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観客が演奏曲を選ぶFFの吹奏楽コンサート「BRA★BRA FINAL FANTASY みんな de えらぼー!with Siena Wind Orchestra」をレポート
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印刷2019/05/14 12:46

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観客が演奏曲を選ぶFFの吹奏楽コンサート「BRA★BRA FINAL FANTASY みんな de えらぼー!with Siena Wind Orchestra」をレポート

 「ファイナルファンタジー」(以下,FF)シリーズの吹奏楽コンサートツアー「BRA★BRA FINAL FANTASY みんな de えらぼー!with Siena Wind Orchestra」が,2019年4月28日から7月27日にかけて,全国8都市にて開催されている。
 本稿では,4月29日に東京のBunkamuraオーチャードホールにて行われた夜公演の模様をレポートしよう。

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 「BRA★BRA FINAL FANTASY」はこれまでにも,来場者が演奏に参加するといったコンサートの新しい楽しみ方を提供してきたが,今回はツアー名の「みんな de えらぼー」が示すとおり,セットリストを来場者が選ぶという前代未聞の展開が用意されていた。

 具体的な選曲の手順は,まずコンサートの途中に楽曲の候補が何曲か読み上げられるので,来場者各自が演奏してほしい1曲に「ブラボー!」と掛け声を上げる。それを「ブラボーメーター」(音量計)で測定し,数値が大きかった2〜3曲が実際に演奏されるというわけである。ちなみに今回コンサート本編で演奏されたのは,過去4回の「BRA★BRA FINAL FANTASY」にて披露された歴代の楽曲ばかり。

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 本コンサートの制作総指揮を務める作曲家の植松伸夫氏は,この試みについて「レストランでコースメニューの一部を客に選ばせるプリフィクス形式にヒントを得た」と説明していた。

BRA★BRA FINAL FANTASY みんな de えらぼー!
with Siena Wind Orchestra


制作総指揮:植松伸夫
指揮:栗田博文
演奏:シエナ・ウインド・オーケストラ
MC:山下まみ

セットリスト
(2019年4月29日夜公演)

<Part I:Appetizer & Soup>
1.ビッグブリッヂの死闘
2.FFVメインテーマ
3.エアリスのテーマ
4.守るべきもの
5.FFメインテーマ(リコーダー合奏)
6.完全なるジェノヴァ
7.星降る峡谷
8.ハンターチャンス

<Part II:Main Dish>
9.シーモアバトル
10.いつか帰るところ
11.水の巫女エリア
12.ザナルカンドにて
13.FFバトル2メドレー
14.神の誕生
15.片翼の天使

<Dessert(アンコール)>
16.シェフのおすすめ
17.マンボ de チョコボ

 オープニングナンバーとしてFFシリーズ屈指の人気曲「ビッグブリッヂの死闘」の演奏後には,さっそく来場者が3曲を選ぶ流れに。候補となったのは2015〜2017年の「BRA★BRA FINAL FANTASY」にて演奏された6曲で,人気の高い順に「守るべきもの」「エアリスのテーマ」「FFV メインテーマ」が選出された。

 なお4月29日の夜公演は,前日の大阪公演,当日の昼公演に続き,本ツアーでは3回めの公演だったが,「エアリスのテーマ」が演奏されたのは初めてだったとのこと。植松氏と,MCの山下まみさんは「これまで,この曲が選ばれなかったのは予想外だった」とコメントしていた。

 5曲めは,来場者が客席からリコーダーで演奏に参加する「FFメインテーマ」。2016年の「BRA★BRA FINAL FANTASY」以来,すっかりおなじみとなったこの演奏に,植松氏は「年々響きがよくなっている。参加してくださる人が増えているし,演奏も上手になっている」と感想を述べていた。

