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海外と日本のeスポーツ事情と,オリンピック競技種目化するための課題などについて意見が交わされた「黒川塾 六十三(63)」聴講レポート
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印刷2018/09/27 14:56

イベント

海外と日本のeスポーツ事情と,オリンピック競技種目化するための課題などについて意見が交わされた「黒川塾 六十三(63)」聴講レポート

 2018年9月19日,トークイベント「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾 六十三(63)」が,東京都内で開催された。このイベントは,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が,ゲストを招いて,ゲームを含むエンターテイメントのあるべき姿をポジティブに考えるというものである。

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メディアコンテンツ研究家 黒川文雄氏
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 今回のテーマは,「海外eスポーツ事情とeスポーツの未来に向けて」。会場では,昨今日本でもさまざまなニュースが聞こえるようになったeスポーツについて,eスポーツチーム・DeToNator 代表の江尻 勝氏とNVIDIA eSports / ゲーミング エバンジェリスト 谷口純也氏,そしてカジノ研究家 木曾 崇氏が意見を交わした。


日本のeスポーツシーンは,ガラパゴス化してもしかたない状況にある


 谷口氏は,かつて“noppo”というプレイヤーネームで活躍した,FPS「Counter-Strike」の世界的なレジェンドプレイヤーである。「Counter-Strike」との出会いは2003年のことで,まだ高校生だった谷口氏は,大きな世界でオンライン対戦ができることにハマっていたという。

NVIDIA eSports / ゲーミング エバンジェリスト 谷口純也氏
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 そんな谷口氏は「Counter-Strike」に世界大会に参加することとなったが,世界と日本のレベルの差に愕然としたとのこと。今までと同じ練習では絶対に勝てないと谷口氏は確信したが,当時の日本で,そこまでモチベーションが高い「Counter-Strike」プレイヤーを5人集めてチームを作ることは困難だった。

 また当時の谷口氏は,勉強があまり得意ではなく,このまま普通に進学していいものかどうか思い悩んでいたとのこと。そして16〜17歳の頃,むしろ自分の得意なことに集中しようと決め,高校卒業後にはeスポーツ先進国であるスウェーデンに留学した。
 かなり思い切った決断だが,谷口氏の中には「他人に頼るより,自分で行動したほうが早い」「これでダメなら,もういい」という思いがあったそうだ。

 留学前の1年間,谷口氏はスウェーデン語の塾に1年ほど通ったり,どうすれば留学できるか調べたりしていたという。とくにスウェーデンは移民問題で簡単に留学できない状況だったので,苦労したとのこと。
 そうした苦労は留学してからも続いた。スウェーデンは税金が高いのだが,その税金の一部が移民対策に使われるため,外国人に厳しい住民がいたり,国内のルールが厳しく国民番号がなければ部屋を借りることもできなかったりしたそうだ。

 そんな中,谷口氏を支えていたのは,学校の友人や現地の「Counter-Strike」プレイヤーだったという。谷口氏は,「そうした人達とのつながりがなかったら,スウェーデンでセミプロとして活動することはできなかった」と当時を振り返った。

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 また,江尻氏率いるDeToNatorも,韓国やフィリピンのプロリーグに参戦するなど,ほかの国内eスポーツチームに先んじて海外に展開している。江尻氏は,海外展開の苦労としてその国の文化にどれだけ適応できるかということを挙げ,とくに国によってゲームに対する向き合い方や金銭の価値観が異なるため,理解してうまく立ち回るためには時間がかかると語った。

 その一方では,世界と比較して日本のeスポーツ事情は特殊だといわれることもある。木曾氏は,必ずしも日本が世界と同調する必要はなく,日本独自の展開であっても構わないとした。
 また木曾氏は,日本がeスポーツでなかなか世界に打って出られない理由の1つとして,日本のゲーム市場がコンシューマゲームを中心に育ってきたことを指摘。現状,eスポーツといえば世界的にはPCゲームが一般的であるため,日本がガラパゴスになってしまうのはある意味仕方ないことであると語った。

