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教育向けボードゲーム「The Arctic」体験会レポート。激変する北極を舞台に,そこで起きていることを考えながら最良の結果を目指せ
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印刷2019/08/09 16:34

イベント

教育向けボードゲーム「The Arctic」体験会レポート。激変する北極を舞台に,そこで起きていることを考えながら最良の結果を目指せ

 日本科学未来館と北極域研究推進プロジェクト「ArCS」(Arctic Challenge for Sustainability)が開発した教育向けのボードゲーム,「The Arctic」の中高生向け体験会が2019年8月8日,日本科学未来館で開催された。

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日本科学未来館公式サイト


 「The Arctic」はタイトルどおり北極を舞台としたボードゲームで,地球温暖化による急激な環境変化を背景に,「北極で今,何が起こっているのか,そして今後どうなっていくのか」ということを考えながらプレイする内容になっている。今回の体験会では,夏休みの中高生を中心に,事前募集と当日受付による参加者がゲームを楽しんだ。本稿で,その模様をレポートしよう。

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 「ArCS」は,国立極地研究所海洋研究開発機構(JAMSTEC),そして北海道大学の3者が文部科学省の補助事業として進めるプロジェクトで,2020年3月まで続けられる予定だ。

 海洋開発機構の木村 元氏によれば,北極研究の成果を社会へ発信するプロジェクトの一環として,広い年齢層が気軽に体験できるボートゲームを開発したという。制作は,冒頭にも書いた日本科学未来館と「ArCS」のほか,ゲームメーカーのドキョウゲームズとボードゲームクリエイターのオグランド氏が協力している。あくまで,研究機関での体験会や教育機関への出張事業などで活用される教材で,市販は想定していない。そのため,1回のプレイで面白いと感じられるものを目指し,約1年半の歳月をかけて開発されたという。

海洋開発機構 北極環境変動総合研究センターの木村 元氏(左)菊地 隆氏(右)
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 ゲームは,「ArCS」の研究員が進行および解説を行うファシリテーターとなり,4〜6人のプレイヤーが「海洋学者」「文化人類学者」「漁業者」「先住民」「開発業者」「外交官」など,それぞれ違った役割を演じつつ進行する。それぞれの役割には,すべて異なる目標が設定されており,ゲーム終了時のパラメータを確認して,それが自分の役割カードの裏に書かれた目標数値以上なら達成,下回ったら目標未達という結果になるのだ。
 パラメータは,北極の状況を示す「環境」「文化」「経済」というもので,このほか,後述するイベント発生時に使用できる「予算」も表示されている。

(左)参加するプレイヤーは4人〜6人。卓を囲んでのプレイとなる。(右)プレイヤーの役割を表すカードには,最終目標となるパラメータが書かれている
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 北極を模したボードの上には氷のカードが敷き詰められており,温暖化の進行で北極の氷が減少していくように,プレイヤーは順番にボード上の氷をめくっていく。氷にはPhase 1からPhase 3まであり,最初にめくれるのはPhase 1のみ。Phase 1の氷カードを一定数めくると,Phase 2の氷をめくれるという仕組みだ。
 氷カードの裏には「イベントの番号」が書き込まれているので,「イベントブック」で該当するイベントの内容を確認する。イベントには,「プランクトン調査」や「情報インフラ整備」「海洋保護区の設定」などがあり,それぞれが「環境」「文化」「経済」のパラメータに影響を与える。

(左)プレイヤーはボード上の氷カードをめくっていく。氷カードの配置は,実際の北極をモデルにしているそうだ。(右)氷の裏に書かれたイベントを,イベントブックと照らし合わせ,それに従って行動する
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左から順に「環境」「文化」「経済」のパラメータ。この最終的な数値が,プレイヤーの目標となる
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 イベントには,3つのカテゴリがある。「発生」の場合はその内容に従って必ず実施する必要があり,「選択」は氷をめくったプレイヤーが指示に従うかどうかを選択する。そして「投票」は,参加者全員の投票で実施の可否が検討するのだ。
 「選択」と「投票」で実施することになったイベントは予算を消費するが,当然ながら,予算が尽きるとゲームが進んだときのイベントが実行できない可能性が出てくる。その場合どうするべきかは,プレイヤー同士のディスカッションによって決まる。

ボード上側のイベント欄に,出てきたイベントを採用したかしないかを示すチップを置く
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イベント実施の投票は,「YES」「NO」のカードで行う。同票の場合は,その氷をめくったプレイヤーのカードが決定権を持つ
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 氷をめくって発生するイベントはPhaseが進むにつれて,北極に大きな変化を与え,場合によっては「環境」「文化」「経済」のパラメータに打撃を与える。とはいえ,それ以前に実施したイベントが効果を発揮して,危機を回避できることもあるというから難しい。
 Phase 3の氷を3枚めくったところで進行はストップ。上記のように,この段階で3つのパラメータを確認し,自分の目標が達成できたかどうかを判定することになる。

 目標が達成だけでなく,残っている北極の氷の様子や,お互いの立場を考えた行動ができたか否か,そして自分達の判断で実施したイベントが北極にどんな影響を与えたかなどを振り返って考えることを進行役がプレイヤー全員に促して,ゲームは終了する。

(左)事前に実施したイベントによって結果が異なる場合もあるので,判断は難しい。(右)Phase 3の氷を3枚めくったらゲーム終了となり,最終パラメータがそれぞれの目標以上なら,達成だ
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 イベントに参加したプレイヤーは主に中高生で,テーブルによっては小学生に付き添った親も参加してプレイを楽しんでいた。ゲーム終了後の感想を参加者に聞くと,「難しかった」としつつも,研究員の解説を聞きながら遊んでいるうちに,自分の目標達成を目指すだけでは北極に起きている事態が好転しないことを理解できたいう。
 プレイヤーがゲームで何をしたかによって北極がどうなっていくのが分かる仕組みになっているのだが,例えば,温暖化で氷が溶けると自然環境にはダメージを与えるが,航路が確保できるなど,生活が便利になる部分もあり,こうした複雑なバランスをゲーム全体にうまく取り込んでいるという印象だ。

ゲーム開発に協力したArCSの皆さん
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 また,自分の目標達成のためにほかのプレイヤーを出し抜こうとすると,逆に良くない結果になりがちなシステムは,プレイヤー同士がディスカッションを行って協力することの重要性に気づける点で秀逸だ。ディスカッションの重要性は,低年齢のプレイヤーが若干難解なゲームの内容を理解するうえでも効果的だった。

(左)かなり小さな子も混ざっていたが,ゲームの進め方はちゃんと理解していた。(右)ゲームに使用するセット一式。氷カードはアクリル製で,模様だけでなく厚さも違う
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(左)イベントブックには,研究者の解説と写真が添えられている。(右)パッケージには,ファシリテーター向けのルールブックも付属する
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 「The Arctic」はボードゲーム一式に加えて,ファシリテーター用のルールブックと,導入用のオープニング映像,そしてゲームを終えたあとに流すエンディング映像(現在は未完成とのこと)を収録したメディアをセットにして,研究機関や教育機関へ貸し出されるという。プレイの機会は限られそうだが,日本科学未来館では今後,このような体験会を行う可能性もあるとのことだったので,気になる人はこまめに同館の公式サイトをチェックしてほしい。

日本科学未来館公式サイト

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