[E3 2003#101]前作の比じゃない自由度を誇る「Deus Ex:Invisible War」 | - 05/20 17:03 |
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「Deus Ex」は,forGamer magazine第1号の表紙を飾った人物でもあるウォーレン・スベクター(Warren Spectre)の手がけた,FPSスタイルのSF RPGだ。一人称視点で激しい銃撃戦の要素も含みつつ,自由度が高く多くのアクションに反応してくれるオブジェクトの数々,複雑なキャラクターの育成といった要素も主体として盛り込んでいる。 完成されたサイバーパンク風の世界観に,コートを着込んだ重圧感溢れるエージェントの主人公。謎のハイテク装置やヤバそうな薬など,ハンパではなく豊富な種類のアイテムが用意されている。 高度に機械化された世界の影には,人的災害と疫病に苦しむ下層市民の存在がある。そして自分が彼らを虐げる側に属しているという,精神的な葛藤も生じる。まさにシステム,データ,ストーリーという3拍子が見事に揃った豪華な作品であった。 その「Deus Ex」に,3年ぶりの新作が登場する。最新作「Deus Ex:Invisible War」は,前作から15年後の同じ世界。今回も対テロリスト用のエージェントとして,世界秩序のための諜報活動に従事することになる。今回の主人公は男性あるいは女性を選択可能になった。前回は男性であるがゆえに進入を嫌がられたエリアに,女性キャラとして堂々と入れるのだろうか。 「Deus Ex」の特徴として,とにかく"自由"かつ"複雑"であることが挙げられる。これは初心者には厳しいが,そこそこゲームで遊んできたプレイヤーにとっては歓喜的な挑戦だ。とにかく,一つの目的達成までに複数の手段が用意されており,さらに物語は分岐していくつかの異なる結末へと進んでいく。逆をいえば,FPSのように銃だけではまったくどうにもならないのだ。 複雑さを伴う自由度は,「Invisible War」ではさらに向上している。例えば,この世界では高度なネットワークが普及しており,プレイヤーは端末を通じてアクセスできる。端末では,機械化されたドアのロック解除から雇われエージェントのお給金の管理まで,実にさまざまな活用法がある。 スキルが向上すれば,このネットワークをハッキングしてさまざまな不正行為も働けるようになるのだ。もちろん不正行為も働くも働かないも,どのような不正に手を染めるかもプレイヤーの判断に任されるのだ。実際,善悪の判断はこのゲームの大きな分岐点の一つとなる。 前作の複雑すぎたインタフェースを改善したが,自由度はむしろ前作の比ではないくらい高まっているようだ。「あなたと私では,必ず違うストーリー展開になるだろう」と,スベクター氏も今作の自由度に関してはかなり強調していた。 「DeusEx」シリーズのもう一つの大きな特徴は,主人公がサイボーグであり,レベルアップや「Biomod」によって身体能力を劇的に向上させることが可能な点だ。バイオテクノロジーは,人間の能力をはるかに超えた結果を主人公に提供する。たとえば常人では考えられないほどの速度で泳げるようになり,針の穴を通せるほど拳銃を正確に撃てるようにもなる。さらには壁を透視したり,空を飛んだりといった特殊能力も使用可能になる。プレイヤーには,人間の能力を超えたスキルを使いこなすだけの想像力が求められるのだ。 このうち「Biomod」は,ファンタジーRPGにおける魔法スキルのような扱いとなり,本作の注目点の一つ。Biomodパラメータを消費する代わりに,超人的なスキルを使用できるのだ。例えばセキュリティロボットをハッキングして,自由に操るといったことも可能になる。当然,大掛かりなBiomodほど消費するパラメータも大きい。 本作品はステージクリアー式のFPSではなく,36分割された一つの世界の中で物語が進行していく。ただ今回のマップは前作ほど無駄に広くはならないそうだ。しかしそのぶん密度は濃くなっており,一つのレベル内に用意されたイベントや重要性は高まっている。 物理演算に「Havokエンジン」,グラフィックスエンジンには独自にカスタムした「Unrealエンジン」を使用。この作品独特の複雑な自由度を再現するために,当然ながら最新の技術が投入されている。とくにスニーク的な要素を多分に含む本作で力が注がれているのが,"影"の生成だ。「DOOM III」に採用されることでも有名なStencil Shadowを採用しているが,これは従来の3Dゲームとは別物といってもいいほど完成された光と影の描写が可能となる技術だ。DirectX9では両面ステンシルに対応するため,対応ビデオカードを用意しておけばより高速な描画が可能となるだろう。 隅々まで描き込まれた世界は,またもやプレイヤーのありとあらゆるアイデアと好奇心に応えてくれるに違いない。 非常に熱狂的なファンを獲得し,特別な位置付けを確保した本作。前作も開発に途方もない巨費が投じられていたようだが,今回どれほど贅沢なゲームとなっているのか見当もつかない。2003年秋のリリースを予定しているが,ぜひ発表通り発売してもらいたいものだ。 |