業界動向
任天堂の2019年3月期第2四半期は前年同期比で増収増益。Switchのビジネスは「安定的な成長軌道」に
※以下,使用画像は各資料より
前年同期比で増収増益。Nintendo Switchの販売台数は前年同期比3.7%増の507万台,ソフトは同91.3%増の4213万本を販売(概要説明より)
概要説明によれば,2019年3月期第2四半期の売上高は3889億円,営業利益は614億円,親会社株主に帰属する四半期純利益は645億円となっており,前年同期比で増収増益。売上総利益が増加したことなどから,営業利益は前年同期比53.7%増という大幅な伸びとなっている。
ニンテンドー3DS(以下,3DS)の販売台数は前年同期比65.1%減の100万台で,ソフトは同54.6%減の627万本。「ニンテンドークラシックミニ」シリーズは合計で369万台を販売したという。
これらゲーム専用機では,Switchのパッケージ併売ソフトや追加コンテンツなどによる売上が順調に伸びたことで,デジタル売上高は前年同期比71.%増の391億円となったそうだ。
スマートデバイスビジネスでは,Cygamesとの協業タイトルで9月配信開始の「ドラガリアロスト」(iOS / Android)が順調に滑り出したほか,「ファイアーエムブレム ヒーローズ」(iOS / Android)などのアプリが安定した人気を維持したことから,スマートデバイス・IP関連収入など売上高は前年同期比4.7%増の187億円となっている。
概要説明(※PDFファイル)
Nintendo Switchのビジネスは「安定的な成長軌道」に。ホリデー商戦でもその普及拡大が最も重要(プレゼンテーション資料より)
プレゼンテーション資料は,「Nitendo Switchビジネスの概況」と「ホリデー商戦および今後の見通し」という2点に絞った内容だ。
Switchビジネスの概況としては,まず,各タイトルのアップデート,追加コンテンツの配信などを継続的に行っていることや,E3 2018での「スプラトゥーン2」世界大会や「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」(以下,スマブラSP)エキシビションマッチといったさままざまなイベントを開催し,コミュニティの熱を体感できる場を設けていることをアピール。そして,6月のE3 2018とそれに合わせた情報公開や有力タイトルの発売によって,欧米市場を中心にSwitchのセルスルーが伸びたとまとめられている。
そしてSwitchのビジネスは「安定的な成長軌道」に乗せることができたとしており,スプラトゥーン2や「スーパーマリオ オデッセイ」「マリオカート8 デラックス」「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」といった自社の定番タイトルが,ペースを大きく落とすことなく販売を伸ばし続けていることを根拠の一つとして挙げている。実際に,日米欧市場における上記4タイトルの本体装着率が,2018年1月と9月時点で大きく変わっていないのが面白い。本体を購入し,“まず遊んでみる”タイトルが揃っているのは大きな強みだろう。
また国内で9月19日に正式スタートとなった有料サービス「Nintendo Switch Online」(関連記事)に関しては,現時点で,サービス利用券を購入したユーザーのうち,半数以上がファミリープランを含めた12か月のプランを選択しているという。この点は予想以上だが,立ち上がりとしては予想どおりといったところらしい。
なおサードパーティの個別タイトルとしては,Switch向けの「フォートナイト」の人気はやはり目立つようで,6月の配信開始以降,欧米市場,国内市場でも一気に広がりを見せており,全世界のSwitchのうち半数に迫る本体にダウンロードされる勢いであるという。
10月現在でSwitch向けにソフトを発売しているメーカーは500社超。ニンテンドーeショップで購入可能な各メーカーのタイトル数は,全世界で1300タイトル以上になるとのことだ。
次にホリデー商戦に関しては,新作大型タイトルとして,10月5日に発売となった「スーパー マリオパーティ」,11月16日に発売となる「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・イーブイ」,そして12月7日発売のスマブラSPの名前が挙がっている。
ちなみにスマブラSPに関しては,昨日(11月1日)配信された「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL Direct 2018.11.1」で,新たな参戦キャラやDLC,新要素などの情報が公開となったので,下の関連記事で合わせてチェックしておいてほしい。
新要素「スピリッツ」など,40分に及ぶ大ボリュームの情報が明かされた「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL Direct 2018.11.1」の発表内容をお届け
任天堂は,プレゼンテーション映像「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL Direct 2018.11.1」にて,Nintendo Switch用ソフト「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」の最新情報を発表した。様々なキャラクターの力を借りて戦う新要素「スピリッツ」,オンライン対戦,アシストフィギュアなどの情報が明かされている。
本体,ソフト共に販売数が減っている3DSのビジネスに関して任天堂は,Switchとはしっかりとした棲み分けができているという考えであるという。長い目で見たとき「当社とお客様とのお付き合いの最初の接点にもなり得る重要な位置づけ」の商品であり,引き続きビジネスを継続していくとしている。
プレゼンテーション資料の最後は,スマートデバイスビジネスについて。
ここではドラガリアロストやファイアーエムブレム ヒーローズ,「スーパーマリオ ラン」(iOS / Android),「どうぶつの森 ポケットキャンプ」(iOS / Android)といった主要タイトルの状況が説明されている。完全新規IPとなるドラガリアロストに関しては,サービス開始から現時点までの売上が40億円に迫る規模となっていること,米国App Storeのユーザーレビューが☆4.8という高い水準にあることなどから,「チャレンジとしては順調な立ち上がりを見せていると表現できるのではないか」とまとめられている。
なお,「マリオカート」のスマートデバイス向けアプリ「マリオカート ツアー」のサービスは,“今期”(2018年4月〜2019年3月)に開始する計画であるそうだ。
プレゼンテーション資料(※PDFファイル)
「基本戦略は『任天堂IPに触れる人口の拡大』」。柱のビジネスはゲーム専用機,スマートデバイス,テーマパークや映画などのIP展開(質疑応答より)
質疑応答資料についても簡単にまとめておこう。
質疑応答では,ホリデー商戦期の戦略についてや,代表取締役社長・古川俊太郎氏独自の経営戦略についてなど,さまざまな質問が出ている。
後者については,任天堂はこれからも「人々を笑顔にする娯楽をつくる会社」であり続けたいとの考えで,そのための基本戦略は「任天堂IPに触れる人口の拡大」であるとしている。ビジネスの柱はゲーム専用機,スマートデバイス,テーマパークや映画などに代表されるIP展開であり,今後もそれぞれのポテンシャルに沿った形で成長させていくという。そのほかの株主還元やお金の使い方について,現時点では今までのやり方を大きく変えようとは考えていないそうだ。
自社タイトルをクロスプラットフォームもしくはクロスデバイスでマルチプレイ展開する可能性はないかという質問に対して,自社のソフトをクロスプラットフォームで提供することについては「現在のところ、そのような計画は一切ありません」という回答。
また中国市場における,Switchやスマートデバイスアプリの展開予定に関しての質問に対しては,発表会時点で話せることはなく,検討は続けているが,実際にはさまざまな課題があるとしている。ゲーム専用機の市場は小さいため容易の挑戦ではないが,その一方で,任天堂のIPが中国市場でどれくらい受け入れられるかということにチャンレンジしていきたい気持ちは強く持っているそうだ。
質疑応答ではそのほかにも,クラウドゲームに対するユーザーの反応や,協業への考え方,「Nintendo Labo」の今後についてなどさまざまなトピックで質問が出ているので,興味のある人は資料をじっくりとチェックしてみるといいだろう。
質疑応答(※PDFファイル)
任天堂公式サイト 株主・投資家向け情報のIRイベントページ
- この記事のURL: