「シム・ゴッド」とも「シミュレーションゲームの父」とも形容されるシド・マイヤー(Sid Meier)氏率いるFaraxis Games社が,Infogramから社名変更したAtari社と共同会見を開き,これまでにウワサにもなっていなかった2作の新作ソフトの開発を衝撃的に発表した。そのソフトとは,「Civilization III」の拡張パック第2弾となる「Civilization III:Conquest」と,往年の名作として語られることの多い名作「Pirates!」の21世紀版である。マイヤー氏の口からPirates!の名前が発せられたときには,欧米から集まったプレス陣から大きな歓声が上がったほどで,おそらく20代後半以上のPCゲーマーには思い入れが強い人も多いかもしれない。今回の記者会見では,両作品とも画像や映像が公開されることはなかったのだが,いくつか興味深い話を聞くことができた。
Sid Meier's CivilizationIII:Conquest CivilizationIII:Conquestは,世界で450万本を販売したというヒット作にとって2本めとなる拡張パックである。読んで字のごとく歴史に大きな傷跡と変革を生んだ文明の征服をシヴィライゼーション風味に味付けしたもので,合計で八つのキャンペーンからなる。この中には,アレクサンダーのメソポタミアへの侵攻や南米に向けたスペイン軍の侵略,さらには太平洋戦争での関連諸国の近代戦争や,メイヤー氏をして「非常に興味深い」と言わしめた日本の戦国時代などが含まれているという。リリースは,今秋中を予定しており,日本のファンにとっても楽しみな一本になりそうだ。
Sid Meier's Pirates! Pirates!が依然として人々の記憶に残っているのは,まだジャンルという区分も正確になされていなかった'80年代初頭のゲームシーンに,アクションやアドベンチャー,さらにはシミュレーション性が渾然一体とした妙なゲームとして登場したことにあるのは間違いないだろう。今でこそジャンルをミックスさせることは一般的になったが,当時は船で大海原を駆け巡って探索していたかと思えばサイドスクロールのような画面になって敵の船長と決闘するとか,はたまた物資を輸出入する経済シミュレーションの要素が入っていたりと,自由度の高さや大盛り感で多くのプレイヤーを唸らせた。現在でも,さまざまなプラットフォームに勝手に移植されたバージョンがWeb上に氾濫しているというのも,その証拠の一つだといえるだろう。
20数年ぶりにPirates!を復刻させることを決定した理由として,CivilizationIIIや「DOOMIII」など昔のソフトのリバイバルがもてはやされる傾向にあることのほかにも,シド・マイヤー氏は「Grand Theft AutoIII」の影響を挙げていたのが興味深い。
現在のグラフィックス技術では,ゲーム中の世界でさらに自由に動き回れることが理解できたというのだ。オリジナル作品よりもロールプレイに比重を置いたものになるようで,厳密には"復刻版"ではないのだが,完全3Dグラフィックスによるリアルタイムでのゲームになるということだ。
シングルプレイヤー専用ではあるが,CivilizationIIIのようなマイヤー作品と同じく,拡張パックなどでマルチプレイヤーモードへの対応は見込まれる。発売予定が2004年中ということで,これから1年半ほどは待つ必要があるものの,Pirates!はマイヤー氏の最強カードの一つでもあるだけに,Firaxisの面々も真剣に取り組んでくることは予想できる。(奥谷海人)