Text & Photo by 奥谷海人
今年で
第3回の授賞式となるゲームデベロッパーズチョイス賞は,IGDAに参加するメンバーらが選出するゲーム賞というだけあって,同業の仲間から認められたという喜びもひとしおだ。3年前に手探りで始められたこのイベントも,試行錯誤の末に随分と整備されてきており,現在では
開発チームや個人の業績を称えるための祭典として見事に機能している。各カテゴリーにノミネートされた作品も錚々たる顔ぶれで,質の高いソフトが豊作だったといわれる2002年度を象徴するかのような華やかさだった。
各部門の受賞作品や受賞者は次の通り。
・Rookie Studio of the YearRetro Studios(「メトロイド・プライム」の功績により)
・Game Innovation Spotlight Award「どうぶつの森」(任天堂)
「Battlefield 1942」(Digital Illusions)
「Medal of Honor Allied Assault」(2015)
「The Thing」(Computer Artworks)
・Excellence in Writing「Tom Clancy's Splinter Cell」のClint Hocking氏とJT Perry氏
・Excellence in Level Design「メトロイド・プライム」のMetroid Prime制作チーム
・Excellence in Game Design「Battlefield 1942」のRomain de Waubert de Genlis氏ら
・Excellence in Audio「Medal of Honor Allied Assault」のJack Grillo氏ら
・Excellence in Visual Arts「キングダムハーツ」の野村哲也氏
・Excellence in Programming「Neverwinter Nights」のMark Brockington氏ら
・Original Game Character of the Year「スライクーパー」の怪盗スライ・クーパー
・Game of the Year「メトロイド・プライム」(Retro Studios)
さて,ゲームディベロッパーズチョイス賞の会場では,このほかにもいくつかの表彰が行われている。
・First Penguin賞 − Activision社の創設メンバー
この賞は,群れの中で一番先に陸上から海に飛び込む勇気あるペンギンに例え,ゲーム業界で新しい境地を開いた開拓者に与えられるものである。今年は,それまで"ハードウェアメーカー = ソフトウェアメーカー"だった流れを変え,
初めてゲームソフトウェア専門の開発会社として誕生したActivision社を設立した5人に送られた。1979年にAtari社を飛び出してActivision社を設立したラリー・カプラン(Larry Caplan),アラン・ミラー(Allan Miller),ボブ・ホワイトヘッド(Bob Whitehead),デイビット・クレイン (David Crane)各氏は,音楽業界からジム・レヴィー(Jim Levy)氏を迎えて,ゲーム制作に専念できる環境を作り上げたのである。販売会社と開発会社の泥臭い関係という一面を生み出したものの,現在のモデルとなる基礎を作り上げたのが,彼らなのだ。
(写真左,授賞式に参加したボブ・ホワイトヘッド氏ら)・IGDA Community Contribution − ダグ・チャーチ氏
ゲーム業界の躍進を目指して,IGDAのコミュニティーメンバーとして献身的なボランティア活動に従事してきた"縁の下の力持ち"に与えられる賞で,今年は
現Eidos Interactive社テクニカル・ディレクターのダグ・チャーチ(Doug Church)氏が受賞した。チャーチ氏は,過去3年間IGDAの役員として活躍してきただけでなく,Academy Summitを一から作り上げ,ゲーム業界と教育機関の掛け橋となってきたのが評価された。チャーチ氏はプログラマーとしても日本でも知られた作品のマスターマインドであり,Looking Glass Technologies社在籍当時には「Ultima Underworld」,「Thief」,「Flight Unlimited」などのメインプログラマーを務めた。
(写真中央,ダグ・チャーチ氏(右端)と,IGDAディレクターのジェイソン・デラロカ氏(右から2人目))・Lifetime Achievement Award − 故横井軍平氏
横井軍平氏は,1969年に任天堂でウルトラハンドを作り上げて以来,「ドンキーコング」や「マリオブラザーズ」など宮本茂氏の手掛けるアーケード機のハードウェアのデザインに関わり,さらには後継機まで含めると世界で1億4千万台も出荷している
ゲームボーイの生みの親となった功労者である。1997年に不慮の事故で他界されたが,今回アメリカで彼の功績が認めらるところとなった。受賞のプレゼンターには,去年同賞を受賞した中祐司が選ばれ,この授賞式のため特別に渡米した横井氏のご遺族がトロフィーを受け取った。開催地から程近いサンフランシスコは,横井夫妻がハネムーンを楽しんだという思い出の地でもある。会場は,観客一同による温かい拍手で包まれた。
(写真右,壇上でスピーチする故横井軍平氏のご遺族)