 さらに木曾氏は,eスポーツとはネットワークを介した対戦が前提であるため,プレイヤー人口が少なくマッチングが成立しづらいタイトルが盛り上がる可能性が低いことや,オリンピックなどの国際大会の競技種目は世界のプレイヤー人口で決まるので,日本でしか遊ばれていないようなタイトルが選出されることはまずないことも示した。

 木曾氏の発言を受け,江尻氏はネットワークの問題に言及。どれだけ国内で強くなっても,マッチングの関係で練習相手が見つからなくなり,それ以上成長できないという課題があるというのだ。そうなると海外のチームと練習するほかないが,なかなか相手にしてもらえないのが現状だという。

 DeToNatorが2016年から海外展開している背景には,日本のeスポーツ市場がそんなに大きくないということが自明だからであり,その中で生き残るためには自分達から世界市場に行くしか選択肢は残っていないと江尻氏は説明。
 またそうした展開は,ただ単に日本のeスポーツシーンから離れるのではなく,世界で結果を出すことで「こういう道もある」ということを示すためのものであると話す。続けて「自分の中で“世界で活躍する”ということは,日本代表として世界大会に出ることではない。世界のいろんなタイトルのど真ん中でやること」と語った。

 また江尻氏は日本のeスポーツの現状について「ビジネスとして大きなことをやりたいのは分かるが,日本は興行や配信がまだまだ未熟で,段階を経て成長する必要がある状況」と表現し,「しかし世の中の流れは,そうしたeスポーツ市場の成長を待ってくれない。市場を育てつつ展開していかなければならないので,企業としては忍耐を求められる時期」とも話していた。

DeToNator 代表 江尻 勝氏
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 一方,谷口氏も2003年頃を振り返り,当時の家庭用ネットワーク回線はADSLが主流で,レイテンシの問題で海外のプレイヤーとはまともに対戦できなかったと語った。
 逆に当時のスウェーデンがなぜ強かったのかというと,ヨーロッパ各国は地続きでつながっているため,国境を越えてさまざまなプレイヤーが切磋琢磨できる環境があったからだという。

 また谷口氏は,現状の独自に展開する日本のeスポーツ市場について,「国内だけで大きな賞金を作り出し,選手が自活できるようにするためには,プレイヤー人口と視聴者を大きく増やさなければならない。とくに視聴者が増えれば広告価値が高まり,参入企業も増える」とコメント。
 さらに世界の具体的な流れとして,「世界大会ともなると何百万人が配信を観戦し,アーカイブ動画はその何倍も再生される。とくに若者にアプローチしたい大企業は,若い層が熱中しているeスポーツ配信に広告を出して自社の商品をアピールしている」と説明した。

 谷口氏の発言を受けて,江尻氏はDeToNatorでは“プロ”を“現役の競技プレイヤー”と“ストリーマー(=ゲームの魅力を伝える配信者)”の2つに分けていることを紹介。また近い将来,eスポーツの塾を開設することを明かし,「必ずしもプロを目指さなくてもいい。習いごとの一つとして,努力し成功体験を得ることをゲームを使って伝えたい」と,その目的を示した。


日本はeスポーツのすべての面において“後進国”というわけではない


 続いて話題は,日本でeスポーツとして取り上げられるタイトルの変遷におよんだ。数年前は,「リーグ・オブ・レジェンド」や「Dota 2」「Counter-Strike: Global Offensive」など,それこそ世界で大きく大会が展開されているタイトルがeスポーツとして紹介されていたが,今では「ストリートファイターV」や「ウイニングイレブン」シリーズなど国内で人気のあるタイトルが中心となっている。