 続いて,再び来場者が2曲を選曲。ここでは2017年の「BRA★BRA FINAL FANTASY VII」にて演奏されたFFVIIの楽曲4曲の中から,人気の高い順に「星降る峡谷」と「完全なるジェノヴァ」の2曲が選ばれた。植松氏によると,この4曲の人気は会場によって異なっているそうだ。
 そして勇壮かつ華やかな「ハンターチャンス」によって,コンサートのPart Iは締めくくられた。

 コンサートのPart IIは,緊張感のある「シーモアバトル」に続いて,来場者が小編成の楽曲3曲を3つのセットの中から選ぶ展開となった。ここではブラボーメーターを使わず,これまた「BRA★BRA FINAL FANTASY」ではおなじみの打楽器奏者・東 佳樹氏の指導による来場者のボディーパーカッションを交えた「モーグリのテーマ」によって,どのセットが演奏されるかが決まった。

 選ばれたのは,リコーダーのアンサンブルにパーカッションを加えた「いつか帰るところ」,6人のアンサンブルによってさまざまな色がにじんでいくようなアレンジで演奏される「水の巫女エリア」,サックスのカルテットによる「ザナルカンドにて」のセットだ。
 「いつか帰るところ」は,古楽的な響きがあるとのことで,植松氏のお気に入りだという。

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 続いて4曲の候補の中から来場者が選んだのは,人気の高い順に「神の誕生」と「FFバトル2メドレー」。「FFバトル2メドレー」では,ボスバトルや通常バトルとは一味違う渋めのバトル曲が次々に披露された。
 もう一方の「神の誕生」は,こちらも今回のツアーでは初めて演奏されたとのこと。次に披露された「片翼の天使」とともに,コンサート本編の最後を重厚にまとめ上げていた。

 “Dessert”と銘打って行われたアンコールの1曲めは,これまでの「BRA★BRA FINAL FANTASY」の中で初めて披露された楽曲。本ツアーは7月まで続くので曲名は伏せておくが,FFシリーズのファンにはおなじみの名曲なので,コンサート会場に足を運ぶ予定の人は期待してほしい。

 そしてアンコール2曲めにしてコンサート最後の楽曲は,恒例となった来場者参加の「マンボ de チョコボ」。演奏前には,ドットの匠・渋谷員子氏が登壇し,来場者に感謝を述べる一幕もあり,会場全体が楽しくにぎやかな雰囲気に包まれた中,コンサートは幕を閉じた。

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 終演後には,植松氏山下さん,指揮者の栗田博文氏,そしてコンサートマスターの榮村正吾氏を迎え,メディア合同でのインタビューが行われた。その様子をお伝えして本稿の締めくくりとしよう。

左から山下さん,栗田氏,植松氏,榮村氏
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──さっそくですが,コンサートの感想をお願いします。

榮村正吾氏(以下,榮村氏):
 演奏する立場としては,普通の公演の3倍近く演奏する楽曲を用意しなければならないので大変です。本番中にあわてたりすることもありますけれど,演奏していて楽しいですね。「次に何が来るんだろう」とドキドキする感覚は,おそらくお客さんと一緒だと思います。

植松伸夫氏(以下,植松氏):
 FFの新しい譜面を用意して吹奏楽のコンサートを作っていくやり方に,マンネリというか,形がパターン化していると感じていたんです。無理をする必要はないけれど,何か新しいことをやるほうが,ドキドキ感や緊張感を持てる。そこで,僕のわがままで栗田さんやシエナさんにご協力いただき,実現した企画です。すごくスリリングです。

栗田博文氏(以下,栗田氏):
 これまでの4年間の積み重ねが,僕の手元にあるスコアに表れているんですよね。もう最初のスコアは紙の色が変わっている(笑)。そうやって,あんなこともあった,こんなこともあったと思い出しながらシエナさんとコンサートができること,そして何が来るか分からないという新鮮さが相まって非常に楽しいです。企画として大成功じゃないでしょうか。

