[E3 2003#063]NC Softの未来を語る。NC Soft CEO「T.Jキム氏」特別ショートインタビュー | - 05/17 21:08 |
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[E3 2003#014]でお伝えした通り,今年のNC SoftはSouth Hallに大型のブースを構え,「Lineage II」を始めとした複数のMMORPG作品を公開。戦闘がメインのもの(「Lineage」),キャラクター性の高いもの(「Shining Lore Online」),そして「City of Heroes」のようなちょっぴり変わったものまでと,それぞれ異なる路線のタイトルを投入しているのが明確に分かる。MMORPGは,1タイトルでさえ大量の開発・運用コストの投入を必要とする特殊なジャンル。ファンや業界関係者にとっても,同社がどのような収益構造で採算をとろうと考えているのかなど,疑問が尽きないところだ。 そんな中,E3期間中にNC Softの代表取締役社長のT.Jキム(T.J.Kim)氏へのインタビュー可能との一報が。しかし与えられた時間はわずか30分ほど。東洋系・西洋系のスタッフが混在するNC Softブースのミーティングルームにて,その辺りの質問をぶつけてみた。2000年に入って爆発的に広まって世間に認知されたものの,いまだ"発展途上"の感が否めないMMORPGというジャンル。業界の動向などが気になる人は,目を通しておくといいかも。 ########### インタビュー ############# 話し手:NC Soft代表取締役社長 T.J.Kim氏(以下,キム) 聞き手:forGamer.net(以下,4GN) キム: 本日はNCブースにお腰お集まりいただいてありがとうございます。弊社としましても,E3という場で,世界各国のゲームデベロッパやパブリッシャーと競合できるように至ったことを大変うれしく思っています。 4GN: 大きいブースですよねぇ……展示規模からいっても世界の競合に肩を並べてますよね(笑)。ではまず始めに,E3でメイン会場にブースを構えるのは初めてだと思うのですが,にタイトルを出展するにあたって苦労したことなどがあればお聞かせください。 キム: そうですね。PCゲームのタイトル,特にMMORPGはグラフィックスが淡白なので,第一印象のインパクトという意味では,どうしてもコンシューマ機のタイトルに劣ってしまいます。そこで,いかにしてユーザーの目を惹き付けるか,仕掛けをするかに注力しました。 4GN: なるほど,たしかに凝った作りになっていますね(※1)。そういえば,今回のNC Softの出展タイトルはMMORPG作品のみですが,常々お聞きしたかったことを聞いてもよいでしょうか。Kim社長は,一人のユーザーが同時(同時期)に,何本のMMORPGをプレイできるとお考えですか? キム: 常にゲームの世界に常駐するようなメインプレイタイトルは一本でしょう。しかし最近の分析では,異なるスタイルの複数の作品を楽しむのがトレンドとなっている傾向もあるようです。NCブースを見ていただければ(※2),NC Softがそのトレンドに合わせ,多様なラインナップを揃えてきたということが,お分かりになると思います。 4GN: なるほど,それは理解できます。私自身もそうですし。しかし,いましがたのお話の「メインプレイは1本」という主流と,一つのメーカーから登場する複数タイトルというのは,ビジネスモデルとしてやや矛盾がありませんか? 必ず限りがあるであろうユーザーというリソースを同じメーカー内で食い合うことになりませんか? あらゆる種類の大量のコストがかかるMMORPGという市場で,どのように生き残ろうとお考えになってるのかが気になるところです。 キム: その質問はたしかにMMORPGをビジネスにしようと考えた頃から,周りから指摘されてきました。韓国ではダメだと,仕事としてなりたないと。 しかし,日本やアメリカは他の国とはゲームの楽しみ方が違っていて,MMORPG(オンラインゲーム)はこれからもますます流行っていくと思うのです。そしてNC Softは大量のデジタルコンテンツを投入して,子供から大人まで,アジアから欧米までのすべての家庭を対象としたビジネスを考えています。例えばケーブルテレビ内のチャンネルのように,ユーザーがデジタルエンターテイメントを必要としたときに,NC Softを入り口にするような使い方が理想でしょうか。もちろんリアルタイムに最新の状態でサービスを提供できるわけで,運用コストも比較的安価になるでしょう。 4GN: なるほど。そのようなグローバルなサービスを展開するとなると,現在NC Soft社が採用している「サブスクリプションシステム」※3などが有効かと思いますが,日本やアメリカのプレイヤーなどには浸透しているとはいえないと思うのですが。 キム: そうかもしれませんね。しかしそれは消費者が決めることですし,とりあえずNC Softとしては,お金を払うに値するコンテンツを充実させることが最優先だと思っています。 4GN: なるほど。お金を払うコンテンツという意味では,常に進化し続けるMMORPGなどは向いていますよね。ところで,事実上最古参のMMORPGといわれるUltima OnlineやEverQuestなどは,運用開始後,拡張パックなどで製品をどんどんアップデートして利益を確保していますよね。Lineageなどはなぜそういった仕組みになっていないのですか? エピソード単位でアップデートが区切られているのであれば,実装は難しくないと思いますが。 キム: まったくそのとおりですね……。でも我々がこの業界に参入した当初は,製品は早めにリリースし,問題や拡張はパッチで行うのが主流でした。しかし,現在は高い完成度をもってリリースするように変わってきています。「Lineage II」などは,おっしゃるとおり拡張パックのビジネスを考えていますよ 4GN: やはりそうですよねぇ……では時間もないですし,最後にNC Softの今後の展開を教えてください。 キム: 我々は,これから日本や欧米などを念頭に置いたビジネスを展開していきます。Lineageで実績を作りましたが,真価が問われるのは−−とりわけアメリカ市場において−−「Lieanage II」だと考えています。そしてそれを成功させつつ,"全家庭にデジタルコンテンツを"目標にしていきたいと思います。 4GN: 本日はありがとうございました。 ※1:NC Softのブースでは,すべてタイトルのに特大のキャラクターフィギュアがあしらってある ※2:同社はE3 2003で「Lineage」/「Shaining Lore Online」/「City of Heroes」ほか,ゲーム性の異なるMMORPG作品を何本も ※3:CD-ROMを雑誌付録やダウンロードサービスで無料配布し,月額定額料のアクセス料を徴収するというシステム |