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「新経済サミット〔NEST*〕TOKYO 2019」で行われた「eスポーツはここまで来た」聴講レポート。日本eスポーツの発展は続き,今後は賞金と会場整備が課題に
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印刷2019/06/21 15:48

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「新経済サミット〔NEST*〕TOKYO 2019」で行われた「eスポーツはここまで来た」聴講レポート。日本eスポーツの発展は続き,今後は賞金と会場整備が課題に

 新経済連盟は2019年6月20日,都内で「新経済サミット〔NEST*〕TOKYO 2019」を開催した。NESTとはNew Economy Summitの略称で,明治維新から約150年が経過した今を「第三の開国」と位置付け,新たな産業,経済の起業家やイノベーターが講演を行うというイベントだ。経済や通信などのテーマが並ぶ中,「eスポーツはここまで来た」という講演では,eスポーツを知らない人に向けた概略の説明が行われた。

「eスポーツはここまで来た」登壇者
山内隆裕氏 サイバーエージェント常務取締役/CyberZ代表取締役社長
荒木重則氏 カプコン常務執行役員

エキシビションマッチ
・ウメハラ選手(プロゲーマ―)
・ときど選手(プロゲーマ―)
・マゴ選手(プロゲーマ―)
・ボンちゃん選手(プロゲーマ―)
・ハメコ。氏(実況)
・なない氏(実況)

 登壇した山内隆裕氏はまず,国内外のeスポーツの盛り上がりと市場規模について語った。山内氏は,2017年に開催されたEVOを例に挙げて,eスポーツを知らない人が「ゲーム大会」と聞くと,友達の家に集まって仲間同士で遊ぶといったものをイメージするが,現在はそうした観念を覆すような規模のイベントになっているとした。eスポーツは,格闘技やスポーツを観戦するのに近い娯楽になっており,それは世界的に広がっているという。

サイバーエージェント常務取締役/CyberZ代表取締役社長の山内隆裕氏
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「新経済サミット〔NEST*〕TOKYO 2019」公式サイト


 eスポーツの市場規模を見ると,2018年には全世界累計で約993.5億ドルだったが,2021年には2倍近い約1821億ドルに成長すると予想されている。内訳としては,企業がeスポーツに出資するスポンサーシップが全体の42%を占め,放映権の23%,広告の17%と続く。現在,放映権ビジネスが活性化しているとのこと。
 一方,日本のeスポーツの市場規模は,2018年が約48.3億円で,そのうち8割近くがスポンサーシップとなっており,海外に比べて放映権ビジネスの割合が小さいと山内氏は指摘した。しかし,スマートフォンの普及に加えてプロゲーマーの巧みなプレイ動画が拡散されやすいというネットの性質から,eスポーツのファン層が増える土壌はすでにできていると山内氏は考えており,放映権ビジネスは今後,伸びていくことになりそうだ

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 また,日本では最近,日本野球機構(NPB)が「スプラトゥーン2」の大会を主催して,12球団のチーム名を背負ったプレイヤーによる試合を行ったり(関連記事),「RAGE Shadowverse Pro League」に読売新聞東京本社やau,よしもとといった有名企業が参戦し,選手の報酬を年俸制や給料制にしたりなど,ゲームやゲームハード以外の企業がeスポーツチームをサポートする例が増えている。さらに,テレビの地上波でeスポーツ関連のレギュラー番組が放映されて,注目度も上がってきた。これに伴い,eスポーツ選手を志す人が増えるという期待が高まっており,こうした傾向は今後も続いていくと山内氏は予測している。

 ここで,eスポーツの社会的価値として山内氏が挙げたのが,「地方活性化」「若年層との接点が得られること」「障害者との関わり」の3点だ。

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●地域活性化
 2019年2月の「EVO Japan 2019」では,会期の3日間で福岡国際センターにのべ1万3000人が訪れ,ホテルを確保しづらいといった状況まで発生した。有名eスポーツチームであるDeToNatorと東海テレビのイベントでは,570席の会場に1700人が来場し,また「RAGE」の西日本予選では神戸に2000人を集めるなど,地方活性化に効果が上がっているという。

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●若年層との接点
 eスポーツイベントの参加者には若年層が多く,協賛企業がそうした若年層との接点を得られると山内氏は指摘した。ネスレは,チョコレート菓子「キットカット」を選手に提供することで,「eスポーツには,キットカットがピッタリ」というブランディングに成功した。
 また,サッポロビールの「黒ラベル」もeスポーツイベントに協賛しているが,これは,ビールを選ぶ際には初めて飲んだ銘柄を選びがちだという消費者傾向を踏まえてのこと。若年層が多いeスポーツ市場で露出を高めることで,いずれ黒ラベルを初めての一杯にしてもらい,継続的な愛飲者を増やすことが狙いだという。

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●障害者との関わり
 障害のある人にとってeスポーツは,ほかのスポーツと比べてハンデが少ないと山内氏は考えている。群馬県伊勢崎には障害者向けのeスポーツ選手養成所が作られ,またアメリカの「AbleGamers財団」では障害を持つeスポーツ選手の支援といった取り組みが行われており,山内氏はこの分野におけるeスポーツのさらなる貢献を期待しているという。

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 しかし,日本のeスポーツ界が発展するうえではまだ課題が山積していると山内氏は指摘する。問題点として挙げられたのが,賞金と会場の問題だ。賞金の問題については,これまでにもさまざまな議論が行われてきたが,ごく簡単に言うと,景表法や刑法,風営法などがあるため,日本では海外のような高額賞金を出せないという問題だ。ただし,「こうした制限がeスポーツの発展を阻害しているわけではない」と山内氏は言う。日本に合ったやり方を模索することが市場の発展につながると山内氏は考えており,デメリットやリスクがない形で日本らしいeスポーツの形を模索していきたいという展望を語った。

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 大規模なeスポーツの大会を開くためには,会場の整備が重要だ。2020年の東京オリンピックの関係もあって大きな会場が現在,あいておらず,「ニーズはあるが,会場がない」状態になっているという。山内氏は,329億円を掛けた「eスポーツタウン」が中国の杭州市で建設されている例を挙げて,「日本でももっと大きな座組にならないと,(eスポーツも)興業としては成立しない」と述べて,講演を締めくくった。

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 山内氏の講演に続いて,プロゲーマーによる「ストリートファイターV」のエキシビションマッチが行われた。
 これに先立ち荒木重則氏は「これまではゲームを作って,お客様に売るという一方通行のビジネスでした。しかし,eスポーツでは,ゲームを売ったあと,プレイヤーを応援してプロゲーマーに育てたり,イベント興業や配信を行ううえでいろいろなスポンサーが入ってきたりなど,新しい形が生まれており,ここから地方創生や雇用の創設といったことを目指していきます」と,改めてeスポーツへの取り組みを語った。

カプコン常務執行役員の荒木重則氏
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 エキシビションマッチは,ウメハラ選手ときど選手マゴ選手ボンちゃん選手によるトーナメントとなっていた。マゴ選手は1回戦でときど選手(豪鬼),決勝戦でウメハラ選手(ガイル)と戦ったが,ときど選手の斬空波動拳を刹歩で対策し,ウメハラ選手のサマーソルトキックを誘って逆転勝利を決めるなど,会場の人達にeスポーツの面白さと凄みを見せつけた。

ウメハラ選手(左)と,ときど選手(右)
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マゴ選手(左)とボンちゃん選手(右)
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「新経済サミット〔NEST*〕TOKYO 2019」公式サイト

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