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ZETA DIVISIONのスポンサーであるJCBはなぜeスポーツ市場への投資を決断したのか。ウェルプレイド・ライゼスト eスポーツビジネスセミナーレポート
本講演に登壇したのは,株式会社ジェーシービーのブランドマーケティング部長の宮崎寛人氏。講演ではJCBの簡単な概要が紹介されたのち,2022年11月17日よりスタートした,ZETA DIVISIONとスポンサー契約に至った経緯と発表後の反響,今後の展開についてなどが語られた。
JCBがeスポーツ市場に関心を持ったのは,会社全体が課題に置いている,Z世代(若年層)へのアプローチを考えた結果だという。宮崎氏によると,近年,日本のキャッシュレス市場は時代の要請(コロナ禍の影響など)もあって年々拡大しているものの,QRコード決済などの普及でキャッシュレス決済の手段が多彩になったがゆえに競争は激化したとのことだ。
そこで目を向けられたのが,2022年4月の法改正で成人扱いとなり,自身の意思のみ(親権同意不要)でクレジットカードの取得が可能となった,18歳前後のZ世代だ。そこからJCBブランドマーケティング部門は,Z世代への親和性の高い市場として,eスポーツに注目し始めた。そんな折にウェルプレイド・ライゼストからZETA DIVISIONへの協賛の提案が舞い込んだことから,宮崎氏自身もeスポーツ市場についての調査を始めることになったという。
ただ,Z世代へのアプローチにeスポーツが有効な市場であろうことは想像できたものの,宮崎氏にとってeスポーツは市場としてもエンターテイメントしても「まったく肌感覚にない」状態だったという。
しかし2022年4月にZETA DIVISIONが「VALORANT」の世界大会で3位になったことを「普通のニュースで知った」こと,直後に行われたオフラインイベントの会場で若年層の参加者の数とその熱狂ぶりを目の当たりにして,eスポーツが持つポテンシャルの高さを実感。ZETA DIVISIONへの協賛を本格的に考えるようになり,社内でeスポーツ市場の有用性を説いて土壌を作ったうえで,「一定の強いファンコミュニティが形成されている」,「真摯で誠実なチーム運営・マネージメントへの信頼感」などを決め手に,ZETA DIVISIONへの協賛の道筋を作った。
上記のような段階を経てスタートしたZETA DIVISIONへの協賛の反響は,JCB側の予想を越える早さと大きさで返ってきた。その最たる例として今回の講演で挙げられたのが,協賛を発表する際に作成された全4回のリリース動画だ。
ZETA DIVISIONのYouTubeチャンネルやTwitterアカウントからリリース動画が拡散されると,あえてJCBのロゴは出さずに作った初回の動画から「これってJCBがZETAのスポンサーになるのでは?」といったリアクションがZETA DIVISIONのファンやeスポーツに関心のある若年層からわき上がり,4回目の動画ではっきりとJCBの社名が出ると,「JCBありがとう!」,「JCBがスポンサーはすごい」など,普段の施策ではなかなか見えてこない,「お客様の生の声が聞けた」ことが収穫であり,また「単純にうれしさを感じられた」と宮崎氏は述べた。
講演の終盤ではJCBがeスポーツ市場で今後取り組んでいきたいビジネスのアイデアも宮崎氏からいくつか披露された。ZETA DIVISIONと提携した取り組みとしては,JCBブランド会員向けにZETA DIVISIONのアパレルやグッズの先行販売,ファンミーティングを開催し,そのチケットを先行で販売することなどを検討しているという。また,さまざまなタイトルの世界大会に出場するZETA DIVISIONの活躍で,JCBの存在が海外でより認知されることにも大きな期待を寄せていると明かした。
宮崎氏の講演がひと通り終わると,ウェルプレイド・ライゼストの古澤明仁氏が登壇。古澤氏は宮崎氏にいくつか質問を投げかけたのでその内容を紹介しよう。
古澤氏:
ZETA DIVISION,特に韓国に拠点を移した「VALORANT」部門を活用した,グローバル展開は考えているのか
宮崎氏:
会員の大半が日本国内のJBCには,JCBのロゴがプリントされたユニフォームを着てZETA DIVISIONが活躍してくれると,それだけで海外での認知にひと役買ってくれている。そこから韓国などでの施策につながることを期待したい。
古澤氏:
ZETA DIVISIONとの提携,協業で最も期待することは?
宮崎氏:
最終的な目標はJCBへ入会してもらうこと。グッズの先行販売が呼び水になれば。ただビジネス感を出しすぎるのはよくないので,まずはファンの人に喜んでもらうことを第一に考えている。
古澤氏:
eスポーツへの投資を社内の稟議で通す際にポイントになることは?
宮崎氏:
(自分がアドバイスをするのはおこがましいと前置きしつつ)eスポーツを知らない人でも,Z世代へのアプローチが重要なのはどの業界の誰もが感じている共通認識のはず。投資とその結果に至るまでのストーリー作りと,他部署とeスポーツをどう活用し尽くせるかを社内全体で考えることが重要。JCBに関しては,社内に“未来戦略枠”というものがあり,見通しが立ちづらいものにも投資するという気風があったのがよかった。むしろZETA DIVISIONへの協賛はスムーズに進んだ施策だった。
と答えたところで時間となり,宮崎氏と古澤氏は降壇。講演は終了した。
なお,本公演の模様は,ウェルプレイド・ライゼスのYouTubeチャンネルでアーカイブを視聴することが可能。詳細を知りたい人は,こちらを参照してほしい。
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