イベント
「ファイナルファンタジー」35周年記念のコンサートをレポート。シリーズの歴史を綴る21曲が披露され,ワールドツアーがスタート
「FINAL FANTASY 35th Anniversary Distant Worlds: music from FINAL FANTASY Coral」
日時:2022年8月6日,8月7日
会場:東京国際フォーラム・ホールA
指揮:アーニー・ロス
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
コーラス:Barzz〜鳥の吟遊詩人たち〜®
歌唱:白鳥英美子/RIKKI
ゲスト:植松伸夫
主催:キョードー東京
協力:スクウェア・エニックス
【セットリスト】
<第1部>
1 メドレー2002[FINAL FANTASY I〜III]
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
2 悠久の風(FINAL FANTASY III)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Hiroyuki Nakayama
3 赤い翼〜バロン王国(FINAL FANTASY IV)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Hiroyuki Nakayama
4 ファイナルファンタジーIV メインテーマ(FINAL FANTASY IV)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Hiroyuki Nakayama
5 遥かなる故郷〜想い出のオルゴール(FINAL FANTASY IV)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Yohei Kobayashi
6 新しき世界(FINAL FANTASY V)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Yohei Kobayashi
7 迷いの森〜魔列車〜獣ヶ原(FINAL FANTASY VI)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Yohei Kobayashi
8 街角の子供達(FINAL FANTASY VI)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Yohei Kobayashi
9 FINAL FANTASY I〜VI バトルメドレー2022
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Yasumasa Sato
<第二部>
1 Liberi Fatali(FINAL FANTASY VIII)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
2 Ragnarok(FINAL FANTASY XI)
Composer: Naoshi Mizuta
Orchestrator: Yoshihisa Hirano
3 エアリスのテーマ(FINAL FANTASY VII)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
4 剣の一閃(FINAL FANTASY XII)
Composer: Hitoshi Sakimoto
Orchestrator: Yoshimi Kudo
5 素敵だね(FINAL FANTASY X)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
Vocalist: RIKKI
Lyrist: Kazushige Nojima
6 APOCALYPSIS NOCTIS(FINAL FANTASY XV)
Composer: Yoko Shimomura
Orchestrator: Sachiko Miyano
7 閃光(FINAL FANTASY XIII)
Composer: Masashi Hamauzu
Orchestrator: Masashi Hamauzu
8 いつか帰るところ〜Melodies Of Life(FINAL FANTASY IX)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
Vocalist: Emiko Shiratori
Lyrist: Ciomi
9 天より降りし力(FINAL FANTASY XIV)
Composer: Masayoshi Soken
Orchestrator: Shota Nakama
10 FINAL FANTASY Main Theme with Choir-The Definitive Orchestral Arrangement-
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
Chorus arrangement: Hiroyuki Nakayama
<Encore>
11 ザナルカンドにて(FINAL FANTASY X)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
12 片翼の天使(FINAL FANTASY VII)
Composer: Nobuo Uematsu
Orchestrator: Shiro Hamaguchi
(敬称略)
第一部は,シリーズ初期のタイトルとなるFFI〜VIまでの楽曲が演奏された。ステージ上のスクリーンには,楽曲に合わせてシリーズの名シーンが映し出され,来場者の気分も盛り上がる。
