GDCで公開された,独立系ゲームデベロッパたちのソフト群を紹介 「GDC 2003」スペシャルレポート #17 | - 03/11 18:23 |
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Text & Photo by 奥谷海人 GDC会場ではここ数年恒例になってきた,インデペンデント・ゲームズ・フェスティバル(Independent Games Festival:以下,IGF)。IGFに出展されるのは,企業の資本やサポートを受けずに個人もしくは数人のグループによって制作されたソフトである。すでに数作分のライブラリを持っており,独自のWebサイトで販売するなどビジネスとして成立させている人もいれば,大学での個人プロジェクトが引き継がれて本格的なゲームへと成長したものなどもあり,"独立系"(インデペンデント系)と呼ばれるデベロッパ達にはさまざまな背景がある。基本的にどこも少ない資金でゲームを作っているが,そういう困難をはね除けるほど彼らの夢は大きいのだ。 IGFは,Game Developers誌やGamasutra.comを運営しているThe Gama Networkで,GDCをプロデュースしているCMP Media社を母体としている組織である。1998年に始まって以来,今年で5回目になる独立系ゲーム開発者の祭典であるIGF。大賞の"シューマス・マクネリー賞"には,賞金として1万5000ドルが送られる。 シューマス・マクナリー(Seumas McNally)とは,2000年に行なわれた第3回IGFにて「Thread Mark」というアクションゲームをデザイン,プログラムした21歳の若者の名前である。彼は幼い頃からホジキン病(悪性リンパ肉芽腫)を患って闘病生活を続けていたが,彼の驚くべき精神力と温かい家族の支えによって,3Dグラフィックスによる素晴らしいアクションゲームを完成させたのだ。受賞の数日後に他界してしまったことから,彼の名はThe Gama Networkによって同賞に冠されることになったという経緯がある。 今年は,去年末までにエントリーされた73作の中から,最終選考に残った10作分がGDCのエクスポ会場に展示され,来場者によって投票が行われた。ファイナリストとその作品は,以下の通りである。 ・「BaseGolf」 (http://www.alitius.com) 野球とゴルフをミックスさせ,ゴルフにピッチャーとバッター(ゴルファー)が存在するという,コミカルに仕上げたトップダウン型のゲーム(開発:Alitius社) ・「Furcadia」 (http://www.furcadia.com) 動物キャラクターを使ったMMORPG。プレイヤーは添付されたツールを使って独自のマップを制作することが可能となる(開発:Dragon’s Eye Productions社) ・「Mr. Bigshot」 (http://www.mrbigshot.com) 株式のトレードを楽しむゲームで,実際の史実に基づいた情報データが組み込まれている。億万長者となるのが目的だ(開発:Mr.Bigshot社) ・「Pontifex 2」 (http://www.chroniclogic.com) 橋をデザインし,列車走行などのさまざまな"ストレステスト"を使って完成度を示す。一人称を含めたカメラ視点も豊富だ(開発:Chronic Logic社) ・「Reiner Knizia’s Samurai」 (http://www.klear.com/samurai) ドイツのボードゲームをコンピュータゲーム化したもので,開発費は25万ドルというターンベースのストラテジー。日本の中世が舞台(開発:Klear Games社) ・「Strange Adventures in Infinite Space」 (http://www.digital-eel.com/sais) 貿易や探索を目的としたターンベースのSFストラテジー。1ゲームのプレイ時間は15分程度と短いが,毎回異なる設定が楽しめるようになっている(開発:Digital Eel社) ・「Teenage Lawnmower」 (http://www.rtsoft.com/tlm) 芝刈り機を使ったアクションRPGで,お金を稼ぐためにさまざまなシチュエーションに挑む。開発者は,広島県に住むロビンソン夫妻(開発:Robinson Technologies社) ・「Terraformer」 (http://www.terraformers.nu) スウェーデンからエントリーされた一人称視点のゲームで,"オーディオインタフェース"という音のナビゲーションにより視覚障害者でもプレイできる(開発:Pin Interactive社) ・「Wild Earth」 (http://www.superxstudios.com) 写真雑誌に掲載するために,フォトジャーナリストとして大自然の中で動物の写真を撮るというミッションタイプの本格的な3Dアドベンチャー(開発:SuperX Studios社) ・「Word Ninja」 (http://www.shizmoo.com) ターンのないオンライン対戦型のクロスワードゲームで,相手よりも早く言葉を並べていったほうが勝利する(開発: Shizmoo Games社) エクスポ初日である6日中には開票され,Game Developers Choice Awardの前座として受賞式が行われた。 ・Innovation in Audio賞 「Terraformers」(写真:上段中央) ・Technical Excellence賞 「Reiner Knizia’s Samurai」(写真:上段右) ・Audience賞 「Pontifex 2」(写真:下段左) ・Seumas McNally大賞 「Wild Earth」(写真:下段中央) という結果となった。今年はどの作品も非常にレベルが高く,すでに海外へライセンスしたり移植作業に入っているソフトも多い。ほとんどの作品がデモをダウンロードしたりWebサイトで購入できるようになっているので,気になるソフトはチェックしてみるべきだ。なお,写真の下段右は「Wild Earth」でシューマス・マクナリー大賞を受賞した,SuperX Studios社のジェームス・スラッシュ(James Thrush)氏。数年前にも副賞を受賞したことがあるが,今回の受賞には同席していた両親も目頭を熱くしていた。 |