山下まみさん(以下,山下さん):
 5年めともなると,やることがなくなったり,どうやればお客さんに喜んでもらえるのか悩んだりします。だからといって,演奏する曲をその場でお客さんに選んでもらうなんて,前代未聞ですよね。あらかじめ,ある程度セットリストを決めておいて,会場でいかにも皆に決めてもらったように演出することもできたはずなのに,本当にその場で決めているところが1人のファンとしてすごく嬉しいですし,すごいと思います。
 でも,ゲーム音楽のコンサートのハードルを上げてしまったんじゃないでしょうか。お客さんは「こういうことができるんだ」と思っちゃいますからね……。
 
──お客さんに曲を選ばせるのは端から見ても大変だと理解できます。具体的にどんな苦労がありましたか。

植松氏:
 企画を立てる僕には確かに苦労はあるんですが,逆にいえば投げっぱなしですから。
 いちおう,全体の流れは大雑把に作ります。冒頭はこうで,第1部はこう終わる。第2部はこう始まって,こう終わる。皆でリコーダーを演奏するところをどこに置くか,そこまでのつなぎをどのような曲にするか……などを考えていくだけなので,あまり苦労という苦労はないかもしれません。小編成のセットも,どれが選ばれても僕自身が聴きたい組み合わせになっていますし。

山下さん:
 大変なのは栗田さんやシエナの皆さんですよね。

栗田氏:
 例えばバトル曲が続くと,シエナさんの体力が心配になります。でもシエナさんは追い込めば追い込むほどすごい演奏をしてくださるし,またリハーサルの時点でどこまでできるのかしっかり整理してくださっているんですよ。そうやって体力面までコントロールしてくださるのは素晴らしいことです。

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榮村氏:
 演者としてはキツいといえばキツいです。演奏するだけならそれほど大変じゃないんですが,今回は2時間半という枠の中で流れを作るところが通常のコンサートとは違うので,工夫が必要でした。ともあれ,始まってしまえば何とかなるものです。始まれば終わる,始まらなければ終わりもない。

山下さん:
 かっこいい!

──今回は来場者の選曲の結果,コンサート本編の最後に「神の誕生」と「片翼の天使」という重厚な楽曲が並びました。これは演奏するシエナさんが大変だったんじゃないかと。

植松氏:
 でも,2018年の「BRA★BRA FINAL FANTASY」では,「神の誕生」「完全なるジェノヴァ」「片翼の天使」を3曲続けて演奏しているんですよ。

榮村氏:
 正直,今日よりもキツかったです(笑)。

植松氏:
 僕も大変だったと聞いていましたけれど,3曲連続ができたなら,2曲くらい大丈夫だろうと(笑)。

山下さん:
 以前,「片翼の天使」が大変だといっていた演者の方も,「あの3曲連続を超えたら楽に思えてきた」とおっしゃっていました。そうやって,感覚がおかしくなっていくんでしょうね。

榮村氏:
 慣れって怖い……。

──今回のツアーでは,3回目にして初めて「エアリスのテーマ」が来場者に選出されました。

植松氏:
 これまで結構喜んでくれたはずなのに,何で選ばれないんだろうという疑問はありましたね。それでいろんな人と話をした結果,「エアリスのテーマ」をコンサートの序盤に持ってきたのがよくないんじゃないかということに思い至りました。コンサート序盤は,もっとアップテンポな曲が聴きたいんじゃないかと。

山下さん:
 あとはおそらく,お客さんに「エアリスのテーマ」は絶対ほかの人が選ぶだろうという意識があるんですよ。だから1曲だけ選ぶとなったら,ほかの曲を選んでしまう。もし2曲選べるなら,「エアリスのテーマ」に「ブラボー!」する人は増えますよ。

植松氏:
 でも皆,本当に1曲だけ選んで「ブラボー!」してる?