1曲目は,「メドレー2002[FINAL FANTASY I〜III]」だ。20年前に同じ会場で行われたコンサートで演奏された楽曲で,おなじみの「プレリュード」や「メインテーマ」(FFIのフィールド),「マトーヤの洞窟」「水の巫女エリア」「チョコボのテーマ」「反乱軍のテーマ」といった懐かしい曲のメドレーとともに,その映像がスクリーンに流れていく。
1曲目が終わると指揮者のロス氏が自己紹介とともに,ゲストの植松氏を紹介した。植松氏が「こんな長きにわたってシリーズを作らせてもらえているのは,ひとえにファンのみなさんのおかげ」とお礼の言葉を述べると,客席から大きな拍手が上がった。
今年はコンサートのワールドツアーも15周年で,全世界78都市を回ってきたという。今回の東京公演は212公演目,譜面の数は142曲超だそうで,この公演を皮切りに,来週は兵庫で行われ,以降各国を巡る予定だ。
演奏はFFIIIの雄大なフィールドを思わせる「悠久の風」から,FFIVの重厚なオープニング「赤い翼〜バロン王国」,そして「メインテーマ」へと続いていく。対応ハードが進化して演出や音楽もよりドラマチックになり,その進化が演奏からも感じられる。
続けてFFV「はるかなる故郷〜想い出のオルゴール」「新しき世界」,FFVI「迷いの森〜魔列車〜獣ヶ原」「街角の子供達」と,コンサートではちょっと珍しい楽曲も演奏された。
第一部ラストは「FINAL FANTASY I〜VI バトルメドレー2022」だ。抑揚のあるアレンジが施され,ラストはもちろん勝利のファンファーレで締めくくられた。
休憩を挟んでの第2部1曲目は,FFVIIIの「Liberi Fatali」だ。ゲームハードが新世代へと突入し,さらに表現力を増したオープニングムービーとともに,コーラスの入った激しい演奏からスタートした。
そしてFFXIの「Ragnarok」の壮大な展開,FFVIIの「エアリスのテーマ」の美しい旋律と続き,さらにはFFXII「剣の一閃」のスピード感のある演奏と,緩急をつけた選曲にワクワクさせられる。
FFXの主題歌である「素敵だね」では,オーケストラによるアレンジに,オリジナルの楽曲でも歌声を披露したRIKKIさんによるボーカルが加わった。リリースから20年以上が経過しているが,RIKKIさんの歌声は当時よりもさらに美しく聞こえ,気持ちも盛り上がる。
比較的新しいシリーズの「APOCALYPSIS NOCTIS」(FFXV),「閃光」(FFXIII)は,植松氏の手を離れ,実力派コンポーザーの手によって作られた楽曲だ。当日は水田直志氏,崎元 仁氏,下村陽子氏,祖堅正慶氏など,FFシリーズの楽曲を手がけたコンポーザーがコンサートに招待されていて,壇上のロス氏によって紹介された。
「いつか帰るところ〜Melodies Of Life」(FFIX)では,同曲を歌唱した白鳥英美子さんがボーカルをつとめ,当時の映像とともに懐かしい思い出がフラッシュバックしていく。
「天より降りし力」(FFXIV)の力強いコーラスがコンサートのクライマックスへと誘い,ラストの「FINAL FANTASY Main Theme with Choir-The Definitive Orchestral Arrangement-」で会場は大いに盛り上がる。スクリーンにはFFIのタイトル画面をバックに,コンサートに携わったスタッフのエンドロールが流れた。
アンコールでは,「ザナルカンドにて」(FFX)と「片翼の天使」(FFVII)の,シリーズを代表する名曲が演奏された。「ザナルカンドにて」は,原曲のピアノソロからオーケストラ演奏へと展開する流れが来場者の心を穏やかにする。
一転,「片翼の天使」の強烈なイントロから「セフィロス!」の声が連続して上がると,ステージ上が照明で赤くなり,スクリーンでは「FFVII アドベントチルドレン」のシーンが再生され,盛り上がりは最高潮に到達。最後のフレーズが終わると,客席からは大きな拍手が贈られた。
終演後に行われた囲み取材でロス氏は,「35周年という記念すべき機会に参加させてもらったことを光栄に思う」と述べ,ファンや関係者に向け感謝の気持ちをあらわにした。同席した植松氏も「35年よく続いたもので素直に嬉しい。作曲家冥利に尽きます」と述べ,5年後の40周年にも意欲を見せるが,シリーズを重ねるごとに曲数が増えていくことを懸念し,「3日連続公演をやってはどうか(笑)」と語っていた。
また,今回の公演のタイトルにある「Coral」について尋ねられた植松氏は,「あれは駄洒落です。Coralって珊瑚でしょ。35周年だからサンゴ」と裏話を明かしていた。しかし,そのままでは日本以外のファンに伝わらないので,“合唱”という意味の「Choral」にしたかったが,合唱のコンサートに間違われてしまうというロス氏の反対により,Coralのままになったのだとか。
そしてアンコールの2曲は,「コンサートで演らないわけにはいかない」という人気曲となる。とくに「片翼の天使」は,過去のコンサートで1曲目に演奏されたこともあったが,やはり「セフィロス!」で終わるほうがいいのでは,という提案で最後の曲となったという。各国でもこの曲は人気で,アンコールのラストに聴きたいという声が大きいとロス氏も話している。
現在はコロナ禍ということもあってお客さんは声を上げられないが,植松氏的にはもっと煽りたいそうで,過去の公演で同曲の歌詞をスクリーンに映して一緒に歌ってもらうような演出をしたこともあったのだとか。植松氏はオーケストラのコンサートではあるものの,それ以前にゲーム音楽のコンサートなので,あまり堅苦しいルールに縛られることなく楽しんでもらいたいと常に思っており,もっと大騒ぎできるアイデアがないか模索しているという。「その反応が我々のエネルギーになるんです」と,ロス氏も賛同していた。
常に新しい趣向を盛り込んで,お客さんには新鮮な気分でいつまでも楽しんでもらえるようなコンサートに育てていきたいと植松氏。ロス氏も定番の楽曲は押さえつつ,都市ごとにプログラムを変えるなどして,毎回新しい内容のコンサートを作り,ファンを楽しませることを約束した。
- この記事のURL: