E3 2002に顔を見せなかったThe 3DO Companyのヨーロッパ支社である3DO Europe社は，会場内で完全クローズドのブースしか展示していなかった。これは，ヨーロッパ諸国のパブリッシャに代理販売してもらうための商談の場と割り切っていたからだ。しかしforGamer取材班はその席に入れてもらい，3DO社が命運を賭けて制作しているというシングルプレイ専用のアクションアドベンチャー「Four Horsemen of Apocalypse」（以下，Four Horsemen）を見せてもらった。

　同社のアメリカ本社で総合プロデューサーを務めるケリー・ターナー（Kelly Turner）氏は，開口一番に「このゲームには800万ドル（10億円近く）の予算を取っているんです。今年結果を出せなかったソフトが多い分，このFour Horsemenは2003年の最大の目玉になると期待しています」と語った。PCソフトでは10億円はかなり大規模な予算であり，とくに3DO社のような中小企業にとっては簡単に捻出できる額ではない。果たして，このソフトが決定打となってくれるのだろうか。
　何せ，Four Horsemenはリスキーな部分が多い。まず，ヨーロッパで人気のあるサイモン・べスリー氏のコミックを題材にしたライセンスソフトだという点。さらに，主人公のアバドンにはランス・ヘンリクソン，ほかにもティム・カリーや往年のAV女優トレーシー・ローズなど，ハリウッドから集めた豪華キャスティングの声優陣が参加している点。そして本作は，残虐性やエロティックな描写があるため18禁で発売されるという点だ。

　開発は明らかになったばかりだが，実は18か月前から制作が始まっており，とくに最初の1年はビスリー氏と共同でキャラクターデザインやストーリー，下地となるアートワークの制作ばかりをやっていたのだという。それほど，背景部分を入念に作り込んでいるわけだ。
　物語は，主人公である地上に落ちた天使アバドン（Abaddon）が，馬に乗った4人の悪魔の手先（ホースマン）から地球を守る，といった内容。しかし，むりやり突き落とされたような格好で地上にやってきたため，アバドン自身が怒りと不満に燃えているのだ。
　4人のホースマンは，闘争，疫病，死 ，欲望という名前で，それぞれ自分の宮殿を持っており，アバドンはそこへ彼らを追い詰めていかなければならない。しかしこの仕事を達成するにはアドバンにはない特殊な能力が必要であることから，まず3人の"選ばれた者"を見つけ仲間にする必要がある。その3人とは，18歳の売春婦ジェシー，連続殺人犯のジミー・フリント，そして汚職にまみれたスコット議員という救世主には似つかわしくない面々だ。選ばれし者は，それぞれ自分の知らない特殊能力を持っていて，ジェシーだと"治癒能力"，ジミーは"心身透視"，そしてスコットが"他人を言い含める技能"となっている。

　まだグラフィックスエンジンが調整段階で，実際にゲームプレイを見られたわけではない。しかしアニメーションには特別な注意を払って開発されているようで，髪の毛や衣服の揺れが見事に表現できるようになるらしい。また，キャラクターモデルには1体につき6000ポリゴンが使用され，アニメーションのバラエティも多い。流血の量が半端ではなく，血に染まった床の上を歩くと赤い足跡がペタペタと付くようになるようだ。
　ゲームプレイは，まず3人の仲間を探し出すミッションから始め，ストーリーに沿ってホースマンを追い詰めていくことになる。武器となるのは銃と剣で，それぞれの武器を使うほどスキルが上がっていくシステムだ。
　ゾンビやミュータントのようなグロテスクなモンスターは，1画面あたり6体程度とそれほど大量に出現しないものの体の大きいものがほとんどで，それぞれ使用している武器によって死ぬときの動作が異なっている。今回唯一用意されていた，体は2倍あろうかというモンスターと戦うインゲームのムービーでは，剣で首を跳ね上げ，それを串刺しにしてから胸に突き刺すというものと，相手の肩に馬乗りになって，モンスターの銃をそのまま顔に向けて粉砕するという過激なアクションが見られた。

　マップは17〜18種類程度となる予定で，ほとんどが屋内型のものとなる。中には電気椅子に座らされた処刑寸前のジミーを救い出す刑務所のマップがあるが，ここは一定時間内でジミー救出しなければならないというシステムになるようだ。また，べスリー氏描き下ろしのコミックでストーリーが読めるうえ，ゲーム中でもシネマティックを使って物語を展開していくとのことだ。
　発売は2003年の9月を予定しており，PCだけでなくNINTENDO GAMECUBEやPlayStation 2，Xboxなどのプラットフォームでもリリースされる。美しくも過激な描写で「DOOMIII」の対抗馬となるのだろうか？（Okutani）