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「SPORTS Tech&Biz Conference 2019」レポート。eスポーツに関わるなら文化としての定着を図り,かつビジネスとしての成立を目指すべき
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印刷2019/03/29 11:06

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「SPORTS Tech&Biz Conference 2019」レポート。eスポーツに関わるなら文化としての定着を図り,かつビジネスとしての成立を目指すべき

 日経BPは2019年3月20日,東京都港区の虎ノ門ヒルズフォーラムにおいて「SPORTS Tech&Biz Conference 2019」を開催した。スポーツビジネスに関する講演が行われるこの催しでは,eスポーツもテーマとなった。eスポーツ専門会社であるJCGの取締役である松本順一氏が,eスポーツ事業との関わり方について語った「イベント・オーガナイザーから見た日本における eスポーツシーン」の模様をレポートする。

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 今回の講演はスポーツビジネスの関係者に向けて行われたもので,eスポーツ大会を興業として成立させるためにどういった課題があるかが語られた。
 松本氏は,JCGでeスポーツ大会の運営・制作に携わる人物だ。元々は技術畑の人間で,ソフトバンクテレコムでの仕事の傍ら,趣味でゲームのコミュニティを運営していたところ,eスポーツ事業への転職を持ちかけられたという。アマチュアとしてのゲーム大会から,事業としてのeスポーツまで,その変遷を体験してきたというわけだ。

 そんな松本氏が語るのは,イベントオーガナイザーが,ビジネスとして利益を出すためのeスポーツとの関わり方である。

JCGの取締役である松本順一氏
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 日本でもeスポーツの大会が盛んになっており,来場者の数自体はリアルスポーツにも負けないものになっているものの,両者にはまだ大きく違うポイントがある,と松本氏は指摘する。それはビジネスとしての収益であり,eスポーツは興業収入の点においてリアルスポーツよりもまだまだ規模が小さいというのだ。
 eスポーツを一過性のブームに終わらせることなく,定着した文化として育てていくために収益は大事なものだ。海外では「DOTA2 The International」がグッズやゲーム内アイテムを販売して賞金総額28億円を達成し,「Overwatch League」においては様々な企業がチームを作って参入し,チーム参加登録費が推定20億円以上に達するなど,巨額のビジネスとなっている。eスポーツを語るうえではこうした成功が例に挙げられることが多いものの,あくまで特殊な例であり,参考にするのは危険であると松本氏。目先の利益のみに拘泥するのではなく「草を植えていき,森を作り,これを全国へと広げるくらいの気持ち」で文化としての定着を図り,興業に特化した事業を行い,ビジネスとして成立させることも大切なのだと松本氏は語った。

 現在のeスポーツ興業には「1種類の競技(ゲーム)だけで集客しているわけではない」「入場料をビジネスモデルとしたイベントが少ない」「安定した集客力を持つ長期リーグがない」という問題点が存在しているという。入場料を取るeスポーツイベントは存在するものの,チケットの売り上げが収益の30%を越えるものはまずなく,松本氏のようなイベントオーガナイザーからすると「整理券を配っている」ようなものだというから,eスポーツ興業が単体で利益を上げるにはほど遠い。「B2Cビジネスとして成立してはいない」状態なのだという。
 そうした中でeスポーツをビジネスとするには「イベント制作」「チーム運営」「イベント興業」という3カテゴリが有効だが,参入にはそれなりの準備と知識が求められる。

●「イベント制作」:ゲームタイトル毎に特別な制作チームが必要
 イベントを制作するうえで,通常のスポーツ大会の運営ノウハウに加え,ゲームタイトル毎に特殊な知識が必要になる。加えて,1つの大会で複数のゲームが取り扱われることもあり,その際の苦労たるや「複数のイベントを並行して進めているようなもの」(松本氏)だという。さらに,ネット配信などIT知識も必要とされる。現場ではスポーツイベントの運営ノウハウがある会社にeスポーツの仕事が振られることもあるが,スムーズに行かないことも多いのだという。

●「チーム運営」:ビジネスになる可能性はある
 現時点では,プロeスポーツチームを名乗るための明確な資格は存在しないと松本氏。これをジャッジするための資格に関われるのであれば,ビジネスとして投資する価値もあるという。

●「イベント興業」:広告宣伝としては効果的
 eスポーツはファンが若いうえに熱量が高く,スポンサー企業に対して好意的な印象を抱きやすい。そのため,彼らにアプローチするならeスポーツイベントは有効な手段だ。一方,スポンサー企業の露出がバナー広告や会場の看板など画一的なものになりやすく,宣伝として充分に活用できているわけではないのだという。

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 現状,eスポーツイベント興業で利益を出すのであれば「ゲーム会社主催のイベントに乗っかる(協賛する)」「世界大会など,大きな枠組みに加わっていく」のが重要だという。ゲーム会社がeスポーツイベントを主催する場合,予算はゲームの売上を基にした広告宣伝費から出るため,何かあった時でもお金を追加しやすい。イベントの見た目や出来映え,影響力は使える金額に比例するため,予算は多いに越したことはない。また,ゲーム会社自らが行うイベントの方がプレイヤー間で評判になりやすい傾向がある。事実,松本氏のJCGも,自社開催とゲーム会社の大会への協賛という二刀流で事業を進めているという。
 世界大会の開催については「お金はあまりないが,日本での大会をやってほしい」という例が,意外にあるのだという。特に海外のeスポーツ大会の日本予選を開催することができれば,「日本VS海外の国際大会」という図式を作れるので効果が高いとのことだ。

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 eスポーツ大会に関わるうえで,自社のイメージに合ったタイトルの選定が重要となる。例えば家庭的なイメージを持つメーカーが,戦争もののFPSやバトルゲームの大会に協賛しても,効果が薄くなるというわけだ。また,eスポーツ大会に深く関係することも大切だという。単にお金だけを出して後はお任せ……ではなく,大会の賞品を提供したり,会場でコラボメニューを販売したり,ドリンクやフードをサプライするなど,自社の露出を増やすのがポイントだ。また,eスポーツチームをスポンサードし,自社製品を使ってもらったり,オリジナルグッズ類を制作・販売したりするのも効果的だという。

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 最後に松本氏は「現在,eスポーツ事業単体で利益化するのは厳しい状態にありますが,自社が売り出したい製品やビジネスへ集客する手段としてeスポーツを使うか,イベント制作チームを作るような地に足の付いた関わり方ができるなら,良いスタートを切れるのではないでしょうか」と語り,講演を締めくくった。
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