 その状況について江尻氏は,「eスポーツを推進したい人や企業が,国内で有名なタイトルでないとビジネスが成立しないと気づいたのではないか」と分析。また自身は日本と世界では別の展開を考えているので,現状でまったく問題ないとの見解を示した。
 一方,谷口氏はヨーロッパにはPCゲームのコミュニティという下地があり,例えば「Counter-Strike」は,あまりゲームを遊ばない人でも一度はプレイしたことがあるくらい現地での認知度が高いことを紹介した。だからこそ,ヨーロッパではプレイヤーも観戦者も多く,ビジネスが成立するというわけである。

 また日本では,権利問題によってプレイヤーコミュニティなどがゲーム大会を開催しづらくなっており,それが日本のeスポーツ振興を妨げる一因ともなっている。木曾氏は,「日本eスポーツ連合(JeSU)はゲームパブリッシャが集まっている団体なのだから,本来はそうした権利問題を解決したり,手続きをサポートしたりすべき。それなのに今は賞金やオリンピックといった,得意ではない分野に向かっており,本来やるべき部分に手が届いていない」とし,「JeSUは,設立時にコミュニティ大会を開催しやすくなるよう配慮する旨の宣言をしていた。今のところ具体的な動きが見えてこないので,そこはプレイヤーの皆さんがもっと糾弾してもいい部分なのではないか」と話していた。

 関連して,この先eスポーツをさらに展開するためには,大会などの公式の記録をデータベースとして残すことが重要なのに,今のところ誰もやっていないことにも話題がおよんだ。
 木曾氏は,そうしたスタッツ(選手やチームのプレイ成績などをまとめたデータ)は重要な反面,収集と管理が大変なので,ビジネスになる道筋が見えなければリアルスポーツでも誰もやりたがらないと説明。

カジノ研究家 木曾 崇氏
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 一方,江尻氏はデータや数字が各チームの指標になるとし,DeToNatorでは2014年から戦績などの記録をすべて残すようになったことを紹介した。とくにスポンサーの信用を得るには,数字の大きさよりも継続性が大事とのことで,小さな数字であっても継続的な実績があり,根強いファンが付いているならスポンサーは投資してもいいと考えるという。

 江尻氏は,スポンサーを得るためには,自分達に何ができて相手にどんなメリットがあるのか,具体的なデータを交えて説明する必要があるとし,現状スポンサーを求めているチームに対して「ただ数字があればいいわけではなく,今や企業は数字を見てから長くやれるかどうかなどを分析して,スポンサードするかどうか検討するレベルになっている。その状況でデータを出さないようなところに企業はお金を出さないし,それが続けば相手にしてもらえなくなる。非常に危うい状態」と警鐘を鳴らした。
 また谷口氏も,NVIDIAがeスポーツチームをスポンサードしたり,今回のようにスタッフがイベントにゲスト出演したりするにあたってはデータが重要となり,きちんと分析しないと望むような結果が出ないと話していた。

 さらに江尻氏は,よく「日本はeスポーツ後進国」といわれることに疑問を抱いているという。例えばCyber Zが主催するeスポーツイベント「RAGE」は,エンターテイメント性や,タイトルによっては賞金総額が海外と遜色ないレベルになっていることや,DMM GAMESが多額の予算をかけて自社タイトルではない「PLAYERUNKNOWN`S BATTLEGROUNDS」の独自リーグを主催していることを挙げ,「盛り上がっているところをきちんと見て,何が足りないから遅れているといわれるのか判断してほしい」と苦言を呈した。

 また選手についても,「日本はeスポーツの環境が整っていないと文句をいう人が多いけれども,環境を求めるなら,その分結果を求められる」とし,「給料やゲーミングハウス,あるいはセカンドキャリアを要求するなら,自分達がそれに見合う価値を持っていることを示さなければならない」とし,実際にDeToNatorでも結果を残せなかった「Overwatch」部門の選手を解雇した事例を紹介した。

 江尻氏は以上をまとめて「日本の環境に文句をいうのであれば,谷口さんのように単身で海外に行ってみればいい。DeToNatorが海外に展開したのも,もともとは『世界で活躍したい』という選手の道を作るため。でも実際には,『海外リーグに行きたい』という応募は1件もない。いかに当時の谷口さんが突出していたかが分かる」とし,「今は環境が整っていないと主張することが,資金を集める口実の一つになっている。そうではなく,海外での実績など選手自身の行動を評価し,それに見合う投資をしていかなければならない」と語った。

 また谷口氏も,「かつては1タイトルにつき1年に1回大会が開催されるかどうかすら分からない状況の中で,それを目指して日々鍛錬していた。しかも多額の賞金があるわけでもなかった」とし,「今では多くのタイトルが年に2〜3回,あるいはそれ以上世界で大会を開いており,そこで活躍すれば夢を掴むチャンスも生まれる。非常に恵まれた環境」と話していた。


eスポーツをオリンピック競技化には,障壁としてビジネスモデルが立ち塞がる


 eスポーツは現在,オリンピックの競技種目として採用されるかどうか検討されている段階だが,国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の暴力的な表現のあるゲームを問題視する発言により,先行きが不透明になっている。

 木曾氏はeスポーツがオリンピックの競技種目として採用されるために乗り越えなくてはならない課題として,「暴力表現,性表現」「統一ルールを決定する管理団体の組成」「知的財産の問題」の3つが挙がっていることを紹介。
 このうち最初の暴力表現や性表現は,前々からオリンピックの理念にそぐわないと指摘されていた。

 また統一ルールを決定する管理団体については,管理団体を作りオリンピック公式ルールを作成する必要があるとのこと。例えば中国は現在,麻雀をオリンピックのマインドスポーツ競技種目とするべく申請を行ったが,その際には国際ルールの統一機関を設立したとのこと。
 しかしeスポーツで使うゲームタイトルは,最終的にパブリッシャがルールを決めるため,果たしてそのルールを管理団体に移管できるのか疑問が残るという。

 3つめの知的財産の課題もまたパブリッシャがらみで,ゲームタイトルを扱う大会の開催やその放映には,必ず知的財産権の保有者であるパブリッシャに許可を取ったり,対価を払ったりする必要がある。そしてそれは,放映権を売ることがビジネスの軸となっているオリンピックとは,非常に相性が悪い。
 実際,先日開催された第18回アジア競技大会も,日本で配信されたのは「ウイニングイレブン2018」の大会だけだったが,これはほかのタイトルの権利関係を調整できなかったからとのこと。ほかの国や地域でも同様のことが起きており,ある国では別のタイトルの大会は配信されたが,「ウイニングイレブン2018」は配信されなかった,また別の国では……という状況になっていたそうだ。
 そうした第三者の許可がないと放送・配信できないeスポーツと,オリンピックのビジネスモデルをどう結びつけるのかが大きな障壁になっていると木曾氏は説明した。

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 また江尻氏は,オリンピックについて「タイトルありきで,タイトルが決まらなければ選手の育成ができない。またタイトルが決まったとしても,それが永久に続くかどうか分からない。その状況で,人材を割り当てることはできない」とし,あまり念頭にないことを明かした。
 さらに「オリンピックは,日本のeスポーツ市場が成長していく過程の通過点の一つ。eスポーツをよく知らない企業さんが,オリンピックやアジア競技大会,国体の話に期待してビジネスの話を持ってくるが,今は前提としての土台を作っている最中だと実態を説明すると目の輝きが消えていく」として,「いつまでもオリンピックを旗として掲げていると,やがてeスポーツについて来る人がいなくなってしまうのではないか」との不安を口にした。