榮村氏:
 大半の人が,2曲以上で「ブラボー!」しているように見えます(笑)。

植松氏:
 ボディーパーカッションなんて,皆やってたもんね。まあ,あのコーナーでセットを決めるのは結局東さんだから(笑)。

──そうしたことを踏まえ,今後選んでもらう楽曲のリストを入れ替える可能性はありますか。

植松氏:
 もちろん可能性はありますが,その前に曲名を読み上げる順番を変えてみたいんです。何となく,同じ「ブラボー!」でも,1回めより2回め以降のほうが大きな声が出ているんじゃないかと。どうせ皆,ルールを守らず2回以上「ブラボー!」っていうんだから(笑)。
 実は本番直前に,まみちゃんとそんな相談をしたんですが,今日のところは順番どおりにやってみました。

山下さん:
 今日は昼公演と夜公演でうまく選曲が分かれましたね。ところで,もしずっと選ばれない曲があったらどうするんですか?

植松氏:
 そのときはステージ上で「この曲がずっと選ばれていない」って誘導するよ(笑)。

山下さん:
 逆に「反乱軍のテーマ」が人気なのが意外です。吹奏楽に合いそうというのは分かりますけれど。

植松氏:
 吹奏楽向きだから,という理由で選んでもらえているなら嬉しいですね。そこまでしっかり聴いてくれているんだと。

──植松さんは休養から復帰後初の「BRA★BRA FINAL FANTASY」ですが,何か心境の変化はありましたか。

植松氏:
 心境の変化はあるにはありましたが,だからといって「BRA★BRA FINAL FANTASY」に影響があるかというと……。「BRA★BRA FINAL FANTASY」では,僕自身が楽しめるか,スタッフや関係者,演者,そしてもちろんお客さんに楽しんでもらえるかを常に考えています。全会場のお客さんを合わせた何千,何万の人達が笑顔になれるっていいじゃないですか。
 2018年に病気になり,2019年に還暦を迎えた今後の僕の活動は,全般にそういうことを重視するようになると思います。本当に自分が楽しいと思えることをやっていこうと。

──最後に,これから全国のコンサート会場に足を運ぶという人に向けて,メッセージをお願いします。

山下さん:
 「みんな de えらぼー!」という名のとおり,皆さんと一緒に作っていくコンサートです。会場にいらした皆さんあってこそのコンサートですので,ぜひ声を出す準備をして足を運んでいただきたいですし,セットリストが変わりますので,1公演といわず,2公演3公演と観てほしいですね。

栗田氏:
 植松さんと山下さん,シエナさんのボケとツッコミが公演を重ねるごとに洗練されています。毎回違うネタが炸裂しますので,ぜひ期待してください。

榮村氏:
 大阪公演のあとにSNSをチェックしたら,「毎回セットリストが変わるなら,神戸公演にも行ってみたい」という書き込みがありました。もし2回3回と来ていただけたら,そのぶんの楽しみ方があると思います。さまざまな会場に足を運んで,それぞれで盛り上がっていただければ,演者としてこれほど嬉しいことはありません。

植松氏:
 実際にステージに立ってみないと,どの曲が演奏されるのか誰にも分からないということで,何度来ていただいても楽しめると思います。また僕自身も,これまでの3公演では同じ話をしていないんですよ。今後の公演も全部違う話をしますので,ぜひ遊びに来てください。

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今後の公演スケジュール

5月19日(日)東京 東京文化会館・大ホール
6月28日(金)福岡 福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
7月13日(金)広島 広島文化学園 HBG ホール
7月14日(土)兵庫 神戸国際会館・こくさいホール
7月15日(日)宮城 東京エレクトロンホール宮城
7月27日(土)愛知 愛知県芸術劇場・コンサートホール

■料金(税込): 指定席\6,800 / 学生シート:\4,800
※学生シートの先行受付でのお取扱いはございません。
※3歳以下のお子様のご入場はお断りいたします。チケットはお1人様1枚必要です。

Photo by Shinjiro Yamada

BRA★BRA FINAL FANTASY みんな de えらぼー!
with Siena Wind Orchestra 公式サイト

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