実装し,「上段避け」「下段避け」という特殊防御も追加された。キャラクター人気とシステムの両面において,前作「サムライスピリッツ」から大幅に強化されており,「大ヒット間違いなし」という前評判だったのだ。

「真サムライスピリッツ 覇王丸地獄変」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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 前作の人気を受けたうえで,キャラクターを愛でる派やガチの対戦を楽しむ派といった多方面に配慮しつつ,ダークかつ無情な雰囲気を損なうことなく,濃すぎるほどの新キャラクターを登場させる。しかも,シリーズ名物のカウンター攻撃には恐ろしいほどの火力を与え,独特の緊張感を強調する。「真サムライスピリッツ」はそんなタイトルだった。
 当時,ゲームセンターの対戦台には引きも切らず,プレイヤーが訪れていたが,暴発する避けや一部のキャラクターにしか与えられていない秘奥義といった,“尖った部分”の評価が分かれたのも事実だ。前作の人気を受けて出荷数も多かったのだろうか,カートリッジの価格が急落し,状態の良くないものなら数百円の値が付いたこともある。そんな真サムライスピリッツに対して,複雑な思いを抱いたものだ。


交錯する2つの炎。新たな“物語”の幕が開く


 以降も格闘ゲームのブームは続き,NEOGEOは流行の発信源の一つとなった。なかでも「THE KING OF FIGHTERS ’95」(以下,KOF’95)は,SNKの格闘ゲームにおけるピークだろう。
 前作(KOF’94)で鮮烈なデビューを飾ったニューヒーロー・草薙 京は,不遜な態度と赤い炎でSNKのセンパイ達を蹴散らし,そこにダークヒーロー・八神 庵が恨みの紫炎と共に立ちはだかる。格闘ゲームという新しいジャンルにおいて,何かが始まる。そんな確信と熱狂があったのだ。

「THE KING OF FIGHTERS ’95」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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 KOFシリーズは夏に新作がリリースされることが恒例となった。季節の移り変わりを語るように,格闘ゲーマーは「もうすぐKOFの季節だ。今年はどんな作品になるのか」と語り合うことになる。毎年,同じ時期に格闘ゲームの新作が出る。ああ,なんと幸せな時代だったのだろう。
 カートリッジが発売される前,友人と一緒に対戦台の順番待ちをしつつ,「あの筐体からカートリッジを引っこ抜いて,自宅のNEOGEOで遊びたい」という話をしたことを覚えている。やはり,この時期も格闘ゲームに飢えていたようだ。

「THE KING OF FIGHTERS ’95」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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 KOF’95の特徴を挙げるなら,真っ先に「チームエディット」機能となるだろう。前作はチームメンバーが固定されていたが,KOF’95ではメンバー3人を自由に選べるようになっていた。
 稼働当初は「草薙 京 / リョウ・サカザキ / 八神 庵」という,飛び道具と無敵対空技を持つ万能型チームが猛威を振るっていた記憶がある。しばらくして,草薙柴舟(中ボス)とオメガ・ルガール(最終ボス)を使える隠しコマンドが広まると,対戦台は彼らを操るプレイヤーで溢れた。プレイヤーが良い意味で,開発者の手のひらで転がされる。そんな時代だったのだ。

「THE KING OF FIGHTERS ’95」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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 スピーディな試合展開もKOF’95の魅力だった。素の状態でも攻撃力が高いうえ,気合いを溜めてパワーがMAXになると,さらに上昇補正が入るのだからたまらない。勝つにしろ,負けるにしろスピーディだったのだ。
 自宅のNEOGEOでしっかりと練習しても,なおゲームセンターで勝つことは難しかった。対戦台の向こうに座る相手も,自宅で修行を積んでいたのだろうか。

 女性人気が沸騰したことも,当時の印象的な出来事だ。ゲームセンターに女性客が増え,NEOGEOの対戦台を周囲から眺めている姿が多く見られた。筆者が通っていたゲームセンターでは,京や庵を使っているとどこからかともなく女性のギャラリーが現れ,そのほかのキャラクターを選ぶと去っていく。こんなことがあったくらいだから,キャラクター人気の高さがうかがえるはずだ。

「メタルスラッグ」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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 ただし,NEOGEOには格闘ゲームばかりだったというわけではない。
 例えば,1996年に登場した横スクロールアクション「メタルスラッグ」は,緻密に描き込まれたドット絵や美麗なアニメーションが魅力だった。難度が高く,自宅ででじっくりと遊ぶにはもってこいだったのだ。その後,さまざまなプラットフォームにも移植されているが,「こっち(NEOGEO)はカートリッジだから,ローディングがないんだ!」などと自慢していたことを覚えている。
 また,個性豊かなキャラクターがディスクを投げ合う「フライングパワーディスク」,縦スクロール型シューティングなのに対戦可能な「ティンクルスタースプライツ」といった,格闘ゲームではない対戦ゲームも存在していた。

当時のパンフレット(写真提供:SNK)
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 新しくて魅力的なゲームとキャラクター,彼らが紡ぐのもまた新しい物語だった。NEOGEOを直訳するならば,「新しい大地」といった意味になるのだろうか。漆黒のゲーム機とカートリッジを入り口に,その先には“新天地”が確かに存在した。
 そんなNEOGEOを現代に蘇らせたのが「アケアカNEOGEO」シリーズだ。NEOGEOタイトルを忠実に再現しているだけでなく,当時のディップスイッチを操作して難度や設定を変えられたり,ブラウン管の画面を表示させたり,ゲーム画面の向きを切り替えられたりできる。さらにオンラインを介して,世界中のプレイヤーとハイスコアを競うこともできる。当時を知る者にとっては感涙ものだ。
 かつてNEOGEOの「100メガショック」を体験した人もそうでない人も,NEOGEOが切り開いた新しい大地に立ってみてほしい。

 ひたすらにコンボを練習し続けた「サムライスピリッツ 天草降臨」。ポリゴンっぽいキャラクターが滑らかに動き回る「ビューポイント」。避けを使うプレイヤーが激減するも,意地を張って“EXTRAモード”を使い続けた「THE KING OF FIGHTERS ’98」。まだまだNEOGEOの思い出は尽きないが,最後に筆者の記憶に強く残っているNEOGEOタイトルを紹介して締めくくりとしたい。

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「サムライスピリッツ 天草降臨」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)
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「THE KING OF FIGHTERS ’98」(アケアカNEOGEOシリーズ 配信中)


筆者の記憶に強く残るNEOGEOタイトル5選


●「ザ・スーパースパイ」


 1990年にリリースされたアクションゲーム。テロリストの巣窟となったビルにはたくさんの部屋があり,武器を手に入れたり,弾薬や体力を補充したりできる。プレイヤーは弾薬の限られた銃や,使いすぎると攻撃力が落ちるナイフといったリソースを管理しつつ,次々と襲いかかる敵に対抗していく。大きなサイズのキャラクターが登場する主観視点の近接戦闘は見た目にも派手で,ゲームセンターではギャラリーの注目を集めた。
 NEOGEO初期のタイトルらしく,難度が非常に高かったので,カートリッジを手に入れて自宅でじっくりと遊べたのが嬉しかった。

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●「龍虎の拳」

・アケアカNEOGEOシリーズ 配信中(PS4 / Nintendo Switch / Xbox One&Windows 10

 1992年に発売された格闘ゲーム。体力に加えて「気力」のゲージがあり,必殺技を使ったり,挑発を受けたりすると減少する。気力がない状態で必殺技を使うと,気弾が飛ばなくなるといった性能の低下が発生する。また,相手の攻撃を食らうと顔が腫れ上がったり,特定条件下では服が破れるといった外見の変化もあり,肉体や攻撃の重みを表現しようとしていた。
 同時期の他社タイトルが明るい雰囲気だったのに対し,「龍虎の拳」は劇画的かつダークな物語が展開する。主役クラス以外のキャラクターを使えるのは対戦時のみだったため,カートリッジを持っていることの恩恵が大きかった。とくにトドメを刺したときの「スコーン!」と抜けるような打撃音は格別だ。
 1996年に登場した「ART OF FIGHTING 龍虎の拳外伝」では,モーションキャプチャを使って,さらにリアルな肉体を追求している。カレンダー機能と連動して,キャラクターが誕生日にパワーアップするというNEOGEOらしいフィーチャーも印象的だった。

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●「ニンジャコマンドー」


 1992年にADKから発売された縦スクロールのアクションゲーム。“コマンド必殺技”という発明が注目を集めた頃で,これを格闘ゲーム以外のジャンルにも採り入れようとするムーブメントが起きた。「ニンジャコマンドー」もそんなタイトルの1つで,シューティング風のアクションゲームでありながら,コマンド入力による必殺技が導入されている。
 なかでもレバーで六芒星を描く「爆烈究極拳」は,ボスでさえ瞬殺してしまうことで有名だった。簡易な入力方法が開発されると,ストレス解消にもってこいのゲームとなった。

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●「THE KING OF FIGHTERS ’96」

・アケアカNEOGEOシリーズ 配信中(PS4 / Xbox One

 1996年に登場したKOFシリーズ第3作。その場で身をかわす避けに替わって,地面を転がる緊急回避動作が追加された。また,京やリョウ,テリー・ボガードの飛び道具が近距離技にアレンジされるといった大幅な刷新も行われている。
 こうした接近戦を重視する急激な変化に戸惑う声も少なくなかった。個人的には,鎮元斎を使ったときのCPU戦が印象深い。「望月酔」で寝転ぶと,多くのCPUは攻め手を封じられ,近づいてくるしかない。そこに隙が小さい「鯉魚反ほう」を仕掛けると,クリーンヒットしようがガードされようがノーリスク。相手の体力が減ったら,超必殺技「轟欄炎炮」を連発して削り続ければいい。
 この必勝戦法は対戦でも通用してしまうのが恐ろしいところだが,1人プレイなら問題なし。一方的に相手を攻め続けるオラオラ系のプレイを楽しめた。

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●「NINJA MASTER'S〜覇王忍法帖〜」


 1996年にリリースされた格闘ゲーム。スピーディな素手状態と,リーチに優れる抜刀状態を使い分けて戦うことになる。キャンセルからの連続技に加えて,特定の順番にボタンを押していく通常技コンボが複数存在する。通常技コンボはキャラクターごとに異なるうえ,それぞれが複数の派生ルートを持っているため,かなりマニアック。しっかりと研究すれば楽しくなるが,そこに至るまでのハードルが高い。
 濃い目のキャラクターデザイン,墨絵のような勝利画面,侘(わび)しさを感じさせる背景のアートワークなども特徴があり,思わず引き込まれそうな雰囲気を持っている。

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