 谷口氏は,仮にeスポーツがオリンピックに採用されたら認知度が上がるのは間違いないとしつつ,「現状ではゲームを知らない人が見たら,何をやっているか分からないタイトルが多い」と指摘。「観戦機能やオーバーレイによる解説機能を搭載するなど,ある程度までは誰にでも分かる内容にしないと,例えオリンピックに採用されても,すぐに外されてしまうかもしれない」との見解を示した。

 それでは,具体的にどのようなゲームがオリンピックに採用されるのだろうか。現状,eスポーツといわれるMOBAやFPS,格闘ゲームには,少なからず暴力的な表現が含まれている。木曾氏は,スポーツゲームやレースゲーム,カードゲーム,パズルゲームくらいしかないのではないかと語った。
 また谷口氏は「暴力表現のないeスポーツが想像できない。『Counter-Strike』なんてテロリストと警察が銃で撃ち合うのだから,暴力表現の最たるもの。でも現実にできないことがゲームの面白さであり,eスポーツの根源はそこにあるのではないか」と話していた。

 江尻氏は,「DeToNatorは,eスポーツを目指して始めたわけじゃない。チームを作って競技としてゲームをプレイしていたら,たまたま世界もそうなっていた」とし,「自分達がやっているのは,ゲームを使ったビジネス。その継続は選手とファン,そしてパートナー様がいて初めて成立するものだし,さらには数字やデータなどの根拠や理論も必要」「つまり企業経営以外の何物でもない。今はeスポーツだといろんな人がお金を出してくれるという雰囲気が蔓延しているけれども,それは幻想。これから必要なのは,受けた投資や生まれたお金で何をしたいか,どんなリターンが得られるか。そこを選手とファン,パートナー様ときちんと共有しながらビジネスを進めたい」と語った。

 またパブリッシャが,オリンピック向けのタイトルを開発してくるのではないかという意見も挙がったが,木曾氏は「オリンピック組織委員会が,eスポーツの知的財産権だけに特別に配慮するのは難しい。繰り返しだが,ゲームの知的財産権と,オリンピックのビジネスモデルはバッティングしているので,ゲームパブリッシャが権利の一部を放棄するほかないだろう」との見解を示していた。

 登壇者に対する質疑応答では,仮にeスポーツがオリンピックに採用されても,マイナー競技の1つとしてしか認知されず,ひいては広告効果もないので,あまり意味がないのではないかという質問も出た。

 木曽氏は,オリンピックがeスポーツの世界一を決める大会にはならないと予想し,その理由を「ゲームのeスポーツ化は,版権ビジネスをするということ。そうなると,第三者が放映権を持っているオリンピックが世界一を決める大会だと,ビジネスにならない。基本的にはサッカーのようワールドカップが一番権威のある大会であり,オリンピックはそれより下だけど,参加することに意義がある構図にしていくのではないか」と説明した。

 江尻氏は,オリンピックにはあまり興味を持っていない立場であることを前置きしつつ,「ゲームのeスポーツ化には無理矢理感が強く,リアルスポーツに失礼なんじゃないかとすら思う」との見解を示した。
 とくに「マインドスポーツだから」「ほとんど身体を動かさないリアルスポーツもある」といったように,ほかと比較して喧嘩腰になるeスポーツ支持者について,「相手からすると『なんで槍玉に挙げられなければならないのか』となるし,そもそもリアルスポーツに対する敬意が見られないのが問題。むしろゲームはあとからeスポーツと名乗りだしたわけだから,もっと謙虚になって自分達のいい部分をアピールしなければならない」と語った。

 そして谷口氏が,現状ではまだeスポーツの広告効果が低いことを肯定しつつ,「eスポーツはまだ若いスポーツで,プレイヤーも20代30代が中心。これから20年30年先,eスポーツが一般教育や義務教育で受ける体育の種目となり,誰もがeスポーツを経験しているという状況になれば,オリンピックの競技種目として広く認知される可能性もある。まだeスポーツの歴史は浅いので,焦る必要はないのではないか」と述べて,トークを締めくくった。

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