インタビュー
[インタビュー]「DreamHack Winter 2022」メインステージに立った伊織もえさんが,ヨーロッパ初遠征のLANイベントで感じたこと
自作コスプレへのこだわりを武器にコスプレイヤーとして確固たる人気を確立している伊織さんは,2018年に本格的な活動を開始して以来,すでに100冊を超える雑誌の表紙を飾り,主要なソーシャルネットワークサービスのフォロワー総計は約400万人を超えているという。ストリーマーとしてゲームの配信にも手を広げ,「オーバーウォッチ」や「Apex Legends」などのシューターを中心にプレイしている。
今回のDreamHack Winterで伊織さんはメインステージに登場し,東アジア初上陸となる「DreamHack Japan」が5月13日から14日にかけて幕張メッセで開催されることを発表し,会場や日本のゲーマーを盛り上げた。
「DreamHack Winter 2022」がどんなイベントなのかについては,以下の関連記事を読んでもらうとして,伊織さんは「DreamHack Winter 2022」で何を感じたのか。イベント会期中に話を聞いたので紹介しよう。
「DreamHack Winter 2022」フォトレポート。盛り上がるLANパーティーやエキスポの様子を紹介
スウェーデンのヨンショーピングにて開催されたLANパーティーイベント「DreamHack Winter 2022」。参加者同士が思う存分ゲームを楽しむLANパーティーだが,その中でも長い伝統を誇り,最大級と言われるDreamHackを紹介しよう。
4Gamer:
DreamHackに参加されて,どのようなご感想を持ちましたか?
伊織もえさん:
私は日本,そしてアジアを中心に活動していますが,スウェーデンどころかヨーロッパに来るのも初めてで,DreamHack自体も参加のお話が来るまでは,イベントの存在も,名前すら知らなかったんです。
いざ参加してみるとゲームに熱中している人もいれば,さまざまなアクティビティに参加している人もいて,良い意味でイベントとしてのジャンルが決まっていない,ゲームのいろんなものが詰まった楽しいイベントだと感じました。これをしなきゃいけないっていうのが決まってなくて,大らかなイベントなんだなって。
4Gamer:
Creator Hubというインフルエンサー専用エリアでは,伊織さんも配信されていましたね。
伊織もえさん:
Creator Hubには,ストリーマーさんたちが実際に実況配信をする場所があったのですが,その距離感が日本じゃあり得ないというか,あまり見られないイベントでした。
ストリーマーになりたいっていう若い世代の人は多いと思うんですが,そんな人たちにも良い影響を与えることができているんじゃないかなって思いました。配信している姿や,カメラや照明の位置だったり,使ってる機材だったり,普段,お家で配信しているところだけじゃわからない部分も見れて,参考になるんじゃないかなと。「DreamHack Japan」も,ぜひこうした雰囲気を残した良いイベントになることに期待しちゃいますね。
4Gamer:
ファンを交えたゲーム大会とか,ストリーマー同士のドッジボール大会などのイベントもありましたね。
伊織もえさん:
ドッジボール大会は端で見ているだけになりそうです(笑)。私も実況配信をすることがありますが,他の女性ストリーマーとお会いする機会なんてないですし,Creator Hubの中にいるだけでも新鮮で楽しかったですね。
Creator Hubは各ステーションが横に連なっていたのですけど,配信している最中にも,日本でVTuberをやっておられる方のお知り合いだという外国の方から声を掛けられたりとか,私にとっても横のつながりが感じられるのが,とても新鮮でした。
ドッジボールはともかく,オンライン上だけでは生まれないコラボレーションの仕方が生まれていくんじゃないかって期待できましたし,ライブ感のあるストリーミングを楽しめるイベントっていうのが素晴らしいです。
4Gamer:
LANパーティーはどうでしたか?
伊織もえさん:
LANパーティーは,地元を中心とするゲーマーの皆さんが自分のパソコンやディスプレイ,それからゲーミングチェアやちょっとしたストリーミング機材を持ち込んで,自分の好きなゲームで遊ぶイベントですよね。私にとっては聞いたこともないほど馴染みのないものでした。
馴染みはないんですけど,その一方でなんかDreamHackってコミックマーケットに似ているなって感じたんです。4000台ものパソコンが持ち込まれて,その人たちがコンテンツを作り出して自由に楽しんでいるというのが,自分たちが好きな本や創作物を持ち寄って,ワイワイとお祭りを作り上げていくコミケとそう変わらないんじゃないかって思いました。
4Gamer:
よく見られてますね。主催者へのインタビューでも,コミュニティが運営していくイベントとしての成り立ちを守っていきたいという話をされていましたよ。
伊織もえさん:
うんうん。参加者の皆さんがイベントを自分たちで作っているという気持ちが芽生えていったら,そこから伝統だとか独自のルールみたいなのができて,独特の楽しさっていうのが生まれていきそうですよね。
今回のDreamHackでは,家にパソコンを持ってないとか持ってこられないという人にもレンタルできる場所があったりして,私も友達やフォロワーさんと一緒に「Apex Legends」をLANでプレイしたくなっちゃいました。むちゃくちゃ強い人がいるなと思ったら目の前に座っていたら,ゲームセンターみたいなノリで凄く楽しそうじゃないですか(笑)。
4Gamer:
ゲームセンターという例えも面白いですね。
伊織もえさん:
私も配信をしていて,DreamHackは「ゲームショウとコミケを足して2で割ったようなイベント」とか話していたんですけど,大きく違うのは小学生くらいの子供たちもたくさんいたことです。配信中にも無邪気に絡んできたりしたんですが,やっぱり28年も続いていますから,過去に参加していた親御さんたちが家族を連れて楽しまれに来ているんだろうと感じました。
そんなこともあってか,実際に子供たちが自由に遊べるアクティビティがエキスポフロアにもいっぱい用意されていて,今は対戦ゲームをあまり遊ばないかもしれないけど,彼らが大人になるにつれて,いろんなゲームやその文化に興味を持ち,彼らが家族を連れて帰ってくるようになるんでしょうね。
4Gamer:
伊織さんも両親に連れられてコミケに参加したのが最初だったとか。
伊織もえさん:
そうなんです。DreamHackに来ている子供たちと同じで,私も親からエリート教育を受けたんです(笑)。伊織家は,私が子供の頃からコミケに連れて行ってくれたり,人気ゲームシリーズの新作の開封式を家族で行ったりするような家族だったんです。
ゲームは特に,目が悪くなるとか勉強時間が削られちゃうとか言われがちですけど,このイベントの雰囲気を見ていても小っちゃい子たちが親子やコミュニティの中で良い経験をたくさん積んでいるのが,彼らの様子から伝わってきます。本当に,こんなゲームイベントが日本にもあったらと思いますね。
4Gamer:
ライブコンサートなんかも,参加者はみんなノリノリでしたね。
伊織もえさん:
陰キャの私でも,その後にステージに立ってスピーチする予定がなければ,参加して一緒に飛び跳ねてみたかったくらい会場が盛り上がっていましたよね。DJとゲームって全く別モノっていう印象があるんですが,最近では「LOL」や「VALORANT」でもBGMだけでなくカッコいいテーマ曲がたくさんあったり,クリエイティブ自体のレベルが高かったり,eスポーツのイメージもちょっとずつ変わって来ているのかもしれません。DJさんも,ところどころに現地の人なら誰でも知っている民謡なんかも取り入れて,みんな自然と手を突き上げながら楽しんでました。
4Gamer:
ライブコンサートの合間に,伊織さんはDreamHack Japanのアンバサダー的にステージ上に立たれましたが。
伊織もえさん:
はい。来年の5月13日から14日にかけて,「DreamHackが日本に初上陸するよ」っていう告知を,日本からのゲストとして英語でアナウンスさせていただきました。日本のコスプレイヤーが来たってわかってらっしゃる方もいて,みんな温かく「ワーッ」って盛り上がってくれてうれしかったです。スピーチもしっかり練習しましたが,バックステージでは現地のディレクターさんに「最後は日本人っぽく,バイバイって言ってくれない?」とかアドリブの注文を付けられて,無理しなくても良いんだなあって勇気づけられました。
4Gamer:
エキスポのアクティビティも体験されました?
伊織もえさん:
なかなか時間が取れなくて体験できていないのですけど,ゲームが体験できるブースに椅子ではなくてヨギボーが置いてあったり,人が集まっているのに整理券を配っていなかったりと,大らかな雰囲気を感じました。ゲームイベントなのにヘアサロンのブースがあったりして,ああいうちょっとあり得ないのが目玉になっていて見ているだけでも面白いですね。
4Gamer:
DreamHack Japanは日本初上陸というだけでなく,伊織さんの知名度が高い東アジア圏でも初の開催になります。
伊織もえさん:
日本で開催される,いわゆる“オタク系”のイベントって言うのは片手に収まるくらいだと思うんですけど,今回の本場のDreamHack Winter 2022で見たようなヨーロッパらしさを残しつつ,日本的な要素を入れて独自性を出すことができれば,日本はもちろん多くの地域から参加される人にとって,有意義な時間になるのではと期待しています。5月の幕張メッセでの開催を楽しみにして,みんなで盛り上がっていければ良いなと思いますね。
4Gamer:
ありがとうございました。
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